魔法少女育成計画LastPage   作:赤葉忍

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魔法少女は笑う

♢レイニー・ブルー

 

 スノーホワイトの方でも話がまとまったようで、レイニーも含めてスノーホワイト、ロールドンナ、ラミーの4人で調査を進めることに決まった。しかし、北海道はかなり広大な土地。闇雲に探していたら魔法少女の足でもかなりの時間がかかる。そこで、ジェーン・ホワイト達が次に狙いそうな魔法少女に目星をつけてから移動することになった。

 

「なぁ、これ、絶対魔法少女が絡んどるやろ」

 

 そう言ってロールドンナが見せてきたのは、雪祭りのホームページだった。過去の作品もずらりと並べられている中で、ひと際完成度の高い匿名の雪像が毎年決まった場所に作られるというオカルトめいた情報が書かれていた。魔法少女は一般人に認知されにくいが完全に認知できないわけではないため、時折都市伝説のような存在としてネット上で噂されることがある。確かに、この情報は魔法少女が関与していそうな匂いがした。

 

「ファル、この雪祭りの会場付近の地域を担当している魔法少女の名前、分かる?」

 

「今調べるぽん。はい、分かったぽん。担当の魔法少女の名前は雪美ふくふく。魔法で綺麗な雪の彫刻を作れるぽん」

 

「じゃあ絶対この魔法少女さんが勝手に雪祭りに参加して雪像ぶっ建ててるじゃないですかぁ!! ちょっとルール違反ですよこれぇ!! ラミーさんが成敗してあげます!!」

 

「私刑は原則禁止ですよ。ただ、ファルさんが高性能ということもあるでしょうが、ちょっと調べたら魔法少女の関与に気づけますし、ジェーン・ホワイト達も気づいて襲いに来る可能性は高そうですね」

 

 ぷんすかと怒りのダンスを踊っているラミーを除いた三人で顔を見合わせ、頷きあう。どうやら、目的地は決まったようだ。

 

「祭りの開催は明日やな。なら、今すぐ向かえばまだ会場の近くに雪美ふくふくもおるかもしれんな? うちは縦ロールに風を巻き込めばジェット並の速度で飛んで行けるで」

 

「私の専属運転手を呼ぶという手もありますが、話を聞く限りロールドンナさんの方が速そうですね。私が嵐を起こせば効率よく風を起こせそうですし」

 

「あんた、そんなことできるんか! うちの背中に1人くらいは乗るから、そこにあんたを乗せればめっさスピード出そうやな!!」

 

「⋯⋯では、お二人は先に向かってください。私も、なるべく早く合流します」

 

 この中で最高速を出せるロールドンナの背中に乗ることのできるのは一人のみ。必然的に風を起こせるレイニーがその席を占めることになると判断したスノーホワイトが、先んじてそう提案する。しかし、そこに話をまったく聞いていなかったラミーが頬を膨らませて割り込んできた。

 

「ちょっとぉ!? まさかあなた達、スノーホワイト様を置いていこうとしてるんですかぁ!? そんなこと、お天道虫様が許しても、ラミーさんが許さないんですけれどぉ!?」

 

「いや、うちも可能ならスノーホワイトさんも連れてきたいんやけどな、2人乗せると飛ぶのに苦労するんや。あと、天道虫やなくてお天道様な? 虫が付くとだいぶちっこなるわ」

 

「そもそもぉ!? なんか最初からラミーさんをはぶいてなかったですか!? ラミーさんだって高速移動できるんですけれど!? 峠をブイブイ攻められるんですけれどぉ!?」

 

「⋯⋯えっと。ラミーさん、その高速移動で私も一緒に運ぶことできますか?」

 

「スノーホワイト様ぁ!! 勿論ですともぉ!! あ、でもでも、高速移動するためには手を繋がないといけないんでぇ⋯⋯へへ、スノーホワイト様のちっちゃなお手手、に、握っても、よろしいでしょうかぁ!?」

 

「⋯⋯はい。よろしくお願いします」

 

「よっしゃあああああ!!! ラミーさん、張り切っていきますよぉ!!」

 

