神園宅のリビングには、ソファーに座っている神園冬と、ダラっとソファーに寝そべっている三上歌歩の姿があった。頭を神園の腿の上においており、俗にいう膝枕というものをしている。
「ジュース飲みたい」
「炭酸でいいよね?期間限定のジュースがあるんだ」
「蒸し暑いね」
「冷房強くするよ」
「アンパンマンの映画見たいかも」
「流すから待ってね。1番胸糞悪い作品にしよう」
「ぴゅあぴゅあな作品がいい。腿が硬くて寝心地悪い」
「とりあえず、ジュース持ってくるから頭どけて」
こんな三上歌歩を誰が見た事があるだろうか。話したところで信じる人間はいないだろう。神園は冷蔵庫からお茶を1本と炭酸ジュース(ショートケーキ味)を持ってきた。炭酸ジュースは当然、三上の前に置かれる。お茶は既に神園が口をつけた。
「お菓子はないの?」
「冷蔵庫にクッキーなら入ってるけど、今は出さないよ。今食べたらお昼ご飯食べれなくなるでしょ」
「む」
「膨れてもダメだよ」
頬を膨らませて抗議する三上の頬を指で突けばぷしゅーっと空気が抜けていく。
「いいもん。自分で持ってくるから」
「あー、勝手に持ってくるのはおすすめしないけど。まあ、歌歩がそれでいいなら止めないよ」
可愛らしい動物柄のジップロックからクッキーを皿に出し、一緒に食べようと用意した三上。今度はお互いにソファーに隣合って座っている状態だ。ちょうど、アンパンマンの映画を選び終わった神園は再生する。
『それいけ!アンパンマン~わがはいが守ってみせる~』
映画のタイトルが流れる。神園は音量調整を、三上はテーブルの上に用意したクッキーを1つ口に運ぶ。
「っ!」
「ほら、ジュース飲んで」
三上が何故か悶絶して足をパタパタさせているのを冷静に、炭酸ジュースを開けて渡す神園。三上は震える手で受け取り、ジュースでクッキーを流しこもうとした。
ジュースを口に含んだ瞬間、三上は即座に勢いよく隣にいる神園の方を向いた。嫌な予感がした神園が逃げようと行動しようとした瞬間、腕を捕まれそれと同時に三上口からジュースがぶちまけられた。
「............」
神園の顔は濡れ、ポタポタとテーブルの上に水滴がこぼれ落ちる。三上はその間に神園の目の前に置かれていたお茶を一息に飲み干した。
「な、な、なにこれ?」
三上が甘くて美味しいクッキーと思っていたものは、辛いクッキーで、美味しいジュースだと思っていたものが不快感の塊のようなゲロ甘で美味しくないジュース。動揺しながらも神園に問いかける。
「ちょい辛クッキーと、期間限定という名に釣られて買った不味い炭酸ジュース(ショートケーキ味)」
神園は冷静に顔を拭きながらも、三上の疑問点に答える。そのことに気がついた三上があわわわと慌てながらタオルを奪い取り、代わりに神園の顔を優しく拭く。
「顔にかけたのはごめんね。クッキーはともかく、不味いって分かってるジュースを飲ませたのはなんでかな?ねぇ、神園冬くん?」
「歌歩がお菓子を求めることは分かってたから、事前にちょい辛クッキーを作って用意して冷蔵庫の手前に設置しておく。不味いジュースは僕が飲みたくないから、代わりに飲んでもらうために味を伝えないで渡す。まさか、顔にジュースをかけられるとは思っていなかったけどね。ほら、捨てるのは勿体ないでしょ?」
「普段の甘くて美味しいクッキーかと思ったら辛かったんだよ。子ども用に作ったフルーツカレーって言われて渡されたのに、大人用の辛口カレーだったら辛さは3倍されるんだからね。このジュースは冬にあげる」
「いらないものを人にあげたらダメなんだよ?」
「何事にも例外があるって知ってるよね?」
三上に勝てるはずもなく、3分の2以上残っているゲロ甘ジュースは神園が飲むことになった。なお、三上の機嫌を直すために神園はアンパンマン上映中、自発的に三上の肩もみをした。
