ワートリ〜顔が良い内弁慶〜   作:Mr.♟️

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2話

 

(息抜きも必要)

 

ボーダーの防衛任務、受験勉強。中学3年という貴重な時期をその2つだけに費やしてもいいものだろうか。いいわけがない。好きなことが出来ないストレスしか溜まらない生活は精神衛生上よくない。

 

そんな言い訳の元、神園冬が来ているのはプールだ。大型のレジャープールなんて洒落たものではない。プール内にあるのは、レーンが5個の多目的プールと採暖プールだけ。

 

(レジャープールなんて話しかけられるし人が多いしで泳ぐ場所じゃない。こういう老人会くらいしか人が来ないようなプールの方がいい)

 

実際、プールにいるのは神園1人。貸切状態といっても過言ではない。水着に着替え、冷たい強制シャワーを浴びせられ、準備運動をしてからプールに入る。

 

プール場に響くのは自身が発するざぶざぶと泳ぐ音だけ。視界には誰一人おらず、深く潜れば静寂が神園を支配する。

 

(落ち着く)

 

神園がプールで泳ぎ始めて3分程度経過した頃、強制シャワーの音が聞こえてくる。

 

(今日は老人会がプールを抑えてる日じゃないはず。僕以外に人が来るのは珍しい)

 

そう思いながらも、自分には関係ないと泳ぎ続ける。

 

(もし団体で10人とか入ってきたら、今日は帰ろうかな。邪魔だから早く帰れとか思われながら泳ぐの嫌だし)

 

そんな神園の思いやり?とは裏腹に、プールに来たのは女性一人だった。泳いでる最中に横目でチラリと確認する。

 

(とりあえず団体じゃなくてよかった。流石にプールに来て数分で帰るのは嫌だったからね。これで本当に気にせずに泳ぎ続けれる)

 

神園はプールに来た女性のことは気にせずに、そのまま泳ぎ続ける。時折視線を感じても、気づかなかったことにして泳ぐ。

 

神園が30分程度泳ぎ続けていると、女性が神園のいるレーンに迫ってくる。

 

(お互い端のレーンを使ってるから、泳いでる最中によれたってことは考えられない)

 

素直に面倒くさいと思った。この状況で見知らぬ女性が話しかけてくる理由、それはナンパしか考えられない。プールで落し物を拾って届けるなんて可能性がない以上、やはりナンパである。

 

(そういうのが面倒だからレジャープールとか嫌いなのに、こんな場所でも起きるなんてね)

 

神園冬は面倒くさい男だ。モテたいしモテる。でも、ナンパをされたいわけでも彼女願望があるわけでもない。

 

(とはいえ、冷たくあしらうわけにもいかない。声をかけようとしてくれている以上、勇気をだしてるのは間違いないし、無駄な精神的ダメージを与えたくない)

 

「神園くん、だよね?」

 

「ごめんなさい。泳ぐのに集中したいん、月見さん?」

 

神園の前に現れたのは面倒なナンパ女子ではなく、ボーダーの高嶺の花だった。

 

『休憩時間です。プールから上がってくださーい』

 


 

神園と月見は2人で採暖プールに入る。サイズは小さく、例えるなら旅館の家族風呂くらいの大きさだろうか。

 

「月見さん、プールとかくるんですね」

 

当然ながら、神園はドキドキしていた。防衛任務のオペレート(三輪隊と合同)でお世話になっている美女と近距離で互いに水着。

 

クールぶっていたとしても、神園冬は思春期の少年だ。その水着が学校指定のものであろうとも、心臓の鼓動は若干早くなる。

 

(こんなの、混浴と大差ないぞ)

 

「えぇ、泳ぐの好きなの。前まで通ってたプールが潰れちゃってね。だから今日からはこのプールなの」

 

「この施設、程よく人が来ないのがいいんですよ」

 

「そうなのよ。大型のレジャープールとかも楽しいけど、1人で泳ぐならこういう所がいいわね」

 

「月見さんもこのプールに通うなら、今後も鉢合わせすることがあるかもしれませんね。その時はよろしくお願いします」

 

「そうね。その時は声をかける前に私だってわかってもらえるように頑張るわ」

 

「うっ、仕方ないじゃないですか。知らない人をジロジロ見てセクハラとか言われるの嫌ですもん」

 

『休憩時間終了でーす。次の全体休憩は1時間後です』

 

