ワートリ〜顔が良い内弁慶〜   作:Mr.♟️

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原作開始前
プロローグ


 

(B級に昇格するよりも、昇格してからランク戦の相手を探す方がよっぽど大変だ)

 

本日B級に昇格したばかりの少年、神園冬は訓練室のベンチで一人、絶望の淵に立たされていた。

 

個人ランク戦は対戦相手がいなければ始まらない。

 

しかし、彼には『自分から他人に話しかける』という致命的な機能が欠落していた。

 

考え続けること30分。追い詰められた神園が導き出した答えは、『外部情報の遮断』だった。

 

両耳にイヤホンを差し込み、目を閉じて爆音で音楽を流す。そして片手には『個人戦希望』と殴り書きしたノートを、周囲によく見えるよう掲げた。

 

(誰でもいいから話しかけてきてくれ。面識のない相手に僕から声をかけるなんて、絶対に嫌だ。かといって、歌歩と相談してトリガー構成も煮詰めてきたのに、一度も戦えないまま帰るのも嫌だ)

 

客観的に見れば、不審者一歩手前の奇行である。ここがボーダー基地でなければ、とうに通報されていただろう。

 

そんな中、20分が経過した頃、神園の肩を呆れたように叩く人物が現れた。神園は内心で歓喜の声を上げながらも、必死に平静を装って顔を向ける。

 

「あんた、何してんの。もしかして、もう誰かと戦ってポイント根こそぎ奪った後の休憩中?」

 

そこに立っていたのは同期の熊谷友子だった。怪訝な顔をする彼女に対し、神園は小さくため息をつく。

 

「無駄な期待させないでよ。誰も話しかけてくれなくて、まだ戦えてないんだ」

 

「当たり前でしょ。イヤホンしてノート掲げてる不審人物に話しかけるお人好しがどこにいるのよ」

 

しょんぼりと肩を落とす神園に、呆れ果てた様子を見せながらも熊谷は提案をする。

 

「私もさっきB級に上がったから、もしよかったら私が──って、やっぱり嫌。ポイントが動かない模擬戦ならいいけど」

 

「ポイントが欲しい。それに、熊谷だと物足りないから別の人がいい」

 

「わがまますぎでしょ!」

 

せっかくの提案にこの物言いである。神園は不満げに語り始めた。

 

「話しかけられるのには慣れてるけど、話しかけるのは慣れてないんだ。戦うことさえできれば、B級だろうとA級だろうと僕が勝つよ」

 

「──例えば?」

 

熊谷はその言葉を鼻で笑って否定することができなかった。神園はC級時代、一度も負けていない。それどころか、一撃の攻撃すら被弾していないのだ。

 

「個人総合1位の太刀川さんでも、2位の二宮さんでも、誰でも。ああ、でも風間さんはあんまり戦いたくないかな」

 

「どうして?3位なら、上の2人よりはまだ戦いやすいんじゃないの?」

 

神園は少しだけ遠慮がちに視線を彷徨わせてから口を開いた。

 

「身長差がありすぎる。僕が勝ったらいじめみたいに見えるだろそれに、幼馴染──」

 

「面白い話をしているな」

 

背後から冷たく低い声が2人の耳を打った。

 

驚きと共に勢いよく振り返ると、そこには今まさに話題に上がっていた本人が立っていた。

 

「対戦相手を探しているなら俺が胸を貸してやる。模擬戦形式で10本、どうだ?」

 

「あ、謝った方がいいよ。絶対に今頃いじめ云々のくだり聞かれてたから......!」

 

熊谷が小声で必死にアドバイスしてくるが、神園は余裕そうに微笑むだけで、否定も謝罪もしなかった。

 

「僕のために時間を割いていただけるなら、是非お願いします」

 

まるで自分ではなく相手が挑戦者だとでも言いたげな態度をとる神園に、風間は一瞬だけ眉間をピクリと動かした。

 

(よかった、模擬戦ならもしボロ負けしても大丈夫。神園、この機会にしっかり教わりなよ!)