「面白かったけど、本当にアンパンマン?子ども向けの映画にしては内容が重ためだったよね?子ども泣いちゃわないかな?」
「R-15指定のアンパンマンだよ。まあ、公式じゃなくて大きなお友達が勝手に作った作品らしいけど」
「ぴゅあぴゅあな作品がいいって言ったのに」
「そろそろお昼ご飯にしようか。インスタントラーメンとカップラーメン、どっちがいい?」
三上は軽く横に首を振る。
「冬の手料理がいい」
神園はだろうねとでも言いたげな視線を向けるが、三上は全く気にしない。
「残したら問答無用で追い出すからね。ハンバーグでいい?昨日からタネを寝かせておいたんだ」
「冬のハンバーグ好きだよ」
「そりゃあ、ありがとう。僕は料理が嫌いだよ、歌歩が来る時以外に料理をすることがないくらいにはね。お菓子作りは別だけどね。あ、歌歩は座ってなよ。手伝いはいらないからさ」
「ううん、見てたいの」
話しながら神園は作業に取りかかり、三上はキッチンが見える場所に移動して料理を作る神園を見守る。
(料理が嫌いな人は、前日からハンバーグのタネを仕込んだりしないんだよ。こればっかりは、冬の気持ち次第だよね)
お昼ご飯を食べ終えた2人は、まったりと過ごしていた。最初と同じで、ソファーで三上が膝枕されている状態である。
「最近根付さんが、会う度に広報部隊にならないかって誘ってくるんだよね」
「いいんじゃない?自分のことが好きな冬には向いてると思うよ」
「嵐山隊みたいに街を歩くだけで騒がれるのは嫌なの。日常生活に支障が出るし、発言にも気をつけなくちゃいけない。そんな面倒くさいの、絶対に嫌だね。除隊した方がマシ」
「よっぽど嫌なのね」
「それに、隊員も自分で選んだらダメって言うんだよ。僕が無能とコンビネーションとれるわけなくない?」
「人のことを無能って呼んだらダメ」
「はいはい。才能もなければ努力もしない人達と僕はコンビネーションをとれません。これでいい?」
「もう、ああ言えばこう言うんだから」
「思ったことは正直に言いなさいって、ミニ三上歌歩に僕は教わったよ」
「あの時は、こんなに傲慢じゃなかったもん。どうして、こんなに傲慢に育ったのかしら?」
「年下には優しくしなさいってのと、年上は敬いなさいってのもチャイルド三上歌歩から教えてもらった。僕は三上歌歩様の言う通りを第1にしております」
「それは嘘だよ。本当に年上を敬ってる?前に風間さんから『神園が挨拶と同時に頭を撫でてきたんだが、それだけ信頼しているということでいいのか?教えてくれ、三上。舐められてるわけじゃないよな?』って聞かれたよ。本当に敬ってる?」
「いやいや、敬ってる敬ってる。それはあれ、撫でるつもりは毛頭なかったんだけど、風間さんに会う前に日浦といたから、その時の流れで偶然だよ。僕ほど年上を敬ってる人間はいないね」
「本当に?」
「心の中でね」
「表面上に出さないと意味ないの」
「チャイルド三上歌歩は教えてくれなかった」
「なら、今アダルト三上歌歩から教えてもらったね」
「え、いや、歌歩はまだ大人じゃないから。むしろ、子どもなのに大人を名乗るところに子どもっぽさを感じた。よって、教えを却下します」
「私の言うこと第1じゃなかったの?」
「それはチャイルド時代に限る」
「今も子どもなんじゃなかったの?」
「高校生は子どもだけど子どもではなく、大人であるが大人でもない中途半端な時期だから、三上神の教えは拒絶できるものとした」
「分かりずらい説明で有耶無耶にしようとしてる?」
「うん」
「清々しいね」
「そういえばさ、今日の僕たちのランク戦は歌歩が実況なんだよね?」
「そうだよ。初めての実況だから緊張してる」
「んー、そんなに緊張しなくてもいいんじゃないかな。今日のランク戦は誰が実況でも変わらないだろうし」