アナウンスが流れる。月見と神園は互いに顔を見合わせ。

 

「折角だから、競走でもしてみる?」

 

「別にいいですけど、ハンデはどうします?僕だけ背面とかですか?」

 

「ハンデなんていらないわ。泳ぎには自信があるの」

 

神園のナチュラルに失礼な言動に月見が腹を立てた様子はない。三輪隊のオペレーターを務めているだけあって寛大だ。

 

「月見さんがそれでいいならいいですけど、あんまり落ち込まないでくださいね」

 

「ふふ、そんなに自信があるなら負けたらジュース奢りってのはどうかしら?」

 

「構いませんよ。泳ぎましょうか」

 

少しだけ目の色が変わった月見と、いつも通りの神園。ほんの少しだけピリついた空気で勝負が始まる。

 


 

「もう、神園くん早すぎよ」

 

「泳ぎには自信があったんで。ジュースありがとうございました」

 

梅見屋橋で仲良く歩く2人の姿があった。神園はジーパンにライトベージュのパーカー。月見も同じくジーパンにライトベージュのパーカー。奇妙な偶然は続くようで、なんとブランドまで全く同じである。

 

(若干気まずい)

 

(こんな偶然ある?)

 

2人ともその話題を避けているが、美男美女が似たような服装で隣を歩いている。たったそれだけのことで注目を集めてしまう。事実、すれ違った中高生はチラチラと振り返っている。

 

「えっと、もうそろそろです。教えてもらった美味しいお好み焼き屋さんがここら辺に」

 

時間もまだ夕方くらいと早かったのもあり、どうせならご飯でもどうだろうか?という話になり2人は一緒に行動していた。その時に神園は、とある先輩のオススメ飲食店を思い出し、店選びを任せてほしいと自ら願いでた。

 

(ここまでの道のり、どことなく見覚えがあるのよね)

 

「あ、あった。ここです。この『お好み焼き かげうら』って店です。ボーダーの先輩が美味しい店だから、1回は来いって言ってたんですよ」

 

「その先輩って、影浦くんじゃなかった?」

 

「!よく分かりましたね。カゲさん、よっぽど気に入ってるのか『絶対に1回は行け。ってか、来いよ』なんて言ってたんですよ。1人で粉モノ行くのは少しハードル高かったんで、今日はいい機会だと思って」

 

先輩から勧められた飲食店に来たのが少し恥ずかしいのか、神園は取り繕うように早口だ。月見はほんの数秒考える。

 

(間違いなくデートだと思われる)

 

思うなという方が無理な話だ。偶然とはいえ、オフの日に2人でカップルコーデみたいな服装をしている。その格好を知り合いに見られたら間違いなく勘違いされるだろう。

 

(んーー、でも、訂正すればいいだけだから別にいいかな)

 

この間わずか2秒である。

 

「入りましょう。あ、もしかしてお好み焼き嫌いでした?えっと、今から別のお店を」

 

「大丈夫だよ。入ろっか」

 

ガララと扉を開くと、店員がすぐに案内に来る。この時間は混んでいなさそうだ。

 

「しゃーせー。って、コノヤロウようやくかよ!」

 

「え?カゲさん。なんで??」

 

いきなり現れた影浦に神園は頭をワシワシと雑に撫でられる。意外そうにそれを眺める月見と、ゔゔゔと威嚇する神園。

 

「2人とも仲がいいんだね」

 

「あ?なんで月見が?──お前、デートするのにうちの店を選ぶなよ」

 

「カゲさんの店なんて知りませんからね。デートじゃないですよ。偶然会ったんで、どうせならご飯でもってだけですから。あと、頭撫でないでください」

 

(悪感情を抱いてない癖に、毎回抵抗するんだよな)

 

「そうなの。偶然プールで会ってね、そのまま解散だと味気ないから一緒にご飯に来たの」

 

「カゲさんも暇なら一緒に食べます?お好み焼き屋さんとか初めて来たんで、オススメとか焼き方とか教えて欲しいんですけど」

 

『雅人!いいよ、友達と一緒にご飯食べな!』

 

やり取りが聞こえていたのか、キッチンから影浦の母親の声が聞こえる。影浦は仕方ねぇなと言いたげに席に案内し自身も座る。

 

「美味いお好み焼き食わせてやるよ。お前ら、好きなネタあるか?」

 

「任せるよ」

「任せます」

 

影浦は材料を取りにキッチンに向かう。

 

