前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
「どうしてっ! どうしてそんなに生徒会を優先するのよっ!!」
「…………」
「彼女も解っているでしょうに……このままトレーニングを放棄し続けていれば、アーモンドアイにオークスは愚かトリプルティアラ全てを奪われかねないということは!!」
「…………」
「なんでやめてくれないのよおおおおお!!!」
「あの……樹さん、彼女を止めませんか? さすがにこれは……」
「え、これ僕がやるの???」
明らかに僕以外がやるべきだと思うよ???
だって僕、鉄扇さんのエアグルーヴを倒した
場所はトレセン学園付近の飲み屋。そこで僕は三冠・トリプルティアラ一冠目の桜花賞と皐月賞の集客状況に対する反省会――と言う体の飲み会に出席していた。
そして今目の前でべろんべろんに酔っぱらいながら愚痴を零している泣き上戸のエアグルーヴのトレーナーである『
まだ始まって10分も経っていない状態であり、同僚曰くこのペースで酔うのは早すぎるらしい。
テーブル席に突っ伏すテッセンさんの様子は荒々しく、流れる涙は収まる気配を見せない。
「あの、鉄扇さん。少々落ち着いて」
「ニシノちゃんはすごかったわよおおおお、デバフ走法なんて習得して! エアグルーヴもひっかけちゃうんだからっ!! 偉いっ!! 偉いわっ哪吒君っ!!!」
「いやっ、それは僕も想定外で――」
「エアグルーヴにはそんな想定外の成長なんてなかったのよおおおおお!!!」
「あうわっわわあう」
鉄扇さんは泣き上戸で涙を流す勢いのままにニシノフラワー担当の『
哪吒さんはトレーナーの中で一番背が低く、一見中学生程度に見えないこともないほどの童顔という若々しい姿をしていて女性スタッフからは評判がいい。
なんでもニシノフラワーとのツーショットはウマスタグラムで『カワイイ少女とカッコイイ少年のツーショット!?』として拡散し大バズりしたとか何とか。
その様子をカウンター席から見ていたスピードシンボリがふむ、と口元に指を添えながら考えていた。
彼女たちは成人しているため、お酒は飲めるのだとか。
ちなみに僕は飲めない。苦いのだから仕方がない。
「ふむ、確かにエアグルーヴ君は生徒会に日々専心しているその姿は好感が持てたが……その役職が枷になっては本末転倒だろう」
「そうなんですよお! なんとかして生徒会の活動をやめさせないと、勝てる勝負も勝てなくなっちゃいますってえ!!」
「だがしかし、それが本当に彼女に善いことなのだろうかね?」
「ふぇぁ???」
「Should try to observe and invent. ――何が本当に彼女の役に立つのか……勝利よりも優先すべきものがあったのでしょう」
「うんうん! 私もそういうことあるよ! アイドルとしての誇りとレースで走るウマ娘としての想い……どっちもかけがえのないぐらい大事なものだけど、どっちかが必ずもう片方よりも強いんだよね!」
「誇りと想い……?」
「うんうん!」
そう頷くハイセイコーさんの姿を横目にリンゴジュースを飲む。
甘い味は好きだ。馬の時代にも甘いものを食べることで英気を養ってきた。
次の走りのための、心の静養になってくれていた。
「(……誇りと、想いか…………)」
その言葉に懐かしい面々のことを思い出す。
ともに同じ時代を駆けたものたちの姿を。
速く、運よく、強い彼らの姿を。
もう一杯、リンゴジュースを飲む。
鉄扇さんがうんうん唸りながらも担当ウマ娘との関係改善策を考えている中で、僕は1人、懐かしい景色を思い浮かべていた。
癖の強い、アルコールの香りに包まれながら……
誇り、想い、覚悟。確かにそれは、彼らが抱いていた感情だった。
「パパがすごい馬だったんだ! オレも続いてやるんだよ!!」
「マネーユグドラシル! お前の走り、覚えたからな!」
「どうだ……これが、オレだ!」
それぞれが何かしら強い感情を抱いていた。レースに強い執着を向けていた。