「え?待って、それってどういうこと?私、今日実況初めてなんだよ?意地悪しないよね?」
「恨むなら、僕に対策をとらせた東さんを恨んでね。僕は悪くない」
「何しようとしてるのか先に、いやでも、事前に聞くのはよくないよね」
「大したことじゃないよ。今回のマップの選択権も僕の隊だからさ、少し工夫しただけ。大丈夫、歌歩なら実況できるよ」
「冬の大丈夫は大丈夫じゃないから、やだ」
「酷い」
〘B級ランク戦、夜の部。実況は風間隊オペレーター、三上歌歩です。解説は二宮隊の二宮隊長にお越しいただきました〙
〘二宮だ。一切の遠慮忖度抜きで解説させてもらう。よろしく頼む〙
〘ありがとうございます!本日のランク戦は10位の『東隊』11位の『諏訪隊』12位の『神園隊』の三つ巴戦です。二宮さん、今回選ばれたマップについてどう思いますか?〙
〘神園隊が選んだのは『森Aマップ』か。東さんをかなり警戒しているみたいだ。並の狙撃手なら何も出来ない〙
〘あまり選ばれることのないマップですね。平地に森林が続いているマップで高台がなく、遠くからの射線は通らないマップです〙
〘それだけじゃない。攻撃手からすれば木が邪魔で動きが制限され、射手銃手も斜線が通りにくい。そんな中、バイパーを自在に操る神園だけ斜線が通り放題だ〙
〘バイパーをリアルタイムで引けるのは太刀川隊の出水隊員、那須隊の那須隊長、神園隊の神園隊長、数多くいるボーダー隊員でもこの3人だけですね〙
〘あんな変態芸が誰にでもできてたまるか。各隊がどういった作戦で来るのか。今回みたいな誰からも好かれないマップの時にものを言うのは戦術だ〙
〘なるほど。確かに、今回のようなマップですと、練習通りの実力は発揮できないかもしれませんね。それを戦術で補う、そういうことでしょうか〙
〘鋭いな、その通りだ。どの隊の戦術が優れていたのか、それはこのランク戦が終わってからわかる〙
(東さんが指揮をとった場合、1番なのは間違いないだろうがな)
諏訪隊作戦室
「ざっけんな!クソマップじゃねーか!なにマイナーなマップ選んでんだ、あの野郎!」
「森マップなんて、存在忘れてましたよ。ランク戦で選ばれたことありましたっけ?」
「ない。どのポジションもデメリットが多いから、基本選ばれない。こりゃあ、厳しい戦いになりそうだ」
「ふゆふゆのバイパーに気をつけて〜」
東隊作戦室
「最悪のマップを選択されたな。俺は何も出来ないぞ」
「東さんでもですか?」
「東さんならなんとかなりますよね?」
「頑張れば1人くらいは落とせるだろうが、その後は俺も落とされるか自発的にベイルアウトで終わりだ」
「神園さんは落とせますか?東さんと引き換えなら、諏訪さんか神園さんのどっちかじゃないと割に合わないですよ」
「無茶言ってくれるな。さて、このマップでどうやって戦うか考えるぞ」
「「はい!」」
神園隊作戦室
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ
「じゃあ、作戦通りよろしくね。今さんは、状況によっては面倒なことを任せるかもしれないから油断しないでね」
もぐもぐもぐ
「わかった」
ごくごくごくごく
「花緒は基本的に合流優先。敵と遭遇した場合は格下であれば落としてから合流。同格、格上の場合は戦わずに合流」
「分かってる。戦うかどうか迷うくらいなら撤退、合流が優先ね。何回も聞いた」
「100回くらい言わないと覚えれないのかと思ってた。戦闘中以外バッグワームは常に起動しておくこと。忘れないでね」
【転送開始】
『レーダーに反応なし、全員バッグワームを起動してる。花緒ちゃんとはかなり距離が離れているわ。森マップの広さが裏目に出ちゃったね』
『問題ないよ。作戦は変更しない。合流してから仕掛けようか。今さん、合流地点にタグ付けしといて』
