ワートリ〜顔が良い内弁慶〜   作:Mr.♟️

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6話

 

月見家にて、月見姉妹が朝食の準備をしている。

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

「鼻歌なんて珍しいわね、何かいいことでもあったの?」

 

月見蓮は最近の妹の変化に驚いていた。ボーダーに入隊してからの花緒は、少しずつ口数が減り暗くなっていった。理由を聞いても答えてもらえず、元気づけるためにショッピングや外食、気晴らしの運動など手を尽くしても元気にはならなかった。

 

それがここ最近は、ボーダーに入隊する以前の明るくて可愛らしい妹に戻っている。

 

「別にいつも通りだよ!いいことなんてなんにもないから!」

 

「そこまで強く否定しなくても...」

 

「ご、ごめんなさい。お姉ちゃん」

 

(やっぱり、何かあったみたいね。花緒が元気になってくれたのは嬉しいけど、何があったのかしら。ボーダー関係?それとも、まったく関係ないこと?いえ、花緒はボーダーに入ってから暗くなった。原因はボーダーにあると考えるのが妥当ね。そして、元気になったということはその問題が解決した。となると、ボーダー関係なのは間違いない)

 

「気にしなくていいわ。無理に聞くつもりはないからね」

 

(太刀川くんなら何か知ってるかしら。こっち方面の話だとあまり期待できないけど、ボーダーで会ったらダメ元で聞いてみましょう)

 


 

(今までお姉ちゃんに心配をかけてたけど、これからは違う)

 

月見花緒がボーダーに入隊するきっかけは、幼馴染みの太刀川慶と姉の月見蓮がいるからだった。2人に置いていかれるのが嫌で、高校に進学したタイミングで入隊した。

 

月見花緒は優秀だった。本来であれば喜ばしいことだが、優秀だったが故に同期からは幼馴染みの太刀川慶と比べられ、姉の月見蓮と比較された。

 

そんな彼女にのしかかったのは重圧と劣等感。優秀とはいえ、入隊してから1ヶ月程度しか経過していない彼女と比較対象の差があまりにもありすぎた。

 

そんな彼女が迷走した末に選択したのは、太刀川慶と同じスタイル。常人ならやろうとも思わない孤月二刀流。それでもある程度の勝率を誇っていたのだからすごい。

 

(少し前のことなのに、昔のことみたいに思える)

 

そんな不安定な精神状態で同年代と思われる、やけにえっっらそうにため息混じりにランク戦を眺めていた神園を見たことでイライラが募り、突っかかって指摘されながらのなぶり殺し。注目されている新人と、滅多にランク戦に顔を出さない有名人の戦いは観客もそこそこの人数いた。

 

圧倒的な負け方に、見ていた一部の隊員たちから月見花緒に対して心ない言葉が聞こえてきた。『コネ入隊』『ざまぁみろ』など、本人たちはコソコソ話しているつもりだろうが、何故かそういう話に限って聞こえてしまう。

 

花緒はそんな声は全くと言っていいほど気にならなかった。むしろ、B級隊員に1ミリの言い訳もできないほど完膚なきまでに負けたことで、重圧や本来であれば感じる必要のない劣等感から開放された気がした。

 

それはあくまで、月見花緒が感じたことであり、衆目の前でボコった神園冬は違った。そもそも、神園は月見花緒の感情も事情も何一つ知らない状態である。

 

(思い出したらニヤけちゃう)

 

神園は顔を数秒覆ったかと思えば、あからさまに嫌そうな顔をして特に多く声が聞こえてきた方向を見て言葉を発した。

 

『彼女は弱かったけど、君たちはもっと弱い。彼女には僕に挑む蛮勇──じゃない。勇気を持ち合わせていた。対して君たちは、陰口を叩くことしかできない無能。いるかな、僕と彼女の戦いを見てなおかつ僕に挑むバ──勇者は。いるなら受けてあげるよ。彼女とは違って、ポイントが変動するランク戦だけどね』

 

そんな風に言われて挑める人間はおらず、訓練室は静まり返った。

 

『私がやる』

 

月見花緒が立候補するまでは。

 

(本音がダダ漏れだったし、バカを見る目だったけど再戦してくれた)

 

月見花緒が神園隊に入隊希望、拒否する神園にしつこく付きまとい始めたのはこの日からだった。

 

