前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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ジャーヒリーヤが照らす

「来年はG1勝利しようなー!」

「G2勝利、おめでとー!」

「かっこよかったぞー!」

 

 この一年の間で間違いなく記憶に残ったウマ娘たちが、トラックの上からファンたちにファンサをしながら町中を巡っている。

 ファンサをしているウマ娘たちは慣れない特等席でのパフォーマンスにドギマギしているようだったが、それでも応援してくれているファンのためにとしっかり彼女たちの自信のあるダンスを披露していたりした。

 その様子を眺めながら、僕はボーっとしていた。

 

「どーしよっかなあ……」

 

 アイとユグ、ララはDream Festのレース場に移動する都合で開幕だけ見届けて行っちゃったし。

 クロノちゃんはラヴズちゃんたちと一緒に前夜祭を見て回るらしくって誘えなかったし。

 

 僕一人、ポツンと賑やかなステージを眺めていた。

 

 ユグたちと一緒に行った方が良かったかなあ……。

 

「きゃーっ!」

「ん?」

「何々? 誰か来てるの!?」

「ドバイの王子様が来てるんだって!」

「えーっ、嘘!?」

「本当なのよ! あのロイヤルブルーの装い、間違いないって!」

 

 ドバイの……王子?

 そんな言葉よりも、ロイヤルブルーという単語に僕は首を傾げる。

 ロイヤルブルー。青より気高い、誉れ高き青色。

 

 どこかのレース場でその色の勝負服を見たことがある。そんな気がした。

 

「どこだったかなー、んー」

「はぁっ、はっ、はぁっ──」

「んー?」

「クソッ、ジャパンはUAE(俺たち)のことなんてこれっぽっちも関心がねえのかと思ってたのにこんなファンがいるのかよ!? 先輩すげえな!!」

 

 悩んでいる僕の前に、件のウマ娘が現れた。

 

 ロイヤルブルーのジャケットを身に着けた、褐色肌のウマ娘。

 首と腕とに巻き付いた高級品と思しきジュエルとアクセサリーの数々。

 おへそのピアスとダメージジーンズとの恰好は王子様と言うよりもロックシンガーみたいな感じを感じさせる。

 そして何より、鹿毛色の前髪にある、とても目立つ十字の星。

 

 それはとても、僕が覚えている特徴的な──。

 

「アフワン、ムンキンラフザ!」

「えっ何語!?」

「悪い! そこの大きなお嬢さん、少し背中をお借りしたい!」

「えっ!?」

 

 僕が応える間もなく、そのウマ娘は僕の背中に隠れる。

 その直後にドカドカと人間もウマ娘も、ファンであろう人達が一斉に押し寄せてきた。

 

「どこ! どこに行ったの!?」

「すごいいい走りだったわ、あれこそドバイの受け継がれた走り、よね!」

「シャッターチャンス逃した~!」

「ねえそこの大きなウマ娘さん! ガイヤース様がどこに行ったか知らない!?」

 

「えっ、と……そこの通りを真っすぐ駆け抜けていったよ」

 

「ありがとう!」

 

 別の方向を指差すと、人間たちはいっせいにドタドタとその方向へと猛ダッシュしていった。

 人間にしてはすごいスピードだなーなんていやそんなことよりも。

 

「…………」

「えっと、ガイヤース、さん?」

「あ、ああ。助かった。ありがとう」

 

 そのウマ娘さん──ガイヤースさんが僕に綺麗な礼をする。

 雰囲気に似合わない律義さ。

 その姿を見て、僕は懐かしさを感じた。

 

 君も、この世界に来ていたんだねと思いながら。

 

 


 

 

 僕とフィエールマンくんと、先輩とで行った凱旋門賞の結果は……まあ、ズタボロのボロ負けっていう感じだった。

 特にフィエールマンくんが最下位になっちゃって、そのうえ僕との間に大差までできてしまったことでかなり落ち込んでいた。

 