 

熊谷が内心で胸をなでおろした、その直後。

 

「模擬戦ではなくランク戦をしましょう。風間さんがポイントを失うのが嫌だというなら、模擬戦でも構いませんけど」

 

神園の挑発的な物言いと表情に、風間は微かに苛立ちの色を見せる。

 

その様子を間近で見ている熊谷の心臓は、無駄にドクンと跳ねあがった。

 

「──自信過剰な新人に現実を教えるのも、先輩としての役割か。いいだろう、ランク戦で構わない。先に入っているぞ」

 

「あ、あんたねぇ......!撤回しなさいよ。絶対に模擬戦の方がよかったって!」

 

心配する熊谷をよそに、神園は風間が待つルームへと向かう。初のランク戦相手がA級のトップランカー。そんな常軌を逸した経験をする人間は、ボーダー広しと言えどそうはいないだろう。

 

「──心配しなくても、僕が勝つよ」

 

絶対的な自信をその背中に滲ませながら、神園はルームへと足を踏み入れた。

 


 

訓練室で、風間蒼也は1人のB級隊員を視界に捉える。隊員の名は神園冬、本日昇格したばかりの新人だ。

 

(何をしているんだ、あいつは)

 

風間が訓練室に入った時から、神園はイヤホンをつけ、手元には『個人戦希望』と書かれたノートを掲げたまま微動だにしなかった。その異様な光景に、風間は内心で首を傾げる。

 

風間が彼に興味を惹かれた理由は3つあった。

 

自隊のサブオペレーターである三上が『将来性がある』と手放しで褒めていたこと。

 

スカウトした菊地原が『神園とは戦いたくない』と唯一名前を挙げたこと。

 

そして、いかに才能があろうとランク戦時の被弾や失点は免れないものだが、彼は昇格まで一度の負けもなかったということ。

 

(話しかけてみるか)

 

風間が動き出すと同時に、先に1人の少女が神園に声をかけた。

 

(あれは、熊谷友子か)

 

不運にもタイミングを逃した風間は、背後のベンチに腰を下ろし、静かに様子を窺うことにした。

 

(菊地原が言っていた。『神園と戦うのをやめれば、熊谷はもっと早く昇格できたのに』と。毒舌のあいつがそこまで言うのなら、あの新人の実力は本物なのだろう)

 

そんなことを考えていると、神園が不遜な言葉を吐き始めるのが聞こえてきた。

 

個人総合1位から3位、つまり自分も含めたトップランカーを相手に『誰が相手でも勝てる』と言ってのけたのだ。

 

(自信過剰は新人の特権だ。怒るほどのことではないが......何?俺とだけは戦いたくない?そうだろうな、俺は強い)

 

風間は少しだけ口角を上げた。タイミングよく、風間が気になっていた理由を熊谷が聞いてくれた。

 

「身長差があるから、戦ったらいじめみたいになるだろそれに、幼馴──」

 

「面白い話をしているな」

 

思わず口を挟んでしまった。振り返る2人の驚愕した表情。流石に今の言葉は聞き捨てならなかった。

 

同時に、これだけの大口を叩くこいつの実力を直接確かめたいという欲求が勝った。

 

「対戦相手を探しているなら俺が胸を貸してやる。模擬戦形式で10本、どうだ?」

 

親切心からの提案だった。だが、この新人はどこまでも予想の斜め上を行く。

 

「模擬戦ではなくランク戦をしましょう。風間さんがポイントを失うのが嫌だというなら、模擬戦でも構いませんけどね」

 

──A級の隊員でも、俺に面と向かってこんなことを言うやつはいないぞ。ビッグマウスに見合うだけの実力があると見ていいんだろうな。

 

(自信過剰もここまで行くと珍しいな。実力を見るついでに、目上の人間への接し方も指導してやるとしよう)

 

静かな闘志を燃やし、風間はルームへと入った。

 


 

選択されたステージは訓練室。障害物が一切存在しないその空間は、小細工が通用しない純粋な実力の差を暴き出すステージだ。

 

「負けても泣かないでくださいね」

 

神園はなおも不遜な態度を崩さない。対する風間は表情ひとつ変えず、スコーピオンを生成しながら最短距離で突撃する。

 

(まずは対応力を見せてもらおうか。真っ向から受けるか、回避か、防御か。あるいは、何もできずに終わるか)

 

「ポイント、根こそぎ貰いますよ」

 

神園は『フルアタック』を選択した。両手にバイパーを浮かばせる。

 

──風間はその判断を『愚策』と断じる。

 

(既に間合いだ。その距離で弾道を引く暇はない。先に首を落とされるのはお前だ)

 

一直線に神園の喉元へ伸びる刃。しかし、スコーピオンがその肌に触れることはなかった。

 

「──っ!?」

 

風間の右腕が、肘の先から弾け飛ぶ。

 

バイパーだ。しかも、超高速で動く風間の腕をピンポイントで射抜くという、精密極まる技術。風間の素早い動きの軌跡を完璧に捉え切っていたのだ。

 

(動いている俺の腕を狙って弾道を曲げたのか。出水のような天才肌か、あるいは──)

 

「今度は僕の番ですよ」

 

神園の追撃が始まる。バイパーの軌道が生き物のようにうねり、風間の回避先を的確に塞いだ。

 

(シールドで防ごうとしても、その隙間を掻い潜ってくる。この命中精度、本当にB級に上がりたてか......!?)

