前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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大きな世界の小さな彼女たち(ニザヴェッリル)

『世界各国の強豪たちが日本に集い、今大激戦を繰り広げます。海外のスターウマ娘か日本の一流ウマ娘か、どちらが真なる栄光を掴むのか今決まります』

「ゴルシさん。見せてください、あなたが……アネゴから何を受け継いだのかを」

『国際GⅠジャパンカップ、いよいよ始まります!』

 

ジャパンカップ 東京レース場 芝2400m 良 17人

1グラスワンダー

10スーパーブライト

2インビンシブルドランク(Invincible Drunk)

11サバンナレディ(Savannah Lady)

3フジキセキ

12シリウスシンボリ

4 ジーニアスインデックス(Genius Index)

13アーモンドアイ

5ウイニングチケット

14モストレス

6タルトゥペンタクル

15ゴールドシップ

7レッドダム(Red Dam)

16ケイオウマグマ

8セイウンスカイ

17プロタゴニストミー

9ドクターラファエロ(Doctor Raffaello)

  

 

『スタートしました! アーモンドアイ、良い走り出しです、セイウンスカイ並んでいます』

「(クソッ、解りきっていたけど今回も逃げか!)」

『人気のトリプルティアラウマ娘アーモンドアイに続いてタルトゥペンタクル、3番フジキセキその後ろ、少し離れてインビンシブルドランク続いています、その外にシリウスシンボリ内からグラスワンダー外を通ってウイニングチケットその外にはサバンナレディ、この辺りで1、2コーナーの中間点を通過!』

 

「今回もアイには逃げを選ばせたんか?」

「アイがそう望んだんだよ。僕の勝った道を体験したい、って」

「まあ、悪くはない選択やったな。おかげでスカイからのマークが外れかけとる」

 

 まあその判断は悪いものではない。

 セイウンスカイのデバフ走法を後方にのみ括り付けられて自身は安全圏で走ることができるならやって損はない。

 それにそのデバフ走法によって海外のウマ娘たちにとって慣れない日本の芝をより難しくしてくれるというのなら勝ちの目も出やすくなるというのは無粋だろうか。

 

スカイはアイへの対策を出せずじまいやと聞いとるからな。これならスカイは後ろにデバフを撒くはずや。勝てずとも入着できる結果は残したいもんなあ……!

「ララ、なんだか怖いぞ……」

「これもまた乙女の戦法やさかい! 日ノ本の力見せたれやアイーっ!!

「乙女ってなんなんだ……?」

 

 特に、今回注目されているドクターラファエロ。

 先行の中団辺りでチャンスを伺っている彼女は海外GⅠを複数勝利している有名なウマ娘。

 真正面からやりあうのもまたレースの醍醐味ではあるが、ララの言う通りにレースの環境――ここでは自らが起こした行動による連鎖反応で戦うこともまたレースで勝つということらしい。

 

『これに続くのがドクターラファエロ、その外からレッドダム、内からはジーニアスインデックス、外にはプロタゴニストミー、ケイオウマグマはその内に続いています』

「(オイオイオイ! 本気で逃げるって言うのかあの女!?)」

「(タカラヅカのデータを見た時はラビットでのマグレ勝ちかと勘繰ったが──そんなこと無いじゃん!?)」

「(アーモンドアイ……向こうでも通用しまくるレベルのウマ娘すぎるぞ、これ……!)」

「(アイちゃんの思惑通りに動くのは癪だけどっ──いーのかなー? そんなに呆気にとられていてー?)」

「(Holy Crap!!?)」

「(De-Buff Style!? Japanにも存在したの!!?)」

 

 日本にやって来た彼女たちにとって、ジャパンカップが初戦だ。

 慣れない日本の芝の質感は拵えてきた技術力でカバーできるとしても、先頭を意気揚々と駆けるアーモンドアイにペースを崩されてしまっていた。

 

 海外レースで見られるラビットというペースメイカーとは訳が違う。

 誰かのためにペースを作っているわけではない、自分だけの走り。

 自分だけのペースを作るラビットという故郷では見たことのないレーススタイルに翻弄され、ついにはセイウンスカイのデバフ走法をまともに受けてしまう始末。

 

 それでも彼女たちは海外の強豪。

 GⅠを勝ったこともある名ウマ娘たちなのだと、自らの品格を落とさぬようにターフを走り抜けていく。

 その表情には、レース前に浮かべていた余裕など1つもないことに気が付かないまま。

 

『その外にタルトゥペンタクル、内を通ってスーパーブライト、最後方にゴールドシップ。先頭から後方までおよそ10バ身! ここまでほぼ平均ペースで進んでいます!』

『1000メートルを通過しました、各ウマ娘淀みなくターフを駆けていきます』

 

「アイ、行けるぞ……」

 

 この逃げに、樹トレーナーは1つだけ懸念事項があった。

 それは使える領域が限定されてしまう点だ。

 差しならばフサイチパンドラの領域から改良を加えた先行用の領域へと流れるように決められるが、最初から逃げとなるとそう上手くはいかない。

 

