ワートリ〜顔が良い内弁慶〜   作:Mr.♟️

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主人公イメージと隊服イメージを載せました。


4話

 

時が過ぎるのは早いもので、神園冬は高校へと進学していた。進学先はボーダーと提携している『六頴館高等学校』である。

 

「歌歩、ボーダー行くよね?早く行こう、急いで行こう」

 

「そんなに急いでるなら、1人で行っててもいいのに」

 

「嫌だよ。オペレーター志望者達の入隊式に僕1人で行ったら悪目立ちするもん」

 

本日5月1日は、ボーダーの入隊式を執り行う日だ。補足だが、入隊式は1月5月9月と年3回ほど行われる。入隊者達は一律して強制参加だが、隊員志望者とオペレーター志望者では会場が異なる。今回神園が行こうとしているのは、後者のオペレーター志望者たちのための入隊式だ。

 

「冬がカカシ状態にならなかったら悪目立ちしないよ。周りに知り合いがいないと知らない人に話しかけられないの、直した方がいいよ」

 

「違うから。別に知らない人だけの会場に1人で行きたくないとかじゃない。歌歩だって、どうせ会場に行くんだから一緒に行ってもいいかな?って思っただけだし。それ以上でもそれ以下でもないから」

 

普段よりも少し早い口調で否定する神園。三上の帰り支度を待っている時点でお察しである。

 

「はいはい。オペレーターの子達は逃げないから大丈夫だよ」

 

「逃げるよ。他のオペレーターがいない隊に盗られたら困る。オペレーターは2週間の研修が終わったらすぐに放流されるから、入隊式から動かないと間に合わない」

 

「今のまま私が兼任してもいいんだけど。はい、準備できたよ。行こっか」

 

「それだとA級に昇格した時に困るからね」

 

「ランク戦に参加しないんだから、気にしなくてよくない?」

 

「する。するよ。もう、めちゃくちゃ参加するよ」

 

部隊設立後、神園はランク戦への参加を見送ってきた。臨時オペレーターを立てれば参加できるのに、そうはしなかった。

 

「オペレーターと最低でも1人は隊員が入ってからじゃないと参加しないんだもんね。それじゃあ、冬はいつまで経ってもB級最下位のままだよ」

 

「うぐっ、歌歩さん?今日はいつもより切れ味が鋭すぎやしませんか?」

 

「だって、入隊したいって隊員をボコボコにして追い返すようなB級最下位部隊に入りたい人なんていないもん」

 

「いや、それはさ、雑魚に入隊されても困るというか、ある程度光るものがないと上手くやれないと言いますか。あの、さっきから最下位を強調してるように聞こえるのは僕の気のせいかな?」

 

「気のせいじゃないよ。それに、これからオペレータースカウトする気満々だけど、目をつけてる子はいるの?仮入隊時の成績はちゃんと確認した?」

 

三上の少し棘のある言葉は信頼の表れでもある。そのため、幼馴染みの神園は容赦なくボコられる。

 

「もちろん、事前調査済みだよ。根付さんがね、オススメのオペレーターを教えてくれた。もう僕は2択まで絞ってるからね」

 

「ふーん、女の子をスカウトするんだ。セクハラで通報されない?」

 

「冤罪だよ、冤罪。セクハラなんて、僕と対極の位置にあるね。そもそも、男のオペレーターとか見たことないんだけど」

 

信頼の表れである。

 

「今回の志望者で優秀そうなのは、今結花さんか武富桜子さんあたりかな。あ、その顔、当たってたみたいだね」

 

「新人オペレーターを潰すために下調べしていたなんて、なんて恐ろ」

 

「怒るよ?」

 

「すいませんでした」

 

(下調べしてないと思ってたけど、ちゃんとしてたんだね。今結花さんはボーダーにスカウトされて入った、所謂スカウト組。武富桜子さんは一般から入ってきた子だね)

 

「歌歩の言う通り、どっちかをスカウトする予定」

 

「冬と壊滅的に性格が合わなかったら面白いね」

 

「面白いと可哀想って言葉の意味を間違えて覚えちゃったのかな?」

 

「もしそうだったら、いつでもうちの隊室に遊びに来てもいいからね」

 

「女神様。猫かぶり性悪女とか思ってごめんなさい」

 

「来る時は手作り大福持ってくること。1分以上滞在しないことが条件ね。性悪だから優しくできなくてごめんね?」

 