 

風間は一旦距離を取り、『カメレオン』を起動して姿を消す。状況に合わせた最適な判断を下せる冷静さ、これも風間の強力な武器の一つだ。

 

目標を見失った神園が操るバイパーは、行き場をなくして壁にぶつかり霧散した。

 

(こういう時はどうすればいい?)

 

ここからの動きを素早く計算しながら、神園は背後からの奇襲を警戒し、壁側まで後退する。

 

メイントリガーをバイパーから孤月に切り替え、迎撃姿勢を取る。いや、とってしまった。

 

──惜しいことに、その行動を終えた直後に神園の脳内で考えがまとまる。今の自身の選択は誤りであったと。

 

(違う。むしろフルアタックのまま、訓練室全体をバイパーで炙り出せばよかったんだ。カメレオン起動中は防御トリガーが使えない)

 

自身のミスに気づき、判断を修正して再びバイパーへ切り替えようとした──その瞬間。

 

「経験不足だな」

「っ......!」

 

背後からではなく、上空。意識の死角からの強襲。風間の鋭い刃が、無慈悲に神園の首を撥ねた。

 

(孤月も使えるようだが、2戦目からは最初から本気で行かせてもらうぞ)

 

個人ランク戦結果:風間VS神園(8-2)

 


 

「──負けた」

 

神園はモニターを見つめ、ひどく悔しそうな表情を浮かべている。あれだけの大口を叩いた手前もあるが、彼は本気で勝つつもりだったのだ。自身の初めての明確な敗北に落ち込むのは無理もない。

 

風間はランク戦が終わった後、短く一瞥をくれて去っていった。その表情は、最初に対峙した時よりも幾分か柔らかかったように見えた。

 

「いやいや、2勝できただけでも異常事態だから。風間さんはボーダーのトップ層なんだよ」

 

熊谷が慰め、というよりも純粋な賞賛の声をかけるが、神園は深いため息で返した。

 

「風間さんが3位なら、1位と2位はどれだけ化け物なんだ」

 

「珍しい。負けたのがそんなにショックだったの?」

 

「それもあるけど、次に戦うならもっと万全の準備をしてから挑みたい」

 

神園は先程の落ち込みからうって変わって、好戦的で鋭い笑みを浮かべる。熊谷はそれを不思議そうに見つめていた。

 

「それで、僕はランク戦を経験したけど、熊谷は対戦相手の当てはあるのかな?」

 

(このバカ、自分が『自分から話しかけられないコミュ障』だったのをすっかり棚に上げてる)

 

「いや、そもそも『ランダムマッチ機能』があるから、自分で探す必要なんてないわよ」

 

その一言に、神園が石のように固まった。

 

「え、なにそれ」

 

「何って、ランク戦の基本機能でしょ」

 

分かりやすく絶望の底に沈む神園に、熊谷は1ミリも悪くないはずなのに何故か申し訳ない気分になりながら丁寧な説明をした。

 

「次からは僕もそうするよ」

 

「そうしなさい。じゃないと永遠に誰とも戦えないんだから」

 

神園は抗議したげに口を動かしたが、結局お手上げとばかりに両手を挙げた。

 

「僕は少し休んでるから、ランク戦してきなよ。頑張ってね」

 

「絶対に私のルームに割り込んでこないでよ?」

 

熊谷が神園の乱入を警戒しつつ歩いていくのを見送り、神園は一人、風間との戦いを脳内で反芻する。

 

(判断の最適化が追いついていない僕に対して、風間さんは常に最短ルートで完璧な答えを出していた。あ、熊谷勝ってる)

 

モニター越しに同期が相手を容赦なくボコボコにしているのを見て、あの程度の相手なら勝って当然だと思った。

 

「神園、で間違いないか?」

「少し時間いいかしら?」

 

神園は、今日はよく背後から話しかけられる日だなと内心でぼやきながら振り返る。そこには見覚えのある2人が立っていた。

 

「加古さんと、二宮さん、ですよね」

 

「ああ、そうだ」

「あら、よく知ってるわね」

 

(同時に喋るのをやめてほしい。僕が知らない間に、コミュニケーションの基本は聖徳太子方式になったのか?)

