前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
まだ初投稿から3日足らずで……すごく嬉しいです!
今後も精進していきますので、よろしくお願いします!
――最初に出会ったのは、天皇賞・秋でのことだった。
「あーっ、ユグ! また会えたー!」
「ブー、久しぶり。元気してた?」
「うん!」
3歳時代を共に走った友馬もいれば、見知らぬ馬も増えていく。
少しずつ、少しずつ、僕たちの戦いが1つずつ、終わりに向かっている気がしていた。
「マネーユグドラシルさん、お久しぶりです」
「君は……クロノジェネシス、だったっけ」
「はい。前回は惜しくも敗れました。ですが、今日この時は負けません」
「――うん。期待してる」
新たなライバル、新たな戦場。
新しい時代の到来を感じ始めていた。
そしてそれは、視線と言う形で強く感じ取れた。
「――あなたが、マネーユグドラシルね?」
「……君、は……」
「アーモンドアイよ。――あなたは、強い雄馬なのかしら?」
その日、僕は生まれて初めて『恐怖』を感じた。
後から解ったことだが、あの時代は牝馬がとても強い時代だったのだとか。
確かに思えば、3歳を過ぎたあたりから強い牝馬に出会うことが多かった。
タカラヅカでも、キョウトキネンでも、ここでも……そして、ジャパンカップでも。
そしてそんな中で安定した戦績をしていた僕は――彼女たちに目をつけられていたのだと。
それに気が付いたのは、総てが終わった後だった。
「ねえっ、大丈夫かトレーナーさん?」
「――……あ、ああ。ごめんね、急にぼーっとしちゃって」
たまにあるのだ。
前世の出来事を一瞬の内に思い出すことが。
ウマ娘と触れ合うと低めの確率で起きるのだが……今回ばかりは原因がはっきりしていた。
「ううん、それなら良かった! でもでも、本当に問題とか無かったりしない?」
「ああ。ちょっと寝不足だっただけだよ」
「なるほど! でも、寝不足なんてしちゃだめだぞ! 元気でいられなくなるんだからな!」
元気に体をグワッと動かしながらアピールするウマ娘。
大きな体躯をしながら人懐っこい性格をしているその姿に、見覚えがあった。
「あっそうだ! さっきトレーナーさん、私のことブーって呼んでたでしょ? でも私、あなたのこと覚えてなくって……いつか会ってたっけ?」
「いや……ただ単にブラストワンピースの名前のブから先が出てこなかっただけだよ」
ブラストワンピース。
僕と同じ時代、同じ場所を共に走った馬にして――今はウマ娘、か。
アーモンドアイもそうだったが、彼もウマ娘になっても印象は変わっていなかった。
一目見ただけで解ってしまうのは今後ウマ娘と関わる際にこういった弊害を招く可能性があるのかと内心反省しているが……それとこれとは話は別だ。
ブラストワンピースのことをブーと言って詰まってしまったのは、記憶のフラッシュバックもあったが――何より、純粋に驚いてしまったからだ。
「そっかー! それならブーの勘違いってことか! ごめんなさーい!」
「いいよ、誰も迷惑してないからね。僕もごめんね、名前、すぐに出てこなかった」
「いいよ! これでおあいこだな!」
「ああ。……」
巨大な体躯に似合うように、大きなものが胸にくっついていた。
その姿はブラストワンピースが『彼』ではなく『彼女』になっていたということを明確に表して……僕の頭を混乱させた。
前世の世界での僕とブーとは人間的に言うならば――裸で走りあった間柄ではあるのだ。時たまに、誰かの
そんな彼が、『彼女』になっていたというのは……女の子らしくなっていたと言うのは……覚悟こそしてきてはいたのだが、認識がおかしくなるのは当然ではないだろうか。
それが結果として記憶のフラッシュバックに至ったのだろう。
「改めて、僕の名前は善財樹だ。数日前にここに来た新人トレーナーなんだ」
「ブーはブラストワンピース! 長いからブーちゃんって気軽に言っていいからな!」
「ああ……」
「まあ、勝てないよなあ。上手くいったと思ったんだけど」
「ちくしょー! ごめんなイケゾノー! 勝てなかったよー!」
「君、僕の前にいたよね? いい走りだったよ。追い抜けなかったぐらいにはね」
「えーっ! 褒めてくれるの!? 嬉しい! ぼく、ブラストワンピースって言うんだ! 長いからブーって呼んで!」
「うん、わかったよ、ブー」
「……よろしくね、ブーちゃん」
「うん!」
やっぱり、ウマ娘も馬も、変わらない。
君がそうであるように、彼女がそうであるように。
記憶のあるなしに関わらず、変わることはないのだろう。これは、絶対に。
