前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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目覚めの時よ、紫丁香花(エリューズニル)

『ガイヤースがそんなことを……わかった。後でアイにも伝えるよ』

「おう!」

『それとごめん、ブーのこと僕はちゃんと見ていなかったかもしれない。ブーのメンタルを不調にさせてたなんて……』

「気にしなくていいぞ。僕もちゃんと伝えてなかったのが悪いところはあるしな。今度からはユグには最初に伝えることにするからな!」

『ブー、解った。僕もブーの期待には応えられるようにしていくよ。海外レースに出るつもりならこれから先それを主軸に置いたトレーニングを組むけど……』

「そこの話についてはまた後でな! 今はこれからララのレースで、その後アイのレースだぞ!」

『……そうだね。ごめん、ちょっと焦ったみたいだ』

「ううん。……なあユグ」

『どうした?』

「ユグにとって、ブーは……」

『……?』

 

『出走ウマ娘が入場します。いよいよDream Fest Medium Stellaが始まります!』

 

「あっ! もうすぐ始まるみたいだぞっ」

『ああ、そうだな。──ブー』

「な、なんだ?」

『ブーは僕の最高の友達だよ。姿形が変わっても、そう思っていたことは変わらないつもりだよ』

「……そっか。それじゃあ、もう時間だから切るぞ?」

『ああ。ララの走り、僕の代わりに見ていてほしい』

 

「…………親友かあ。……遠いなあ。僕の位置……──それでもっ」

 

 

 

 

 

「ここにいたのか、オグリ君」

「クインナルビー先生……これが、中央の大レースなんだな」

「ああ。──出てみたいか?」

「そうだな。こんなに歓声が上がるなんて……私も、こんな舞台に立ちたいな」

「少なくとも今はまだ無理だが……ダービーには間に合わせるぞ。お前ほどの名ウマ娘がダービーを走らないことはトゥインクル・シリーズの恥だからな」

「ありがとう、先生」

「気にするな。それよりも、ダービーまでにいいトレーナーを見つけてくれよ」

「ああ……!」

 

 

 

 

 

「あーよかったー! なんとか間に合ったー!」

「うん? あそこにおるんは……」

「ふふん♪ ちょーっと出遅れちゃったけど、ここから始まるもんね、ボクちゃんの偉大な偉大なテイオー伝説!」

「トウカイテイオーはん……ふうん?」

 

Dream Fest Medium Stella 中山レース場 芝2000m 晴 良 18人

 

1ダイアナアップ

 

10トウカイテイオー

 

2オプツィオーン

 

11ホガラカアサヒ

 

3ハシルドラギオン

 

12ラッキーライラック

 

4ドリームジャーニー

 

13カントリーソレイユ

 

5ブリザードパーティ

 

14モノクルレディ

 

6シラカバハウス

 

15マリンヒーリング

 

7ダウヴェント

 

16 トリプルルール

 

8シーザリオ

 

17 ラーシュザアラキ

 

9ギガニケ

 

18 ブレスゴールド

 

『スタートしました! 11番ホガラカアサヒ、前に飛び出していく。ギガニケ、マリンヒーリングも続いていきます』

 

 レースが始まった。

 ジュニア級最後のレースが始まった。

 このレースに出走するウマ娘も、このレースを見に来たウマ娘も人間も考えることは同じ。

 

 ここを勝ったウマ娘は、次の三冠候補だ。

 今年大奮闘をしてみせたアーモンドアイのように、それ以上の活躍をしてくれるかもなんて期待までして。

 見に来た客はそう思ってる。走るウマ娘もそう思ってる。

 

 皆が皆、その瞳の先に次なる新世界(アーモンドアイ)を望んでいた。

 

『各ウマ娘、膠着状態です。誰が先に抜け出すのでしょうか』

「(こらまた……えらいプレッシャーの団子やなあ)」

 

