前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】 作:ゲッテルデメルング
「ご覧ください! トレセン学園の周囲を行進するトラックの数々、その上には今年活躍したウマ娘がいます!」
「Dream Fest前夜祭、楽しんでるか~!!?」
「いえーい!!」
今日はDream Fest前日。
トレセン学園の周囲では翌日に備えて前夜祭が執り行われていた。
ゆっくり鈍行運転するデコトラの上で、ソロライブやトークショーを繰り広げる彼女たちは、Dream Festに出走するしないを置いても今年のトゥインクル・シリーズを盛り上げた大スターたちだ。
「とんでもないなこの規模……」
「これ一台ずつにウマ娘が1人ずつ割り当てられてるのか!? すごいなあ!」
「エッグいモン出してきなはったなあ、スウヰイスーはん」
「そうですね。ここまで大規模なものを準備していただなんて……」
スウヰイスーさんが主催して実現したこの前夜祭は粗こそ多いものの、彼女の目標自体は達成していると言っていい。
トラック一台一台に、ウマ娘の1人1人に注目している観客たちがいるからだ。
「ウイニングライブの欠点……ね」
「確かに言われてみるとそうだよなあとは思うよなあ」
「しかしまあ、URAを責めることなんてできひんわ。レース終了後にここまで盛り上げたら色々と面倒やし、当時の時代だからできとったんやろなあ」
「とは言え、発案者本人が言うのですから、さすがにURAも従わざるを得なかったのでしょうね」
「スウヰイスーさんすごいなあ」
この前夜祭は前座。
本番の本番は来年に持ち越されている。
この前夜祭のように、1人1人がしっかりと輝けるステージを。
それでいて、1人だけではなく、全員が誰一人欠けることなく輝けるライブを。
「だからこそ楽しみだな! 来年の──グランドライブ!」
来年度本格始動するそれに繋がるための、年を跨いだ壮大な前夜祭が執り行われていたのだ。
時は遡り、夏の半ばごろ。
「よぉっし、良い感じね!」
スウヰイスーはダンストレーニングの指導を行っていた。
大女優として培ってきた技術・経験を余すことなくウマ娘たちに教えていくことで、うまく踊れなかったウマ娘たちのダンス技術は格段にレベルアップしていた。
自身のその素晴らしい手腕に惚れ惚れしながらスウヰイスーはウマ娘たちのライブ練習を眺めていく。
一所懸命にダンスの見せ場などでミスを着実に潰したり、ミスを見せ場に作り替えていくそのアドリブ技量に指導の成果を感じていると、不思議と奇妙なことに気が付いた。
「……ん~?」
「ど、どうしましたか?」
「いや……なんだろなあ~? キミさ、何て言うか……メインに立つことに慣れていないのかな?」
「っ、それは──」
「いや違うかな……メインステージに立つことを恐れている……いや、諦めているのかな? 違う?」
スウヰイスーの指摘に黄緑髪のウマ娘は沈黙する。
その沈黙は当たりのようなものだった。
トレーニングしているウマ娘の表情を見ると、他にも同じようにメインステージに立つことを諦めているウマ娘が何人もいるのだとうかがい知れた。
「──踊れないじゃないですか」
暗い表情をした黄緑髪のウマ娘は、ポツリと言葉を零し始める。
「踊れないって、それを何とかするためのトレーニングで」
「何とかしても、僕たちはメインステージに立てないじゃないですかっ!」
「っ、それは──」
「……そうよ。彼女の言う通りだわ」
「練習しても練習しても、結局メインステージなんて勝てたウマ娘専用のステージでしょう?」
「結局、勝てない私たちは万年バックダンサーとしてやっていくしかないのよ」
「キミたち……」
他のウマ娘も同様に愚痴を零し始める。
彼女たちのその様相は、あまりにも疲れ切っていたようにスウヰイスーには見受けられていた。
「……スウヰイスーさん、こんな私たちのダンスのトレーニングを引き受けてくださってありがとうございます」
「キミたちは……そんなに……」
「お願いします、スウヰイスーさん。──私たちに、踊れないダンスのトレーニングをさせないでくれませんか?」
「──」
「なんていうんでしょう、これ。宝の持ち腐れって言うのかな? こんないいダンスを教えてもらっても……披露する場所がどこにもないんじゃ、スウヰイスーさんにも申し訳ないですから」
そう告げるウマ娘の表情はとても悲しかった。
その顔が、その様相が、スウヰイスーの脳を叩く。
スウヰイスーのやることを定めさせていく。
「──そっか。なるほどなるほど……」
「……スウヰイスー、さん……?」
「うん、全部URAが悪いなコレ」
「えっ!? な、何を言って──」
「君が今までバックダンサーしかできていなかったのは、他ならないURAのせいだよ」
「そんなわけ──」
「だって、ヰの時代にはそんなことなかったもの」
「──え?」
スウヰイスーはカバンの中からとある本を取り出す。
「これ、ヰのアルバム。ヰの勝利と、敗北と──ライブの記録」
「スウヰイスーさんの……」
「ほら見て。これが──最初のライブ。ヰが桜花賞を勝った時のライブだよ」
スウヰイスーが指し示したその写真は、ライブの写真というにはあまりにも雰囲気が今とは違いすぎた。
ダンスの様子が写されていない。ポージングがぐちゃぐちゃだし、何より──レース場で撮っているように見える。
「これって、本当にウイニングライブ……?」
「うんにゃ。ウイニングライブなんかじゃないよ。あの頃のヰはヤンチャしててな、勝利が嬉しくて嬉しくて、ついついレース場の放送設備をジャックしてその場でライブしたんだな」