『今了解』
『花緒了解』
(このマップにこの天気、早々に敵に見つかることはない。しっかり合流してからぶつかれば、諏訪隊にも東隊にも負けることはない)
神園と花緒は今がタグ付けしてくれた合流地点に向かい走っている。周囲を警戒しながら移動しているが、敵とは遭遇していない。
「順調に合流できたわね。レーダーに反応がないってことは、他の隊も戦ってないみたい」
「その方が好都合。僕たちが取れるポイントが増えるんだから。早速始めようか」
「防御は任せて。ちゃんと警戒しておくから」
合流した神園と月見はそこまで話して、神園はバッグワームを解除してバイパーとメテオラを起動。月見はレイガストを起動し、神園の背後を守るよう動く。
【バイパー+メテオラ=変化炸裂弾】
「さて、更地にしようか」
神園は周辺に変化炸裂弾を炸裂させ、轟音と共に周囲の木々が倒れていく。それと同時に、誰かがベイルアウトした。
「運がいいわね」
「僕か君、どっちかがつけられてたのかな?」
「あんた」
「多分君だと思うけど。さてさて、このバカでかい釣り餌に食いついてくれるかな」
神園と月見の半径100メートルは更地になっており、そこ以外は森林というデタラメな空間が出来上がっていた。
「随分とめんどくせぇまねしてくれるじゃねぇか!」
諏訪、堤、笹森は固まってではなく、各々別々の方向から神園と月見を囲むように現れた。諏訪が正面、堤が右、笹森が左。だが、その距離は少し遠い。
「やっぱり、来てくれたみたいだね。やろうか、諏訪隊」
(笹森もいる。流石にカメレオンで仕掛けてくるには距離があるからかな)
『笹森から倒そうか。サポートしてあげるから、フェイント入れて』
『了解』
神園はバイパーとシールドに切り替え、月見は孤月とレイガストを装備して諏訪に突撃する。
(堤さんと諏訪さんの散弾銃はまだ射程外。僕の方に攻撃が来ることはない。フルアタックで戦いたいなぁ。この距離でも僕なら届く)
(俺の方に来んのかよ。3方向から仕掛けてるんだから、ちょっとは迷えよ)
「【スラスターオン】」
(違ぇ、狙いは俺じゃねぇ!)
「日佐人!」
方向転換し、笹森がいる場所へスラスターで向かう月見。同時に神園は月見をサポートするためバイパーで笹森を中心に攻撃する。
「【シールド!】」
トリオン供給機関を守るために笹森は心臓付近にシールドを張った。バイパーは軌道を変化させ、心臓部分ではなく孤月を持っている笹森の腕を吹き飛ばした。
「俺の事を忘れてないか?」
「忘れてないよ、堤さん。【シールド】」
接近してきていた堤の散弾銃をシールドで防ぎ、その間に月見が片腕を失った笹森の首を跳ねた。
『次は諏訪さんね』
『了解』
「いくらお前でも、これは防げねぇだろ!」
堤にシールドを削られたことにより、諏訪の散弾銃によって神園の左腕が飛ばされる。
「【グラスホッパー】」
(まさか、孤月を使うつもりか)
神園が何も無いところにグラスホッパーを発現させ、警戒した諏訪は後ろに下がる。
神園は諏訪から視線を外し、右側にいる堤へバイパーで攻撃を行った。当然ながら、諏訪が何もせず見守るわけがない。散弾銃へと手をかけた。
その瞬間、前方から勢いよく現れた月見に胴を真っ二つにされた。
「カメレオン、かよ」
「──2点目」
「いや、3点目だ」
神園のバイパーを防ぎきれず、諏訪が倒された数秒後に堤もベイルアウトした。神園隊はこの時点で3点を獲得している。
「東隊の攻撃手2人が攻めてきてくればもう少し稼げるんだけど、流石に来ないかな。あとは生存点の2点を」
──なんの前触れもなく、神園の頭が吹き飛んだ。
〘選手たちの転送が完了──って、これは!〙
(森マップに暴風雨!冬、なんで今まで誰もやってこなかったことをやるの!?)
