前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
ジャパンカップも近づいて来たこの頃。
エリザベス女王杯をエアグルーヴ、マイルチャンピオンシップをニシノフラワーがそれぞれ勝ったことで世間ではこの世代がアーモンドアイ一強ではないのだと彼女たちの強さを再度認識していた。
「私がライバルとして見ている彼女たちがそう弱い訳ないでしょ?」
「そらそうやけど、やっぱし負け続きって言うんは印象悪目になるさかい、一般人の強さの指標になるうってつけのものはどないしても勝利やからなあ」
「むう……」
同世代の活躍で盛り上がりを見せ始めた中トゥインクル・シリーズで大人気の話題はもちろん巷で噂のトリプルティアラウマ娘、アイの目標であるジャパンカップだ。
このGⅠは海外との交流レースであり、海外のウマ娘が数人出走することができる。
前世でもドバイほどではないが何やら雰囲気やら口調やら訛りが違う馬が多く見受けられたレースであり、その様相はまさに日本を代表するレースと言って差し支えないものになる。
海外からも強豪がやってくるこのレースを征するのは誰か。
そして、日本一のウマ娘を名乗るのは誰かを決める、世界と日本の大一番。
「海外かあ……」
「そういえばユグはドバイに行ってたんだよね」
「そうだったの? ユグも行ってたのね」
「うん、まあ、そうだね」
「どないな感じやったんや? やっぱし海外は手ごわいんか?」
海外、かあ。
二回ほどあのドバイに行ったことがあるけど、あそこのセレブな雰囲気には慣れなかったなあ。
「惜しかったレースが一回、クロノさんとラヴズさんとのたたき合いに巻き込まれて勝てなかったのが一回だね」
「クロノちゃんたちと行っとったんか」
「なあなあ、その惜しかったレースってのはどんな感じだったんだ? 前世では海外でのお話はあんまりしてくれなかったからブー気になるぞ!」
「そうだなあ……」
「What? Did I win!? It's UNABLE believing!」
「負けたぁ~、やっぱりきついよ~」
「Hey You!」
「はい?」
「What name!? Why I had win!!?」
「なんでって……最後ギリギリで追い抜かせたからじゃないの?」*1
「Unbelieve-able…… is your name?」
「あ、マネーユグドラシルだけど」
「Money Yggdrasil……I am UNABLE to forget about you!!」
「はい???」
「Never forget, I'm──」
「最後10メートルで追い抜かれて負けたっけなあ」
「10メートルって、割と接戦やったんやなあ。……その相手って誰やったん?」
「そうだなあ。当時の海外の最強女帝、とかそういう言われ方をしてたような気が……」
「まるでアイみたいな呼ばれ方されとる奴やなあ」
「(……海外の最強女帝? あれ、僕、どこかでその言葉を聞いたような気が……)」
それが割と結構悔しくって、後々になって響いて来たんだっけ。
とはいえ僕のような血統の馬にしてはよくやった方だと思ってたし、そこまで引きずってたわけではなかったんだけど。
むしろ人間たちの方が引きずってたような気がするなあ。
ハヤトとか「10メートル耐えればお前の勝ちだったのになあ」ってずっと悲しんでたし。
社長も悲しんじゃって申し訳なくなったし。
ふるさとに来る人間たちもあのレースは忘れられないって話題にしてたっけ。
「……ちなみにそれっていつの話なの?」
「えーっと……アイと戦った年だったっけ」
「私がドバイに行った次の年じゃない。……どうして私はその年ドバイに行かなかったのかしら?」