「えっ」
「ヰを止めようとナルビっちゃんもレダっちも動いたんだけど、ヰを止めるのは歌だけだーって無理やりラップバトルに持ち込んだっけ」
「えっ」
「で、結局みんな連れ込んでの歌って踊って騒いでの無礼講。もうそこに勝者も敗者も存在しなくてな。ライブが終わった頃には観客もヰも皆も思ったことは1つだったわけよ。──『ああ、楽しいレースだったな。みんないいヤツだったな』って」
「……」
「ヰはURAにしこたま怒られたけど──セントライト先輩が場を取り持ってくれてな。きちんと節度を保ったライブにすることを前提にすることで、とあるライブが始まったんだ」
「とある、ライブ?」
「そ。今のウイニングライブに繋がるライブ──ウイニングライブの原型だな」
あの頃は本当にやんちゃだったなーと過去を懐かしむスウヰイスーに、ウマ娘たちは驚愕する。
「そ、それって……あなたがウイニングライブを創ったってことですか?」
「いやあ? ヰが創ったのはその原型だけなんだよねー。ウイニングライブには全く手を付けてなくってさあ」
「そうなんですか?」
「原型をやるにはステージやら設備の費用がバカにならないからって理由だっけ。物価の高騰とかにURAが勝てなくなって──とある時代からウイニングライブが始まったんだ」
「……そうだったんだ」
ウマ娘たちはスウヰイスーの写真を見る。
そこに映ってあったのは、勝っても負けてもいい笑顔を見せるウマ娘たちの姿。
自分たちとは比べものにならないほど、モノクロでも輝く姿だった。
「輝けるよ。ヰらよりもずっと」
「……でも、私たちには、そんな力は」
「あるんだよ、君の黄緑色の髪はファンの心を惹かせているぞ」
「えっ……」
「そこの君は関節が柔らかくてパドックで見せる柔軟がセクシーだとファンに話題だし、そっちの君は後ろからの追い込みでの勝利に期待しているファンがいるじゃんか」
「でも……そんなの、他の強いウマ娘たちと比べたら……」
「強いウマ娘のファンが多いのは彼女たちがメインステージで踊っているからでしょ? そりゃあ有名にもなるよ」
「あ……!」
「メディアは最前列でポーズをとるウマ娘だけを集中的に写して、観客はそんなトップのウマ娘のファンになって、バックダンサーはないがしろ……──それが、今のウイニングライブ。君たちの現状だよ」
スウヰイスーのいう通りだった。
新聞でもテレビでも、クローズアップされるのは決まって勝者だけ。
ウイニングライブでも勝者が写され、バックダンサーは顔が映ればいい方な始末。
それが現状ではあるが、誰もそれをおかしいとは思わなかった。
みんながみんな、それが当たり前だと思っていた。
それに対してスウヰイスーは一石を投じたのだ。
他の誰でもない、ウイニングライブの創始者という立場から。
「でも……じゃあ、どうするんですか?」
「あのころのライブを蘇らせるぞ。予算とかそういう話は無理やりにでも押し通すよ」
「どうしてそこまで……」
「決まってるよ」
「オラオラオラーッ! 今宵は私の勝利祝賀会じゃー! ファンのみんなもファンじゃないみんなも飲め歌え騒げーっ!」
「何やってんだお前ェ!!?」
「ヰちゃん、やめましょう? 回線ジャックなんかして……みんなに迷惑だわ」
「迷惑かどうかはお前たちには聞いてない! 私の愛するファンのみんながブーイングを投げて来るまで私は歌うわ!」
「テメっ正気か!? オールナイトになるじゃねえか!!? やめろバカ!」
「文句はフリースタイルで受け付けるわぁ!!」
「コイツ……! いいだろう、レダお前も手伝え! デュエットで無理やりケリつけてやる」
「ナルビーちゃん、わかったわ。ヰちゃん、今回ばかりはおいたがすぎます……!」
「何をしてるんですか、あの子は……!?」
「Oh my, how innovative! なんて素晴らしいことなのでしょうか」
「言ってる場合ですか!? 速く止めないとURAにも迷惑がかかりますよ!?」
「my, my. I doubt that's true. たづなちゃん、ヰちゃんの周りちゃんと見てあげて」
「はい……?」
「ボエ~~~!」
「ちょっ!? 下手ッピ! 歌下手ッピすぎでしょレダっぴぃ!」
「おいレダお前そんないい声しといてなんでそんなに音痴なんだお前!」
「ボエ~~~!」
「聞こえてないのか!?」
「まずい! このままでは会場が音痴のノイズで破壊されてしまうぞお! こうなったら、キミたちカモン! 一緒に歌うわよ!」
「え? でも私たちは負けて……」
「そういうのはどうでもいいの! 今はレダより歌が上手けりゃなんだっていいのよ! 今なら私のフォローがあるから歌のうまさは5割増しよ!」
「……はいっ!」
「──これは……」
「There are blessings abound. 彼女たちを包んでいた敗北の苦しみが一瞬で消えてしまいましたわ。まるで魔法のよう」
「これを、ヰちゃんが……」
「たづなちゃん、これは素晴らしいと思わない? 勝っても負けても、みんなが満足して盛り上がって幕を締めることが出来るレースがあるだなんて」
「……はい。それは確かに、素晴らしいです」
「A new legend begins. URAに打診しましょう? 勝者も敗者も分け隔てなく盛り上がることのできる、ライブの設立を」
「──はいっ」
「──私たちが愉しくやれたあの頃を、今の子たちができないなんてそんなハイテク認めないからね、ヰは」
「……」
ポケベルがスマホに変わるほどの変遷を遂げておきながら、笑顔はより良い笑顔にならないまま。