〘天候を暴風雨にしたのか。ここまで徹底的に東さんを対策してるのは、このチームが初めてじゃないか〙
(森マップだけならまだしも、天候が暴風雨なら東さんといえど何も出来ないか。神園、そこまで東さんを警戒していたのか)
〘全チームがバッグワームを起動しています。森マップは広いので、このまま戦わずして終わる可能性も考えられますね〙
〘東隊は小荒井と奥寺が合流しようとしているな。東さんは単独行動か〙
〘対して諏訪隊と神園隊はどちらも合流するみたいですね。おっと、ここで東隊の小荒井隊員が月見隊員を発見!〙
〘まだ仕掛ける様子はないな。奥寺と合流してから倒そうとしているんだろう〙
〘小荒井隊員は距離を保ちながら月見隊員を尾行しています。奥寺隊員は小荒井隊員を目指し動いている。諏訪隊は合流できたようです〙
〘諏訪隊に遅れる形にはなったが、神園隊も合流できたらしい。これは──合成弾を作っているのか〙
〘背後から襲われないよう月見隊員が神園隊長を守っているようですが、なぜ敵を発見出来ていない状態で合成弾を作っているのでしょうか?〙
〘──まさか、無差別に攻撃するつもりか?〙
(神園はバイパーとメテオラをセットしていたはず。森という優位性を活かして技術的に戦うと思わせておいて、その優位性を投げ捨てた上で正面から戦うつもりか)
〘な、なんと!!神園隊長が周辺を変化炸裂弾で壊していきます!小荒井隊員、反応できない!巻き込まれてしまいベイルアウト!〙
(変化炸裂弾を作るのに20秒程度か。なるほど、護衛は必須だな)
〘合流した諏訪隊が、神園隊に接近しています!ここで、3方向に別れました〙
〘囲んで叩くつもりだな。更地にされたのは凡そ半径100メートル。銃手の射程外だ〙
〘月見隊員、向かってくる諏訪隊長に接近していきます〙
〘諏訪は真正面から戦って簡単に落とせるほど弱くない。これは悪手だな〙
〘月見隊員!スラスターで諏訪隊長から離れ、そのまま笹森隊員へと突撃していきます!〙
〘だが、神園も諏訪と堤の射程に入った。別方向から来ている2人を捌きながら月見をサポートすることは出来ない。月見と笹森、どちらかが勝つかで戦況が大きく動くな〙
〘笹森隊員、迎撃の姿勢です!な、なんと、ここで冬──神園隊長がバイパーで月見隊員を援護!シールドで堤隊員、諏訪隊員の散弾銃を防ぎます!〙
〘フルシールドならともかく、ただのシールドでは防ぎきれない〙
(笹森はトリオン供給機関を守るようシールドを出したか。以前までの神園のバイパーならそれで時間を稼げただろうが)
〘神園隊長のバイパーが笹森隊員のガードをかわして二宮隊長の解説通り、神園隊長の片腕が諏訪隊長の散弾銃により飛ばされました!〙
〘だが、笹森が月見に落とされた。人数的優位を崩された諏訪隊に、今の状況から点を取れる実力はない〙
(東さんがギリギリ更地になっていない100mに隠れている。スナイパーがこれだけ近づいてくるのは珍しい。諏訪隊も神園隊も気づいていないな)
〘神園が発生させたグラスホッパーをカメレオンを使用していた月見に踏ませたのか。勢いよく現れた月見に諏訪はやられたな〙
〘堤隊員、シールドで凌いでいましたが神園隊長にバイパーで撃ち抜かれました!──神園隊長もベイルアウト!?〙
〘神園の気が抜けた瞬間を見計らって狙撃した。この暴風雨の中一撃で決めれる狙撃手はそうはいない〙
〘1人になった月見隊員、狙撃元へ向かいますが東隊長はベイルアウト。残っているのは月見隊員と奥寺隊員だけになります〙
〘試合終了!最終スコア1:0:4で神園隊の勝利です!二宮隊長、総評をお願いします〙
〘諏訪隊の行動は悪くなかった。敵の位置を確認し、全員で総叩きにする。神園隊に誘われているとわかっていても、点をとるためには行かざるをえない〙