「お好み焼き屋さん初めてなの?」

 

「はい。1人で来るにはハードルが高いし、歌歩を誘ってまで来たいと思わないんで、機会がなかったです」

 

月見は『友達とは?』とは聞かなかった。今の会話で真っ先に幼馴染みの名前が挙がった時点でお察しである。

 

「待たせたな。とりあえず、スタンダードに豚玉と豚玉チーズでいいだろ?」

 

神園は影浦を訝しげに見つめ、言いづらそうに口を開いた。

 

「カゲさんは8割当たりで2割ハズレとかじゃないですよね?」

 

真面目なトーンでそんなことを言うものだから、影浦のみならず月見も笑った。笑うなという方が無理だろう。

 

「10割うめぇに決まってんだろ」

 

「ちょっと、ダメ。それは面白すぎるって」

 

鉄板を熱し、影浦がジュージューと焼き始める。珍しいメンバーだからと、月見が3人で自撮りし、そこそこに話が盛り上がる。

 

「そういえばよ、神園。おめー、前に光に数学の問題聞いただろ?」

 

「え、光ちゃんに?」

 

光の壊滅的な学力を知っている月見は驚く。

 

「あ、はい。聞きましたよ。大した問題じゃなかったですけど」

 

神園は数日前に確かに仁礼に聞いたことがある。質問すると嬉しそうにしていたから、その延長線上で数学の問題を聞いたら固まった。固まったあと、ちょっと待ってろとどこかに消えていったのだ。

 

「いつ解説を聞きに来るのかって、ウキウキしてたぞ」

 

(あいつが俺に勉強の質問してきたのなんて初めてだったから、熱でもでたんじゃねぇかってビビった)

 

「???え?解説聞きに行かないとダメな感じですか?」

 

そんな数日前の問題は神園は既に解決している。今更解説されても困ってしまう。

 

「ったりめーだろ。お前が質問した事実は残ってんだからよ。それともなんだ、うちのオペレーターを悲しませようってか。あ?」

 

(流石にちょっと理不尽な気もするけど、光ちゃんが勉強するなんて珍しいからね。やる気なくしたら可哀想だし)

 

「いや、まあ、分かりました。そのうち影浦隊の隊室に行きますよ」

 

「よし。んで、お前はいつうちの隊に入るつもりだ?」

 

「え?」

 

「あら、影浦隊に入ることにしたの?色んな隊からスカウトされてたわよね?」

 

当たり前のように聞いてくる影浦と、困惑する神園。決めたんだねーとのほほんとしてる月見。

 

「いや、決めてないですよ。ってか、カゲさんも認めたんですね。てっきり、仁礼さんが勝手にスカウトしてるのかとばかり」

 

「うっせぇ。いいか?お前がどの隊からスカウトされてるか大まかに知ってるが、一番自由に出来るのは間違いなくうちの隊だぞ」

 

「そうですか?」

 

「ああ。例えば弓場隊、もうほとんど軍隊と変わんねぇ。引き換えうちは、自由とコタツがある」

 

(コタツに入るのは光の許可が必要になるがな。こいつなら、問題ねぇだろ)

 

「なるほど、確かに」

 

ここぞとばかりに影浦は入隊するようアピールする。自身のサイドエフェクトと神園のサイドエフェクトがあれば、隙がない部隊が出来上がる。なにより、今よりも楽しくなるはず。

 

「でも、加古さんも入隊したら基本自由にしていいって言ってくれてるんで、あんまり変わらないかもしれないですね。加古隊だと加古さんの手料理がついてくるし」

 

「マジか?」

 

このマジかは、まだ炒飯チャレンジするつもりかの意である。

 

「那須隊なんて、入隊したら定期的にお菓子パーティーをしようって言ってくれてるんです。なんか、たまにワイワイしてチームメイトで遊ぶのも楽しそうですよね。年上いないから気を遣わなくてもいいですし」

 

「お前が俺含めて年上に気を遣ってるところ見たことねぇよ。ナチュラル失礼野郎が何言ってんだ?」

 

(神園くんお菓子パーティー楽しみにするタイプなんだ。今度お菓子あげようかな)

 

「冬島隊は隊室綺麗だし、真木さんは偶に言葉強いけど優しいし映画好きだから話してて楽しいし、冬島さんと当真さんはゲーム一緒にやってくれるし年上の余裕があって格好いいんですよね」

