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「どうするか」
神園冬は訓練室で1人考える。あまりのスカウトの多さに。
B級に昇格してから防衛任務の参加資格をゲットしたので他部隊と合同で参加し、暇な時は訓練室のランダムマッチング機能を使いランク戦をする。そんな生活を数ヶ月間繰り返していると、いつの間にか複数の隊からスカウトされていた。
(必要とされるのは嬉しいけど、別に入隊を急ぐ理由がないんだよね。高校入試もあるから勉強もしないとダメだし)
改めてスカウトしてもらっている隊を整理する。冬島隊、加古隊、影浦隊、香取隊、弓場隊、那須隊。
(冬島隊は上級者向けの隊。隊長の冬島さんがトラッパーで、戦闘能力を持っているのはスナイパーの当真さんだけ。オペレーターの真木さんは優しくて関わりやすいけど、この少数精鋭に入るのは中々勇気がいる)
(加古隊も冬島隊と似ている。違うのが、点を取るのはシューターの加古さん、試作品トリガーを好んで利用していること。加古さんはよく炒飯を作ってくれるし、親しみやすい。入隊したら1番面白そうなチーム)
(影浦隊はアタッカーとガンナーで構成されてるチーム。2人とも実力者だとは思うけど、将来性が少し、ほんの少しだけ不安。なにより、影浦さんから誘われたわけじゃなくて、オペレーターの仁礼さんから誘われたからスカウトといっていいかも微妙)
(香取隊は香取中心のチームで、他のメンバーはそのフォロー。連携というよりも、個人プレーが多い印象。良くも悪くも香取の調子に左右されるチーム。面白いチームだけど、入りたくはないかも)
(弓場隊はスカウトしてもらったチームだと、1番バランスが取れているチームだと思う。隊長と副隊長で役割分けされてるし、僕が入ったとしても上手く調整してくれそう。隊長が体育会系気質なのと、副隊長が除隊するかもしれないって話じゃなかったら1番ありなチームだった。押忍)
(那須隊は最近結成されたチームで、少し前にボーダーに入った那須と日浦、熊谷に志岐の4人で構成されたチーム。結成したばかりだからB級下位ではあるが、すぐに上位に食い込むと思う。結成されたばかりなのが不安要素であり、オペレーターの志岐が男が苦手なのと、隊服のデザインがちょっとアレなのを除けばいいチーム。那須と熊谷、同年代がいるから馴染みやすそう)
(隊服についてはどのチームもアレだから変わらない。全チーム、二宮隊を見習った方がいいと思う)
考えるのをやめ、身体を伸ばす。それと同時にぐうぅ〜と、小さく神園のお腹が鳴る。
「考え事をするとお腹が空く。食堂でご飯でも──」
「あら、お腹がすいたの?」
真横から聞こえた声に思わず心臓が飛び出そうになる。いつの間にか隣に座っていた女性に目を向ける。
「加古さん、ビックリしましたよ。いつからいたんですか」
「5分くらい前からかしら?」
微笑んでいる加古に少しだけ神園は戸惑う。美男美女のオーラに、周囲は自然と距離を開けていた。余談だが、この現象は加古+二宮、加古+鳥丸でも起きることがある。
「僕に何か用でした?あ、スカウトの話ならもう少し考えたいので時間をもらいたいんですけど」
「そう、その事についてだけど、賄賂でも贈ろうかと思ってね。お腹すいたんでしょ?ちょうど炒飯を作りたい気分だったからご馳走するわ」
(優しい。影浦さんはどうしてこんなに優しい人をファントムばばあなんて呼ぶんだろうか。戦い方が関連してるのはそうだけど、ババァじゃなくてもいいじゃないですか。ファントムねぇねとか、ファントム姉ちゃんとか)
「折角なんで、暇そうな人呼んでもいいですか?人が多い方が楽しいですし」
それはそれとして、神園は1人で博打を打つつもりは毛頭なかった。善意と味は別物である。
「えぇ、もちろんよ」
パチッとウィンクを決める加古を見て、神園も微笑みを返してから知り合い数名に電話をかける。
神園にまんまと呼び出された面々は表面上には出さず、静かに後悔していた。何故来てしまったのかと。
(神園の野郎、卑怯だろ。前に話してた推理小説を渡したいから来いっていうから来たのに、そのまま加古隊室まで連れてくるなんて。だから、用事がないか腹が減ってないかを聞いてきたのか。実際に小説を貸してくれたから、嘘でもねぇのが悪質だ)
被害者1、諏訪は黒幕に視線を向けるが、当の本人は顔の良さでどうにかなると思っているのか微笑んでいる。神園にはコウカがナイヨウダ。