「何してるのよユグ」
「っ、ここでは善財樹トレーナーだぞっ」
「あ、そうだったわね」
感慨に軽く浸っていた僕の後ろから何気なくひょっこりと現れたアーモンドアイはスッと話を戻す。
あまり僕の正体を隠そうとしてくれるつもりはなさそうなのは勘弁してもらいたい。
「お、アイ! 樹トレーナーのこと知ってるの?」
「ええ、なんてったって、私のトレーナーになる人なのよ」
「ええ~っ!!? それ本当!?」
ブーは尻尾をピンと、洗濯物のしわを伸ばすようにまっすぐに伸ばして驚いた。
このグラウンドでトレーニングを行っている周りのウマ娘たちも気になって、こちらの様子を確認し始める。
「まだ考えている段階だよな」
「私は確定済みなのよ?」
「新人トレーナーだよ!? アイ、ずっと経験豊富で優秀なトレーナーの下につきたいって言ってたけど、いいの!?」
「ええ。彼なら大丈夫よ。なんていったって、
「ねえ、あのトレーナー……」
「アーモンドアイのトレーナーって言ったわよね!?」
「見たことがない人……新人って言ってたかしら」
「新人トレーナーがアイちゃんの担当に!? どないなっとんねんこれ! うちのデータにはあらへんでそないな!」
まずい、少々注目を集めすぎている。
アーモンドアイもブーとの会話に集中している様子で、僕の研修の時間も近づいてきている、いったん僕はここから引いた方がいいだろう。
二人の会話を背に、僕はそそくさとその場から離れる。
それにしても……人気だな、アーモンドアイ。
学校のデータを確認したが、学生としての成績は最高ランクで、テストは毎度のように100点を叩き出していた。
文武両道で才色兼備。
超優等生、と言うことだろう。最も彼女なら超を頭に九つほど付けそうではあるが。
「勉強も勝負だと思ってるんだろうな」
「ええ、その通りよ」
「――ブーとの話はどうした」
「切り上げてきたわ。勝手に離れるなんてひどいわね」
「友達と仲良くお話しする時間をあげたっていう答えじゃダメか?」
「そんなに気を使わなくてもいいのに。友達でしょう?」
「前世のだよ。今生のじゃない」
少なくとも、友達のブラストワンピースは前世にしかいない。
ウマ娘のブラストワンピースとは、そっくりで別の存在だと認識している。
雰囲気も、口調も、走り方も同じ。でも、覚えていないのだから。
「何度でもやり直せばいいじゃない。そういうものでしょ?」
「そう簡単にできるものじゃないよ。――どうも僕は、前世と折り合いをうまくつけれていないみたいだからね」
さっきみたいに不意に記憶がフラッシュバックする可能性があったりするのは、前世のことにきっちりケジメをつけきれて無いからだ。
そのせいで不思議に思われるなら、いっそのこと……なんて、そう上手くはいかないのは解っているつもりではあるんだけど。
「それは私だってそうよ」
「君が? まさか」
「リスグラシューやグランアレグリア……私が負けた馬たちと出会ったときに再戦を希望したのよ。まだこの世界では出会ってもいなかったのにね」
「ああ、納得」
「割り切れないのは当然よ。私たちのように覚えていないなんて、そんなの意地悪だものね。でもそれが、この世界で関係を作り直さない理由にはならないのよ」
言いたいことはわかるし、納得できる。
その瞳は真理をついている。
ずるいぐらいに正しくてぐうの音も出ない。
「……そうだね。また1から、始めるのは当然だものね」
「ええ」
「見つけたー! 樹トレーナーさーん!」
「あら、どうしたのブーちゃん」
「樹トレーナーって新人だったでしょ? なら、この学園のいろんなところを案内してあげようと思って!」
「……そうか、なら研修後でいいならお願いしようかな。よろしく、ブー」
「うん!」
「……ふふっ」
――なるほど。
これは確かに、優等生だ。
「それと、ブーちゃんと出会ったときにびっくりしてたでしょ? わかるわ、その気持ち」
「え?」
「前世だと雄だった馬たちがみんな女の子になってるんだもの、お胸までおっきくさせて。それがなんだか面白おかしくって、ね。たまに笑いそうになることがあるわ。ユグが混乱したのはだいたいそんなところだったんでしょう? ブーちゃんの発育、すごいものね」
「……そう、だね」
「?」
――そこに鋭いのも、優等生ならではなのだろうか。
そこを突かれたのが恥ずかしくって、顔が赤くなるのを感じながら、研修場所へと向かっていったのだった。
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他