その努力が実り、月見花緒は条件をクリアしたら入隊してもいいと言質をとった。月見花緒が上機嫌なのはそれが理由だ。

 

「今日もチャレンジ頑張るぞー!」

 


 

そんな哀れにも付きまとわれている神園は、今もなお想われていることなんて知らずに諏訪隊室にいた。

 

「いいのか、お前たち?後悔することになるぞ」

 

冬島、諏訪、太刀川、神園は雀卓を囲んでいる。3人を見渡して念を押したのは冬島だ。

 

「おっさん、太刀川のバカに後悔なんて文字ねぇよ。神園、お前はいいのかよ。逃げるなら今のうちだぞ」

 

「諏訪さん、ビビってるなら引いてもいいんですよ。他に人数合わせ呼びますから、太刀川さんが」

 

「なんで俺の隊室で俺がハブられんだよ。いいぜ、覚悟が出来てるならやってやらァ」

 

「ハッハハ、ほら面白いだろ。ちょっとしたペナルティをつけるだけで、全員本気になる」

 

「まあ、こういうのはメンツに女子がいたら出来ませんからね。たまには面白いと思いますよ。もっとも、剥かれるのは僕じゃないでしょうけどね」

 

「おっさんを裸にしても、面白くもなんともないだろうに。とりあえず、太刀川を飛ばせばいいのか?」

 

「ルール確認しますよ。ツモアガリで1枚、直撃で1枚&エピソードトーク1つ。万が一上裸にされたらエピソードトークだけ。容赦なく飛ばしますから、覚悟してくださいね。特に諏訪さん」

 

「なんだなんだ、ランク戦前にここでも潰しておこうってか?来いよ、容赦なくすり潰してやっから」

 

「バチバチだな、俺も混ぜろよ」

 

「んじゃあ、初めっか。お前らよく考えろよ。脱衣麻雀なんだから、飛ばす相手は考えろよ。おっさんの裸見たくないだろ」

 

配牌され、各々手牌を確認する。

 

「冬島さんじゃなくても嫌ですよ。全員加齢臭しそうですし」

 

「よしっ、喧嘩だな?喧嘩売ってんだよな?お前とそんなに歳離れてねーよ」

 

「ハッハハ、俺はまだ加齢臭って歳じゃないぞ」

 

(1番最初に脱がされるのは負けた気がして嫌だから、安手でもいいからとりあえず直撃はくらわないようにしようかな)

 

神園は直撃を避けることを第1に。

 

(さてさて、誰を飛ばそうか。変則的な役を絡めたら、ロンしやすいんだよな。若いやつらは、まだまだ素直だな)

 

冬島は心理戦をメインに。

 

(おっさんはマイナーな役で攻めてくっから面倒。太刀川は大物手ばっかり狙うから怖ぇ。神園は堅実に攻めてくる。狙い撃ちしやすいのは太刀川だな)

 

諏訪は狙い目を探して。

 

(役満狙うか。あわよくば、全員ぶっ飛べ)

 

太刀川は役満狙い。

 

東場一局 一本場

 

諏訪→神園ロン

 

「太刀川ばっかり警戒しすぎだぜ。足元に気をつけな」

 

「安い点ですね、諏訪さん。倍にして返しますよ」

 

神園は羽織っていたパーカーを脱いだ。

 

「ひゅーひゅー」

 

「まずは太刀川さんから飛ばします」

 

茶々を入れて狙われる太刀川。

 

「エピソードトーク。これは、小さい頃の神園くんのお話なんですが、神園くんは大人ぶりたい年頃だったので、年齢制限がついているホラー映画を借りてしまいます」

 

「あの年齢制限守ってるやついねぇだろ」

 

「ですが、ホラー映画を1人で見るのはとてもとても怖いです。誰かと一緒に見たら怖くない気がしてきます」

 

「犠牲者が増えるだけだろ」

 

「幼馴染みの三上歌歩を誘って一緒に映画を見ることにしました。上映5分で絶叫して暴れ回る三上に頭突きされてノックアウトされました。三上の両親にも怒られ、ホラーより怖いものがあるんだなぁと神園くんは少し大人になりました。めでたしめでたし」

 

「なんの教訓を得てんだ」

 

