前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
『ラッキーライラック1着! ラッキーライラック、メイクデビューを制しました!』
「やったな! ララ!」
「まあ当然やろな」
今更デビューなんぞに躓いてなんかおられへんし。
次の目標はホープフルステークス。うちの戦いにとって完璧な別世界。
三冠路線のファーストステージ。
中距離自体は走ったことは何遍もあるし、なんならGⅠだって獲っとる。
せやけど、それはアイ曰く女々しいレース……牡牝入り乱れるレースでGⅠを掴み取るのとはわけが違うんやと。
そんなわけあらへんやんか。
乙女の戦場舐めんなや。
昼ドラもドン引きのサスペンス戦場やぞ。*1
というかうちも大阪杯勝っとるわ! もう半分ぐらいあんたと同じ土俵に立っとるっつーの!!
せやから、今生でアイに見せつけるんはうちの漢らしさ勇ましさ。
うちがどれほど速く、幸運で、強いウマ娘なんか見せつけたる!
「気合十分、見事な走りでしたね」
「ん、あなたは誰だっけ?」
「ああすいません。私、ドリームジャーニーと申します」
「おお、聞いてるぞ! ララが憧れてるオルフェーヴルさんのお姉さんだったな!」
なんでおるんー!?
観客席でブーと話しているのは、オルフェさんの姉ドリームジャーニーさん。
つまり、うちの伯父やな。
……記憶を思い出す前にオルフェさんに憧れとったんも納得したわ。
前世のおとんやったらそら納得するわ。
「ララさんのメイクデビュー、ちょうどいいタイミングでしたので観戦させて頂きましたが……トレーナーさんはどちらに?」
「ユ……樹トレーナーなら夏合宿の準備でアイと買い出しに行ってるぞ。この後合宿所に向かう予定なんだ!」*2
「そうでしたか。夏合宿に。少々羨ましいですね。私は今回の夏合宿には参加できそうにありませんので」
「そうなのか?」
「ええ。私のトレーナー……二郎トレーナーからジュニア級のうちに実戦経験を積ませたいとの提案を受けまして、合宿をキャンセルする方針を固めているのですよ」
「……ん? まさかジャーニー先輩、今年デビューなのか?」
「はい。恥ずかしながら、今期にデビューする方針です」
え、マジなん?
ジャーニーさんの前世での勝鞍ってなんやったっけ……?
おとんのは知っとるけど、おじさんのは全然聞いたことあらへんしわからんで。
……それでも、おとんの……あのオルフェさんの姉。まず間違いなく三冠路線に出向くのは間違いないやろなあ。
「聞こえたわ、ジャーニーさん。今年デビューなんやてな」
「ええ。確か、ララさんはトリプルティアラだとお聞きしていますが」
「悪いけど路線は変更しとる、三冠を目指すことにしたんやわあ」
「――それはそれは、なるほど。何かしら、強い決断をされたのですね」
「ジャーニーさんは三冠に挑むんやったっけ?」
「ええ。いずれそうなるとは思っていましたが……思っていた以上に早く戦うことになりそうですね」
「せやなあ。……まあ、まだ半年以上時間があるけどこれだけは言うとくわ。――うちが勝つで」
「……ふふっ、ええ。望むところです。――良い旅を」
「それで、ユグはんはどこに行ったんや?」
「あれれ? ライブは見ていたはずだけど……?」
「さっきたづなさんに呼ばれてどっか行っちゃったわ」
いけずやなあ。
せっかく今後のスケジュールについて話そか思うとったのに……
「あんたら、樹さんの担当ウマ娘か?」
「誰だ?」
うちらに話しかけてきたのは栗毛のウマ娘だった。
妙に飄々とした感じのする、奇妙な雰囲気を醸し出している。
まるでここにいるのにここにいないかのような、不思議な気配。
ブーの風とは違う、まるで木枯らしのような雰囲気。
「おおっと、驚かせるつもりは無かったが……ゼンザイスポーツクラブのOGってやつだ」
「ゼンザイって……樹トレーナーの?」
「ああ。善財グループが設立した、全くもって無名のスポーツジムさ」
確か、ユグのふるさとは今スポーツジムとして同じ冠名のウマ娘が集っとるって聞いたな。
……あんた、ユグの先輩やったりするん?
