双葉の兄になりたいだけの人生だった   作:水羊羹量産計画

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レイトン教授シリーズならレイトン教授が好き。
新作を素直に喜ぶ気持ちと思い出の中でじっとしておいて欲しい気持ちで揺れ動いているので初投稿です



7駅目 平和な世界

 

4月18日(月)

 

 

 朝、いつも通りに目を覚ます。

 調子はまずまず。完全復活とは言わないけれど体は軽い。

 多分熱も引いてるだろう。ベッドサイドに置きっぱなしの体温計で、念のため数字を確認する。平熱だ。

 

「あ、あー……、げほっ」

 

 声は若干枯れてるけど。

 床においてある鞄を引っ掴んで、中からメモを取り出した。リャナンシーへの指示を書く。言葉にすると聞かれてしまうから。

 

『あの少年と取り巻きのことを探ればいいのね。

 いいわ。私も気になっていたもの』

 

 珍しくリャナンシーが乗り気だ。

 面倒だから魅了しようとか殺してしまえとか言われると思っていた。

 などと口に出したら、気分がころっと変わりかねないので、うんうん頷いておく。

 

『これ、持っておきなさい。昔拾ったの。私がいない間に何かあってはいけないから』

 

 リャナンシーは、どこからか玉を取り出して僕に握らせる。不思議なオーラがある玉だ。

 なんだこれ。お守り、パワーストーン的なものだろうか。

 

『もしものときは、それを投げつけて逃げなさいな』

 

 なるほど、つまり煙玉だな。

 ……暴投しそう。

 この世は運動できるやつが偉いんだなって。足の速さもそうだけど、ただ逃げるのにも最終的にはフィジカルが勝つものだ。

 

 

 隣の部屋をそっと覗いたけれど、双葉はまだ寝ているみたいで真っ暗だった。

 

 居間には佐倉さんがいて、こちらに気がつくとちょいちょいと手招きした。

 佐倉さんはすぐにでも店に行けそうな服装をしている。さして興味のないテレビを付けている辺り、僕が起きてくるのを待っていたらしい。

 

「具合はもういいのか?」

「はい」

 

 佐倉さんのごつごつした手が額に触れた。言葉の信用がなさすぎる。

 

「あの、昨日の続きみたいになるんですけど、今日の帰りにでもルブランの盗聴器を回収しに行きます」

「そうしてくれ」

「本当にごめんなさい。双葉のこと止めるべきでした」

「そうだな」

 

 てっきり僕も連帯責任で怒られると思っていたけれどそうでもなかった。

 

「佐倉さん?」

「悪かったな、一葉。俺の目が行き届いてなかった」

 

 鍵までかけて部屋に閉じこもってしまったら、無理に開けることもできないのに、目が行き届かせるなんて端から無理な話だ。

 

「いえ、佐倉さんには充分よくしてもらってます。双葉も懐いてますし。

 あ、そろそろ時間なので行きますね」

 

 引き取ってくれただけでもありがたいのに、好きにさせてもらっている。双葉だって、佐倉さんだから我がままを通している。それ以上なんて、望み過ぎというものだ。

 親戚だって嫌がられるというのに、よその子どもを養育したいなんて多くの人は思わないだろう。手間もお金もかかるし。

 

「ああ、気をつけろよ」

 

 

 

 

 駅に向かう道で見知った背中を見つけた。

 雨宮先輩だ。

 

 リャナンシーに目配せすると、意図を汲み取った彼女は笑みを浮かべた。

 

『ええ、まかせてちょうだい。先に行くわ』

 

 彼女は先輩の後ろにぴたりとつける。放課後までの間、ちゃんと聞き耳を立てていてくれるだろう。

 

 

 電車を一本ずらしたら、少し遅くなってしまった。

 もう大半の生徒が登校しているようで、ドアの前から教室の喧騒が響いてくる。

 

 扉を開けて教室に入ると、地に足つかなかった金曜日の空気から打って変わって、どこかクラスの雰囲気が落ちついている。いや、落ち着いているというよりは、変に上がっても下がってもいないような感じだ。

 教室の後ろの方で、なにやら生徒たちが集まっているようで、その中に矢嶋と芳澤さんの顔が見えたので近づいてみる。

 