 

「優しい?聞き間違いか?おい月見、こいつは真木が優しいって言ったか?」

 

「間違いないよ、影浦くん。私もそう聞こえたから」

 

「影浦隊も勿論楽しそうだと思います。だから、どこの隊に行くか迷ってるんですよね。あ、香取隊と弓場隊も選択肢にありますよ」

 

影浦と月見は『優しい?』と互いに見つめては首を傾げるロボットになった。お好み焼きを食べ、この日は不思議な空気になって解散した。

 


 

学校終わり、神園は寄り道することなくボーダー本部に向かった。防衛任務があるわけではなく、前日影浦に言われたため仁礼の解説を聞くために来たのだ。特に約束しているわけではない。

 

「奇遇だね、神園くん。これからランク戦?」

 

「ボーダーの入口で待ち構えてたら偶然じゃなくて必然だよ。なに、勘弁して。お前とランク戦したら今よりも弾バカの渾名が定着しそうで嫌だ」

 

「熊ちゃんの話だと、神園くんが2号で私が3号。出水くんと3人で弾バカトリオって呼ばれてるらしいよ。手遅れじゃない?」

 

神園は嫌な話を聞いたとばかりに額に手を当てる。那須はそれをニコニコと見ている。

 

「不名誉すぎる。僕の2号の名称を二宮さんに譲りたい。そもそも僕はオールラウンダーなのに」

 

「不名誉を年上に押し付けたらダメじゃない?」

 

「二宮さんなら許してくれる」

 

「ねぇねぇ、神園くん。ランク戦しよっ?」

 

距離を近づけ、上目遣いで那須は神園にお願いする。神園は助けを求めるように周囲を見渡すが、残念ながら全員目を逸らす。ここには、面倒事に関わる奇特な人間はいなかった。

 

「10本勝負1回だけなら」

 

「ありがとう。うちの隊に入った時にお互いの動きが分からないとダメだもんね」

 

「いや、その理屈はおかしい。まだ決めてないから」

 

「細かいことは置いといて、神園くんも弟子がどこまで上達したか気になるでしょ?」

 

「同学年を弟子にした覚えはないのに、いつの間にか勝手に師匠にされてるんだよね。熊谷、なんで僕にこんな暴れ馬を紹介したんだ」

 

(仕方ない。速攻で終わらせて仁礼さんのところに行こうか)

 

 

 

神園VS那須

 

10-0

 

「よく短期間でそんなに成長できるね。いや、冗談抜きでその才能と努力が怖い」

 

「熊ちゃん、私の仇を──とっ、て」

 

「いや、それだと僕が悪役みたいなんだけど?」

 

「玲の仇、私が討ってみせる」

 

「あ、そのノリに乗る感じなんだ。いや、別にいいけど。手加減はしないよ?」

 

 

神園VS熊谷

 

10-0

 

「近寄らせなければアタッカーは怖くないよ」

 

「1人でダメでも、2人ならいけるよ。そうだよね、熊ちゃん?」

 

「当然だよ、玲」

 

「え、まだ続くの?さっきから僕のこと悪役に見立ててない?」

 

 

神園VS那須&熊谷

 

10-0

 

「30本目、これで満足してくれた?」

 

「私たちは2人だけじゃない。そうだよね、茜ちゃん!」

 

「はいっ!」

 

「観戦してた仲間を呼び出すのはズルくない?そろそろズルくない?」

 

「これが友情の力だよ」

 

「熊谷?熊谷さーん?その友情、敵からしたら酷すぎるんだけど?」

 

神園VS那須&熊谷&日浦

 

10-0

 

「もういいよね?言い難いんだけど、単体でもっと強くなるか連携を磨くかしないと、僕には勝てないと思うよ?」

 

「反省会しよう」

 

「うん。神園も参加するでしょ?」

 

「え、いや僕は」

 

「神園先輩も参加してくれるんですか!!」

 

「いや、日浦さん。それはずるい。そんなに目を輝かせて僕を見ないで。そういうのに弱いんだ。でも、参加しないよ。僕の意思はダイヤモンドのように固いんだ」

 

 

 

 

 

 