〘それだと、神園隊の作戦に乗せられたように聞こえますが、それで良かったということでしょうか?〙
〘乗せられたと、わかった上で乗ったでは天と地の差がある。ポイントこそ得られなかったが、判断自体は悪くない。諏訪隊が勝つ可能性も充分あった〙
〘なるほど。東隊はどうでしたか?〙
正直、このマップで東隊が生存点以外取れるとは思っていなかった。東さんの狙撃の技量が俺や神園の予想以上だったってことだ。小荒井が生きていれば、また展開は違ったはずだ㙙
〘最後に神園隊についてお願いします〙
〘月見の動きと神園の連携は悪くなかった。今回の森マップ、しかも暴風雨。足元がぬかんで動きにくい中、どの隊も健闘していた〙
〘二宮隊長、ありがとうございました!本日のランク戦は以上をもちまして終了とさせていただきます!お気をつけてお帰りください〙
(神園隊のコメントだけ少ない?)
「今さん、花緒、お疲れ様。労いのジュース置いとくから、家に帰ったら飲んでね」
「え、うん。ありがとう。毒とか仕込んでない?」
「君の分にだけ仕込んだかもしれない」
「ありがとう、神園くん。ありがたくもらうね」
「あ、はい。あの、自室で1人の時にのんでくださいね。花緒にはお姉さんの分もあげるね」
「風邪でも引いた?ありがとう、一応もらっておく」
(花緒が今日は月見さんと過ごしたいって言ってたから、打ち上げは後日。二宮さんに焼肉に誘われたし、そっちに行こうかな)
神園は二宮に寿寿苑に連れてこられていた。テーブルにまだ肉は届いておらず、2人の前にはジンジャーエールだけが置かれている。和やかな空気とは程遠く、神園をジトッと見ている二宮と目を逸らす神園。
「舐めた試合しやがって」
「二宮さんの気のせいじゃないですか?もう、全力も全力でしたよ。まさか、腕を飛ばされるなんて」
「だとしたら、お前の腕は地の底に落ちたんだな」
「ええ、文字通り片腕がポトッと落とされました」
「お前ならフルアタックで散弾銃の弾全て落とした上で、反撃まで行えたはずだ。それをなぜ、片方は月見の援護、片方はシールドなんてマネをしたんだ」
「花緒は初めてのランク戦ですから、活躍して自信をつけてほしかったんですよ。僕が手傷を負った方が、花緒も緊張感をもってくれると思って。まあ、東さんの狙撃は予想外でしたけどね」
「考えがあったことはわかった。だが、納得できないな。あんな手を抜いたふざけた戦いをして、なぜお前の隊の連中は文句を言わない?」
「2人とも僕がランク戦に精力的な時代はまだボーダーにいませんから。2人にとっては、アレが僕の全力です。いやまあ、手を抜いたわけではありませんけどね。少しだけ演出を施しただけです」
「物は言いようだな。一応理解はしてやる。詰めて悪かったな、好きなものを注文しろ」
「あ、すいません。サンチュとハラミ、塩牛タンお願いします」
「隊員とは上手くやれてるのか?」
「えぇ、今さんは優しくて頼りになりますし、花緒は根性があるし諦めが悪い。2人とも根が善人だから、やりやすいですよ」
(花緒は調子に乗りそうだから直接褒めないけどね)
「そうか。一時期、付きまとわれて困っていると話を聞いていたが偽りだったみたいだな」
「いや、全然それは本当ですよ。花緒、本当にしつこっくて。能力のない人間だったら、根付さんに頼ろうかと思うくらいしつこかったですよ。もう、小荒井と同じですよ。コアラ2号ですよ」
「よくそんなやつを入れたな」
「能力がありましたからね。僕の提案を聞くだけの素直さを持ち合わせてましたし、それに、そこまでして僕の隊に入りたいなんて嬉しいじゃないですか」
「そういうものか。上手くやれてるならいい」