「ただの大福のデリバリーじゃん」

 


 

神園と三上は舞台袖に潜り込み、入隊式の様子を眺める。入隊式をサポートしているボーダー関係者たちは、なんでいるの?とでも言いたげな表情を浮かべていた。

 

「もしかして、僕たち歓迎されてない?邪魔にならないようにしているつもりなんだけど」

 

「冬がいるから驚かれてるだけだよ。オペレーターの入隊式を見に来る変わった隊員なんて冬くらいだから」

 

「なるほど。どおりで壇上で演説している根付さんがチラチラ見てくるわけだ」

 

「根付さんも、まさか冬が入隊式に押しかけてくるなんて思ってもいなかっただろうね」

 

「人聞きが悪い。これは僕のやる気の表れでもあるんだ。むしろ、隊を組みたいのにこの機会を逃す方がバカなんだよ」

 

「入隊希望者を片っ端らから断って困ってる人の言葉とは思えないね」

 

2人は入隊式が終わるのを大人しく眺めている。根付の演説も終わりが近づいてきた。

 

根付が咳払いをして、舞台袖にいた神園と三上をチラリと一瞥する。

 

「?」

 

「?」

 

『それでは、本日今この瞬間よりボーダーに入隊した皆さんに、先輩オペレーターからのメッセージをもって式を閉式の挨拶とします。三上歌歩さん、お願いします』

 

「え?」

 

「わあ、歌歩よかったね。新人たちにトラウマを植え付ける機会、痛い痛い。脛を蹴らないで」

 

5回ほど神園の脛を蹴ってから、三上は舞台袖から壇上に移動する。それと入れ替わるように根付は舞台袖に下がった。

 

「神園くん、まさか式当日にスカウトに来るとは思っていませんでしたよ」

 

「いい人材はいつの間にか掻っ攫われますからね。割と切実に優秀なオペレーターを確保しておきたいんですよ」

 

「一理ありますね。実際、君が狙っていた武富さんは研修が終わったあとに新しい隊を立ち上げるみたいですし。なんでも、学校の先輩に誘われたとか」

 

「今結花さんはそんな事ないですよね?え、ないですよね?」

 

根付からの情報に神園は焦った。万が一、今も約束している部隊があれば自身が今日この場に来た意味が全くない。

 

「彼女はスカウト組ですから、そういったことはありませんよ。よかったですね」

 

「まあ、スカウトが成功するかは別問題ですけど」

 

「──恐らく問題ないでしょう」

 

根付は意味ありげな笑みを浮かべ、神園は訝しむ。

 

「本部が今さんを僕の部隊に推薦する代わりに広報部隊として活動して欲しいって話ならお断りですからね」

 

「純粋な善意ですから、安心してください」

 

「それならいいですけど」

 

神園は隊設立後、根付から隊員オペレーター必要な人材は全て用意するから嵐山隊に次ぐ第2のボーダーの顔になるつもりはないかと誘いを受け、それを断っていた。その後も度々誘いを受けている。

 

「あ、三上の演説も終わったみたいですね。それじゃあ、僕は今さんにスカウトかけに行くんで、失礼します」

 

「えぇ、頑張ってくださいね」

 


 

神園隊の隊室には、畳が敷かれている。畳の中央には掘りごたつが。全て神園が1人の時にせっせと働きアリのように運び込んだものだ。完全に神園の趣味。そんな、今までは1人で過ごしていた隊室には神園の他にもう1人、今結花がいた。

 

入隊式当日に行ったスカウトは見事成功し、今は研修終了後に神園隊にオペレーターとなった。つまり、今後はランク戦に参加できるということだ。

 

「今さんは本当に素晴らしい方だ。僕がボーダーに入れてよかったことのベスト3に、今さんが僕の隊に入ってくれたことは絶対に入ります」

 

神園と今は上手くやっていた。三上が心配していたようなことは軋轢は起きず、それはそれは上手くやっていた。

 

「美味しい。今さんの料理、本当に美味しい。ご飯が進む。美味しい以上の感想がでない」

 

神園の胃袋は完全に今結花によって掴まれた。美味しい料理を食べることが出来て幸せな神園。好きな料理を美味しそうに食べてもらえる今、winwinの関係が神園隊では出来上がっていた。

 