「おはよう」

「おう、来たか樋口。お前は当然きのこだよな」

「まってなんの話?」

 

 金曜日のお礼を言おうと思ったら、完全に出鼻をくじかれた。

 矢嶋はよくぞ聞いてくれました、とばかりに胸を張る。

 

「戦争だよ戦争」

「ああ、そういう…」

 

 矢嶋がとんとんと親指で指した後ろ黒板には、きのことたけのこのイラストと共に正の字が書かれていた。

 正の字の数からして、クラス全員に聞いているらしい。きのこがやや劣勢だ。

 

「で、どっちだよ。第三勢力は認めてないぞ」

「ならきのこ派かなぁ」

「よし、お前をわが軍門の末席に加えてやろう。手始めに、かつての友を討ってもらう」

 

 矢嶋の目線の先には、困った顔の芳澤さんがいた。

 お子様ランチに刺さっていそうなサイズ感の旗を持っている。たけのこ万歳と書いてあった。

 

「どちらか選ぶならって聞かれたので。あ、でも今からでも遅くないですよ。たけのこ派になりましょう」

「敵の甘言に騙されるな! たけのこは所詮クッキーがメイン。チョコを愛するなら選ぶべきはきのこだ!」

 

 そうだそうだ、と野次が飛ぶ。

 きのこ派とたけのこ派で、それぞれ謎の一体感が形成されている。おかしい、こんな感じだったかこのクラス。

 

 少し見ない間にきのこ派の中核の身分を手に入れている矢嶋に小声で話しかける。

 

「なんでこんなことになってるの?」

「言論統制の延長線上で?

 まず、例の件はフキンシンだって、話さないことになったんだよ。声のでかいやつに宣言してもらったわけ。

 で、かわりの平和そうな話題を募集したらこうなった」

「言うほど平和かこれ」

 

 多分もっとも燃焼力の高い話題なんだけど。

 有名すぎるほど有名なネタだから、誰も本気にしないあたりは平和な話題選びではある。

 

「説得なんて無駄よ。

 私たちは相容れない存在なの。たけのこのよさを見抜けない節穴の男たちに構ってちゃ駄目。しっかりして、芳澤さん」

「でも、そんなお菓子の好みくらいで争う必要なんて……あ、えっと、たけのこが一番美味しいです!」

 

 本当にネタって分かってるかなあ。

 多分演劇部にでも入っているのだろう、芝居がかった調子の女子が芳澤さんの肩を抱く。

 

「既存のグループが割れてるから、変に固まった仲間意識はぶっ壊れたんじゃね?」

「矢嶋ってすごいな」

「乗ってくれた奴らがな。楽しそうにやってたら、あとは流されやすい大多数が乗っかってきた」

「でも、これは矢嶋が始めたんでしょ」

 

 金曜日の段階から仕込みはしていたみたいだし。土日の間にも何かしていたのかも知れない。今日だって演者側で参加しているし。

 こっちは結局人任せになっているのに。

 

「本当にありがとう。

 金曜日のことも、今日のことも」

「いい。情けは人の為ならずって言うだろ。それに、やってみると意外とできるもんだなって。結構楽しかった」

 

 たけのこ派の集団の中にいる芳澤さんはにこにこ笑っている。

 演劇部?女子による即興劇が佳境を迎える。どう乗っかったら面白いだろうとクラスメイトたちはじっと事態を見守る。

 

「分かったわ、芳澤さん。

 少子化で先細りする菓子業界のためを思えば、私達が醜い争いを続けるのは間違っているのね……」

「そうです。どっちも美味しいから、どっちが好きでもいいんです!」

「よく考えたら、きのこも悪くないかも! 私はたけのこしか買わないけど」

「たけのこだって…ちょっといいところ思いつかないけど、人気だし、すごいぜ!」

 

 なんか雑な世界平和が生まれた。

 

「ホームルームはじめるぞ。

 それと先生はきのこ派だ。正直たけのこ派は味覚がおかしいと思う」

「「「「は?」」」」

 

 儚い平和だった。

 

 

 共通の敵が生まれると平和は維持されるんだなと思いました、まる。

 戦争が終結……じゃなくて、朝のホームルームが終わった。

 