「はい、問題ないです。あ、ありがとうございます」
二宮は肉を神園の皿の上に置き、神園はそれを受け入れる。店員が通りかかったタイミングで、神園は2人分のジンジャーエールを注文した。
「折角の機会なので、二宮さんにちょっと相談──いや、やっぱりやめておき」
「話してみろ」
くい気味である。
「最近、一部の友人から嫌われてる気がするんです」
「お前がか?そう思うってことは、何かあったんだろ。聞かせてくれ」
ジュージューと肉が焼ける音をBGMに神園は口を開く。
「例えば風間さんなんですが、」
(風間さんは神園を可愛がっていたはずだが)
「最近ご飯に誘ってもらって、食堂で御一緒させてもらったんですが、その時に『俺に聞きたいことはあるか』『相談したいことはないのか』ってすごい詰められて。特にないって答えたら、ショックを受けた様子でとぼとぼ帰ってたんですが、それから少し冷たくされてる気がして。なんでですかね?」
(頼られたいんだろ。比較的まともに慕ってくれていて仲がいい後輩。背丈からも子ども扱いされることが多いであろう風間さんの考えていることがよくわかる。なんて伝えるべきか)
「──わからんが、もしかしたら俺と同じで隊長としてお前が上手くやれているか心配なのかもな」
(だが、俺がそのことを伝えたら風間の尊厳が傷つくし違ったら申し訳ない。明確に答えるのはやめておこう)
「ああ、なるほど。って、やっぱり二宮さんも気にかけてくれてるんですね」
「...........気のせいだ」
「そういうことにしておきますね」
顔を背ける二宮、軽く笑い追求はしない神園。開始時とは打って変わって和やかである。
「あ、それで次なんですが、」
(人間関係を俺に相談するのは不適任だと思わないか?いや、話せと言ったのは俺だが)
「氷見さんなんですけど」
「気のせいだ」
「えぇ?自分のところのオペレーターだからって、適当言わないでくださいよ」
(聞くまでもなく、間違いなく勘違いだからな)
「前に烏丸に頼まれて韋駄天の使い方を教えてたんですよ。あいつ、韋駄天トリガーに入れてないのに教えて欲しいっていうから」
「ああ」
「終わったあとに食堂でご飯でも食べようって話になって食堂に行ったんですけど、タイミングが悪く昼時で満席だったんですよ。それで、氷見さんの座ってるテーブルが空いてたんで相席頼んだんですけど、話しかけたら半分くらい残ってた定食一気に食べて足早にいなくなっちゃって」
「...........そうか」
「よくわかんないですけど、悪いことしたかなって思って自販機でジュース買って隊室に届けに行ったんですよ。僕と烏丸2人揃って」
「..........そうか」
「そしたら、氷見さんと辻がいたんですけど、氷見さん辻の後ろに隠れて話してくれなくて。一応ジュースは渡せたんですけど、これって僕と烏丸嫌われてますよね?前に話す機会があったんですけど、その時は一方的に話されて会話も出来ませんでしたし。氷見さんには嫌なことを言ったりしたこともないのに」
「...............勘違いだ。迷惑でなければ、氷見と食事の席を設けさせてくれ」
「あ、分かりました。烏丸も誘っていいですか?」
「問題なければ、頼む」
「なんか、すいません。こんな個人的な相談してしまって」
「構わない。何かあればまた相談してくれ」
神園 冬
〔PROFILE〕
烏丸京介←才能があって可愛い後輩。太刀川隊が嫌ならうちの隊にきてもいいんだよ?ご飯を奢ってあげよう
出水公平←僕は弾バカじゃない。君と那須だけだ。才能マン
奈良坂透←僕はきのこ派なんだ。タケノコ派め、駆逐してやる
辻新之助←友達。君も奈良坂同様ナンパ避けになってくれる
影浦雅人←カゲさん?そんなに見つめてどうかした?