「その年はなんかいろいろ海外も慌ただしくって一頭しか連れていけないとかそういう話だったって聞いてるよ。そこに社長が僕を送り込んでほしいって押し切ったって聞いたなあ」
「あんたの社長そんなに融通利かせられるほど顔が広かったんかいな?」
「あのふるさとのことを考えると……広かったのはレースの関係者というより海外に、かなあ? 海外レースで活躍させたいって海外の人たちに言ってて、気が付いた時には僕の活躍をこの目で見ようと海外の人間が僕をドバイへって推すようになっていたみたいで……」
「その時宝塚記念に勝ったばかりやろ? なしてそないに猛プッシュしとるんやおたくの社長はん……」
「社長の後悔がすごいことになってたみたいでね……」
宝塚記念を勝った後、ふるさとでリラックスしていた時に起きた
とはいえふるさとのおうちはあの頃にはもうすでにボロボロだったし、いつ来てもおかしくない事故だったからなあ。
それがちょうど僕に被さっただけで。
「……そういえばユグ、あなたと出会ったときお尻に鞭痕には見えないような変に目立つ傷跡があったように見えたんだけど」
「あ、やっぱり見えてたんだなあ。ハヤトはまるで木みたいな傷って言ってたけどそんなに目立ってたの?」
「……まさか、ユグが宝塚の後に半年間お休みしてたのって──」
「おっと、そこから先はご想像にお任せする──ってことでいいかな?」
あれはできることなら身内以外には話したくないお話だし。
社長のあそこまで悲しみに溢れた顔を思い出すのもきついし、正直思い出したくはない出来事なのだ。
あの事故は本当に誰も悪くない事故なのだが、当事者であり被害者である僕が話すとまるで社長が悪い人みたいに聞こえてしまいかねなくなってしまう。
社長をこれ以上傷つけるつもりは僕には本当にないのだ。
なので、これは僕から話すのは──とりあえず今は一旦お預け、ということで。
いつか、良い感じに笑い話にして話せる時が来るといいなあ。ダメかなあ。
「……まあいいわ。昔話もそろそろお開きにして、ジャパンカップの対策の話をしたくなってきたところだったし」
「ジャパンカップかあ。割と強いところは揃っているとはいえ、アイが宝塚記念で勝ったメンバーばかりだし、海外からの挑戦者もGⅠを勝っているとはいえ戦績もいい感じとは言えないし、日本の柔らかな芝に対応できるとも考えにくい。まあ用心はしておくべきだろうけど」
「やっぱし一番のライバルはグラスはんになるんとちゃうか? 宝塚でもええ叩き合いに化けとったやろ」
「とは言え、最近はグラスワンダーよりも勢いづいてきているウマ娘がいるから、そっちをマークしておくべきかもしれないね」
「それって、秋の天皇賞を勝った──」
「お、アタシの話でもしてんのか?」
ドアの向こう側からでも聞こえるほどのはつらつとした声色を発しながら、僕たちのチーム部屋に堂々と大胆に突入して来たのは話題のゴールドシップ。
天皇賞秋でグラスワンダーを打ち破った、破天荒な戦艦ウマ娘だ。
「ノックぐらいしてくれないかしら」
「ぶぶ漬けでもいかがどすか?」
「えー、いいじゃんアタシとお前らとの間に隠すほどのもんは何もないだろ? ──いや、まさかトレーナーとの禁断関係!? なーんてことあるわけないだろー、ゴルゴルセンサーもそういってたし」
「……///」
「……///」
「……え、嘘だろ? まだ未成年だぞ? スキャンダル間違いなしだってこれどうすんだよ」
「誤解だーっ!」
少なくとも今生は未遂だ!!!*2
と言うか、このゴールドシップというウマ娘、何かと勘が鋭いような気がするのだ。
それも僕たちがまるで前世からの間柄だったことを知っているかのような奇妙な態度、対応をことあるごとに僕たちに行って来ている。
ララ曰く「ごめんな、血筋なのかもしれへんわ」とのことらしい。なんでもララの祖父と彼女の父とが同じ馬らしい。
いったいどんな馬だったんだろう?
