魔法少女育成計画LastPage   作:赤葉忍

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白い徴兵令

♢ジェーン・ホワイト

 

「は? 一般市民が公開処刑を行おうとした?」

 

「はい。どうやら、一部の正義感を暴走させてしまった方々が独断で行おうとしたそうで⋯⋯。ただ、その処刑に関しては乱入してきた魔法少女によって阻止されたみたいです。死人も大勢出てしまったようですが⋯⋯」

 

 ブルジョワーヌⅢ世からの報告を受け、思わず頭を抱える。何故、そのような愚かな行為に及んでしまうのか理解しがたい。普通に捕獲、もしくは殺害するだけで報酬を出すと言っているのに、わざわざ残酷な方法を選び、そのせいで魔法少女をおびき寄せてしまい、被害を出している。頭が悪いとしか思えなかった。

 

「なんか~、SNSでも結構犯罪報告とか上がってきてるよ~? ジェーン、このままじゃヤバくな~い?」

 

「──治安の悪化(アポカリプス)

 

 #♡ちゃんとトラちゃんからも、治安の悪化を危惧する報告が上がっている。ジェーン・ホワイトは、自分の見積もりが甘かったことを反省した。国家の運営の大変さと、民衆の愚かさを舐めていた。これは反省するべき点だ。この失敗は、魔法の国を堕とし、世界へと手を伸ばしていく際に活かすことにしよう。

 

「⋯⋯民衆をまとめるためにも、きちんとしたルールを定め、それを広める者が必要ですね。そして、ルールを守れない者には罰を与える必要もあるでしょう。魔法が効果的なブルジョワーヌⅢ世は確定として、後はどうしましょうか」

 

「はいはい!! 私やります!! ジェーンさんのお役に立ちたいです!!」

 

 そう言って元気よく手を挙げたのは、この中では一番新入りの魔法少女、マチルダ・チルドだ。確かに、彼女はつい先日まで一般市民だった分、国民に寄り添ったリーダーになれそうだ。経験値が少ない点がやや心配だが、メサメサの死体を少し借りればカバーできる範囲内だろう。

 

「そうですね。それでは、マチルダにもお願いしましょう」

 

「儂!! 儂もその役、やりたいのじゃ~!!」

 

 続けて手を挙げたのはメサメサ。しかし、彼女は魔法こそ有能だが、少々頭が悪く、あまりリーダーに向いているとは思えない。彼女をうまく扱うには、優秀な頭脳を持った魔法少女が必要だ。

 

「ふんふふんふ~ん♪」

 

 ちらりとジェーン・ホワイトが視線を向けた先に座る#♡ちゃんは、我関せずといった様子で鼻歌交じりに魔法の端末を触っている。トラちゃんは魔法の国の派閥と連絡を取りながら計画を進めてもらう大事な役目があるので気軽に動かせないため、メサメサとコンビを組ませるならば彼女が一番適任なのだが、本人にあまりやる気がない。それに、今彼女を動かすと、役目を終えて軟禁状態にしているシャドウゲールの見張りをする魔法少女が居なくなってしまう。

 

 ここは、焦って少ないメンバーを動かす必要はないだろう。足りないならば、増やせばいいのだ。幸い、ジェーン・ホワイトが全国的に指名手配をしたことで、さららやプフレ、茶田千代といったマークするべき危険人物たちは動きが制限されている。時間はまだある。ゆっくりと、着実にページを重ねて結末まで持って行こう。

 

「よし、決めました。徴兵令を出します。民衆を導く知性とリーダーシップを持った魔法少女を、在野からスカウトするのです」

 

「なあなあ、儂は!? 儂もリーダーできるんじゃが!?」

 

「メサメサちゃんは向いてないからおとなしくしてて⋯⋯じゃなくて、メサメサさんは大人しくしていてください」

 

 まただ。慌てて首を振り、口調を改める。最近、気を抜いているとたまに、自分のモノとは異なる口調で話してしまう時がある。これはもしや、奈子の意識を目覚めさせてしまった影響だろうか。あれから頻繁に意識を内側に集中させて奈子の意識を消そうとしているが、なかなか見つからない。だが、所詮は魔法少女歴の浅いひよっこだ。いったい何ができるというのだろうか。油断はしていないが、警戒しすぎることも無い。もし、意識を奪い返そうと企むならば、全力で阻止するまでだ。もう利用する価値もないし、その時は、完全に消滅させてみせる。

 

「さあ、皆準備を急いでください。徴兵令は今すぐ出します。審査は明日です。一刻も無駄には出来ません。スピーディーに行きますよ!!」

 