「そんなに急いで食べなくても、誰も盗らないわ」

 

では何故、今が神園に手料理を振舞っているのか。一重に神園の食生活が酷く偏っていたからだ。毎食弁当かインスタント食品、稀に三上が作ってくれた手料理。その食生活を知った今が、家で作った作り置きの料理を神園に持ってきたら想像以上に喜ばれた。それがきっかけである。

 

「盗られますよ、めちゃくちゃ美味しいですもん。太刀川さんとかに知られでもしたら、僕が食べる分まで食べ尽くされるレベル」

 

「もう、そんなに褒めても何もでないからね」

 

「この料理だけあればいいですよ。それ以外は何も求めませんから。ご馳走様でした」

 

神園冬は手料理に飢えている。加古が作ったハズレ炒飯をオカワリしている時点でその異常性がわかる。当然ながら味覚は正常なため、美味しい料理を好む。加古炒飯を求めて加古隊を訪れる回数は激減した。

 

「そういえば、隊員候補は見つかったの?」

 

「え、そんなのいないよ。新人隊員達が入隊してから1ヶ月、これだけの期間があってB級に昇格できてない隊員は元より論外だし、昇格した隊員たちも見たけど微妙だったし」

 

「え?」

 

「え?」

 

互いに顔を見合わせる。行動は同じだが、その心情はまったく異なる。

 

「でも、それだと神園くんが1人で戦うことになると思うんだけど」

 

1人で戦うわけが無いと思っている今と、1人で戦っても問題ないと考えている神園。

 

「うん、何か問題ある?」

 

「神園くんが強いのは知ってるけど、他の隊はチームを組んでるんだから、1人で戦うのは無謀じゃない?」

 

「そうかな?僕はそうは思わないけど。むしろ、足手まといを隊に入れることの方が怖い」

 

今は防衛任務をしている時の神園しかしらない。モールモッドを単騎で倒せる実力をもっているのは知っているが、それだけではランク戦を単独で挑むのは危険だと、そう考えている。

 

「神園くんがいいならいいけど、本当に大丈夫?」

 

(私たちは遠征を目指している訳でもないし、ランク戦で負けても大きな問題はない。神園くんは自信がありそうだし、無理に他の隊員を入れる方が問題よね)

 

「心配しなくても、ランク戦当日になればわかるよ。無能な仲間は邪魔にしかならないってね」

 

(個人ランク戦をしなくなった弊害だね。今さんからすれば、僕が対人戦闘に強いのか疑問に思うのは当然か)

 

「もう、また口が悪くなってるわよ」

 

「え、うん?どこが?」

 

傲慢ナチュラルナルシスト、基本的に本人に悪気はない。そのため、今に注意されてもクエスチョンマークを頭の上に浮かべている。

 

(初めてのランク戦、不安ね)

 

(まさか、今さんに僕の実力を疑われている?口先だけのやつとか思われてる?もしかして、ランク戦で負けたら隊を抜けたりされる?いやいや、まさかまさか。念の為、圧倒的に勝とう。小細工抜きで、僕の実力を誇示しよう。いや、仮に結果が出せなくても今さんが抜けるとは思っていないけど、念には念をいれとかないと。うん、全然思ってないけど)

 


 

〘さあ、始まりましたB級ランク新シーズン!一日目昼の部!実況は海老名隊オペレーター、武富桜子です!解説は東隊の東隊長!〙

 

〘東です。今回から試験的に実況と解説が導入された。武富が本部にプレゼンしていた努力が実ったな〙

 

〘ありがとうございます!〙

 

〘今回のランク戦は、19位の『間宮隊』18位の『早川隊』21位の『神園隊』の三つ巴戦だな。マップの選択権は神園隊か〙

 

〘神園隊は設立後、オペレーターが見つからずにランク戦に参加出来ていませんでしたからね。マップは市街地C!スナイパー有利のステージですが、どのような意図があるんでしょうか?〙

 

〘神園の場合は見つからなかったではなく、選り好みし過ぎなだけだ。マップについては神園隊含め、どの隊にもスナイパーは所属していないからメリットがないように思えるが、神園の戦闘スタイルを考えれば悪くない〙

 

〘神園隊長の戦闘スタイルですか?〙

 

〘かなり前から個人ランク戦に顔を出してないから知らない奴も多いだろうが、神園に障害物は関係ない。戦闘が始まれば分かるだろう〙

 