 担任も金曜日の件はノータッチだった。説明のための集会とかもないらしい。

 どう説明するかまだ決まっていないのかも知れないが、そこを先延ばしにするのは流石、一体育教師がヒエラルキートップに躍り出る学校だな、という印象。保護者から訴えられろ。

 

 一時間目が始まると、リャナンシーが一度戻ってきた。

 

『城で赤い服を着ていたニンゲン、予想通りタカマキ アンで合っていたわ。落ちたニンゲンと親友だったみたいね』

 

 動機はバッチリ。

 

『あの少年に今日はパレスに行かないのかって、せっついてたわ』

 

 やる気もバッチリと来た。

 

 パレス。

 あの城のことだろう。個人持ちの認知世界を指す名称としては分かりやすい。

 そして、やはり雨宮先輩たちは鴨志田先生の認知世界…パレスに任意で入れるらしい。決定権があるのは雨宮先輩、というのが分かったのは良かった。

 

『放課後に行くってことで、話がまとまったみたい。

 ねえ、思ったのだけど、巻き込まれて入るときいつも城の中に出るわ。だから、入る場所を変えてみない?』

 

 入り口は校門。

 ならば、鴨志田先生がいそうな場所、職員室や体育館、体育教官室などから入れば、中心部に近いところに出るかも知れない。

 

 そういえば、雨宮先輩たちはどこから入っているのだろう。敵だらけのところに入ってしまうリスクを考えると、校門付近か。

 どうやって入るのか興味があるし、今日は雨宮先輩の後をつけることにする。

 

『それから、あの少年の机の中に猫がいたわ』

「っ、げほっごほっ…!」

 

 まじかよ、やりやがった。

 いや、鞄に入れていた時点で予想して然るべきだったのかもしれないが、まさか実体のあるやつを連れてくるとは思わなかった。

 あれだろうか、猫には優しい不良ムーブ。裏掲示板が健在だったら秒でネタにされただろう。

 

『それじゃ、私は引き続きあの少年の様子を見ておくわ』

 

 リャナンシーは長い髪を翻して、教室の外へふわりと飛んでいった。

 

 

 

 

 帰りのホームルーム中、双葉に『遅くなる』とメッセージを送って、携帯の電源を切る。

 

 帰宅部トリオ解散後、すぐに僕は雨宮先輩たちを捜した。天然と養殖のダブル金髪が目印になって意外とすぐに見つかる。

 こちらに気付いたリャナンシーが僕のもとに戻ってきた。

 

『今から行くつもりみたい。

 鴨志田をやらないと退学になると言ってたわよ』

「…退学?」

 

 そんな権限まで鴨志田先生にあるのか。

 そういう騒動の噂なら裏掲示板なのだがもう潰してしまった。

 

「それも調べたいけど、今は追いかける」

 

 こっそり後をつけると、学校前の路地で頭を突き合わせて何か相談を始める。

 場所が場所なのであまりにも目立つ。

 

 一目で不良のたまり場と認定しただろう同学年は足早に去っていった。

 校門付近にいては鉢合わせる。一つ先の路地から先輩達の様子を見ることにした。

 何を話しているのかリャナンシーに聞いてもらいたい気持ちもあるが、いつ認知世界に入るのかもわからないからやめておいた。

 

 しばらくすると話はついたらしく、三人と一匹が立ち上がる。雨宮先輩がスマホを触って、そして、世界が歪んだ。

 ぐにゃぐにゃした視界が落ち着いてくると、学校の代わりにあの城が現れていた。

 

 たちまちの間に先輩たちの衣装が変わる。

 物騒なニチアサかよ。いつの間にか銃まで持っている。銃刀法どこ、ここ?