「那須はバイパーをリアルタイムで引けるのは本当に凄いと思う。でも、弾道が規則的だからかわすのが難しくない。僕もリアルタイムで弾道調整できるから尚更読みやすい。バイパーの良さを最大限に活かせてないんだよね。規則的な動きならハウンドでよくない?あ、連携不足だと感じる部分があるんだけど、熊谷は後ろからの誤射を怖がって偶に動きが鈍くなってるよ。人数が多くなって動きが鈍くなるなら1人の方がいい。自分で倒すって気迫がないから、熊谷が近づいてきても怖さがない。那須に任せすぎたらダメだよ。日浦さんはスナイパーの基本通りの動きができてるしいいと思う。でも、僕みたいなサイドエフェクト持ちを相手にするならもう少し動き方を工夫した方がいいね。あ、でも、日浦さんについては前衛がしっかりしてないと出来ることが限られるから仕方ない部分が強いよ。あんまり落ち込まないでね。いい動きが出来たご褒美に飴いる?」

 

「なんか、茜ちゃんに甘くない?」

 

「私なんてダメなところばっかり。いや、知ってるけど。鞭だけだと人は頑張れないんだよ?」

 

「頑張ります!」

 

「同い年なんだから、遠慮しないよ。強いて言うなら、熊谷は視野が広いと思う。ほら、那須が引っかかったグラスホッパーにひっからなかったし」

 

「あのわざとグラスホッパーを私たちに当てて体勢を崩す嫌な技ね。性格悪い」

 

「後ろにグラスホッパーを設置されてるなんて思わなかったんだもん」

 

「那須の場合は僕との相性が壊滅的に悪い。本当に残念なことに相性が悪い。相性が悪すぎる。最悪の相性だね」

 

「神園くん嫌い」

「なんで!?」

 

腑に落ちない気持ちになりながら神園は那須隊室を後にした。

 

「私、もう少し攻めっ気を持つよ。あと、後ろから誤射されるかもとか考えない」

 

「スナイパーとしての動き方。先輩にどう動けばいいのか聞いてみます!」

 

「私は自分のスキルの底上げかな。あとは神園くんの言う通り、連携をもっとスムーズにする必要があると思う。1対3で負けるのは悔しいしね」

 

「玲、神園いなくなったけど勧誘はいいの?」

 

「大丈夫。神園くんのバッグに入隊届を潜ませといたから」

 


 

神園が影浦隊室に向かっている道中、すれ違った真木に話しかけられる。

 

「あら、神園くん。防衛任務でも入ってたかしら?」

 

「あ、真木さん。いや、影浦隊に用事があって」

 

「影浦隊?まさか、あの隊に入るつもりかしら?」

 

少し口調の強い言葉に神園は平然と返す。

 

「最近よく聞かれますけど、まだ決めてないです。どの部隊も魅力があるんで、悩ましいんですよね」

 

「そう。例えばうちの隊にはどんな魅力があるのかしら?」

 

「魅力が多くて、とてもじゃないですけど言いきれませんよ。それに、その隊のオペレーターに言うのは恥ずかしいです」

 

真木は少し考え、質問を変える。

 

「神園くんから見て、冬島隊の1番の魅力はなに?」

 

「真木さんがオペレーターであることですかね」

 

即答である。数秒も経たずに返ってきた回答に真木は一瞬目を見開く程に驚いた。

 

「そう。私がオペレーターであることのどこに魅力を感じたのかしら」

 

「偶に厳しいですけど、ズバズバした物言いは見ていて気持ちいですし、殆どの時は優しい。映画の話が出来て楽しいことですかね」

 

「や、優しい?そんなこと、初めて言われたわ」

 

「そうですか?少なくとも僕は優しいと思いますよ」

 

滅多に言われないことを言われ、珍しく動揺する真木理佐。彼女は自身の想定を下回る時、明らかに手を抜いて動いている時以外には基本厳しい言葉を使わない。元々の言葉が厳しいため、違いは分かりにくい。これは、周りも本人も気づいていない傾向である。

 

「そ、そう。それなら、神園くんはうちの隊に入るのよね?」

 

「え?いや、それとこれとは話が別といいますか。もう少し迷っていたいといいますか」

 

「私が早生まれだから年齢は違うかもしれないけど、同学年よね?」

 

「そうですね。もしかしたら、高校は同じ学校かもしれないですね」

 

「どこを受けるか決めてるの?」

 

「まだ決まってないんで、勉強だけはしてるんですよ。学校にこだわりがないんで」

 

「そうなのね。お互い高校受験生だし、分からない問題とかあったら教えてあげる」

 

「ほら、優しいじゃないですか」

 