 

「俺のことを知っているなら話が早い」

「それなら話が早いわね」

 

「話が早いですか?」

 

強烈な嫌な予感がし、神園の背中を一筋の冷や汗が流れる。

 

(今日は厄日か?それとも吉日か?トップランカー2人と立て続けに知り合えたことを、幸運と思うべきか不運と思うべきか)

 

「俺とランク戦をするつもりはないか?」

「私の隊に入らない?」

 

(声が重なって聞き取れない)

 

「すいません、1人ずつ話してもらえますか?」

 

「俺とランク戦を──」

「私の隊に──」

 

「二宮くん、譲り合いって言葉知ってる?」

 

「お前に同じことを問いたい」

 

「レディーファーストでしょ?」

 

「日本は男女平等国家だ」

 

「気遣いができる大人の男になるつもりはないのかしら?」

 

「そういうのは、男を立てている女が言うことだ」

 

神園の目の前で、ボーダー屈指の強者2人がバチバチと激しい火花を散らし始めた。

 

(なんで僕を挟んで喧嘩してるんだ。まさか、風間さんに小さいと言ったこと(言ってない)を根に持った手の込んだ嫌がらせ!?)

 

「あ、すいません。友人のランク戦が終わったみたいなので、失礼します」

 

神園は熊谷を都合のいい言い訳の道具に使い、脱兎のごとくその場から逃走した。

 

「B級初勝利、おめでとう。まあ、あの程度の相手なら勝って当然だけど」

 

「うん、ありがとう。一言多いけど」

 

ボーダーの廊下を歩きながら、神園は熊谷に冷えたジュースを手渡した。

 

二宮と加古の理不尽な争いから間接的に救ってくれたことへの感謝も込められているのだが、そんな複雑な事情を知る由もない熊谷は、素直にそれを受け取った。

 

 


 

 

 

神園 冬

 

〔PROFILE〕

 

ポジション:万能手(オールラウンダー)

 

年齢:15歳(中3)

 

誕生日:12月24日

 

身長:175cm

 

血液型:O型

 

星座:かぎ座

 

職業:中学生

 

好きなもの:甘味、水泳、映画、自分

 

顔がいい。内弁慶のコミュ障の癖に外面は悪くないという矛盾。仲良くなったら割とふざけあったりする

 

サイドエフェクト:超動体視力

 

読んで文字の如く。小さい頃は気持ち悪くてよく吐いた。慣れるまでは地獄。死んだ方がマシと思うほど精神的に追い詰められていた

 

 

 

 

〔FAMILY〕

 

母、父、共に死別

 

 

 

〔RELATION〕

 

三上歌歩←幼馴染み。姉弟の面倒を見ていて偉い

 

熊谷友子←同期。サバサバしていて話しやすい

 

菊地原士郎←同期。大変だったんだね。仲間意識

 

風間蒼也←良い人?まだわからない

 

加古望←オーラがある。どこかのお嬢様なんだろうか

 

二宮匡貴←スーツがかっこいい。コーヒーが似合いそう

 

 

 

 

 

 

 

 

三上歌歩→幼馴染み。疲れている時に大福を持ってくる

 

熊谷友子→同期。顔が良いだけのコミュ障

 

菊地原士郎→同期。お互いサイドエフェクトに振り回された。仲間意識

 

風間蒼也→期待の後輩。思い返せば、そこまで失礼な言動はなかった。廊下で会った加古と二宮に話した

 

加古望→入隊候補者。ログで実力は確認済み。とりあえず、炒飯でもご馳走しようかしら?

 

二宮匡貴→射手として期待。どれだけの実力か自分で試してみたい

 

 

 

 

 

 

〔PARAMETR〕

 

トリオン 14

 

攻撃 13

 

防御・援護 10

 

機動 8

 

技術 14

 

射程 6

 

指揮 4

 

特殊戦術 7

 

TOTAL 76

 

 

 

〔TRIGGERSET〕

 

主トリガー

 

孤月

 

バイパー

 

グラスホッパー

 

韋駄天(試作品)

 

 

 

副トリガー

 

バイパー

 

メテオラ

 

シールド

 

バッグワーム

 

 

 

モテるキャラグラフ→モテたいモテる

 

派閥グラフ→城戸派寄り

 

成績グラフ→文化系で成績は良い

 

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