東場2局 一本場

 

神園→冬島ロン

 

「冬島さん、その罠見え見えですよ」

 

「やれやれ、おっさんを脱がせてどうすんのよ」

 

冬島はジャンバーを脱いだ。

 

「なら、俺は最近の話だ。うちの隊って、基本真木ちゃんが仕切ってくれてるんだけどさ、最近スマホを新しくしたらしい」

 

「?」

 

「?」

 

「?」

 

「引き継ぎが上手くいかなくてLINEの連絡先が一部消えたらしいから、お前らのLINE共有してもいい?」

 

「別に僕はいいですけど、そもそも真木さんと交換してないから教える必要はない気もしますけどね。え、エピソードトーク?どっちかって言うと、業務連絡?じゃないですか」

 

「エピソードトークの定義は難しいからな。まあ、一応これでいいか」

 

「真木理佐と交換するのは怖いからパス。元から交換してないし」

 

(真木ちゃん、真木ちゃんが欲しがってた神園のLINEあとで送ってやるからな)

 

東場2局 二本場

 

諏訪→太刀川ロン

神園→太刀川ロン

 

「ダブロンくらうなんて、幸先いいですね」

 

「ハイリスクハイリターンだぜ、太刀川さんよぉ」

 

「ゲッ、2枚脱がされるのか。最初に上裸にされるのは俺みたいだな」

 

迷いなく太刀川は上着を脱ぎ捨てた。

 

「太刀川さん、案外筋肉あるんですね。もっとぷよぷよお腹かと思ってました」

 

「体育好きだからな」

 

「小学生かよ」

 

「懐かしい響きだな」

 

「エピソードトークな、なら俺も幼馴染みネタでいくか。俺の幼馴染は月見なんだが、小さい頃の俺は月見といったら月見餅って脳内変換が自動でされていてな」

 

「今もされてそう」

 

「今もしてんだろ」

 

「昔も今もかわらないんじゃない?」

 

「辛辣!?んで、実際に月見の家に遊びに行ったらおやつに餅を出してくれるから、余計にそのイメージがついてよ。月見にお前ら実は地球人の振りをした餅星人だろって聞いたら」

 

「餅星人はあなた。俺が来ると俺が好きな餅がおやつにされるから、遊びに来るのはやめてって拒絶された。今思い出しても、俺悪くないよな?」

 

「有罪」

 

「極刑」

 

「おやつが餅にされんのは嫌だったんだろうな」

 

「なんか厳しくない?なんでだ?」

 

東場2局 三本場

 

太刀川→神園ロン

 

「やばい、太刀川さんのこと嫌いになりそう。今度目の前できなこ餅食べてみようかな」

 

「太刀川はきな粉餅禁止中だ」

 

「安全策なんてとらせねーよ。ドラ3の大三元、飛んだな神園」

 

「歳下を可愛がろうってつもりはないんですかね」

 

神園も太刀川と同じく上裸になった。

 

「可愛がってるだろ?」

 

「またエピソードトーク、ですか。それなら、これは小さい頃の神園くんのお話になるんですが」

 

「今も小せぇだろ」

 

「諏訪さん、絶対飛ばしますからね。僕が初めて三上歌歩からバレンタインチョコを貰った話です。バレンタインに溶かしたチョコをデコレーションした手作りチョコを貰ったんですけど、それが嬉しすぎて包装も含めて解くのが勿体なくて、ずっと冷蔵庫に保管してたんですよね」

 

「アレな。高学年くらいになってからは作るやつがいなくなるチョコ」

 

「三上2度目の出演か」

 

「翌日に味を聞かれて、まだ食べてないって答えたら、1週間後くらいにまた聞かれて、まだ食べてないって答えたら、2週間後くらいにまた聞かれて、まだ食べてないって答えたら、『冬くん大嫌いーーー!!!』って思いっきり泣かれました。神園くんはいきなり嫌われて驚いたので、立ち尽くしてましたね。めでたしめでたし」

 

「食えよ!可哀想だろ」

 

「いいねぇ、俺そういう可愛らしい話好きだよ。恋愛漫画とかも読んでるからね」

 

「その時泣きながら顔面殴られましたからね。小さい頃の三上歌歩は凶暴でした」

 

「同じ日を繰り返してるみたいなホラー展開が来ると思って怖かった」

 