なんでこんな話になっているんだろうかと疑問に思いながらも神園は話を続ける。

 

「──入隊届、書くわよね?」

 

真木はカバンから入隊届を取り出し、神園に押し付ける。

 

「え、いや、もう少し考えさせてください」

 

「それと、敬語じゃなくていいわ。同学年なんだし、仲良くしましょう」

 

真木は入隊届だけ押し付けて、そそくさと廊下を歩いていく。神園はその後ろ姿をポカンと眺めていた。

 

「あら、冬島隊に決めちゃったの?」

 

「加古さん。いえ、まだ決めてないですよ」

 

今日だけで何度言ったか分からない言葉を繰り返す。

 

「ふーん、そうなのね。神園くん、今暇かしら?」

 

「暇では「暇なのね。わかったわ、行きましょう」」

 

神園が答える前に、加古は誰かに電話しながら神園の手を引いてどこかに向かう。いつまで経っても影浦隊室に辿り着かない。

 

 

 

 

 

 

「なんなの、なんなのよ。もうっ」

 

その日、廊下を赤面しながら早歩きしていた真木理佐が見かけられたとかなんとか。

 


 

「連れてきたわ」

 

「連れてこられました、神園冬です」

 

連れてこられたのは食堂だった。目の前にいるのは、天ぷら蕎麦を食べていたであろうダンディな男性だ。

 

「加古、無理やり連れてきたらダメだろ?初めまして、東春秋だ。とりあえず座って楽にしてほしい」

 

「あ、はい」

 

言われるがまま目の前の席に座る。加古は東の隣に座った。

 

「いきなり見知らぬオッサンが目の前にいて落ち着かないか?コーヒーは飲めるかな?」

 

「あ、はい」

 

「そうか。加古、彼にコーヒーを買ってきてくれないか?」

 

東は1000円札を加古に渡し、加古は文句1つ言わずに自販機に向かって歩いていく。

 

「お気遣いなく」

 

「気にしないくていい。加古に無理やり連れてこられたんだろ?」

 

「まあ、半強制的に」

 

「ハハッ、そうかそうか。余程加古に気に入られてるらしいな」

「そうなんですか?」

 

「ああ、間違いない。加古が隊員をスカウトすることは稀にあるが、俺に説得を頼むことはなかった」

 

「説得ですか?」

 

「そうだ。加古隊に入って欲しいからなんとかして欲しいなんて無理難題をついさっき言われたところだ」

 

「それは、ご愁傷さま?ですね」

 

「ハハハッ、俺も君のことは知っているよ。どうかな?もし良かったら、うちの隊に来ないか?」

 

「スナイパーだらけの部隊も面白そうですね。いやまあでも、これ以上選択肢は増やしたくないので遠慮しておきます」

 

「うちの隊のことを知っていたのか?」

 

「今の隊はスナイパーだけってことしか知りませんけど、昔のことなら月見さんから聞きました。かつては暴れ馬たちを御していた凄腕指揮官だって」

 

「なんだか無駄にハードルを上げられているな。大したことじゃない」

 

「隊に入るつもりはありませんけど、一度は指揮下に入ってみたいとは思ってますよ。防衛任務で組むことがあればお願いします」

 

「頼りにしてるぞ。っと、加古のお願いを聞かないと後が怖いな。そうだな、加古はボーダーで1番自由なやつだ」

 

「何となく察してます」

 

「仲間思いで実力も確かだし、加古隊に入りたいやつは多い。それでも加古は入隊を許したりしない。加古が認めた人間じゃないと入ることは出来ない」

 

「そう言われると誘ってもらえたことは嬉しいですね」

 

「君はその中でもトップクラスで、いや、間違いなく今までの誰よりも加古に見込まれている。好かれている」

 

「は、はぁ。そこまで言いきられると照れますね」

 

「間違いない。加古がここまで執着するとは本当に珍しい。だから、俺としては出来れば君には加古隊に入って欲しいと思ってる」

 

「そうですね、検討中です」

 

「それでいい、若者は悩むものだからな。無理強いはしない。後悔のない選択をするんだ。さあ、加古が戻ってくる前に行きなさい。多分、頷くまでニコニコ笑顔で見つめられ続けるぞ」

 

「え、はい!ありがとうございます!」

 

(東さん格好いい。あれが本当の大人の余裕なのか。大人の渋さがある。ああいう大人は格好いいなぁ)

 