真木理佐←LINEで自撮りが送られてきたので、自撮りを送り返した。返信が来なくなっちゃった
那須玲←ひえっ、なんでバイパーを起動させてんの
熊谷友子←ラウワンの予定すり合わせ中
東春秋←森の暴風雨でヘッドショットはありえない。まったく気配がしなかった
風間蒼也←え、隊長としての心構えを教えてくれる?待ってください、そのホワイトボードなに。え、ノートくれるんですか。なにそれ
二宮匡貴←いっぱいちゅき
諏訪洸太郎←怒らないでください。はいはい、ごめんなさいごめんなさい
氷見亜季←嫌われているのは僕か烏丸か。はたまた、二宮さんが言う通り勘違いか。二宮さんの隊の一員に嫌われてるのは嫌だな
月見花緒←あんまり調子に乗ったらダメだからね。まあでも、ポイント取れてよかったね。おめでとう。君のことを認めてないわけではないよ
月見蓮←先に謝っておきます、ごめんなさい。出来心だったんです
今結花←ごめんなさい。花緒だけにジュースを渡すのは不自然だったんです。怒らないで、ごめんなさい
三上歌歩←え、ラーメン奢れって?なんで?
烏丸京介→先輩の隊に移るつもりはないです。もしも、もしもの話ですが、これから先、俺がどこに行っても仲良くしてくれますか?
出水公平→腕が鈍ったのか?あの程度の囲み、お前なら無傷で突破できただろ。ランク戦するぞ。あと、京介を引き抜こうとするな
奈良坂透→かかってこい。タケノコの力を見せてやる
辻新之助→友人。君と歩くとナンパされる。あ、まって、僕を置いていかないで
影浦雅人→今回の打ち上げ、うちの店でやんねぇのか。しょんぼり
真木理佐→送信取り消しする前に送った自撮りを見られた。自撮りの返信がきてフリーズ中
那須玲→師匠の腕が鈍ったなら、弟子の私が叩き直さないと。叩いたら直るってネットに書いてた
熊谷友子→ラウワンに備えて洋服をネット注文
東春秋→最後まで油断するな。仲間に華をもたせるのはいいが、普段から全力で連携練習しないとA級に昇格できないぞ
風間蒼也→しっかりと控えておけ。いいか、今から俺が教えることはあくまで俺が感じた個人の所感になる。一例として参考にしてほしい。時間はあるな?
二宮匡貴→ちゅきちゅき。風間さん不器用か。氷見、お前という奴は.....
諏訪洸太郎→油断か?それとも手を抜いたのか?言いたくねぇが、本気じゃなかっただろ。怒ってねぇよ、悔しいだけだ
氷見亜季→ひゃぁぁぁぁぁぁっ!無理無理!なんで、烏丸くんと神園くんが一緒に私のテーブルに!無理無理!え?二宮さん!なんで、そんなありがた嬉しく迷惑なことを!!!?
月見花緒→貰ったジュースを姉と飲んだら不味すぎて吹き出した。絶許、でもこんな悪ふざけができるくらいには仲良くなれていて嬉しい
月見蓮→おこ。激おこ
今結花→可愛らしいイタズラするね。目には目を歯には歯を、イタズラにはイタズラを
三上歌歩→とんこつラーメンがいいなぁ
ショートケーキ味の商品って、基本ゲロマズだよね