「Aw, bloody hell, the turf is muck」

「君は──」

「Ah, the Japanese horse, was it? Grand run, that was, but. sure the turf here's an awful mess. Don't be frettin' now. It's a grand thing just to be here at all, so it is」

「……それでも、俺は負けた」

「フィエールマン」

「無様に、こんな結果に──」

「Well then, you'll just have to put in the work back in Japan, so you will. And if the luck of the draw is with you, you might just meet again. If you do, you'll show them what you're made of on your own patch」

「……──そうだな。クヨクヨしてても、仕方ない……か」

「ありがとうございます、先輩」

「Ah, don't you be mindin' it. It's me job to help those who are down, seeing as I was given a name for it. And stop with that 'SENPAI' stuff. You and me feel like the same age」

「えっ、そうなの!? ──名前、って……」

「Ghaiyyath means 'the Saviour,' it does. Means 'the one who helps' or 'the one who saves,' alright?」

 

 ──ガイヤースは救世主。救う者って意味なんだぜ?

 

 


 

 

「お礼と言ってはアレだが、何か奢ってやるよ」

「気にしなくていいぞ。助けるのは人間にとって当然のことだからな」

「その性格は良いが、まあそう言うなよ。お金はあるんだが如何せん使い処が少なくてな。金持ちの道楽に付き合ってくれ」

 

 ガイヤースはそう言って近くの焼きそば屋台に駆け込む。

 懐から取り出した高級品って感じの財布を持って。中においくら万円も入ってそう。

 屋台の店員もお釣りを払うのにちょっと苦労したっぽいから、多分万札で支払ったんだろうな、と感じる。

 

「ほらよ」

「ありがとう、でも──」

「いいからいいから。俺がお前を助けると思って、な?」

「──私を、助ける?」

「そうさ。助けて、助け返すのも人間のやることだぜ?」

 

 そう言って有無を言わせず座っている僕の膝に焼きそばを置く。

 作りたてで、温かさがしっかりと伝わってきていた。

 

「お前、チーム『アケルナル』のウマ娘だろ?」

「えっ、どうして知ってるんだ?」

「悪いな。ちょいと調べさせてもらった。なんせ、今後あたしがぶつかるかもしれない相手になるかもしれないからな。アーモンドアイは」

「──そっか」

 

 そうだよな。

 アーモンドアイは強い。

 ちょっと負けちゃったけれどその強さが損なわれたわけではない。

 僕とはすごい違いだ。

 

 そして、来年からクラシックに入るララも……クロノちゃんも……。

 

「なんか、みんな僕よりすごくって。みんなしっかりした夢とか目標とかを持ってて……」

「……」

「ちょっと、出遅れちゃってる感じでな。──僕は全然、そんなものを抱けてないからさ……」

 

 アイは新世界を。

 ララは打倒アイを。

 クロノちゃんは自分だけの歴史を。

 

 それぞれがそれぞれの目標を抱いて走っているし、走ろうとしている。

 

 でも……僕には、何にもない。

 

「確かに、もともとあったはずの目標なんだけど……なんだか、どうでもいいものに感じちゃって」

「あー……自分のことが見劣りしてるのか? そんなことないと思うが。その巨体とかは随一だろ」

「そうなんだけどなー……なんだか、それだけな気がしちゃってな」

 

 体は確かにおっきくて、他のウマ娘たちよりもちょっと力強い走りができて。

 でも、それが本当に僕だけの強みなのかと聞かれると──きっと強みでも何でもないものだと答えられてしまう。

 

 なぜなら──僕はもう、そうして負けたことを知っているから。

 