(貴様、覚えておけ。この食事が終わったあとにすぐ訓練室に直行だ。まさか俺が年下の罠にハマるとは。やけに暇かどうかを気にしていたと思ったらこういうことか。加古、今すぐに『二宮くんに出す炒飯はないわ』って言え。俺に逃げ出すことの出来る口実をよこせ)
被害者2、二宮は加古が自身を追い出すように願う。当然ながらその視線はこの状況を引き起こした大悪へと向けられている。大悪は二宮と視線を合わせようとせず、キッチンで炒飯を作っている加古を見ている。
(なんだ?なんで、こいつら神園を見てやがるんだ?そんなにファントムばばあの作る炒飯を食いたくないのか?年下相手に睨むみてぇなことしてたら可哀想だろ。特に悪意も何も感じねぇんだから。むしろ、仲間意識みてぇに暖かくてムズムズする感情を感じるぞ)
被害者3、影浦は加古炒飯を知らなかった。呼び出された3人の中で唯一、神園を睨んだりはしない。むしろ、神園の味方側の人間だ。
「今まで当たりの炒飯に当たったことないんです。食べた事のある人の話では、8割美味しい炒飯で2割がハズレってことなのに、僕はずっと2割を引いてるみたいなんですよね」
神園がキッチンには聞こえないよう静かに話す。3人も密着して加古には聞こえないように気をつける。
「僕が初めて引く当たりの加古炒飯、1人で食べるんじゃなくて、先輩方と一緒に食べたいと思ったんです。もし迷惑だったら、本当にすみませんでした」
神園は嘘をついてない。1人で食べるよりもみんなで食べたいというのも本当。当たりを引いたことがないのも本当。影浦以外は騙し気味に呼び出したため、謝罪しているのも本当。なんとも奇妙なことに、嘘はついていない。一緒にハズレか当たりかわからない炒飯を食べることの仲間意識、これもかわらない。
「バカなこと言ってんじゃねぇぞ。俺ぁ、腹が減ってるから来たんだ。後輩との交流を迷惑なんて思わねぇよ。おめーは、考えすぎだ。一緒に美味い炒飯食らうぞ」
多少口は悪いが思いやりのある諏訪は、そう言われると呼び出したことの恨めしい気持ちより、嬉しさが上回り覚悟を決める。
「嬉しいこと、美味しいものを共有したい気持ちはわからないでもない。もう少し時と場合を選べとは思うが──仕方ない。今日は諦めて美味い炒飯を全員で食べるか」
割と素直に慕ってくれる後輩が可愛い二宮もそう言われてしまえば落ちてしまう。見方を変えれば、8割の可能性でまともな炒飯がでてくると内心落ち着かせる。
「ハズレとか当たりとか、お前らなんの話をしてやがんだ?」
「大丈夫、僕たちは全員で美味しい炒飯を食べる。影浦さん、それで全てが終わる話だよ」
3人の覚悟が決まった顔を見て、思わず影浦も空気にのまれる。そうこうしているうちに、炒飯を作り終わった加古が人数分運んでくる。
「お待たせ。今日のは自信作なの。『蜂蜜イチゴ炒飯』よ、どうぞ召し上がれ」
影浦の時間のみ止まった。影浦は他の3人が『美味しそう』『いい匂いだな』と言っているのを聞いて、正気を失っていると素直に思った。だが、口にはしなかった。加古から悪意を感じないからだ。嫌がらせとかではなく、本当に善意で炒飯を出してくれていると理解したからだ。
全員が同時に炒飯を持ち上げ、そのまま口の中に入れる。
4人を襲う言い表しようのない不快な甘さ。『どうかしら?』とニコニコ笑顔で聞いてくる加古に不味いなんて言う人間はいない。いかに二宮でも、影浦でも口に出せなかった。
「なんつーか、甘みが炒飯の美味さを引き立ててるの、か?」
諏訪は水で流し込みつつ、感想を伝える。水を口に含むことで、甘さは更に口全体に広がる。
「久々に食べる味だ」
今までに感じたことのない味を我慢しながら、二宮はできる限り口に頬張ってから水を使わずに流し込む。東隊にいた時のことが走馬灯で流れ出す。
「.........お好み焼きとかも、新しい味を開発することがある。多分、そういうことなんだろ」
影浦は二宮と同じく急いで頬張り、最後は水で流し込む。影浦が加古に対して気遣いをした珍しい光景だ。
「美味しいですよ」
神園は味わうようにゆっくりと口に運ぶ。時折水を飲んではいるが、流し込んだりはしていない。
(まさか、味音痴なのか?いや、最初にハズレの炒飯しか当たったことがないって言っていたから、味覚は正常のはずだ)
(加古を気遣っているのか?だとしても、そんなに味わって食べるなんて、手の込んだ自殺でしかないぞ)
(マジか。ノーダメージ、なのか?)