 僕はいつも通りの学生服。あのペルソナとかいうのを出せるようになると変身(仮)できるのかもしれない。

 

「これってそのまま帰ったら帰れるよね」

『前と同じならそうね』

「雨宮先輩たちが出たあとも、パレスにいたらどうなるのかな」

『さあ?』

 

 城に向かって駆け出していった先輩たちは壁に空いた穴から身軽に侵入する。

 なんであれ腕の力だけで入れるんだよ。運動音痴に世界が厳しい。リャナンシーに手頃な踏み台を用意してもらって、やや遅れて後を追った。

 

雨宮先輩たちが蹴散らしてくれたようで、中にはほとんど敵は見当たらなかった。

 死体が残るわけじゃないから城の中はがらんどう。かなり不気味だ。

 

「とりあえず付かず離れずで。帰りは城の内部に残ってみる」

『ええ、分かったわ。そばを離れないで』

 

 パレスは城らしく攻め込まれにくいように、ややこしい構造になっている。

 基本的にもととなった学校の作りに似ているけれど、広さは全然違うし、階段なんかは螺旋階段になっていた。

 右足と左足で、違う距離だけ足を出すのが難しいので螺旋階段は苦手だ。いつも躓きそうになる。

 

 先輩たちは、城の奥を目指して迷いなく進んでいく。オタカラがどうとか、ルートを確保とか、盗むとかのワードが聞こえる。

 ちょっと何をしようとしているのか分からないけれど、殺人が目的ということではなさそうだ。

 ピリピリしすぎていたかも。世界はそこまで殺伐としていなかった。少し反省。

 強盗致死の可能性は残されているけれども。

 

 話の調子から、今日ですべて済ませようという感じではない。

 戦闘で消耗しているのもあるだろうし、奥に行けば行くほど敵が強くなってきているのも要因だろう。リャナンシーは雑魚ね、なんて軽く言うけれど、雨宮先輩たちは苦戦しているようで目に見えて一回の戦闘時間が伸びている。

 たまに流れ弾みたいに襲ってくる怪物は、リャナンシーにあっさり呪い殺されているけれど。

 

 優秀な妖精が先輩たちの位置を気配で把握してくれているおかげで、付いていくだけならそう難しくない。

 

 

 などと思っていた時期が僕にもありました。

 シャンデリアを跳び移るのは、映画の世界の話なんよ。

 

 僕は運動音痴を自認しているし、鴨志田先生もそれを認知している。パレスにおいて、それは呪いみたいなものだ。

 いや、素の運動能力でも無理だけどさ。

 

『あなたも飛んだり跳ねたりするつもり?』

「いや、無理でしょ。運動音痴なめるな」

『なら、今日はここまでね』

 

 そういうことになった。

 

 完全に僕が足手まといだけど、監視なしのリャナンシーは間違いなく好き勝手する。

 向かってくるやつは全部殺せばいいと思っているし、実際できてしまうだろう。仲魔は基本的に言うことを聞いてくれるけれど、あくまで言うことを聞いてくれるだけ。従順な下僕ではない。

 

 城の兵士や雨宮先輩たちと出くわさないように、物陰に隠れる。

 

『オタカラって何かしら。金煌のお札? 山羊のお人形?』

「それお宝?」

『とても価値あるものよ』

「価値あるものねぇ……」

 

 ここは鴨志田先生の認知世界。

 なら一般的に価値あるものと言うよりは、鴨志田先生にとって価値あるものがそれに該当するだろう。

 単純に金銀財宝というよりは思い出深い品などがその位置に据えられそうだ。

 

「そんなの盗ってどうするんだろ」

『盗られたら落ち込むでしょうね』

「あー、嫌がらせ?

 それか、もう二度と悪いことできないくらいに鼻っ面へし折るみたいな?」

 

 なんとなく見えてきた気がする。

 認知世界において、オタカラとされるくらい大事なものを奪い取ることで、精神的にダメージを与えて反省させる。

 認知訶学の理論でも通りそうな話だ。

 

「でもそれ絶対本人は抵抗するよね」

『そうね。それで命まで奪われるなら、その程度の存在だったってことだわ』

 

 どうしたものか。

 罪は法で裁かれるべきものだが、この国の司法はわりと終わっている。

 

 ただの教員である鴨志田先生にそこまでの力はないと思うけれど……いや、どうだろう、こんな城を認知世界に持つくらい学校を私物化しているのだ、多少のボヤなら学校の力で揉み消される可能性は高い。

 飛び降りまで起きて、何も説明のないアレな学校だし。かといって大火事にすると、関係ない人まで焼き出される。

 