 ラミーは、スノーホワイトの許可をもらうなりガシッとスノーホワイトの両手を握りしめ、自らの後方の離れた位置に鏡を出現させた。ラミーは、スノーホワイトの手の感触をにぎにぎと味わいつつ、上機嫌に魔法を発動させる。

 

「位置反転!!」

 

 直後、ラミーとスノーホワイトは、鏡を挟んで対照となる位置にワープする。最初にラミーが鏡を出していた距離が10メートルほど離れていたので、一気に20メートルほど移動したことになる。移動方法を観察していたレイニーがその仕組みを理解した時には、ラミーは既に次の移動を始めていた。

 

「位置反転反転反転反転はんぺん反転!!」

 

 途中で無駄なはんぺんを挟みながら、繰り返し位置反転を行い、一瞬でとんでもない距離を移動するラミーとスノーホワイト。あっという間にコメ粒ほどの大きさになってしまった2人を追いかけ、ロールドンナの上に乗ったレイニーは必死に叫んだ。

 

「あの!! 雪祭りの会場の方角、そっちじゃありませんよぉぉ!!!!」

 

 そのレイニーの叫びを聞いたスノーホワイトが、全力でラミーに訴えかけたことで、何とかラミーの暴走は止めることができた。レイニーとロールドンナが2人に追いついた時、満足げなラミーとは対照的に、スノーホワイトは全力疾走したかのように疲れた表情をしていた。

 

「⋯⋯あの、速度は、ロールドンナさんに合わせるようにお願いします。あと、方角もロールドンナさんの行く方向に従ってください」

 

「ふおおおお!! りょうかいです、スノーホワイト様ぁぁぁ!!」

 

 紆余曲折ありつつも何とか正しい方向へと舵取りを行うことに成功し、ロールドンナの出せる最高速度に合わせ4人で移動すること数時間弱。ふいに、スノーホワイトが薙刀の刃先で右斜め前方を指し示した。

 

「あっちから、誰かの声が聞こえます! おそらく、襲われている雪美ふくふくです!!」

 

 スノーホワイトがそう告げた直後、何かが爆発したような音が聞こえ、煙が空へと立ち昇るのが見えた。ロールドンナとラミーはすぐさま進行方向をそちらに切り替え、レイニーは先制攻撃のために胸元に雷雲を生成する。

 

 そして、視界にSNSの投稿で見かけたジェーン・ホワイトの部下の1人、RB・フィッシュを確認した瞬間、レイニーは躊躇うことなく雷を撃ち落とした。先制攻撃が間に合い、何とか襲われそうになっていた一般人を救うことには成功できた。

 

「レイニーさん、ラミーさん、ロールドンナさん。私はこの人を安全な場所に避難させます! 私が戻るまで、どうかご無事で!!」

 

 スノーホワイトが一般人を回収し、安全な場所へと移動する。雪美ふくふくの姿は確認できないが、安否を確かめている余裕はない。雷を食らって黒焦げになっているにも関わらず、RB・フィッシュは未だぴんぴんしているからだ。

 

「いいですね。流石に厳しい戦いになりそうですが、その苦しみが私を興奮させますよ。さあ、次に私の胃袋に入りたい人は誰ですか? 丁寧に切り刻んで、今度はステーキで頂きましょう!!」

 

 楽し気に舌なめずりをするRB・フィッシュを睨みつけ、レイニーは再度雲を手元に生成する。こいつは、あの時のバケモノと同類だ。まったくもって美しくない、生かしてはいけない犯罪者。

 

「なんやお前きっしょいなぁ。雷で焼かれて興奮するとかマゾか?」

 

「キモキモキモのキモなのですよぉ!! スノーホワイト様の目に入れる前にラミーさんがぶちのめして差し上げます!!」

 

 ロールドンナもラミーもやる気だ。臨時で手を組んだとはいえ、何とも頼もしい限り。しかし、レイニーは監査所属の魔法少女として、この場も誰も死なせない義務がある。目指すのは、犠牲者のない美しい完全勝利。それ以外は、すべて敗北だ。

 

 強い覚悟を胸の内に秘め、レイニーは笑った。魔法少女ならば、困難な時ほど笑うのだ。その姿こそ、何よりも美しいのだから。

 

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