「みんな完食してくれて嬉しいわ。あと1人前ならおかわりあるけど、誰か食べる?」
諏訪は何気なく上を見てお腹いっぱいアピール、二宮は時計を見て時間がないですアピール、影浦はスマホで連絡を返すふり。3人ともおかわりなんて地獄は嫌だった。
「3人ともお腹いっぱいみたいなんで、僕が食べてもいいですか?」
「あら、大盛りにしたのに食欲旺盛ね。すぐに持ってくるわね」
(確かに、大盛りだったな。余裕がなくて、あんまり覚えてねぇけど)
(無理はするなよ。冷や汗をかいている)
(今度、うちのお好み焼き屋に連れて行ってやるか)
加古含めて4人に見守られながら、神園はおかわりを完食した。最後まで嫌な表情1つ見せずに食べるその姿に、3人は少なからず感動した。
「今日は大丈夫?眠たくない?」
昼食を食べ終わり、解散する流れとなったが、加古が神園に対してそんなことを聞いている。3人の視線は加古と神園に集まる。
「......今日も少しだけ寝ていいですか?」
「えぇ、もちろんよ」
その光景を見て3人は察した。限界を超えていたのだと、普段から限界を超えているのだと。巻き込まれるのは嫌だったため、3人は早足で加古隊室から逃げる。
(なんで僕は毎回当たりを引けないんだろうか)
この日、加古炒飯を美味しく食べようの会LINEが爆誕した。
「加古の炒飯を食べるなんて2度と御免だが、神園が1度だけ当たりを引くまでは付き合ってやる」
〔RELATION〕
諏訪洸太郎←口は悪いけどいい人。映画化した作品の小説なら持っているから気が合う。麻雀も出来るからたまに遊んでる
弓場拓磨←体育会系って感じ。熱いのも嫌いじゃないよ
風間蒼也←牛乳じゃなくてジュースを奢って欲しいです
影浦雅人←目つき悪いけどいい人。時折問題行動があるから、同じ隊になるのは微妙かも?
仁礼光←スカウト?してくれた。分からないことを聞くと嬉しそうに教えてくれる
真木理佐←優しい人。余裕があっていいなぁ
那須玲←顔の良さと行動が合ってない
熊谷友子←あ、もう隊に所属してるんだ。もしまだだったら、2人で新しい隊を作ろうって誘うつもりだった
加古望←手作りのご飯は温かくて嬉しい。当たりの炒飯を食べさせてほしい
香取葉子←防衛戦でシフト被った時に話しかけてくれるし、話していて楽しい。調子にムラがあるのだけ欠点
二宮匡貴←射手仲間。師弟関係とかではない。何かあったら相談しても迷惑じゃないかな?
諏訪洸太郎→趣味が合う。誘っても自分の隊には入らないだろうから、スカウトはしていない。スカウトライバルが多すぎる
弓場拓磨→心の中の闘志を表に出せ
風間蒼也→スカウト見送り。うちの隊に必要なタイプではない。牛乳を奢ってやろう
影浦雅人→あれだ、美味いお好み焼き屋連れて行ってやるよ
仁礼光→うちの隊にはコタツがある!頼られると嬉しいけど、勉強系の質問をされた時は固まった
真木理佐→三上ちゃんの幼馴染み。実力があって良い。目をつけてる
那須玲→射手の師匠(非公認)。一緒の隊で頑張ろうね
熊谷友子→コミュ障なんだから、うちの隊にしておきな。何かあったらフォローしてあげるから
加古望→寝顔も可愛い子。うちの隊に来たら今よりと可愛がってあげる
香取葉子→本命。見かけたら話しかけに行く
二宮匡貴→年上として相談くらい幾らでも乗ってやる。加古炒飯は1回当たりがでたら終わりだからな
幼馴染みの三上さん、そろそろ出番じゃないの!!