「──まあ……なるほどな。そりゃあそうか。身近にいるやつが輝けば輝くほど──小さな輝きは霞んで見えちまうものだよなあ」

「うん……ごめんな? こんな変な話しちゃって」

「いや、気持ちは解る。すっごい解る。イギリスにもなあ、とんでもなく強い才能を持ったやつがいてなあ。手も足も出ねえのなんのって」

「へー! そうなんだ。強いウマ娘は海外にもいるんだなあ」

「でも、そいつに俺はとあるレース場でなら勝てるんだ。そのレース場で、俺は見事逆転を果たした」

「おー、やったんだな!」

「だがそれがどうにも不思議でなあ。なあんで勝てたんだろう、っておもって研究してたんだが──結局のところ、俺がそのレース場で強いことだけが解ったってオチだった」

「……」

「結局、強いだの弱いだのってのは時と場所によるんだよ。悪いバ場だと勝てないときもあれば、絶妙な角度のコーナーがあるから勝てる、なんてこともある」

「……」

「──仲間に勝てないとか言ってるけどさ、お前の得意な舞台でなら、それこそ勝ち目は出て来るんじゃないのか?」

 

 そんなこと言ったって……。

 有馬記念をアイは走れるようになって、長距離を克服しようとしている。

 僕が勝てる点なんて、あるのかなあ……──あれ。

 

 アイは、長距離を克服しようとトレーニングをしているけど、本当の意味で長距離を走れるわけではない?

 

 思い返してみると……本当の意味で長距離を走れるのは、クロノちゃんだけ。

 アイもララも、今後のために長距離でも走れるようにトレーニングを積んでいるけど、2人にとって一番戦いやすいマイルや中距離に比べると……。

 

「……僕は、長距離に強い?」

「おっ、見つけたっぽいな。長距離に強いなら長距離のレースで勝てばいい。そういうのがお前の強みだと思うぜ」

「……うん」

 

 クロノちゃんほど長距離で勝てる、とは言えないけれども、長距離で戦えるだけの脚はしているはずだ。

 その脚を伸ばしていけば、そして、アイみたいな、ララみたいな強みにすることができれば……。

 

「──僕、長距離でアイに勝ってみようと思う」

「そりゃあいい。見つかったようで何よりだ」

「ありがとう、ガイヤースさん。おかげでちょっとすっきりした感じだぞ」

「気にするなよ。助けるのは趣味なんだ。ブラストの助けになれたのなら何よりだ」

 

 前夜祭の祭囃子が、さっきまでよりももっと透き通って聞こえてきた。

 悩みが晴れたからだろうなと僕自身で解る。

 

「しかし……ジャパンの長距離レースって少ないと聞いたが本当か?」

「えっと……多分そうかも」

「長距離ってのは肩身が狭くて困るよなあ……もしもちょうどいいレースが無いってなったら海外を視野に入れるのもありかもしれないぜ?」

「えっ、海外を?」

「ああ。海外には長距離レースの祭典と言われるもんが準備中でな。そう遠くないうちに開催する予定なんだ」

「長距離レースの祭典……」

「その名をステイヤーズミリオン。挑んでみる価値はあると思うぜ?」

「……うん!」

 

 海外の長距離レースの祭典、かあ……。

 アイもララも、クロノちゃんも多分日本中心に頑張っていくだろうから、僕は海外で頑張るっていうのは悪くないかもしれない。

 

 僕の胸の中が燃え上がる感じがし始めた。

 

 その感覚に何か懐かしさを感じながら、今後の予定を頭の中でくみ上げていると、前夜祭の賑わいの中からクローバーの耳飾りをしたウマ娘が姿を現して、ガイヤースの前にやって来た。

 確か……ファインモーション先輩だったな。アイルランドの王族って聞いているウマ娘。

 

「こんなところにいたのですね、ガイヤース先輩!」

「お、ファインちゃんか。久しぶりだな」

「知ってるのか?」

「俺はドバイの血筋ではあるんだが、育ちがアイルランドなんだよ。ファインちゃんと同じ小学校に通っていたんだ」

「へー、そうなんだな!」

「ガイヤース先輩がやって来たとお聞きしまして、近くのレストランで前夜祭パーティをしておりますわ。ご一緒にいかがですか?」

「お、そうだな。じゃあご招待にあずかるとしますか。ブラスト、俺はこの辺りで失礼するぜ」

「おお! ありがとな、ガイヤースさん!」

「それとそうだ。アイにはこの言葉を伝えてくれよ」

「アイに?」

「ああ。──ガイヤースはドバイで待つ、ってさ」

「──おお!」

 

