魔法少女育成計画LastPage   作:赤葉忍

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エピローグ:新世界より〇をこめて
『愛』


〇フダラ=クダラ

 

「のぉ、儂暇なのだが」

 

「もう、暇なら貴女のお弟子さんを見習って少しは私の仕事を手伝ってくださいよ」

 

「嫌だね。だって儂、書類仕事とか苦手ゆえに」

 

「はぁ⋯⋯」

 

 机の上に座って足をぶらつかせるハイミーの様子に、フォント=レイがため息を吐く。そんな2人の様子を、クダラは少し離れた場所から、書類整理の手は止めずに観察していた。

 

「おやおや、ため息などついてどうした? 何か悩み事があるなら、儂の尻尾でもモフるといい」

 

「なっ!?」

 

 予想外の提案に目を丸くするフォント=レイ。ハイミーはくすくすと笑いながらフォント=レイを見ている。どうやらからかわれたらしいと気づき、フォント=レイは怒りで顔を赤くした。

 

「こんの、意地悪キツネ! 私があんたらの素性を隠して広報部に匿ってやっている恩を忘れたわけ!?」

 

「すまんすまん、そのことについては感謝しておるよ。ほれ、お詫びの印にいいものをやる。もっと近寄れ」

 

 ハイミーが手招きし、フォント=レイが警戒しながらも近づく。あと一歩で触れ合うという距離まで近づいたその時、ハイミーは尻尾でフォント=レイの身体を巻き取り、強引に唇を奪った。目の前で繰り広げられた突然のキスシーンに、クダラは慌てて手で顔を隠し、指の隙間からその光景を見つめる。

 

「んんんんん!?」

 

「──ぷはぁ。ほれ、いいものだっただろ?」

 

「このっ! やっぱ殺す!!」

 

 満足そうに唇に付いたリップを舐めとるハイミーに、フォント=レイは顔を真っ赤にしながら魔法で固めたフォントの塊を投擲する。書類が舞い散り、棚が倒れ、もうすっかり仕事どころではなくなってしまっていた。

 

「も~、師匠。あんまりレイさんをからかっては駄目ですよ?」

 

 クダラは、2人に聞こえていないと分かりつつも、一応注意だけしておいた。ハイミーとクダラの2人の師弟は、元々四国の離島に隠れるようにして住んでいた。そんな2人を魔法の国で働けるよう色々と環境を整えてくれたフォント=レイには、感謝してもしきれない。クダラは、ああやってハイミーがフォント=レイをからかうのも感謝と愛情表現の裏返しだと分かっているので、強く止めるようなことはしなかった。

 

「すみませーん、書類を受け取りに来たんですけれど~」

 

「あ、はーい。あたしが対応します⋯⋯ぴえっ!?」

 

 突然訪れた来客。じゃれあっている2人の代わりに対応に向かったクダラは、その魔法少女の姿を見て悲鳴をあげてしまった。目の前で悲鳴をあげられた魔法少女は、訝し気にクダラを見つめていた。

 

「あの⋯⋯私、貴女になんかしました?」

 

「い、いえ、なんでもありません。書類ですよね、こちらへどうぞ~!」

 

 クダラは、まだドキドキがやまない心臓を押さえつけ、冷静さを装って客人を案内する。その道中、再びクダラはその客人の髪の色をちらりと見た。

 

 魔法少女の髪の色は、青色だった。昔から何故か、クダラは青色の髪を見ると恐怖を感じて悲鳴をあげてしまうのだ。だが、思い返しても青い髪の魔法少女に会ったことなど一度もない。自分でも何故苦手なのか理解できないが、苦手なものは仕方ないのだ。

 

 とりあえず、まだ喧嘩を続けている2人に対応を変わってもらおう。そう思い2人の元へ向かうと、いつの間にかフォント=レイがハイミーの尻尾を枕にして幸せそうに眠っていた。そんなフォント=レイの寝顔を見ながら、ハイミーは優しい笑みを浮かべ、その頬を撫でている。