「太刀川さん、僕のことをなんだと思ってるんですか。」

 

東場一局 一本場

 

冬島→神園ロン

 

「やられたらやり返す。うちの隊の流儀なんだわ」

 

「またイヤらしい手を。セクハラですよ」

 

「警備員呼んでこい」

 

「キャー、おまわりさーん」

 

「「太刀川(さん)の裏声きっも(ち悪い)」」

 

「一応言っとくけど、セクハラとは無縁の人生を送ってるから」

 

「上裸だからもう脱ぎませんよ。んー、はたまた小さい頃の神園くんのお話なんですが」

 

「三上が出演するにジュース1本」

 

「諏訪さんの予想に乗った」

 

「なら、俺はしないに2本賭ける」

 

「好奇心旺盛な神園くんは、呪いの藁人形を呪い目的じゃなくて癒し目的で使ってみたらどうなるか試してみたいと思いました」

 

「ぶふぉっ」

 

諏訪はフキダシタ。

 

「諏訪さんぶん殴りますよ?それで、誰を癒してあげようかなと思った時に幼馴染みの三上歌歩が思い浮かびます。藁人形をネットで買って、髪の毛を分けてくれないか交渉してみます」

 

「お前にもそんなに可愛らしい時期があったのか」

 

「神園もお前たちも、俺からすれば若くて可愛らしいぞ」

 

「理由を話したら快く承諾してくれて、大事にしてねと髪の毛を1束もらいました。神園くんは届いた藁人形に髪の毛を混ぜようとしましたが、ここで問題が」

 

「三上の心が広すぎる。月見だったら絶対にくれない」

 

「時代の波に乗った藁人形は電動藁人形で、髪の毛を組み込めませんでした」

 

「時代に流されたらダメだろ」

 

「その機械人形、どこに需要があるんだよ」

 

「その事を三上歌歩に報告すると、代わりに肩を揉めとマッサージを強要されたので、幼い神園くんは断って脛を3回ほど蹴られお話は終わりです。めでたしめでたし」

 

「さっきからめでたい要素がねぇ」

 

「お前が癒したいとか言ってるから、肩揉ませてあげようとしたんだろ。強制されたとか烏滸がましいわ」

 

「ちっさい頃の三上ちゃん割かし凶暴だな」

 

〜〜〜〜〜

 

東場n局 n本場

 

諏訪→神園ロン

 

「諏訪さん、今日やけに僕のこと狙い撃ちしてません?次のランク戦で負ける前にボコっておこうって算段ですか?」

 

「バカ言うな。ランク戦でも俺たちが勝つに決まってんだろ」

 

「今日は俺と太刀川は飾りだったな。諏訪のやる気がやばかった」

 

「諏訪さ〜ん、神園のこと好きすぎるだろ。どんだけ脱がせたいんだか」

 

「もれなく俺たち全員上裸だろうが。話してみろよ、次はいつの幼い頃の神園くんのお話だァ?」

 

「うぇ、要望通りに話すのが嫌なんで、これは最近の神園くんのお話なんですが」

 

(エピソードトークを直ぐに話せるこいつらって、大人より大人だよな。最近の子どもって大人びている)

 

(クソ天邪鬼)

 

(餅食べたくなってきた)

 

「神園くんは顔が良くて性格も良くて、完璧な男の子です。皆さんご存知の通り、最近は隊員のスカウトにも精力的に取り組んでいる模範隊員です」

 

「最近の若い子ってナルシストの気があるよね」

 

「おっさん、俺たちとこいつを一緒にすんな。少なくとも性格はよくねぇだろ」

 

「隊員0が何言ってんだ?」

 

「極々稀にスカウトするまでもない実力で、かつ僕に絡んできたB級を蹴散らすこともあります。ここ最近珍しくそういった出来事がありました」

 

「ん、聞いたことあるな。なんでも、5月入隊で期待のB級隊員を衆目の前でボロ雑巾にしたって話だろ」

 

「俺も聞いたが、おっさんとは少し違うな。倒した後に手を差し伸べて手取り足取り優しく指導したって話だろ?」

 

「へー、そんなことがあったのか」

 

