前世競走馬だけどウマ娘になってない【未完・現在作り直し中】   作:ゲッテルデメルング

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元々はLegendシナリオのアイちゃん視点での物語を書きたいなって思っていたのがこうなったんですよね。


エインヘリャルの宣誓

 

「客のトゥインクル・シリーズ離れかあ……」

 

 趣味になるものが多いとこんなことも起こるのかと驚いた。

 前世では気づけなかったことだ。前世で寝転がるか、日向ぼっこするか、オカネがハタめくのを見るぐらいしか趣味にならないのだから。

 

「必要なのは客が惹かれる要素……うーん」

「ずばり、最強で無敵のアイちゃんなんてどうかしら? 生徒会長でも成し遂げていない史上初の九冠ウマ娘なんて、注目の的待ったなしよ」

「その注目の的を見てくれる客が少ない状態なんだよなあ」

「なるほど。もっと根本的な要素ってわけね」

 

 ランニングマシンでスピードのトレーニングを行っていたアイが休憩を取りながら話してきた。

 相も変わらず勝利で客を惹こうとしているが、この問題はそれ以前の問題なのだ。

 

「理事長はこの問題に対して画期的な対策を考えていると言うから、状況の変化を待っておいた方がいいかもね」

「とは言ったものの、具体的に何をするつもりなのかしらね」

「うーん……」

 

 そもそも、トゥインクル・シリーズ内部がどう客引きが良くなろうとも、外部から眼が惹かれるものが無いことにはこの話はここまでだと思わざるを得ない。

 外部、外側。

 トゥインクル・シリーズという枠組みを超えた、大規模な集客を行うべきなのだろうか。

 

「……馬並みの頭脳じゃ解らないな」

 

 トレーナーになるために精一杯勉強こそしてきたが、商売的なことには完全に不得手だ。

 どうすれば儲かる、とか。どうすればオカネが手に入る、とか。どうすれば子供たちがやってくるのか、とか。

 社長のお手並みを見たことはあったが、それを実行するだけの経験と知識が僕にはない。

 

 こうなってしまっては完全に理事長任せかなーーそう思っていた次の瞬間。

 

『――諸君!!』

「っ!?」

「今の声は……?」

『Sudden sorry. 校庭前に集合してくれるかしら』

『いきなりでごめんねー!』

 

 三種類の謎の声が校内に放送された。

 

「ねえ、今の声って――」

「まさか、ねえ、嘘でしょ……!」

「は、早く校庭に行かないと……!」

「どうしたんだ?」

「……ユグ、私たちも行くわよ」

「え?」

 

 ウマ娘にしか感じ取れない何かがあったのか、トレーニング場にいたウマ娘たちが一斉に校庭前へと向かっていく。

 アーモンドアイも同じように。

 まるで、何かに惹かれるように。

 

 そう言えば、さっきの声の中の一人から一瞬だけコントレイル君のような気迫を感じたのは気のせい、だっただろうか。

 そんなことを思いながら僕も、校庭前へと駆けていった。

 

 

 


 

 

 

「はぁっ、はぁっ――」

「体力無いわね……それでもユグなの?」

「今は人間なんだよ……! それで、声の主は?」

 

 僕の問いにアイは屋上を指し示す。

 

「ユグも感じたわよね。あの声の中にコントレイルに似た気迫が混じっていたのを」

「あ、ああー―」

「やっぱり。じゃあ、彼女の事わかるわよね?」

「彼女……?」

 

 アイの疑問を確かめるため、僕も屋上を確認すると。

 

 そこには三人のウマ娘たちがいた。

 

「みなさーんっ! こんにちわ、ハイセイコーでーす!」

「Hello Darlings. セントライト、ですわ」

「親愛なるウマ娘諸君! スピードシンボリだ」

 

「セントライト……初代三冠ウマ娘だ!」

「そういうことだったのね。道理でコントレイル君と同じ気配を感じたわ」

 

 ウマ娘の歴史については勉強してきた。

 誰が三冠ウマ娘になったのか、その栄光の歴史を。

 

 その中で彼女、セントライトは――今に続く栄光の原点に値する。

 

「Don't worry. トゥインクル・シリーズの低迷を心配するみなさん」

「私たちはみんなとトゥインクル・シリーズを再び盛り上げるために、ここにきたんだよー!」

「さあ、今こそ我々は共に手を取り合い、団結しこの状況を変えるのだ! 時は来た、再興の時だ! ――今ここに、『Dream Fest』の開幕を宣言する!」

 

 

 


 

 

 

 突如現れたセントライト、ハイセイコー、スピードシンボリ。

 彼女たちこそが理事長が用意した画期的な対策そのものだった。

 

 Stella, Pride, そしてLegend。

 3つのレースを年末に行い、トゥインクル・シリーズに注目を集めるオールスターレース。

 あらゆる世代のウマ娘が集い、競い合う。未来と過去が交差する。

 それと共に彼女たちがウマ娘たちのプロデュースを協力し、ウマ娘たちの知名度を底上げするという作戦だった。

 

 その内容が公開されてから、学園中が燃え上がっているかのようにやる気に満ちていた。

 トレーナーも、ウマ娘も。どちらもがレジェンドウマ娘と協力して素晴らしい栄光をつかみ取ろうと努力し始めていたのだった。

 

 そしてその熱気は、トレーナー室に帰って来た僕たちをも包み込んでいた。

 