 あの世界樹の領域1つでここからスパートをかけるウマ娘たちに立ち向かう必要がある。

 

 信じてはいる、それでもと思ってしまう部分はある。

 そこをグッと飲み込んで、信じる。

 僕たちは、そう信じられた身だからこそ、今僕自身をそこに映して走る彼女を信じている。

 

「大丈夫だぞ、ユグ」

「ブー」

「だって、ユグの領域をアイが使うんだろ? なら勝てるぞ! 最強だ!」

「──うん、そうだな!」

 

 樹トレーナーは、マネーユグドラシルはアーモンドアイをジッと見つめる。

 彼女が創り出す新世界を、見逃さないために。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(──なるほど、ユグはこんな道を走っていたのね)」

 

 ウマ娘たちの先頭を走るアーモンドアイの瞳の先には、いつぞやと同じように栗毛の何かがいた。

 今度は以前よりも近く、すぐそばに。

 それでも遠いと思わせるように、その背中をアイに見せつける。

 

 そして、その背中にアイは追いつけない。

 突き放されている感覚とは真逆。むしろその姿を見ていたいと希うかのような、憧れに近い思いによって、アイはその背中に追いつけなかった。

 

「(……感じるわ。世界各国から集った強者たちの気配)」

 

 イギリスの強者、ドイツの強者、フランスの強者。

 アイルランドの強者、アメリカの強者。

 だれもが地元では猛威を振るった戦士。

 あるいは屈辱を知った戦士、それでもなおと足掻く戦士だ。

 

 そこに日本と海外との優劣は存在しない。

 日本の戦士も、海外の戦士も皆が皆ターフに立てば同じ戦士なのだから。

 

「(そして、とびきりの刃を見せようとする気配も)」

「(……へへっ)」

「(ユグは、この世界を走っていたのね)」

 

 ウマ娘の中でも、逃げの走りをするウマ娘は他のウマ娘とは違う景色になる。

 前方に誰もいない孤独感。

 周りに合わせられないが故のペースの乱れ。

 そして──背後から来る強烈な気迫の猛追。

 結果として大逃げ、過激な大逃亡になる可能性は否定できない。

 

 しかし、それらを克服できたならば。

 そこに見えるのは……圧倒的なまでの新境地。

 自分だけのペースを刻み、自分だけの速度で走る。

 誰にも邪魔されることは無い。

 後方を気にする心配はない。

 目先の栄光を見据えられる。

 

「(気にしないまま、走れる世界。それが逃げ……)」

 

 それが、彼の走った世界。

 それが、目の前にいる彼が走る世界なのだろう。

 

「(もう油断はしない、過信はこの身に無い。あるのはただ一心、勝ちたいという思いのみ)」

「…………」

 

 栗毛の幻影は静かに走る。

 足音があるようでない、その幻影は静かに前方を走りゆく。

 

 もうすぐ最終コーナーを抜ける。

 

「(私は──みんなと、勝ちたいのよ。あなたも含めた、みんなと)」

「…………」

「(それができて、ようやく私は最後の過信に打ち克てる。あなたに、負けない私になれるわ)」

「…………」

「(だから──一緒に、勝ちましょう? ……ユグ)」

「………………」

 

 「勝てなくなる相手に、共闘宣言するのか」……幻影は、そう言いたげに溜息を吐いたような気がした。

 当然の文句だろう。何を好き好んでこれから先私には勝てないわと言ってくる女と協力しなければいけないのか。

 幻影は思う、この女ひょっとしなくても口説きスキルが低いんじゃないか、と。

 そういえば前世で天皇賞以降に再会したときにも似た態度っていうか雰囲気だったような。そう幻影は思う。

 

「………………」

「アイ、行けぇぇっ!!!」

「……ぶるぅ」

 

 それでも、まあ。

 本物(むこう)の僕が認めているなら自分は退くしかないでしょう。

 

 そう言わんとする態度で、幻影は加速し始める。

 それに乗せられるように、アイは追い風を受ける。

 

 否、背中から押されるかのように猛成長する巨大な樹に、乗せられるかのように走らされている。

 

「………………!」

「──は、あははっ!」

 

 思わず笑い声が漏れてしまうほどの痛快さ。

 これ以上ないほどの愉快さ。

 アイの気分はまさにジョッキー同然だった。

 まさか領域に動かされるだなんて、そしてそれがこんなにも心地よいだなんて、とアイはユグの背中の遠さと力強さを体感しながら、スパートをかけ始める。

 

「(行ってくるわ、ララ、ブー……ユグ。──これが、あなたの世界樹よ!!!)」

 

 マネーユグドラシルの領域、世界樹の領域

 肝心の彼本人ですら気が付かないほど神秘と驚異に満ちた領域。

 連綿と受け継いだ思いが連なり、重なり、築き芽生えた夢想の大樹。

 