〘なるほど。対して早川隊はどうですか?万能手の早川隊長、隊員の銃手の船橋隊員と丸井隊員、今回参加している隊で1番バランスがいいと思うのですが〙

 

〘そうだな。武富の言う通りバランスはいいが、それ故に特化している部分がない。前回のランク戦から、成長しているかが楽しみだ〙

 

〘特化しているといえば、間宮隊は隊長含めて全員が射手で追尾弾嵐という決め技もありますが、どうですか?〙

 

〘決まれば強力だが、まずは合流できるかどうかだ〙

 

〘確かに、隊員同士合流する前に落とされる可能性がありますからね。今回、東隊長が期待しているのはどのチームになりますか?〙

 

〘神園隊だな。B級下位で戦っていい隊じゃない〙

 

転送待機中の神園は作戦指揮でもぐもぐと大福を食べていた。

 

「今さんも食べる?」

 

「貰うけど、そんなにリラックスしてて大丈夫なの?」

 

もぐもぐ仲間に今も加わり、2人でもぐもぐと大福を食べている。ランク戦前にここまでリラックスしている隊は珍しい。

 

「作戦については話し終わってるし、今から出来ることは何もないからね。無駄にカリカリしても仕方ないよ」

 

「そうかもしれないけど、私はその作戦も不安なのよ。あれを作戦って呼んでいいの?」

 

「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いて。僕の戦いを見てくれればわかるからさ。祝勝会を楽しみにしててよ」

 

「初めてのランク戦なんだから、もっと緊張感をもちなさい。じゃないと、何も出来ずに負けるわよ。反省会になりそうで怖いわ」

 

「ええー、戦う前に不吉なこと言わないでよ。ん、そろそろ転送時間かな。行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。頑張ってね」

 

【転送開始】

 

〘間宮隊はいい場所に転送されたな。3人の距離は少し遠いが、その中心点に神園が転送されている。いや、いい場所か微妙だな〙

 

〘もしかするとランク戦始まって早々、追尾弾嵐が見られるかもしれません!〙

 

〘間宮隊は全員神園隊長の所に向かいますが、早川隊は早川隊長の元に向かっているようです〙

 

〘このレーダーの反応で、合流しようとも動こうともしないのが神園で、合流に動いたのが早川隊、3人で神園を挟撃しようとしているのが間宮隊。少なくとも、間宮隊と早川隊はお互いの動きがわかったはずだ〙

 

〘神園隊長だけ、どの隊が向かってきていて、どの隊が合流しようとしているのか分からない状況ですね〙

 

〘動きを見せないってことは、どの隊が向かってきても倒せる自信があるんだろ〙

 

『今さん、聞こえてる?』

 

『えぇ、聞こえてるわ。何か問題でもあった?』

 

『問題はないけどさ、待ってるだけだと暇だね。しりとりでもする?』

 

『集中しなさい。3方向から敵が向かってきているわ』

 

『早川が僕を積極的に狙うとは考えれない。多分、向かってきてるのは間宮隊かな』

 

『悠長に話してる場合じゃないわ。神園くんのサイドエフェクトは、視界に入らない相手には意味がない。本格的に囲まれたら、そのまま落とされる。やっぱり、1度引いてバッグワームを使って隠れましょう』

 

『引かないよ。今さん、話したじゃないか。今回のランク戦は、間宮隊も早川隊も正面から倒すってね。作戦は変更しない。サポートよろしくね』

 

『──了解』

 

意思が変わらぬ神園の説得を諦め、今も迷いを捨てた。今からすれば、現状は絶体絶命。神園からすれば、公園で子どもと水鉄砲遊びをするような感覚。

 

「釣れてよかった」

 

「神園。射手を代表して、俺たちがお前を倒す。個人戦では勝てなくても、チーム戦なら俺たちの方が強い」

 

前後を間宮隊に囲まれながらも神園はポケットに手を入れ、余裕な表情を崩さない。二宮さんリスペクトスタイルである。

 

「僕より個人順位の低い君たちが射手を代表するの?別にいいけど、早くやりなよ。君たちの十八番、追尾弾嵐」

 

神園の目的は力を示して勝つことにある。それこそ、敵の十八番をうち破るのはインパクトがある。

 

「くっ、余裕ぶりやがって。やるぞ!鯉沼、秦稔!」

 