「『Dream Fest』ねえ。これがトゥインクル・シリーズを何とかできるのかしら」

「さあ。僕からはどうにも。――でも、やる価値はあると思う」

「ずいぶんやる気ね、ユグ」

「それは君の方じゃないかな、アイ? ――最後の発言からずっと、目をぎらつかせているじゃないか」

「ふふっ」

 

 まるで新しい玩具を与えられた子供のような、無邪気で不敵な笑みをアイは見せていた。

 

「まさか初代三冠ウマ娘と走ることができるなんてね。こんなの、嬉しすぎるわ」

「彼女にもブランクはあるとは思うけど」

「私が競えるようになるまで3年はあるのよ。ブランクぐらい矯正できるでしょ」

 

 その理由は、シニア級のウマ娘たちに出走権が与えられた『Dream Fest Legend』にレジェンドウマ娘が出走を表明しているということだった。

 とりわけアイが注目しているのはセントライトだった。

 かつての伝説。僕たちの軌跡の礎。三栄冠の概念の定義者。

 アイがトリプルティアラを手に入れた際に、それが栄光なのだと定義付けた歴史上の偉人そのもの。

 

「この機会を逃す理由は私にはないわ。『Dream Fest』に協力しましょう、ユグ」

「わかった。彼女たちにも参加表明をしておこうか」

 

 アイはレースも勝負も大好きで、新時代のウマ娘になりたがっている。それも完璧な、である。

 レジェンドで三冠のウマ娘と競い合える場なんて、喉から手が出るほどしたくてたまらないぐらい望んでいるし、その上で三冠ウマ娘を真正面から打ち倒して完全無欠のウマ娘になることを心から望んでいるアルティメット完璧主義ウマ娘なのだ。

 

 まあ、アイがやる気に満ちているなら何も言うことはない。せめて失敗しないようにと調整し続けるばかりだ。

 

「彼女たちレジェンドウマ娘はトレーニングのアドバイスを適時行っていくらしいけど、アイは誰にトレーニングを見てほしい?」

「セントライトさん一択ね。……でも、ハイセイコーさんも捨てがたいわね」

「ハイセイコーさんを?」

 

 意外だ。

 セントライトさん一択なのは予想できたが、ハイセイコーさんのアドバイスを聞きたいとは予想していなかった。

 

「簡単な理由よ。トゥインクル・シリーズに必要なのは強さと魅力。私は生まれ持った魅力こそあるけど、それが磨き上げられないものではないでしょう?」

「……ああ。両方でトップに至りたいってわけか」

「そういうこと。ラヴズちゃんみたいなインフルエンサーっていうのもやってみるつもりだから、マネジメントしてもらっていいかしら?」

「そのインフルエンサーっていうもののやり方については調べておくよ」

 

 相変わらずの欲張りだ。

 瞳は強い輝きを見せ始めていて、納まる様子を見せない。

 だがその意欲は申し分ない。トレーナーとして、そのサポートは欠かすつもりは無い。

 雑用は任されてなんぼのトレーナーなのだから。

 

 そういえば。

 

「ウマ娘ってレースの後に踊るんだったっけ」

「そうよ?」

「わけわからんなーウマ娘……練習してるのか?」

「もちろんよ。なんなら見せてあげてもいいけど?」

「いや、それはメイクデビューまで待つことにするよ」

「いいの? ユグには見せてあげてもいいと思うけど」

「僕よりもこれからのファンのために見せてやってくれ」

 

 そう思う。

 と言うか全力疾走した後に踊るとか仮に僕がウマ娘になっていたとしても絶対やりたくない。

 隼人もレースが終わった後に歌ったり踊ったりしていたのだろうか。

 アイも初見は混乱しただろうに、それをきちんと極めるそのストイックさは本当に感心する。

 

「むー」

「なんで不満げになるんだ……」

「ユグは私の踊りを見たくないの?」

 

 その瞳でジーっと見つめてこないでくれ。怖い。

 

「踊らなくてもアイの魅力は伝わっているから」

「踊っているときの私の魅力は9倍よ? 今の比じゃないわ」

 

 僕の目を潰す気だろうか。

 天皇賞・秋で勝利した時のアイの魅力はきちんとわかっているのだから、他のウマ娘ならともかく今更そんなものを見る意味はないのだが。

 

「とにかく、勝利したときはこの私をちゃんと見なさいよユグ! 走っているときの私と踊っているときの私とで9倍の魅了を見せてあげるわ!」

「とっくのとうに魅了されているというのに?」

「――…………普通にそういうこと、言うのね。ユグ……」

「?」

「とーにーかーくー! ウイニングライブもちゃんと見ておきなさいよ! 全世界を魅了する超超超超超超超超超ライブをデビュー時から見ていないなんて、人生の損失になるんだから!」

 

 そう言うアイの表情は珍しく見た目通りの子供らしかった。

 その様子に懐かしさを感じながら、僕はアイのトレーニングスケジュールを綿密に組み上げていくのだった。




【追記】
何かに使うアンケートを設置しました。

番外編 追加するなら どれにする? ※あくまで参考程度です

  • 18年皐月賞
  • 18年日本ダービー
  • 18年菊花賞
  • 19年天皇賞春
  • 19年宝塚記念
  • 20年京都記念
  • 20年ドバイシーマクラシック
  • 20年天皇賞秋
  • 20年ジャパンカップ
  • 21年ドバイシーマクラシック
  • 21年宝塚記念
  • 21年有馬記念
  • その他
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