そう思いながら、ようやく影浦隊室に向かう。

 

「東さん?」

 

「ハッハハ、あまり時間を奪ったら可哀想だろ?」

 

「東さん?」

 

「ハッハハハ」

 

「東さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ!ようやく来たか、おせーぞー」

 

「仁礼さん、ここに来るまで山あり谷あり悪路ありでした。今日中にここまで辿り着けた僕はすごい!」

 

「うちの隊にくるまでに登山でもしたのか??仕方ねーなー。アタシがジュースをもってきてやろう」

 

「どうも。あ、一応お茶菓子なんてのも持ってきました」

 

神園は虎のやのどら焼きを仁礼に渡す。仁礼は『いいとこのどら焼きだー』と喜びながらお茶を入れに行く。

 

「コタツ入ってもいーぞー」

 

「ありがとうございます」

 

(許可制なのか)

 

「んでんで、アタシがちゃんと前に聞いてきた問題解説してやるから安心しろよー」

 

仁礼は声からもウキウキしているのが分かるほどテンションが上がっている。影浦は神園が入ってきたタイミングで『よく来たな。行動が早いのは褒めてやる』と言い残して部屋から出ていった。

 

「えへへ、完璧に教えてやるからな」

 

 

 


 

 

 

 

 

〔RELATION〕

 

 

 

 

 

熊谷友子←悪ノリできる程度には仲がいい。同学年には甘くしないよー

 

 

日浦茜←素直でいい子。頑張ってるね、飴ちゃんをあげよう

 

 

月見蓮←まさかの共通点。今度一緒に水泳行こうって約束した

 

 

影浦雅人←カゲさんもスカウト賛成してたんだ。お好み焼き屋が実家なら最初に教えてください!

 

 

仁礼光←聞いたら嬉しそうに教えてくれるけど、勉強のことを聞いたら数日後に解説を聞くことになるから聞かないでおこう。感情を隠しきれないのが可愛い

 

 

真木理佐←やっぱり優しい。とっても優しい。入隊届どうしよう

 

 

那須玲←何故君は美形なんだろう。行動と顔がやっぱり会ってないんだよなぁ。なんでバッグに入隊届が??入隊届どうしよう

 

 

東春秋←格好いい。大人の余裕が溢れている。ダンディな渋さがある

 

 

加古望←顔の良さでゴリ押ししないでくださいね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊谷友子→私のことももう少し褒めてくれても...。実力不足は分かってるから頑張ろう。うちの隊に来るよね?

 

 

日浦茜→優しい先輩!手作りの飴玉をくれる!頑張ります!!

 

 

月見蓮→プールで見た彼は細マッチョだった。今度一緒にプールに行く約束をした。真木さんが優しい???

 

 

影浦雅人→お好み焼き屋が俺関連なのは店名で分かるだろ。いいからうちの隊に来い。後悔させねぇから。それはそうと、真木が優しい???

 

 

 

仁礼光→えへへ、アタシの解説わかりやすいだろ!カゲから教えてもらったからな。なーなー、コタツに入ってもいいぞ

 

 

真木理佐→優しいなんて初めて言われたかも。この感情の名前をまだ知らない。どの高校に行くのかな

 

 

 

那須玲→おししょーさまー。ねぇねぇ、いいでしょ?うちの隊に入ってよ。お菓子パーティーが君を待ってるよ

 

 

 

東春秋→冗談3割本気7割でさり気なくスカウト。どの選択をしてもいいが、後悔しないようにな。いや、選択に後悔はつきものか。頑張れよ

 

 

 

加古望→思ったより本気になっちゃったかも。うちの隊に来るわよね?

 

 

 

 

 

 




アンケートを見て更にどの隊に入れるか悩ましい。

どうして冬島隊こんなに人気なの?原作でまだ目立つ行動ないよね??思ったより各隊で競っていてビックリ

今回の話では1番真木理佐が可愛くなってしまったと思う
月見さんとは共通の趣味があって比較的書きやすい
影浦とはカゲさん呼びするくらいには親しくなってます!
光ちゃんが可愛いです!
那須が『おししょーさまー』と擦り寄ってきています
熊谷がそれに便乗して来い来いと誘惑してます!
東さんは神園くんを逃がしたので加古さんに詰められました!
加古さんは顔の良さでゴリ押そうとしてます!!
三上ちゃん!三上ちゃんの出番はまだですか!!?
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