無理もない話ではある。そこで走ることで僕たちは生きることができる、そんな業界だったのだから。
勝つことこそ、生きること。
前世は割と殺伐だった。
でも、彼らの運命はさらに残酷だった。
「ははっ……こんなっ、ボロボロのカラダだったなんて……」
「ちくしょう! なんでっ、勝てないんだ……あの日みたいに……」
「ユグ……ブーとフィエールマン君、負けちゃったんだ。ガイセンモン」
病気、連敗、屈辱。
何も成し遂げられない現状に、何も残せない恐怖が、僕たちの世代を大きく蝕んでいったのを覚えている。
牝馬が強く、牡馬は負ける。
屈辱的だったんだろう。恥ずかしくて堪らなかった彼らの姿を覚えている。
そして、それを託されたときの重さを知っている。
「マネーユグドラシル。……頼む。あの
僕は最初から変わらなかった。
ずっとずっと、逃げているだけだった。
勝利よりも報酬。勝利よりもオカネ。
サツキでは稍重の芝に馬に驚いた。
ダービーではペースが合わなかった。
キッカでは粘れなかった。
それだけなのだ。
それだけしかできてないのだ。
――でも、それでいいんだって言うんだね。
「お前はオレたちとは違う。ずっとずっと、オレたちとは違う別の世界を見て走って来たお前なら……あのアーモンドアイを、超えられるはずなんだ」
……本当にそう思っているのだろうか。
こんなオカネにがめついお馬さんに?
「ああ、信じられるよ」
そこまで言うんだ?
勝てるかどうかわからないよ?
君が思うよりも、僕はダメなお馬さんなのかもしれないよ?
「それでもいい。オマエはオレたちの代弁者だからな」
急に決めるじゃん。
それでいいの? 本当に?
「決めさせてもらう。お前に、総てを託す。――2015の時代に産まれた全ての
……本当に、重たいなあ。
ハヤトよりも重いのはやめてほしいけど……
「でも……わかったよ。それが君の叫びなら。声に出せない嘶きなら……僕が何とかして見せる。勝てるかどうかは分からないけど……やってみるよ。僕たちの世代が弱いなんてこと人間たちが思わないような走りを」
「…………ありがとう」
「礼は良いよ。それよりも……元気で。桜と走ったテンノウショウ、良い走りだったのを覚えてるよ」
「っ、ああ……やはりお前は、オレたちの最高のライバルだったよ。マネーユグドラシル」
そういう君の背中は、足取りは……どこか、救われたような雰囲気だったんだ。
「あのー、大丈夫ですか?」
「……ん、ああ?」
少々眠っていたのだろうか?
こんな場所でもきちんと話に乗ってあげるぐらいの礼儀はあるというのに……失敗してしまった。
「すいますぇん、ちょと、めむてたみたいで……」
「...He must not be drinking, right? 彼が飲んでいたのはただのジュースだったはずですが?」
「まさか善財さん、場酔い!?」
「うそおー!? 私の指何本見えてる、善財くん!?」
「8本ですよね??」
「3本ですよ!?」
「いや6本ですよ!?? 鉄扇さんは飲みすぎです!!?」
それにしても、良い夢を見ていた……いやあれは良い夢なのだろうか。
なかなか悪い夢だったようにも思える。友たちが悲惨な運命に直面していく姿を見続けるのはなかなかに悪夢だったのではなかろうか。
でも……
「……どうやら、良い夢を見れたような顔だね?」
「そうですかぬぇ?」
「ふふ、どんな夢を見たんだい?」
「……友達との思い出でふよお」
僕なんかよりも、ずっと誇り高く、強かった彼らの後ろ姿。
それは先輩たちや後輩たちには真似できない、素晴らしき栄光の軌跡。
「彼らが何て言ったってえ、彼らが負け続けてしまってゑもぉ、僕は彼らがかっこよかったんですよお~」
「そうか。――管鮑之交。良い友を持ったのだな、善財君の友人たちは」
あ、また眠くなってきた。
今度はもっといい思い出を見られるといいな………………
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他