言われてみたら、ほんのりとユグの面影がある毛色をしとるっちゅうかなんちゅうか……親戚なんやろか。前世での。
「樹さんにはトレーナー業の合間を縫っていろいろとスポーツクラブの方にも協力してくれててな、後輩たちからの感謝を伝えようとこうして駆けてみたんだが……ちょいと席を外してたか」
「そうやったんか?」
「言われてみれば、トレーナー室の資料、私たちだけじゃ収まらない量だったような……?」
「それでもだいぶとんでもない量だったぞ……?」*3
「昔からそういう奴なんだ。誰かのためを思えばしっかりと手間をかける。そうして、出来の良いものを用意するんだ」
栗毛のウマ娘は苦笑する。
この世界でユグの、樹の趣味は工作……いわゆるDIYやった。
トレーナー室のトロフィー用の棚、ソファの骨組み、果てには簡易的なトレーニング器具まで作ってる。
プラモなんか作らしたら高級品に早変わりしたわ。ネットで3倍以上の価格で落札されてえらいビビったさかい。
やすり掛けも塗装もきちんとやるそのかなりの手際にうちらも息を呑んだわ。
アイが弟子入りを懇願するほど言うたらそのレベル分かるやろうな。
ユグのDIY精神は、トレーナー業にも反映されとった。
アイも満足するレベルにデータを集めて、未翻訳の最新の論文にまで目を通して、うちらに最も効率のいいトレーニングを用意する。
レース前の出走ウマ娘たちのデータ集めも余念がない。集めに集めて、大事なところだけを抜粋しとった。それでいてその大事なところがほんまに大事やったりするから驚きや。
うちらのデータ集めだけでもかなりしんどいやろに、うちら以外のウマ娘のサポートもしとったんか。
ほんにかなわんなあ。
「本当に、うちらの助けになっとるよ。樹トレーナーはんは」
「そうか。それなら良かった。あいつは根っこからお兄ちゃん気質なんだ。頼られれば頼られるだけ、きっちり成果を返してくれる。妹ちゃんのお墨付きだぜ?」
「よく知ってるんだな、トレーナーのこと!」
「そりゃあもう――なんて、虫の良いことは言えねえな。
「どういう……?」
瞬間、かなり強い風が吹く。
うちらが目を開けていられないような、かなりの突風。
その中で、栗毛のウマ娘は腰のホルダーから、三枚のカードを取り出した。
「それ……トランプかいな!? なんでや!?」
「俺のアイデンティティだからな。――あんたら、ユグのことはどう思ってる?」
風の音がやかましい。
それでも、あのウマ娘は何か重要なことを言っとる。
こいつ、ユグって言いよった。ユグのことを思い出しとる。
7のカードを3枚手元に取り出し、そのウマ娘は生意気そうに笑みを見せる。
「あんまり深い理由はねえよ。ただ……あいつはお兄ちゃんであろうとしたから鈍感なところが生まれちまったらしくってな」
「あー……」
「せやなあ……」
「そうなの?」
「わからなくともいずれ分かる。あいつの鈍さは
「――あんた、まさか」
また突風が吹く。
冷たい風、この真夏直前に似合わんような風。
その中で、あのウマ娘の声は鮮明に響く。
「――乙女心も読み取れないような奴だけど、俺の自慢の末っ子だ。かわいくて、強くて、俺たちの先駆けになった、自慢の息子だ」
「お前、ユグの……!」
「息子を、よろしくな――」
「待っ――っ」
その言葉のすぐ後に、風は止んで――そのウマ娘も消えとった。
まるで最初からそこにはおらんかったかのように。けど確かにいたことを示す、三枚の7カードを散らばらせて。
「…………あのウマ娘が、ユグの親……」
「おぉーいっ!」
「あっ、ユグ。何してたのよ」
「合宿でいくつか頼まれごとをされて…………みんな、どうかした? なんか不思議なものを見たって感じだけど」
「いや……ユグ、ジブンの親について、何か知っとるんか?」
「親? 前世の?」
「ちょっと気になっちゃって。いいでしょ?」
「ブーも知りたいぞ!」
「まあ別にいいけど……そんなに面白い話ではないよ?」
「いいからいいから」
そして、ユグはジブンの親についてを帰り道でうちらに話した。
いつもと変わらない口調やったけど、少しずつ、昔を思い出してきたのか弾んだような声色をしながら。
「――えーっ!? 生まれた時には父さんはもういなかったの!?」
「うん。僕が生まれる数か月前に病気でね」
「だから末っ子って言うとったんか……その、おとんの名前ってなんや? 知っとるか?」
「母さんから聞いてるよ。マネースリーセブン。幸運の、3つの7カードって」
「ちなみにお母さんの名前は何なんだ?」
「母さんは……マネーアップル、だったかな? 楽園の果実からとってるって」
「……なるほどね。あなたはゼンザイにとっての幸運の果実だったのね。私が負けた理由の1つを知れた気がするわ」
「そんな大それたものじゃないと思うんだけどなあ……名前に戦績が負けてる気もするし」
「GⅠ3つも勝ってるのに?」
「さすがにアイがおれば霞むやろ」
「それもそっか!」*4
「……」*5
熱を帯びた夕日と共に、うちらは帰路につく。
そして、夏合宿が始まる。
アルティメットシャイニングサバイブブラスターキングウマ娘のアイは、秋華賞に備えて。
無名のうちは、ホープフルステークスに備えての合宿や!
気合入れてくでー!!
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他