 これまでの実績から、退学というのも脅しではないだろう。

 

 同様に考えた雨宮先輩たちが、やむにやまれず選んだ手段がこれだというなら、思いとどまらせるのは困難だ。

 どうにかできるかも知れない希望を目の前にぶら下げられて、飛びつかずにいられるはずもない。

 スマホでひょいと認知世界に入れてしまうわけだし。

 

 

 決行日までの間に、城の奥にいきなり出られる場所を見つけて、何かあったら止めようか。

 これは難しい。

 都合よく奥に行けるかわからないし、殺さずに捕縛するのはリャナンシーの苦手分野だ。加えて、先輩たちは銃を持っている。下手したらその一瞬、その一発で事が済んでしまうかも知れない。

 

 

 なら、こちらのことがある程度割れるのを承知で、認知世界の性質を雨宮先輩に話し、自制してもらうか。

 雨宮先輩たちに殺意も知識もないなら、現状では最善かもしれない。

 

 認知世界のことに深入りしてほしくない気持ちはある。

 けれど、この件だけ片付けば、先輩たちにはそれ以上認知世界にかかわる理由もないし、彼らのやり方でうまくいくかは僕も気になるところ。

 認知世界の化物たちほど話が通じない相手でもなし、警告しておけば無理に突っ込んでは来ないと思う。

 

 今日一日で大分情報が集まった。

 知らぬ存ぜぬと言い逃れができないようにはできるだろう。

 

 

 

 

「ただいま、佐倉さん……って、あれ」

 

 明かりが漏れるルブランの扉を開ける。

 表のプレートはクローズドと書かれていたから、店内にいるのは佐倉さんだけだろうと思っていたら、客席に雨宮先輩が座っていた。

 佐倉さんは店の奥で閉め作業をしているようで、おかえり、とだけ言ってまた引っ込んだ。あの様子ではまだかかりそうだ。

 

「雨宮先輩、こんばんは」

「こんばんは」

 

 クロスワードを解いているらしい。

 盗聴器を回収するだけと思っていたのに、さすがに目の前ではやりづらい。

 ああ、いいことを思いついた。

 

「最近はどうです?

 退学にされるとか小耳に挟みましたよ」

「耳ざといな」

「本当なんですね。どうするつもりですか? 耳をそろえて謝りに、なんて顔じゃないですけど」

「流れに耳を洗って生活したい」

『耳耳うるせーよ!』

 

 今まで膝の上にいたらしい喋る猫が店のテーブルの上に乗る。

 床を歩いた足で乗るな。……いや、鞄の中に入っていたならそこまで汚くはないのかもしれないけど。

 

「佐倉さんには……ああ、もう怒られたんですね。ならいいです。名前はなんていうんですか」

「モルガナだ」

 

 ほのかに妖精味のある名前が飛び出してきた。

 後で調べよう。

 

 さて、少し脅かしてみようか。

 佐倉さんに聞こえないように、内緒話をするときみたいに耳を貸してもらう。

 

「城で拾ったんですか? 喋る猫なんて珍しいですね」

『こいつ、ワガハイの声が聞こえて…!』

 

 ぶわりと毛が逆立てて、モルガナはこちらを睨みつけた。猫の聴力の前には、ひそひそ話も意味がなかったようだ。

 そう威嚇しないでも悪いようにはしないのに、と思うけれど、ビビってる猫がちょっと面白いので黙っておく。

 

「先輩たちがしようとしていること、おおよそ想像がつきます。壁に耳あり障子に目あり、というでしょう」

 

 目の前で盗聴器を回収する。

 話の流れで僕がとったものの正体を察したらしい雨宮先輩は、眼鏡越しに鋭い目を向ける。まっすぐ見られるの苦手なんだけどな。

 

「先輩は明日の放課後空いてますか?

 少しお話したいことがあるんです」

 

 

 





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返信はできませんが、跳ねて喜んでいます。

一葉の読みですが、私は一葉という文字列として捉えているので音は問いません。何を当てても正解です。 気になるのであれば決めましょう。投票で多かったのが公式見解ということで、よろしくお願いします

  • カズハ
  • ヒトハ
  • イチヨウ
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