「普段であれば懇切丁寧にダメなところを指摘し、最後にバイパーで全身穴だらけにすればお別れなんですが、その子は何を血迷ったか再戦を挑んできた上に僕の隊に入りたいとお願いしてきました」

 

「トラウマ植え付けようとするなよ」

 

「かえって癖になる隊員もいるみたいですよ。烏丸派と神園派が生まれるくらいには人気者ですから。性格はともかく、顔がいいんで」

 

「ずるい。俺ともランク戦やろーぜ」

 

「当然弱い人間に入隊されるのは嫌だったので、神園くんは断りました。不服だった彼女は、その日から鬱陶しい程に僕に付きまとってくるようになったのです。時には基地の入口、時にはトイレの前、時には隊室、時には食堂で休んでいる時。時には──と、本当にしつこく、彼女の熱意に今さんまで懐柔されてしまい、僕の安息の地は失われてしまいました。めでたしめでたし」

 

「女の子だったのか」

 

「厄介なのを引きつけるサイドエフェクトでもあんのか?」

 

「ハッハハ、いいじゃないか。俺はそこまで熱意があるやつは面白いと思うぞ」

 

「笑い事じゃないですよ。僕だけじゃなくて、もしかしたら皆さんの後ろにも」

 

神園が話している途中で諏訪隊室のドアが開いた。タイミングよく空いた扉に神園と冬島、諏訪の3人は立ち上がり入口へと視線を向ける。唯一、太刀川は立ち上がらずトリオン体に切り替えた。

 

「おー、露出狂の集まり?」

 

「小佐野か。脱衣麻雀してただけ、露出狂は僕以外の3人ね」

 

「おサノ、てめービビらせんなよ」

 

「小佐野ちゃんね、神園が何か仕込んだかと思ったよ。太刀川、トリオン体になるとは流石にビビりすぎじゃない?」

 

「呪われたくなかった」

 

「褒めろー、部屋の前でウロウロしてた女の子連れてきたぞー」

 

「女ァ?誰かの知り合」

 

「うげっ、まさかここまで来るなんて」

 

「ん?あれ、なんで花緒が諏訪隊室に」

 

諏訪が確認しようとしたところに、ドン引きしている神園に幼馴染みに話しかける太刀川。

 

「見つけた。今日も挑戦するから」

 

「たった今話した執念お化けです。おかげで、脚に1時間すがりつかれた東さんの気持ちが分かりましたよ」

 


 

「もっとめんどくさい条件にすればよかった」

 

神園が月見花緒に提示した入隊条件は『モールモッド5体を自分の前で倒すこと。挑戦できるのは1日1回』。

 

神園自身が見守っていることを条件にしたため、結局付きまとわれるのは変わらなかった。神園の狙いとしては、神園を探すのがめんどくさくなり、途中でギブアップさせることだった。

 

「今回こそ、絶対にクリアしてみせる。約束は守ってよ」

 

「倒してから言ってもらえるかな。今さん、モールモッド5体訓練室にお願い」

 

「神園くん、モールモッド5体は流石に無理なんじゃないかな?そんなに月見さんを隊に入れたくないの?」

 

「最初の挑戦では1体も倒せなかったのに、回数重ねるうちに倒せるようになってきている。前回の挑戦時は3体倒したじゃないか。今は入れたくないわけじゃないよ」

 

(提示した時は無理難題で諦めさせようとしたけどね。だって、本当に弱かったから)

 

「普通はモールモッド1体でも倒せたら充分なのよ。私はもう入ってもらっていいと思うんだけどな」

 

「彼女が条件の緩和を望むなら考えるけど、僕からは条件を変えようとは思わない。それに、今回あたりで成功すると思うよ。ほら、1体倒した」

 

「挑戦する度に強くなってるわね。独学でこんなに強くなれるなんて、月見さんすごいわ」

 

「全然独学じゃないけどね」

 

今の発言に神園はそれはおかしいとばかりに否定した。

 

「彼女のしつこさに根負けしてLINEを教えたのが間違いだった。LINEでも学校でも、トリガー構成や戦い方をどうすればいいのか、しつこくしつこく付きまとわれた僕の犠牲の上、彼女は見違えるほど強くなってる。僕の犠牲の上」

 

「そ、そう。大変だったのね」

 

