前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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所詮思い付きの作品だからそんなに身に来る人もいないだろうな……
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嬉しい…嬉しすぎる
ありがとうございます!


-1勝のウマ娘

 

「――以上ッ! その胸のトレーナーバッジに恥じない働きを、期待しているぞ!!」

「かしこまりました、理事長」

 

 ――ふう。

 

 とりあえず理事長への挨拶は終わった。

 あとは実践研修を受けて……僕が指導するべきウマ娘を見つけ出さないとな。

 

「それ、私じゃダメなのかしら? ユグ」

「……僕は善財樹だ。そんな名前じゃない」

「そんなこと言わないでよ。私からすれば、あなたは間違いなくマネーユグドラシルなのよ」

 

 あと、彼女の対応も何とかしないといけないのか……

 心の中で大きなため息が零れ落ちる。

 

 予想はしていたのだ。

 僕が馬時代の記憶を持っているように、ウマ娘の誰かもまた馬時代の記憶を持っている可能性はあるのだろうと。

 今までのレースインタビューなどの情報を探り漁ってもそのような情報は出てきていないが、僕という前例がいる以上いるという可能性は決してゼロではないのだから。

 

 だが、だけれども……

 

「なんで君が前世の記憶を持っているんだ……!」

 

 よりにもよってそれがアーモンドアイだったのはどうしてなんだ……!

 

「当たり前よ。たとえ人間の姿になろうとも私はアーモンドアイなのよ。思いを忘れないのは当たり前でしょ?」

「さも当然のように言わないでくれ……」

「それでユグ、私のトレーナーになる気になったかしら?」

 

 そう言って、アーモンドアイは僕にその瞳を向ける。

 

 相変わらずの恐ろしい輝きを放つ瞳だ。

 馬時代から一層輝きが増したと見て取れる。

 

「あなたがウマ娘にならなかったのは残念で、悲しくて、辛いこと。そして残念で、さらに残念極まりないことだけれども過ぎてしまったことはどうにもできない」

 

 そんなに残念なのだろうか。

 

「でも、あなたが人間で、トレーナーになっていたのなら話は変わってくるわ」

「そう?」

「そうよ!」

 

 そうなのだろうか。

 

「私の輝かしい戦績に泥をつけた強くて憎きマネーユグドラシルと手を組めば、私は前世(あのころ)よりも強くなれるわ」

「そんなに?」

「ええ、あなたの才能と経験と知識と技術! 余すことなく私に教えなさい、私ならそれをすべて覚えきることができるわ。――そして、あなたも私も見ることができなかった新世界を見ることができる」

 

 ……新世界、か。

 

「前世でも同じようなことを言っていたね」

「ええ、私ならできると信じていた。けれども、あなたがいた。あなたを超えることはできなかった。あなたを超えて、新世界を作りたかったのにね」

「……『何をしてでも、あなたに勝つ』だったっけ」

「私の負け台詞、覚えてくれていたのね。その言葉通りよ。私は私に勝ったあなたに教えを請おうとしている。恥も外聞も知らずにね」

「恥も外聞もないだろ、少なくとも、この世には」

「私が見てる世界にはあるわ」

 

 やっぱり、別の世界を見ているのか。

 僕が見るこの世界とは何かレベルが違う世界を。

 前世の時から変わらず、その瞳はずっとその世界を見つめている。

 

 前世の時から変わらず、君はずっと勝利至上主義だ。

 

「……変わらないなあ」

「変わったわよ。勝つためなら、負けを受け入れる覚悟はできる私になったわ」

「負けず嫌いなところは変わってないけど?」

「そこだけは変えられないのよ。それが、それこそがアーモンドアイなのだから」

 

 やっぱりこの手の話で彼女を諦めさせることはできない。

 このまま話を続けていけば、そのうち土下座でもして契約を結ぼうとしてくるだろう。

 

「伝わらないなら、土下座というものをするべきかしら? 人間の謝罪のポーズだったわよね」

 

 ほら来た。

 

 ……実際のところ、彼女を避けているのは単純に、僕の心にある恐怖感だ。

 

 彼女の持つ、天性の眼差し。

 ありとあらゆるものを見通すような、透き通った蒼空色の瞳。

 それで馬時代には突き刺さるように睨まれたことを、今でも引きずっている僕がいる。

 

 走ること自体はトラウマではないが……彼女の瞳はトラウマだった。

 

 だから、それだけなのだ。

 それ以外は問題ないのだ。

 

 僕の理想に合う、合いすぎる。ジャストミートと言ってもいい。

 彼女が勝てず、僕が勝ったあのジャパンカップを勝たせるように鍛えることは、彼女の性格ならば容易にできるだろう。

 彼女が手に入れられなかった9冠目を、今度こそ手に入れられる。それは不可能ではないのだろう。

 

 そしてオカネも手に入る。

 

 でも……

 

「…………」

「(本当に土下座するべきかしら?)」

「……いや、僕の我儘はこの際、置いておこうか」

 

 トレーナー視点で見れば、彼女は喉から手が出るほど欲しくてたまらない有望株だ。

 それは間違いない。断言できる。

 

「トレーナーとして言おう、君のことをスカウトしたい」

「――ふふっ、その言葉を待っていたわ!」

「でも、でもだ。僕はこの学園に今日就職した新人トレーナー。僕は君をスカウトするより先に、トレーナーとしての実践研修があるんだ」

「そうね。トレーナー規則では、そうなっているわね。ならそれが終われば――」

「ああ。君のトレーナーになることを()()()

「……考える?」

 

 僕は彼女ほど聡明ではない。

 彼女ほど思慮深くも、優秀でも、天才でもない。

 だから彼女を諦めさせる作戦なんて思いつけない。受け入れるより他はない。

 

 なら、せめてこの僕のトラウマを払拭できるようにしなければいけない。

 彼女の瞳を見ても、恐ろしく感じないようにならなければならない。

 

「ほら、僕はこの世界での君に出会って1日も経ってないんだ。まだ早いと思ってるんだよ」

「時は金なり、よ? 手をこまねいていたら、大事なものに届かなくなるわ」

「純粋に、この世界で生きるアーモンドアイを知らないんだよ。せめて知ってからでないと」

 

 そうなるために必要なのは……時間なのだろう。

 彼女の瞳を恐れなくなる時間か、彼女の何かを気に入ることができる時間が必要だった。

 

「頼む」

「……そうね。そういう意味なら、私もちょっと気が逸りすぎたみたいね。今のユグのこと、何も知らないのだもの」

「少なくとも、契約自体は仮で締結しておくし、トレーニングにもアドバイスできるようにしておくよ」

「それは気が利くわね。なら、LANEのアドレスを教えなさい。今のトレーニングメニューを渡してあげるから」

 

 そう言って、アーモンドアイは僕と力強く握手を交わした。

 だいぶ力強かったせいで、右手に痣が付いたのは別の話にしたいこの頃。

 

 

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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