米花町パンツ一丁忍法帖。   作:ひつまぶし太郎

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終幕かもしれない話です。


米花町の長いかもしれない一日・結

 

 

コナンが叫ぶのと、映像の中の少年が懐から小さいなにかを取り出すのはほとんど同時だった。

 

『しもしもー?私忍者、今電車の上にいるの。もしかしてさっきみたいに爆弾とか仕掛けられてるのかなーって思ってるんだけど正解?』

 

「普通に正解だから危ない真似すんじゃねえ!心臓に悪いから!」

 

『別にミサイルが降り注ぐジェット機の上にいるわけじゃないんだぜ?この程度よゆーよゆー。というか元太から借りたこのバッチ何?無線機?子供のおもちゃにしては技術革新やばくね?東都って進んでるのな』

 

「バーロー、そんな冗談言ってる場合か!」

 

『冗談じゃないのに…ていうか一人で爆弾運ぼうとしてたやつに言われたくないんだけど?』

 

「ぐっ」

 

コナンの割とガチ目なお説教も、当の少年はどこ吹く風だ。

頭の上の猫を器用に撫でながら、少年は続けた。

 

『いやさ、ぶっちゃけ俺だけなら余裕で逃げられるのよ。今ちょうど通りかかった橋で飛び降りてもいいわけで。でもそれは義理にかけるかなぁぁぁあーっ!』

 

『ふにゃあ!?』

 

「どうした!?」

 

『見つけた見つけた見つけた!橋の上に爆弾一つ!つーことは電車にはやっぱねーのか。とりあえず網棚とか椅子の下とか置きっぱなしの荷物の中とかにはなかったけど』

 

「…橋の上…違う。線路の上…間?いや、そうか光!だから減速したら爆発するのか!」

 

『急に何?こわ…』

 

「お前そこからちゃんと降りれるんだろうな!?」

 

『こんな時に俺の心配なんてしなくていいぞ』

 

「うるせー子どもは大人に心配されてろ!」

 

『見た目同い年だろ何いってんだ。それともなんだ?俺が歳の割にチビだってバカにしてんのか?こちとら正真正銘の6歳で、最近苦手なきのこだって食えるようになった超立派な───』

 

「…とりあえず!俺はこのことを目暮警部に伝えてくる!お前、ちょっとでも怪我したら許さねーからな!」

 

『保護者か?』

 

『にゃー』

 

『え、なに?大人ぶりたいお年頃?たしかにそれありそう!ひひっ、おませさんかよ』

 

午後四時二十分。

東都環状線に爆弾が仕掛けられるという異例のテロ事件は、ものの二十分で解決する。

 

警察が爆弾のもとにたどり着いたときには、全ての爆弾が既に解体されており、それを成したと思われる少年は、事件発生直前まで一緒にいたという子どもたちの側からこつ然と消えていた。

 

「じゃ、またねい」

 

「え、もう行っちゃうんですか!?」

 

「もっとお話したかったなぁ」

 

「今度は公園でサッカーしようぜ!」

 

「いいやつだなお前ら。同年代がコミュ力高すぎて俺は死にそうだけど」

 

環状線の上空から撮影を続けていたカメラには、電車から飛び降りて線路上を歩いていた少年が捉えられていたが、一瞬木の葉がカメラを横切った瞬間に見失い、その後の足取りは掴めていない。

 

 

 

 

 

「へーそんな扱いになってたんだ」

 

「へーってお前なぁ…」

 

「なふ…」

 

「お、なんだ小太郎眠いのか」

 

あの電車での爆弾事件の後姿をくらました俺は、3度(みたび)コナンの前へと現れていた。

なんの因果か、爆弾の前で。

お前いっつも爆弾で死にそうになってんな。

 

もっとも、その爆弾も今はもう沈黙しているが。

 

『死ぬ時は一緒だぜ…』

 

なんてラブコメしていたところ申し訳ないが、俺はそんな爆死エンドは御免こうむる。

ここにたどり着くまでにあった大量の爆弾たちと同じように、俺は見知らぬ美人が抱えていた一番大きな爆弾を解体した。

 

訪れたのは静寂。

そして、助かったのだという安堵をようやく被害者たちが噛み締めれるようになったあたりで、割れんばかりの歓声が響いた。

俺が扉切り裂いて突入した時は悲鳴あげてたくせに。

手のひらドリルか?

 

「ありがとう。助かった」

 

「むず痒いからいーよそういうの」

 

幼馴染を、多くの人を救ってくれてありがとう、と。

死んでもいいとさえ思っていたあの瞬間を覆してくれてありがとう、と。

そんなふうに真剣に頭を下げられたところで、俺はできるからやっただけなのだ。

そこに正義感とかそういうものはないので、あまり感謝されても困る。

爆弾を解体する技能がなかったら、さっさと一人で逃げてるし。

 

「というか、それはいいけどさ、なんか行く先々で爆弾見つけるんだけどなに?トイレからここまでゴロゴロと爆弾あったし。米花町ってそういうとこ?あぶねー街だなここ」

 

「いや、今日が特殊なだけだから!ほんとに!」

 

「ほんとにぃ?仏の顔も3度までって言うぜ?俺の顔は一度までだけど」

 

「普通に短気なのやめてくれる?というかお前なんでこんなとこにいるんだよ…めっちゃ助かったけど」

 