『今さん、軌道予測。3人ともフルアタックしてくるだろうから、それを踏まえて。ハウンドの軌道なら予測しやすいよね?』

 

『ちょ、ちょっと待って。そんなにすぐに3人分のフルアタックを予測するなんて──』

 

〘東隊長、なぜ神園隊長は攻撃を仕掛けずに挑発してるんでしょうか!?〙

 

〘何を考えてるのかはわからないが、攻撃を受けきった上で潰そうとしているみたいだ〙

 

〘え?1人で追尾弾嵐を防ごうとしてるんですか!?〙

 

間宮隊の3人はハウンドをフルアタックで起動させ、神園はバイパーをフルアタックで起動する。

 

そのままの状態で、神園はグラスホッパーで宙に浮く。それと同時に、間宮隊は攻撃を仕掛ける。

 

〘追尾弾嵐!出ました!追尾弾嵐です!神園隊員、空中に回避行動をとりましたが、逃れることは出来ません!〙

 

〘いや、違う。逃げるために飛んだんじゃない。3人が見える位置に移動したんだ〙

 

(行動に移すまでが遅い。それに加えて規則正しい弾道。B級下位のハウンドのフルアタックなんてこの程度か)

 

『軌道予測、表示するね!』

 

(今さんはすごいね、今の短時間でこの精度の予測を立てれるなんて。若干違うところはあるけど、概ねあってる。実戦形式で経験を積めるのはいいね)

 

「間宮隊、君たちには工夫が足りない。【バイパー】」

 

「「「は?」」」

 

〘これは、何が起こっているんでしょうか!?間宮隊の追尾弾嵐をバイパーで全て撃ち落としている!!おっと、ここで間宮隊長にバイパーが命中しベイルアウト!〙

 

〘鯉沼と秦稔も落とされたか。神園にいいようにされたな〙

 

『今さん、見てくれた?こう見えて僕、対人戦でも強いんだ』

 

『今のは追尾弾嵐を繰り出される前に倒せたわよね?なんでわざわざ挑発して誘発させたの?神園くんが私の想像を超えて強いのは分かったけど、祝勝会兼反省会ね。とりあえず今は、ランク戦に集中してちょうだい』

 

『え、怒ってる?』

 

(バッグワームをつけてない敵は居場所を探らなくてもいいから楽だ。さて、早川隊を落としに行こうかな)

 

〘早川隊は建物内、入口で待ち伏せしていますね。神園隊長が侵入してきたところを倒す作戦でしょうか?〙

 

〘あまり良くないな〙

 

〘何故でしょうか?〙

 

〘バレている待ち伏せになんの意味がある。敢えて居場所をバラして相手の動きを制限したり、阻害できるなら話は別だが、早川隊を見ていると倒すためだけの行動に見える。脅威にならない待ち伏せに意味はない〙

 

〘ですが、分かっていたとしても待ち伏せされている場所には攻めにくいのではないでしょうか?〙

 

〘入口から入ってくるとは限らないし、若しくはメテオラで吹き飛ばされるかもしれない。早川隊は常識に囚われている〙

 

〘た、確かに。神園隊長はその事に気づいているんでしょうか?〙

 

『今さん、建物の内部構造教えて。バイパーとメテオラですり潰すから』

 

『はい、表示させたわよ』

 

(仕事が早いな。今さん、本当にランク戦初めて?ベテランオペレーターだったりしない?)

 

「僕に倒される前にベイルアウトすれば良かったのにね。【メテオラ、バイパー】」

 

〘神園隊員、今度はバイパーとメテオラのフルアタックです!建物を壊し、早川隊を引きずりだし──バイパーで早川隊の3人が撃ち抜かれた!〙

 

【ランク戦終了】

 

【早川隊 生存点0 撃破点0 合計0】

【間宮隊 生存点0 撃破点0 合計0】

【神園隊 生存点2 撃破点6 合計8】

 

〘ここまで圧倒的なランク戦は中々ありませんね。東さん、総評をお願いします〙

 

〘間宮隊の動きは悪くなかったが、神園を狙ったのが間違いだったな。アレは放置して合流してから早川隊を習うべきだった。最初の転送位置がよかったのが、悪い方に働いたな。それと、ハウンドの強弱をもう少し工夫すれば神園を苦しめることが出来たはずだ〙

 