「本当にね。普段は話しかけてこない同級生達に『月見さんと付き合ってんの?』とか『入学した時から月見さん可愛いと思ってたんだよ。今度遊園地誘おうと思ってるし』とか『月見さんは悪い噂あるからやめとけやめとけやめてくれ』とか、すっごい無駄な牽制される羽目になった」

 

「ほ、ほら、大福食べて」

 

「ふぉふがふぉってきたふぁいふく」

 

口に大福をつめこまれた神園と、同情の視線を向ける今。

 

「あ、3体目も倒したよ!本当にクリアするんじゃない?」

 

「するだろうね。むしろ、僕の時間をあれだけ奪った上で失敗したら、もう2度と挑戦させないよ」

 

「4体目、ラスト1体」

 

「今さん、近いうちに湯呑みを買いに行こうか。新入り隊員ようにね」

 

「そうね。可愛いのを買いましょう」

 

『5体目、撃破...!』

 

訓練室で噛み締めるように呟いた月見。その様子を眺めていた神園は目を閉じて拍手を。今は微笑みながら拍手を送った。

 

『神園!約束だからね!私は達成したわよ!』

 

神園は訓練室から早く出てこいと思いながらも、何も言わずに出てくるのを待つ。

 

「今さん、お願いしてたの手配してくれてるよね?」

 

「えぇ、もちろんよ」

 

今は優しい笑みを神園に向けるが、神園はそれを拒むかのように顔を逸らした。それから少しして、満足気な表情を浮かべている月見花緒が訓練室から出てきた。

 

「約束よ、今更嫌だなんて言わせないから」

 

「僕は条件を出した。君はクリアした。先に言っておくけど、僕の隊には指示に従わない人間はいらない。でも、指示に従うだけの人間もいらない。1度入った人間を僕から脱退させることはないけど、合わない思ったら遠慮なく抜けて構わない。それと、」

 

「長い長い」

 

「とりあえず──歓迎するよ、月見花緒。攻撃手として頑張ってほしい。今さん、渡してくれるかな」

 

「はい、これが私たちの隊の隊服がセットされてるトリガーホルダー。体型とかは全部月見さんと同じだから安心して」

 

「え、こういうのって、入隊してから手配するもの」

 

「今さんが手配してくれてた。君がクリアするだろうと見越してね」

 

「今さん、ありがとうございます。信じてもらえて嬉しいです」

 

「ん、んー?私じゃ」

 

「今さんは仕事が出来すぎる。今後もよろしくね。何かあっても今さんの脱退は認めないから、絶対に」

 

「ちょっと、なんで私と今さんでそんなに違うのよ」

 

「貢献してる今さんと、時間も考えずLINEを送ってくる迷惑な人間を比べたら今さんが大事だからね。考えるまでもなく」

 

言い争う2人を見て、今さんはお茶をすすった。

 

(これから賑やかになりそうね)

 

今の予想は当たることになる。次回入隊の9月入隊者から新しい隊員が加わることを、今はまだ知らない。

 

 


 

 

月見 花緒

 

 

〔PROFILE〕

 

 

 

ポジション:攻撃手(アタッカー)

 

 

好きなもの:お姉ちゃんと一緒

 

 

 

 

〔PARAMETR〕

 

 

 

トリオン 10

 

 

 

攻撃 7

 

 

 

防御・援護 10

 

 

 

機動 7

 

 

 

技術 7

 

 

 

射程 2

 

 

 

指揮 4

 

 

 

特殊戦術 2

 

 

 

TOTAL 49

 

 

 

 

 

 

〔TRIGGERSET〕

 

 

 

主トリガー

 

 

 

孤月

 

 

 

シールド

 

 

 

カメレオン

 

 

 

旋空

 

 

 

 

 

 

 

副トリガー

 

 

 

レイガスト

 

 

 

シールド

 

 

 

スラスター

 

 

 

バッグワーム

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神園 冬

 

 

 

〔PROFILE〕

 

 

冬島慎次←いやらしい大人

 

太刀川慶←ランク戦はしません。万能手が1位になったら、みんなやる気をなくすでしょ?