「や、センタッキーヤケ食いしてたら腹壊してさ…時間的に開いてる公共トイレも見つかんなくて。土地勘ねーから公園もわかんないし、でかいところ目指してたらたどり着いた」

 

「えぇ…」

 

「冷たいコーラがぶ飲みしたからかなぁ」

 

「絶対それだろ。…森谷の敗因コーラの飲み過ぎか…うわぁ…」

 

そんな真剣な謝罪を特に気にすることなく会話をする俺達に向かって、一人の美人が近づいてくる。

それにいち早く気がついたコナンが、満面の笑みを浮かべる傍ら、俺はうっそりと振り返った。

 

「君が助けてくれたんだよね?ありがとう!コナン君も助けに来てくれてありがとうね!」

 

「ぐえー死んだんゴ」

 

「急にどうしたお前」

 

眩しい。

夜であっても太陽な笑みを浮かべる女性を前に、俺は思わず目を覆った。

根っから夜闇に潜む忍者(陰キャ)な俺には、コナンといい少年探偵団といい目の前の少女といい、都会に来てから眩しい存在ばかりで勘弁してほしいというのが正直な感想だった。

 

「蘭ねーちゃんが無事で良かったよ!」

 

「やー、むしろなんかいちゃいちゃしてるところに水さして申し訳ない」

 

「いちゃ!?…ってそうだ新一!さっきまで扉の向こうに新一いたと思うんだけど!」

 

「え?あれぇ…さっきまでいたんだけど…」

 

怪我とかしてないかな、と真剣に心配するランネーチャンと目が泳ぐコナンとは対象的に、俺の頭の上には疑問符が浮かんでいた。

俺とコナンの他に、扉の反対側にいた人間はいないはずだ。

それともなに?

幽霊でもいた?

それかもはや忍者を超えて気配のないド級の陰キャとか。

 

「シンイチ?誰?漫画家?」

 

「あ、違うの。高校生探偵で…えーっと。私と同じくらいの年の男の子なんだけど…」

 

「…ァ、あー、あの人か。あーね、シンイチね。シンイチシンイチ。知ってる知ってる。シンイチはなんかほら…あれだよ、うん」

 

咄嗟にコナンが声真似してたやつか、と思い至れた俺を誰か褒めてくれ。

というかおそらくコナンが声真似をしていた以上、シンイチはここに来れていないのだろう。

だが、その事実はきっと目の前のランネーチャンを傷つけると見た。

だってコナンがめっちゃ必死に言い訳考えてるし、目でめっちゃ何かを訴えてきてるし。

なんでコナンがそのシンイチにそこまで尽くすのかわからないが。

なに?

ホモ?

 

「シンイチなら、さっきレスラーの人に連れてかれてバチボコに怒られてた…よ…うん。なんか、その、あれだよ。俺とかコナンとか、子どもを危ないところにつれてくるんじゃねえカスが!って」

 

「レスラー!?」

 

「お前何いってんの!?」

 

「あ、やべ、いい間違えた。…うーんほら、通りすがりの悪役レスラーだったのかな…わかんないけど。レスキューじゃなくてね、うん」

 

嘘を訂正する、という労力すら面倒くさくなってきたので、もうそのまま貫き通すことにしよう。

なぜレスラーがいるのか。

そんなことはどうでもいいのだ、きっと。

少なくとも俺にとってはどうでも良かった。

 

「そんなことあるんだ…」

 

「あるわけなくない?」

 

「あと、うまく話ができなくてほんとに済まないと思ってるって歌ってた」

 

「それ本当に新一?」

 

「音痴だった」

 

「じゃあ新一だね…」

 

「蘭ねーちゃん?そんな納得の仕方ある!?…お前忍法言いくるめとか使ってないだろうな!」

 

「忍法って別に魔法じゃないんだけど…?あと俺、魔女って嫌い。サディストだし」

 

「何の話ぃ?」

 

なんだよこいつ庇ってやってるのにうるせえな。

なんかまぐれで音痴とかいう正解引き当てただけで、こちとらシンイチエアプなんだよ。

つーかなんで俺が見ず知らずの高校生のフォローしなきゃいけないんだ?

そんな俺のジト目に気がついたのか、怒涛の展開に目を回していたコナンは押し黙る。

 

そんなコナンを尻目に、ぐっと伸びを一つして、いい感じに距離を取りながら俺はひらひらと手を降った。

 

「じゃ。長い一日すぎて疲れたし、問い詰められるのとかめんどいんで」

 

またいなくなる。

そう確信したらしいコナンは咄嗟にこちらに手を伸ばすがもう遅い。

俺はもう疲れたんだよ。

流石に寝たい。

 

「あ、おい!せめて名前!」

 

「───拙者これにてドロンにござる。名前?望月雪音だよ」

 

強い風が吹いた、その直後。

コナンと蘭が目を開けたときにはそこに一人と一匹の姿はなく、どこか見えないところで猫がにゃーとないた。

 

探偵と忍者。

見た目は子ども同士。

二人の物語が交わるのは、意外とすぐかそれとも───

 

『あ、こら…にゃーとか鳴いたらまだ近くにいるってバレちゃうだろ!』

 

『にゃ?』

 

「はは…しまらねー…」

 

少なくとも。

米花町の長い一日。

そんなしがない噺の語りはここで終わりである。

 

 




最後まで読んでくださってありがとうございました。
いつか書いてみたいと思っていたコナン二次が書けて楽しかったです。
良ければ評価や感想頂けると嬉しいです。
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