〘丁度合流出来る中心点に敵がいたら向かいたくなりますね〙

 

〘早川隊は怖がりすぎだ。あそこまで消極的に戦うなら、ベイルアウトした方がいい。今回のミスを引きずらず、次戦から切り替えて頑張れ〙

 

〘どうしてあそこまで消極的だったんでしょうか?』

 

〘早川は神園が個人ランク戦に熱心な時に散々やられていたから、それが原因だろう〙

 

〘なるほど。今では個人ランク戦をしているところは見ませんが、一時期は熱心だったんですね〙

 

〘神園隊については、過程は0点結果は100点ってところだな㙙

 

〘今回ポイントを独占したのは神園隊だったので、過程が0点は少し辛口な気がしますが〙

 

〘やろうと思えば、各個撃破もできたはずだ。わざわざ相手の得意技を出させる必要はない〙

 

(その上ですり潰すなんて、一昔前の二宮みたいだ。いや、二宮は力で、神園は技でねじ伏せた。過程は少しだけ違うな)

 

〘確かに。3方向から向かってきているにも関わらず、一切動きませんでしたね)

 

〘本気で戦いたくない理由があったのか、それとも分かりやすく力を示す必要があったのか。どんな理由があるかは分からないが、今回の神園は本気だったかもしれないが、全力ではなかった。何はともあれ、神園隊は今日の結果で一気にB級中位にくい込んだ。次からはこんな戦い方はしないだろうし、本格的に評価するのはそこからだな〙

 

〘なるほど。どういった意図からの行動かは、本人のみぞ知るってやつですね。東さん、本日は解説ありがとうございました!〙

 

〘ん、ああ。構わない。機会があればまた呼んでくれ〙

 

今後もランク戦の実況解説運用は続いていき、近い未来に武富が『ランク戦実況解説システム運営主任』に任命されることになることはまだ誰も知らない。

 


 

神園と今は祝勝会のため、お好み焼きかげうらを訪れていた。

 

「僕たちの勝利を祝って、乾杯」

 

席に座っているのは神園と今、満更でもない顔をしている影浦の3人。

 

「テメェらの祝勝会に俺が参加してんのはおかしいだろ」

 

「カゲさんが焼いてくれるお好み焼きが一番美味しいから仕方ないよね。それにほら、カゲさんのお母さんもカゲさん貸し出してくれるって言ってくれたし」

 

「俺の意志はどこにいった」

 

そう言いながらも、席を立とうとしない時点で内心お察しである。

 

「細かいことは気にしなくてもいいんじゃないかな?今日は僕たちの隊が初勝利を収めためでたい日なんだから。あと、解散危機を脱した記念」

 

「あ?解散しそうだったのかよ」

 

驚いた様子の影浦と今、神園の被害妄想なのだからその反応になって当然だ。

 

「圧倒的に勝ったことで、今さんが除隊届けを僕に持ってくる未来を回避出来た」

 

「どんな未来を想像してたの?元から、この隊を辞める予定なんてないけど」

 

「え、そうなの?僕がボロ負けしたら、方向性の違いで三行半を突きつけられる気がしてたんだけど」

 

「どっかのアーティストかよ。そもそも、どうやったらB級下位グループとの戦いでテメェがボロ負けすんだ」

 

「負けないけどさ、今さんは僕が負けると思ってたもん。断っても、頻りに新しい隊員の入隊を勧めてきたし。だから、必要ないってことをわかってもらうために、圧倒的に勝つ必要があったの」

 

「だそうだが?」

 

「圧倒的じゃなくていいから、堅実に勝ってほしいかな。隊員のことはもう言わないから」

 

「次からはそうするよ。ちゃんとしないと、僕も落とされるかもしれないからね。それと、勘違いしてほしくないんだけど、僕だって隊員が増えたらいいなとは思ってるんだよ。ただ、入ってほしいって思う隊員がいないだけだからね」

 

「東のおっさんも言ってたが、テメェは選り好みしすぎだ。隊員もオペレーターも、チームを組もうと思えば腐るほど候補がいただろ」

 

それを影浦が言っているあたり説得力がない。

 

「僕は信頼出来る仲間と組みたいのであって、お荷物や無能はチームにいらない。それに、組んでからリリースするのは可哀想じゃないかな?」

 