 ガイヤースさんはファイン先輩の案内で前夜祭の騒ぎの中へと消えていく。

 

 それにしても……相変わらずだったなあ。ガイヤースさんも。

 ユグも出会ったことがあって、その時も特に何も変わってなかったし僕たちのことを聞いて来たんだっけ。

 本当に、優しいウマだったなあ。ウマ娘になっても同じでよかったぞ。

 

「……あれ?」

 

 ガイヤースさん、いつの間にか僕の事ブラストって呼んでたけど……。

 僕、いつガイヤースさんに僕の名前を伝えてたっけ?

 

「…………ま、いっか!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「──さて、と。もしもし、E?」

『Gね。Mには会えた?』

「いいや。でもBには会えたぜ」

『B? ……ああ、あなたの後ろにいたあの大きな子ね。どんな感じだったの?』

「思い出していたようだったな。それで、他の奴らがすげえからってちょっとヘコんでた」

『あら。Mはサポートできてなかったのかしら』

「Mは万能ってわけじゃねえよ。あいつはUいわく善戦ばかりの生き方だったらしいからな。身近にそういうウマが多かったからっつっても着外の多かったウマの気持ちを総て汲み取ることは難しいだろうし……B自身がMに気付かれないように隠してたっぽいってのもあるだろうからな」

『あらあら。可愛らしいわね。それにしても連絡が随分遅かったわね。何かあったの?』

「悪いな。ファインちゃんに出会ってよ。流れでパーティに参加してたんだよ」

『あら、羨ましいじゃない。どうして私も誘ってくれなかったの?』

「お前今フェリーで世界一早く初日の出を見ようとオーストラリア近海をクルージング中だろうが」

『ふふふ、優雅なものでしょう?』

「ウマ娘になってからお前思ってた以上に豪遊しやがって……サウジアラビアのプリンセスがこれとはなあ。サウジの未来が悲しいぜ」

『あらあら、黄金の国のプリンセスともあろう貴方はこれほどのゴージャスな振る舞いもできないほど頭がお堅いのかしら?』

「質素で堅実、倹約家だと言ってほしいな。……それともっかいそんなこと言ってみろよ、二度目のサンダウンを見せてやろうか? ええ?

『ふふふ、ああ恐ろしい。黄金のように熱が通るのがお早いのね』

「てめえなあ……」

『冗談よ。ジャパンではこれぐらいのジョークを軽く受け流せる寛容なマインドが必要になるのよ。事前に予習出来て良かったでしょう?』

「ったく……そんで? E、お前本当にMの下に行くってのか?」

『ええ』

「マジかよ……凱旋門の覇者だろ、お前」

『前世では、ね。今生では無名無冠の一ウマ娘。どこで何をしようと誰にも指図されることはないでしょう?』

「にしてもなあ……まあお前がそれでいいならいいんだけどよ」

『それに、出遅れた分を取り返さないといけないもの』

「取り返す──って、Mはお前のもんじゃないぞ」

『私の物よ。私と彼との仔がそれを強く証明している。前世において、私とMほど強い仔は生まれなかった。違うかしら?』

「いや俺お前の仔なんて知らねえし」

『それに、このままモタモタしてたらUSもやってくるわ。とくにUは厄介。先手を打てるときに打つのは当然の事よ』

「………………」

『G? どうしたの?』

 

「いやぁ……Mは厄介な星の下に産まれたんだなあって感慨深くなってる……」

 

『あら、あなたも加わってみる? 案外面白いかもしれないわよ。このレース』

「いや、遠慮しとくぜ……(なあ、ユギー。お前とんでもない女難の相が付いてるんだぜ? つってももう気づいてるのかもしれねえけどよ……)」

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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