 そんな中でラッキーラーラックは周囲の状況を的確に丁寧に把握しながら芝を駆ける。

 それを冷静と言い捉えるには少し様相が異なる。

 彼女の心魂には確かな熱意と信念が渦を巻いており、その熱量自体は自身の他に芝生をかけるウマ娘たちと何ら遜色のない、変わらないものなのだから。

 

 ただただ、人よりも感情を顔に出そうとしていないだけなのだ。

 それを罠だと確信しているから。

 

「(……ララさん、あまり動じていませんねえ。この熱意は想定外だと思っていましたが……まさか想定内でしたとは。お見事です)」

「(そこを的確に狙ってくるんやもんなあ。前世の身内、怖いわあ)」

 

 むやみやたらに感情を出してしまえば、途端に狙い撃ちされる。

 まるで毒蛇のように、噛みついたが最後、咬まれたが最後全身に響く猛毒。

 実際にそういう走りをしているわけではないのに、そう感じ取れてしまう強き気迫。

 

 ドリームジャーニーは虎視眈々と前方の様子を伺っている()()だった。

 

 そんな緊張感の中、他のウマ娘よりも快調に駆け抜けるウマ娘もいた。

 

「──ふふっ♪」

「(こっちに比べてえらい余裕そうやなあ──テイオーはん)」

 

 トウカイテイオー。

 威圧感など知ったことかと、そもそもそんなのがあるかどうかすら知らぬ存ぜぬといった表情で快活な表情のままターフを駆けている。

 

「(そっくりやなあ……走りへの姿勢が、割とアイに似とるわあ)」

 

 その様相にララは懐かしさを感じる。

 あの日、あの時、あの頃感じた異常なほどの『歓び』そして『強さ』……。

 それらに似た末恐ろしさを、ララはトウカイテイオーから感じていた。

 

 レースを楽しみ、勝利を確信する。

 案外簡単そうに思えても実践はできないことだ。

 そのように己の強さを粋がり過ぎることは、墓穴を掘ることと同義なのだとアーモンドアイも身を以て思い知ったのだから。

 

「(ここで勝って、無敵のテイオー伝説の狼煙を上げるんだっ!)」

「(面白いですね、テイオーさん。……さて私の旅路が、あなたの歯牙にかかるかどうか……行きましょう)」

 

 だからこそのデジャビュを、ララは感じ取っていた。

 いや、懐古あるいは回顧と言ってもいい。

 

 普通で強圧な威圧を後ろから押し付けて来るドリームジャーニーと、天性の素質で前方を押し進むトウカイテイオー。

 まるで前世での2頭のようなつばぜり合いだったと、ララは思う。

 その中間位置で、ララは思案する。

 

「(さあてと、どう出ましょか……)」

 

 ララには考えていることがあった。

 ユグの世界樹の領域を再現するために、会得するための道程を歩もうとしている中で、思いついたことがあった。

 

「(ウチのディープゾーン……使えるやろか?)」

 

 ディープゾーン、領域の根本。

 領域という自己表現の最奥。

 意識のうまれる所と言ってもいいその特別な領域を、ララはどうすれば使えるのか考えていたのだ。

 

 ユグのディープゾーンに立ち入って、自分自身にもディープゾーンがあると知った。

 1回限りの体験だったためにディープゾーンに入る感覚も未だに掴めていないとはいえ、その新鮮でかつ圧倒される領域の更なる最奥に驚かされた。

 

 それを、自分の力で引き出せないものだろうか。

 ディープゾーンの内側にある物をそのまま、外側に引き出せないものだろうか。

 ララは考える。きっとそれが、ユグの──世界樹の領域に繋がる道なのだろう、と。

 

「(ウチのディープゾーン……どんなことになっとるのかちっとも想像できひん──けど、見ないことには始まらん! )」

 

 一歩、踏み込む。

ララの足元にライラックの花が咲き始める。

隣から差し込む金色の旅路の光芒と、奥から足を延ばし始めるドリームジャーニー。

前方では雲を蹴るような軽快なスパートを始めようとしているトウカイテイオー。

 3者一斉に、領域の扉を開く。

 自らの想いを見せつける。

 