 

小佐野瑠衣←海外映画の原作小説を貸してくれる。ボーダーには小説好きと映画好きが多くて話すのが楽しい。ふゆふゆと呼ぶのはやめてね

 

仁礼光←んんん??麻雀のルールを知りたい?えっと、役とかめんどくさいけど大丈夫?まあ、教えてあげるよ

 

真木理佐←LINEが送られてきた。3回に1回は送信取り消ししてるけど、なにを送ってきてるの?クエスチョンマークのスタンプを送るが、スタンプが返ってくる

 

那須玲←え、うちの新人と戦いたい?ダメダメ。勝てない。無駄に自信なくしちゃう。孤月二刀流に戻られたら困るから

 

熊谷友子←ラウワン?いいよ、遊びに行こうか。あ、でも僕初めてだから遊び方教えてね

 

東春秋←ひえっ、脱衣麻雀を言い出したのは太刀川さんなんです 

 

加古望←いつも遊びに行ってて申し訳ないので、うちの隊にも遊びに来てくださいよ

 

風間蒼也←ふぇ?隊長としての心構えを考えろ??ふぇ?

 

二宮匡貴←隊員ができたお祝いに焼肉奢ってくれるんですか!?ちゅき。風間さんは説教じみた説法をしてきたのに。ちゅき

 

諏訪洸太郎←ランク戦覚えててくださいね

 

月見花緒←君は東隊のコアラと同じだよ。今度しつこく要求してきたらコアラ2号って呼ぶからね。まあでも、頑張りは認めるよ。僕のアドバイスを受け入れる素直さもあるし、動きも悪くない。孤月二刀流に戻らないで。迷走するのだけは勘弁して

 

月見蓮←あなたの妹さん、酷いんです。すごくしつこいんです。1歩間違えたらストーカーなんです。僕はぴえんぴえんなんです

 

今結花←隊を支える縁の下の力持ち。手放してはいけない。僕がお菓子を提供して、彼女がお茶を入れてくれる。ああ、今さんがいないと生きていけない身体にされちゃった

 

三上歌歩←歌歩?なんで怒ってるの?痛い痛い、僕なんかやっちゃった?落ち着いて。大福食べる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬島慎次→大人の色気っていうんだぜ

 

太刀川慶→個人ランク戦が嫌なら、早くA級に上がってこい。あがってこいあがってこい。東さんに怒られた

 

小佐野瑠衣→隠れ神園派

 

仁礼光→仲間ハズレにすんなよー、私もやるからー!

 

真木理佐→LINEを手に入れた。既読が5分以内につかないと送信取り消しする傾向にある。たまに自撮り写真を送って秒で消してる。取り消したことが相手に伝わることは知らない。何故かクエスチョンマークのスタンプが返ってくるので、可愛らしいスタンプを返してる

 

那須玲→そんなに私の事評価してくれてたんだ。普段から褒めてくれてもいいのに。神園くんがそこまでいうなら戦わないよ。その内ランク戦で戦うことになるだろうからね

 

熊谷友子→え、いいの?2人でだよ?どんな格好で遊びに行こうか迷い中

 

東春秋→高校生が脱衣麻雀なんてダメに決まってるよな?首謀者は誰だ?

 

加古望→遊びに行く

 

風間蒼也→隊員ができてからが本格的な隊長だ。同じ隊長として役割を教えてやる。遠慮せずに聞け、先輩として答えてやる。ふんすふんす

 

二宮匡貴→肉をもっと食え。野菜も食え。いい食いっぷりだ。お前は米が好きなんだな

 

諏訪洸太郎→実はめちゃくちゃ狙い撃ちしてた。おサノが隠れ神園派なことを知っているため、度々麻雀に誘っている

 

月見花緒→入隊した!嬉しい!!お姉ちゃんに自慢しよっ!今さん好きっっ!!

 

月見蓮→妹が迷惑かけてます。これからもよろしくお願いします。ランク戦が終わったらプールに行く?

 

今結花→ご飯食べる?それとも、訓練室で仮想近界人を倒す?お茶飲む?疲れてるの?マッサージしてあげる。月見さん用の湯のみ買いに行こうね

 

三上歌歩→幼い頃の思い出が三上の可愛い話としてオペレーター陣に回っていた。泣いてないもん!!

 

 

 

 

 

 

 




脱衣麻雀にした理由はない!!
多分、小佐野のスマホに上裸の神園たちが写真フォルダが作られた!

コメント、評価ありがとうございます!
日間ランキング10位になってて嬉しかった!
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