まあそんな話は置いといて。
「それよりさ! ゴルシちゃんからお前らに良いプレゼントがあるんだぜー?」
「プレゼント? なんだなんだ?」
「ほらよ、ゴルシちゃん特性カヌレー!!」
「わーっ、美味しそうだなー!」
「へへっ、ゴルシちゃん16年分の努力の集大成だぜ。たんとお食べな!」
「作ったんかこれ!? えらいようできとんなあ……」
そう言って、ゴールドシップは部屋のテーブルの上に外側に溝のついたお菓子が乗っけられた皿を置く。
かなり出来がいいし、まぶされたニンジンの粒と練りこまれているであろうはちみーの香りが見ているだけでもいい風格を見せている。
しかし、わざわざこれを見せるためだけにここに訪れたのだろうか。
「だがまあ、このカヌレ実はまだ未完成でよお。まだまだ本場の味とは物理的に遠く離れてんだわ」
「えーっ、こんなにおいしそうなのにまだ完成してないのか!?」
「ああ、この味はアタシたちの故郷ゴルゴル大陸にはない新感覚! ゴルシちゃんはこのレプリカヌレをマジカヌレにさせるために新大陸の調味料を探しに行く準備をしてるんだぜ?」
「……カヌレ、確かパリのスイーツね。ゴールドシップ先輩、まさかだとは思うけど……私に勝って、凱旋門賞への切符を手に入れたいっていうつもりかしら?」
「──へへっ、タダ同然で切符を手に入れるなら新世界でお宝掘り起こすのが手っ取り早いと思ってな」
そういうことか。
確かに、この世代で最強と名高いアーモンドアイを倒したウマ娘ともなればその名声は留まることを知らずに、それこそ凱旋門賞だって軽々余裕で挑むことができるだろう。
つまりこのカフレは、ジャパンカップでアイを倒すという意思表示、挑戦状みたいなものか……
カヌレの美味しそうな気配すらも凍るかのような張り詰めた緊張感が、部屋を覆う。
アイは余裕を見せつけるかのように、ふふんと笑みを浮かべる。
「ゴールドシップ先輩に、私の新世界を超えられるのかしら?」
「ゴルシちゃんは夏にサーフィンとカワハギ釣りやったからな! 荒波なんてお茶の子さいさいだぜ? カジキのように新大陸へバビューンッってすっ飛びてーんだよ。 そのためにはマグロみてーなでけー魚拓が必要なわけでよー。なあ、解るだろ?」
「ふふっ、私に
「おーともよ! あ、そのカヌレ食べていーぜ、未完成とは言え美味しく作ったからよー!」
「ゴル゛シ゛さ゛ん゛ッッ! また他所のチームに迷惑をかけて……許゛さ゛ん゛ッッッ!!」
「おっやべっ、そんじゃーなー!」
「逃がすかッッ!! 確保ォーッッッ!!!」
そう言って、ゴールドシップは大声と共にやってきた警察官の装いをしたウマ娘に追いかけられる形で部屋を去っていくのだった。
「……ゴールドシップ先輩、凱旋門賞に挑む予定なんだ」
「えらい度胸やなぁ。アイに宣戦布告するなんて」
「でも、悪くはないわ。マークの対象が自らやって来たんだから。相当自信ありなのね」
そう言って、アイはカヌレを一口食べる。
つられるように僕たちもカヌレを食べる。
やはりというかなんというか、美味しい。
変人、奇人の類ではあるのだが……彼女のやること成すこと、その一切に妥協はないとララからは聞いている。
奇行の数々は必ず宣言したとおりに行われる*3。その実行力は油断できない部分だろう。
それを感じられる確りとした奥の深い味わいを感じさせる。
アイに宣戦布告してきたということは、レースの技術も宝塚記念の時よりも万全な状態になっているのだろう。それこそ、アイに勝てると確信できるレベルで。
「ユグ、ゴールドシップのデータを」
「はいはい。纏めておくよ」
「ジャパンカップ、新世界が勝つのか黄金の船が勝つのか……勝負よ」
「アイ、なんだかとっても嬉しそうだな!」
「それは当たり前でしょ? 私、今とっても油断してないもの!」
「前世での敗因全て油断と過信やったってマジなんか?」
「マジよ。だからもう油断しないことにしてるのよ。──ユグもいる、みんなもいる。そして敵を知ればもう怖いものは無いわ」
そう言うアイの瞳は更に輝く。
正直に言うと、前世で僕に負けたことでジャパンカップがトラウマになってる(前世ではそんな感じの余生を送っていたらしい)可能性を考えていたけど、杞憂で済みそうだ。
その身体には覇気が十分に漲っており、油断も怠慢もない。
あとは……彼女の走りがどれほど強くなっているのかだな。
もう一度そこを探ってジャパンカップでの作戦を立案しないといけないか。
──アルティメットシャイニングサバイブブラスターキングアームドウマ娘のアーモンドアイは、黄金色の大海広がるジャパンカップへと挑む。
京都弁、盛岡弁よりもゴルシ弁の方がそれっぽくできないバグ。
最後のやつ一回数え間違えていたのは内緒。大人はミスをする生き物なんです……
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他