「なら、今はお前のお眼鏡に叶ったってことだよな?新人オペレーターなんざ、多少優秀でもお荷物になる可能性もあったんじゃねぇの?」

 

もっともな疑問。新人なんて、多少優秀でも既存の人間からすれば経験で劣る。

 

「新人なんて出来なくて当然、赤ちゃんと一緒。僕が見てるのは将来性がありそうかどうか。あとは、ランク戦や防衛任務で経験を積めばいいだけなんだから」

 

「なら、既存の奴らだって入れてから育てればいいだろ」

 

「磨けば光る原石と、磨く価値のない石ころでは天と地ほどの差がある。僕に石ころを磨く趣味はないよ」

 

才能第一主義、二宮や加古に近い思想である。

 

「赤ちゃん...」

 

「あ、いや、あくまで比喩表現だから。今さんのことを赤ちゃんだなんて思ってないよ。むしろ、僕の方が料理とか食べさせてもらってるし、幼いというか。いや、僕も別に幼くはないんだけど。決して、今さんを貶めるような意図はないから安心して」

 

「年上を赤ちゃん扱いなんざ、偉くなったもんだな」

 

「ちょっとカゲさん?」

 

「赤ちゃんだから、もう料理持ってきてあげない」

 

「今さん!?」

 

年下は年上には勝てない。

 

「そういえばよ、お前らの隊服は誰がデザインしたんだ?二宮か?」

 

「違うよ。僕がデザインした。本当は、二宮隊みたいな黒スーツが良かったんだけどね」

 

「今が隊服を着てたのはなんでだ?オペレーターは普通隊服着ねぇだろ」

 

「同じ隊だから着て欲しいって僕がお願いした」

 

「なるほど。神園、テメェも二宮と同じでセンスが狂ってる」

 

「え、嘘だよ。影浦隊とそんなに変わらないと思うけど。コスプレ感がなくていいよね」

 

「一緒にすんな」

 

「コスプレ感が、、、、ない?」

 

「テメェのとこのオペレーターの顔見てみろ。嘘だろって顔してるぞ」

 

「え、嫌だったの?なんで?スーツだよ?」

 

「童話の王子様とかに憧れてデザインしたと思ってた」

 

「センスが悪いとは言わねぇが、コスプレ感をなくそうと思っていながらよりコスプレ感の強い服装にするのはテメェと二宮の才能だ」

 

「ち、違う。僕の感覚がマジョリティで2人の感性の方がマイノリティなんだよ。明日、那須とか別の人に聞いてみる」

 

「おい待て、もう少し率直な感想を言いそうなやつに聞け。卑怯だろ」

 

「なら──熊谷なら文句ないよね?」

 

「あるに決まってんだろ。忖度しそうなやつ選ぶんじゃねぇ。光でいいだろ」

 

「よくない。それこそ、今度はカゲさん側の人間じゃん。間をとって、加古さんなんてどうかな?」

 

「ファントムばばあか。感性が狂ってるやつを選ぶんじゃねぇ、却下だ」

 

「うわ、加古さんにそんな事を言うなんて最低。分かったよ、なら公平に三上歌歩でいいよね?」

 

「公平の意味を調べ直してこい。幼馴染みをだしてくんじゃねぇ」

 

「月見さん、なんてどうかな?」

 

「月見さん、月見さんか。もちろん、僕は構わないよ。カゲさんがいいなら、明日にでも月見さんに聞いてみるよ」

 

「まあ、問題ねぇ」

 

「僕の感性をバカにしたんだから、もし月見さんが僕寄りの意見だったら罰ゲームだからね」

 

「なら、俺寄りだったらテメェが罰ゲームやれよ」

 

「構わないよ。今さん、罰ゲーム考えてね」

 

「え、私が?」

 

「俺が考えてもこいつが考えても、ろくな罰ゲームにならねぇ。テメェなら、俺たちよりマシな罰ゲーム思いつくだろ」

 

「ありきたりですけど、食堂で1時間」

 

(大食いチャレンジでもやらせるつもりか?)