それを好しとしないスウヰイスーは立ち上がり、マネージャーに連絡をかける。
「あ、もしもしジャーマネ? トラックお願いしたいんだけど。うん、デコトラで荷台の上で踊れるやつ。うんうん、とりま18×5台あればいっかな」
「えっ、何をしようとしてるんですか!?」
「ん~? とりまDream Festでキミたちのソロライブやらせようかなと思って。前夜祭やればちょうどいい感じに今年の人気処は全部網羅できそうかなあ」
「ええっ!!?」
「そんで、来年にグランドライブっていう、私発案のウィニングライブの前身を行う感じにするからなあ」
「ええっ!!??」
いきなりのソロライブ告知に慌てふためくウマ娘たち、その顔には悲しみはなかった。
「あのっ、スウヰイスーさん。私たち、ソロライブの踊り方なんて全然……」
「大丈夫だぞう! ヰが教えてあげる──って」
「お前だけじゃソロライブは教えきれないだろ」
「はいはーい、ソロライブなら、私も教えられますよー!」
「ソロライブをしてきたハイセイコーさんを連れてきた。お前の出番はここまでだな」
「なんでえ!? なんで邪魔しに来やがったのかなあナルビっちゃん!!? 今はヰの見せ場ポイントセレクションだったはず!!?」
「そんなことをしてるよりヰは各部署に前夜祭のことを伝えて来い」
「くっそ~! もっと若い子とキャッキャウフフしたかったあ~~~!!! URAは黒スーツで黒グラサンで冷たくて嫌いなんだよお~~~!!!!」
「嫌いとかそうはっきり言うなよヰ……」
「まあまあ、ヰ先輩だからこそ、ウイニングライブの弱点に気付けたんだから、ね?」
「それもそうなんだが、なあ……」
もう少しあのお調子者な性格は何とかならないものかねえ、と溜息を吐きながら、器用に走ると同時に書類を書きながらURAの下へと向かっていくスウヰイスーをクインナルビーは眺めていたのだった。
「そういえば、アイのステージは無いのか?」
「私は明日よ。前夜祭ではDream Festに出走が決まらなかったけども人気のあったウマ娘たちがステージに立ってるみたいなの」
「まあ、それにしても……学園内のステージの方が盛り上がりがとんでもない感じだけどね」
「ネット配信の同接2億3500万!? 桁数おかしいやろ!!?」
「無理もないですよ。ハイセイコーさんとスウヰイスーさんの夢のコラボなんて、お互いのファンからしてみれば感涙ものでしょうし」
「……あら? あれって──」
『ローカル・シリーズのジュニア級で好成績を残した地方の白い星! オグリキャップにインタビューをしてみようと思います!』
アイが興味を示したのは、学園にいない生徒を載せたトラック。
荷台の上でインタビュアーと話をしている葦毛のウマ娘。
「あのウマ娘は……」
「地方のって、まさかあいつがなんか?」
「そうかも。彼女がララが今後戦うかもしれないウマ娘……オグリキャップみたいだぞ」
「オグリキャップ……」
『トゥインクル・シリーズに移籍することが決まりましたが、トゥインクル・シリーズでの意気込みをお願いします』
「うん、勝つぞ」
『……』
「……?」
『そ、それだけですか?』
「ああ。たくさん勝つぞ。勝って勝って、カサマツのみんなを喜ばせるんだ」
『な、なるほど! お聞かせいただきありがとうございます!』
「えらいマイペースなやっちゃなー……」
ラッキーライラックはそう呟くも、その視線は鋭くオグリキャップに向いていた。
間違いなく、このウマ娘が今後の強敵になると予感して。
賑やかな喧噪のなか、ララは翌年のことについて思案を深めていくのだった。
番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です
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18年皐月賞
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18年日本ダービー
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18年菊花賞
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19年天皇賞春
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19年宝塚記念
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20年京都記念
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20年ドバイシーマクラシック
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20年天皇賞秋
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20年ジャパンカップ
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21年ドバイシーマクラシック
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21年宝塚記念
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21年有馬記念
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その他