 その思いの道管を流れる力強さを脚と背とに迸らせながら、彼の背に乗せられているかのような爽快さを胸に。

 

 笑みを浮かべながらアーモンドアイはスパートを駆ける。

 かつて成し遂げられなかった栄光を、今こそこの手に。

 そしてあの頃とは違い、彼と共に、栄光目掛け、進む。

 

 世界樹が他のウマ娘たちの視界と足取りを防ぎながらもアーモンドアイは悠々と最終直線を駆け抜ける。

 

『さあいよいよ最後の直線! 一番前にはアーモンドアイ3バ身を超えるリード、差は開いていくか──おおっとぉ!? ゴールドシップが抜け出している!!!』

 

 しかし、そう何度も同じ手は通用しない。

 荒波を克服してこその船乗り、それを証明するかのようにゴールドシップが世界樹の領域を搔い潜り――否、金色の波で跳ね除けて接近していた。

 

「(来たわね!)」

「(レ~ッツ、ツリーサーフィーンタ~イム!! ゴルシちゃんの~ギガ・お宝さがし・de・ニュ~ワールドクルージ~ング!!!)」

「(What the──!?)」

「(No pond, no swamp, no lake──A Gold Ocean!!?)」

「(知り得ちまえ アネゴの舵輪 ゴルシさま──を、なァ!)」

 

 ウマ娘たちは見た。

 自らの走るターフが金色の波に飲まれていくその瞬間を。

 

 そして背後からまるで大帆船が迫り来るかのように、触れれば転覆は避けられない威圧感と、そのド派手な加速力を感じた。

 その迫力に圧倒されているうちに波は引き……気が付けば、ゴールドシップはアイを追い越しそうなほど近くへと到達していた。

 

 奇想天外、ゴールドシップの見せる2つ目の領域だった。

 

「あれって──」

「ダブルゾーン、ゴールドシップは手に入れていたのか!」

「負けんなやぁアイ!!」

 

「──それが、アネゴから受け継いだあなただけの黄金の走りなのですね。……ゴールドシップさん」

 

『ゴールドシップ抜き去るか!!? アーモンドアイの意地が勝つか!!? 勝負は2人に持ち込まれたか!!!』

「(Bullshit!! I'm the one who wins!!!)」

 

「(──そうすればいいのね、ユグ!)」

「…………勝つぞ

「(──ええ!)」

 

 金色の大海が、世界樹を飲み込み輝くか。

 世界樹の雄大さが、大海を塞き止めるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーモンドアイだ、僅かにわずかにアーモンドアイだ!!! アーモンドアイ体勢有利だ!!! アーモンドアイ勝利!!!

 

っだああああああああぁっ、負けた~~~ッッ!!

「ふふっ、勝ったわ!!」

 

 勝負は僅差。

 ハナ差の勝負に持ち込まれ、一瞬は危ういかと思われたその栄光にアーモンドアイは届いたのだった。

 

「ちっくしょ~。──アイちゃんよー、なあんで最後のタイミングであんなカバもチーターも真っ青のぺしゃんこな姿勢でゴールインしちゃうかなあ? 一瞬阿寒湖より肝が冷えたわ!!?」

「あら、そうだったの? ごめんなさいね。──彼がそうした方が良いって教えてくれたから」

「彼があ?? 誰だそれ。お前の彼ピー?」

「……かも、ね?」

「……愛は負けないってやつ?」

「ご想像にお任せするわ」

 

 ほんの僅か8センチ。

 アイが飛び込むかのような前傾姿勢を取らなければ勝てるかどうか危うかったほどの大接戦だった。

 そこに届かせてくれたのは、最後の一押しを手伝ってくれた幻影……もとい、彼に他ならないことをアイは決して忘れないだろう。

 

「(ありがとう、ユグ。一緒にゴールしてくれて、ありがとう)」

「…………ぶるぅ」

「僕ってあんな走りだったんだ……」

「自覚なかったん?」

「うん……」

「言いきっちゃうのかそこ!?」

 

 レース場が大歓声に沸き上がる。

 世界各国からやって来た猛者たちを乗り越えて。

 世界に世界樹の威光を見せつけて。

 

 アーモンドアイ、6冠目をその手に戴いたのだった。

 

『ドクターラファエロは惜しくも3着、アーモンドアイには追いつけませんでしたが、海外の強大さを遺憾なく見せつけてくれました!』

「……クソっ!」

「これが、世界……」

「……なるほど。アイツ(The F○ckin "S")が真っ先に飛びつくわけだ。合点がいったよ」

「……先輩」

「化けるぜ、この国。間違いなく。――じゃオレは今からあのクソサンデーをぶっ潰しに行くから」

「先輩???」

 

「……I finally found you, my love. ──Y()u()g()g()y()

 

 そして――その輝きは、確実に世界を魅せていきながら。

 

 アーモンドアイはクラシック級最後のレースへ。

 7冠目、有馬記念へと挑む。

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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