 

(1時間って長いよ。ありきたりな罰ゲームってなに)

 

「フリーハグする。勝った方はそれを眺めるとかでいいんじゃないかな?」

 

「は?」

 

「え?」

 

「も、もちろん、僕は問題ないよ。カゲさんがやることになるからね」

 

(え、なにその罰ゲーム。顔しか知らないようなボーダーの人間にハグされるかもしれないとか最悪すぎる。やめてよ、僕は顔が良いから変なのが寄ってきたら困る。ってか、これが在り来りな罰ゲームなの?学校では歌歩とかボーダー関係者としか話さないからわからない。カゲさん、断って。僕から断るのはかっこ悪いから嫌だから、カゲさんから断って)

 

「二言はねぇ」

 

(今結花、テメェはなんで軽い罰ゲームだから問題ないよね?みたいな顔してやがんだ。俺のサイドエフェクト知ってやがるよな?まさか、その事も踏まえての罰ゲームか。悪意の感情が全くねぇのが却って恐ろしい。神園、テメェは鬱陶しい感情向けんな。断りてぇなら、テメェが断れ。こっちは、九割九分勝つって分かってんだ)

 


 

 

〔RELATION〕

 

 

熊谷友子←努力家。那須に追いつこうと頑張っているから協力したくなる。コソ練?仕方ないから付き合ってあげるよ

 

日浦茜←素直でいい子、そのまま育つんだよ。飴ちゃんをあげよう

 

影浦雅人←カゲさんでも、僕のセンスをバカにするのは許さないよ!

 

仁礼光←君の隊室にはコタツがあるけど、僕の隊室には掘りごたつがある!遊びに来てもいいからね

 

真木理佐←ランク戦終わりに怒られた。

 

那須玲←たまには遊ぼう。オススメの映画持っていくよ

 

東春秋←選り好みといいますか、選別といいますか。東さんだったら歓迎

 

加古望←最近遊びに行けてない。加古隊室にはキッチンがあっていいなぁ

 

今結花←スカウトを即決で受けてくれた。オペレーターとして優秀、持ってきてくれるご飯が美味しい。これからも、一緒に頑張ろうね。無茶ぶりたくさんするからよろしく。掘りごたつで丸まってると、たまに蹴られることがある

 

香取葉子←うちの隊に遊びにくる頻度多くない?別にいいけどさ

 

二宮匡貴←うちの隊のスーツもかっこいいですよね?

 

根付栄蔵←広報活動はお断り。色々目論見はあるんだろうけど、いい人

 

月見花緒←誰、君?

 

 

 

 

 

 

 

 

熊谷友子→迅さんのセクハラを阻止してくれる。最近いつもより優しくされてる気がする。嬉しい

 

日浦茜→優しい先輩!視線が温かい!手作りの飴玉をくれる!

 

影浦雅人→なんだかんだ可愛い後輩。初めての祝勝会に俺が参加してよかったのか?

 

仁礼光→遊びに行くから、お菓子とか用意しておけよなー

 

真木理佐→ふざけた試合をしていたから強めに注意した。嫌われてないか不安。夜に思い出して眠れないぜ

 

那須玲→最近熊ちゃんとコソコソ何かしてるの知ってるよ。私とも遊んでよ

 

東春秋→事情を聞いて呆れながらも納得。次の試合はもう少しちゃんとした試合を見れると楽しみにしている

 

加古望→最近遊びに来てくれないし、炒飯を食べに来てもくれない。モヤモヤした気分で作る炒飯はハズレ10割、堤以外も2度死んだ。祝勝会にお邪魔するのは野暮だと考え、別日に誘う予定

 

今結花→入隊式で配られた資料に、神園隊の魅力と書かれた別紙があった。不安な気持ちもありながら、即決でスカウト承諾。ご飯を沢山食べて可愛い。掘りごたつで丸まってるのは見えないから、たまに蹴ってしまう。隊服のデザインが嫌いというわけではない。罰ゲームは友達から海外の動画配信で流行っているときいたもの

 

香取葉子→料理練習してみようかな...。今結花に対して対抗心

 

二宮匡貴→黒スーツで作れなかったのは残念だったな。焼肉を奢ろうと思ったが、祝勝会をすると聞いて引いた。別日に誘う予定

 

根付栄蔵→今結花に配る資料にだけ『神園隊の魅力』という別紙を潜ませた。時間が経てば考えは変わるでしょう。強制するつもりはない

 

月見花緒→5月入隊。スカウトできる人材がいるか観察していた神園に突っかかり、秒でボコられた。神園隊に入隊希望も断られた

 

 

 

 




三上ちゃん!三上ちゃんを出せた!!

主人公の挿絵が中々難しかった。
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