 手を叩いて皆を急かし、自分も徴兵令の文面を考え始める。今日も忙しかったが、明日はもっと忙しくなりそうだ。このままだと、忙しさに殺されてしまう。やはり、国のトップというのはなかなかに大変なようだ。

 

 

♢貴腐人メサメサ

 

「はい、次の方、どうぞなのじゃ~」

 

 国会議事堂の横に建てられた即席の面接会場。そこで、徴兵令を見て訪れてきた魔法少女を面接する係に、メサメサは抜擢された。メサメサの他にも#♡ちゃんも会場には居るが、#♡ちゃんは列の最後尾に立って整理券を配る係なので、面接官はメサメサ1人だけだ。

 

 メサメサが担当するこの1次試験では、魔法のアイテムである嘘発見器を用いて、用意されたいくつかの質問に答えてもらうことになっている。これに引っかからなかった魔法少女は2次試験に進み、最終試験に合格した魔法少女に、新たな仲間として矢面に立ち働いてもらうことになっている。

 

 メサメサとしては、ぽっと出の新人魔法少女にリーダーのような役をやらせるくらいならば自分がやりたいと思い立候補したのだが、のらりくらりとスルーされてしまった。かなり不服な決定ではあったが、メサメサは十分働いてもらってると褒めてもらったうえに、ケーキまでごちそうして貰ったので、機嫌は既になおっていた。

 

「えーっと、貴女はジェーンの本を与えられた魔法少女なのじゃ? うん、OK。嘘は言ってないのじゃ。えー、次。貴女はリーダーシップに自信はありますのじゃ? あ、これは嘘じゃな。残念ながら失格じゃ。ばいびーなのじゃ」

 

 決められた質問項目に対し、答えることが出来ないか、もしくは噓発見器で嘘を感知した場合、即失格にしていいと言われているので、サクサクと面接を進めていく。また、特に最初の質問で嘘を感知した場合は即確保するよう伝えられていたため、護衛として森の音楽家クラムベリーの死体と、賽ノ目チロリの死体を傍に控えさせていた。この2人が居れば、大抵の魔法少女は抑えることが出来る。

 

 質問項目は全部で20個。その全てに当てはまり、嘘をつかない魔法少女は、なかなかに現れなかった。昨日出したばかりの徴兵令にも関わらず2000人ほど並んでいると聞いているが、合格者はまだ数名しか出ていない。

 

「えー、次の方どうぞなのじゃ~」

 

 流れ作業と化してきた面接。少々疲れを感じながらお決まりの台詞で室内に入るよう促した直後、一瞬刺すような殺気を感じ、慌てて顔を上げた。しかし、目の前に立っているのは目を細め優雅に笑う魔法少女のみだった。その雰囲気は非常に穏やかで、とても殺気を出したとは考えにくい。気のせいかと首を傾げ、メサメサは面接に移ることにした。

 

「あー、今からいくつか質問をするから、答えて欲しいのじゃ。まず1つ目。貴女は、ジェーンの本を与えられた魔法少女なのじゃ?」

 

「ええ、そうどす」

 

 京都弁だ。はんなりとした見た目と着物のコスチュームにマッチしている。そして、嘘発見器に反応はない。この嘘発見器は感情の揺れを感知して嘘を見抜く、かなり高性能なアイテムだと聞いている。つまり、目の前の魔法少女は嘘をついていない。やはり、先ほどの殺気は勘違いだったのだろう。

 

 その後、いくつか質問を重ねたがどの質問にもちゃんと答え、しかも嘘も見当たらない。どうやら、久々の合格者が出そうだった。

 

「それでは、次が最後の質問じゃ。貴女の魔法を教えてくださいですじゃ」

 

「うちの魔法は、『美味しいお茶を淹れられるよ』どす」

 

 最後の質問は、形式的なものだ。聞いた感じあまり強そうな魔法ではないが、強い魔法少女を求めているわけではないので問題ないだろう。それに、あまりにも弱いようならば、次の第二試験で落ちるはず。メサメサが気にすることではない。メサメサは合格者リストに名前を追加するべく、ペンを手に取った。

 

「はい、合格ですじゃ。とりあえず第二試験開始までは待機してもらうとして、最後に貴女の名前を教えてほしいのじゃ」

 

「──うちの名前は、抹茶ノ茶々と言います。覚えてもらえると、うれしおす」

 

 そう名乗り、抹茶ノ茶々⋯⋯ではなく、和三盆茶々ははんなりとした笑みを浮かべ、頭のてっぺんの急須を僅かに傾けたのであった。

 

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