『トウカイテイオー抜け出した、ここから最終直線だ! ドリームジャーニーどうだたどり着けるか、ラッキーライラックは──』

 

 そんな中でただ一人。

 

 ラッキーライラックだけは。

 

 紫丁香花の花の向こう側を見ようと、足を踏み込んだ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ラッキーライラックの足元から激しい砂嵐が吹き荒れた。

 

「「「──っ!?」」」

『ラッキーライラック追う追う! 激しくトウカイテイオーを追いかけ始めた!』

 

 その光景にウマ娘たちの誰もが驚いた。

 それは領域ではない、そう思ったからだ。

 しかして領域ではない別の何かでもないと認識していた。

 

領域の暴走。

 

 走っていたウマ娘たちには、そう感じ取れた。

 

『ラッキーライラック猛烈なスパートだ! いの一番に駆けだしたトウカイテイオー逃げ切れるか!?』

「(なんなのコレっ!? こんなのボク全然知らないよっ!!)」

「(こんな、代物が──)」

 

 砂嵐に背中を押されるように、ラッキーライラックは猛烈なスパートを駆ける──が、抑えた。

 

「(アカンわこれ、これで走るんは──ウチの趣味やないなあ!)」

「(お、治まった──?)」

「(……なるほど。そういうことですか)」

 

 トウカイテイオーは唐突な猛威に驚きそして沈黙したことに安堵しながらも領域を維持し続け先陣を切る。

 ラッキーライラックは砂嵐を止め、今まで通りのライラックの花道をかけ始める──が、テイオーには届かない。

 ドリームジャーニーは置いて行かれた。あまりにも猛烈な猛威にスパートを切り切れなかったのだ。

 後方でラッキーライラックの後ろ姿を見つめていた。

 

 大勢は既に決していた。

 歓声が上がった。

 

「(あー、しくったなあ……)」

『トウカイテイオーに届かない、ラッキーライラック届かないーっ!!! トウカイテイオー1着、ラッキーライラック2着です!』

「ディープゾーンの練習、しとくべきだったわぁ……はぁ」

「(──ディープ、ゾーン? それが、今の暴走のキーワード……──なるほど。どうやら私たちの旅路は、とても痛烈なものになりそうなのですよ、オル)」

「…………ふん」

 

「ララ……さっきのって──」

「とは言え……あれが多分、ユグがアイを倒した時と同じ……──それなら、掴み取ったるわ

 

 ララは足元を見る。

 その足元からは、ライラックの花と──芝生に似合わない、黄金の砂漠の影が見えていた。

 そして足元にしか広がらないその黄金の砂漠はどういうわけか、世界樹と同じような広大さがあるような気がしてならなかったのだった。

 

 失敗は確かにあった、それは暴走と敗北という形で如実に現れた。

 しかし、その失敗を糧にするように、ララの足元に見えたライラックの花は少しずつ成長しているように──見えた。




【お知らせ】
執筆環境が最近大きく変化しまして、ハーメルンでこの作品を投稿し続けるのが難しくなって来そうです。
そこで、ただいま別の場所でこの作品の作り直しを計画しています。
わざわざ移転だけではなくてなぜ作り直しまで行おうとしているのかと言いますと、今までの筋書きを読み直して、この状態では読者以上に作者である自分自身が満足しきれない展開だなと自分で感じ取ってしまったためです。

そのため、今一度キャラクター設定・ストーリーライン・セリフなどを考証・考案しなおして0から物語を作り直したいと思い立った次第です。

この作品はここで未完となりますが、完全に終了するわけではなく、別の場所で再スタートを切らせてもらうことになります。
その際は改めて通達しますので、その際は別の場所で再スタートを切った「前世競走馬だけどウマ娘になってない」を読んでいただけると幸いです。

最後になりますが、マネーユグドラシルの物語はまだ描き足りない部分が多すぎます。
これから先もできる限り作者の脳内に浮かび続けているマネーユグドラシルの物語を形にし続けられたらいいな、と思います。

今までのご愛読、本当にありがとうございました。

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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