 

「⋯⋯あっ、お邪魔しました~」

 

 空気を読んだ青い髪をした魔法少女が、そそくさと立ち去っていく。そのことに内心ほっとしながら、クダラはハイミーに自分も膝枕をせびりに、そのモフモフの尻尾へと飛び込んでいったのだった。

 

 

〇磯野

 

「あー負けた! 悔しい!! 雪美、もう一回! もう一回たい!!」

 

「ふっふっふ。私ゲームは結構得意なんだよねぇ。次も勝っちゃうもんねぇ~」

 

「ゆっきーは相変わらず強いねぇ。でも、次は私が勝つよ!!」

 

 磯野が常に傍で仕え、支える最愛のお嬢、切斬舞。普段は、小学生とは思えぬ漢気溢れる言動で霧雨組の組員から慕われている彼女が、今日は歳相応の顔を見せていた。そんな顔を見せている相手は、北海道からわざわざ福岡まで遊びに来た魔法少女の友人の雪美ふくふくと、何故か付き添いでやってきた、『まち』と呼ばれている少女だった。今は、霧雨組の屋敷内にある舞の部屋で、3人で対戦ゲームで遊んでいるところだ。

 

「いやー、それにしても舞ちゃんのお家がこんなにでっかいなんて驚いたよ! もしかして舞ちゃんって、いいところのお嬢様だったり!?」

 

「あ、あははー。まあ、そんなとこたい」

 

 舞は頭を掻きながら誤魔化し、こちらへちらっと視線を向けてくる。この視線は、『絶対に組のことはバラすな』という舞からの指示だ。磯野は、2人に気づかれないよう小さく頷いた。

 

 その後もゲームは白熱し、結局舞は一勝もできないまま、一旦休憩をとることになった。舞はかなり悔しがっていたが、磯野としてはあまり見たことのない舞のリアクションを見ることが出来てかなり新鮮な気持ちだった。

 

 休憩ということで厨房から菓子の類をジュースと一緒に持ってくると、3人の学生たちはそれをつまみながら会話に花を咲かせる。その様子を、磯野は一歩引いた場所から見守る。

 

「それにしても、ゆっきーが魔法少女? だったなんてビックリだよ~。その恰好ホントよく似合ってるね!」

 

「えへへ~、ありがとね。あ、ビックリって言えば、舞が小学生だったのもビックリしたよ。まさか私より年下だったなんて!」

 

「⋯⋯組の奴らの前で普通に変身してるうちが言えたことじゃないけど、一般人に普通に正体明かしているのもビックリしたばい。まあ、まちは悪い奴じゃなさそーやけん、別にいいけど」

 

「? 組って何の話?」

 

「あー、いや、親戚のことたい! うちの家デカい件親戚がいっぱい入り浸っとるんよー! あはは~」

 

 正直それは無理があるだろ。そう思ったのでつい非難の視線を向けると、舞は気まずそうに視線を逸らした。しかし雪美ふくふくとまちは細かいことは気にしない性格なのか、それとも単なる馬鹿なのか、組のことには言及せず、何故かこちらへと話を向けてきた。

 

「えーっと、磯野さん、でしたっけ? 磯野さんは、舞とどういう関係なんですか?」

 

「あ、それ私も気になってた! 磯野さん美人だし、最初魔法少女なのかな~って思ったもん」

 

「⋯⋯私が魔法少女になることは死んでもあり得ません。で、私とお嬢、さまの関係、ですか」

 

 ついいつもの癖でお嬢と呼びそうになったのを慌てて言い換え、少し考える。主とその部下、と言えれば楽だが、組のことを隠している以上そうは言えない。どう言ったものかと考えていると、舞が先に答えていた。

 

「磯野とうちは、家族みたいなもんたい。⋯⋯な、そうやろ?」

 

「⋯⋯ええ、そうですね」

 

 それは、雪美ふくふくとまちの手前、そう言っただけには聞こえなかった。舞の声色に、確かな信頼と愛を感じ取り、磯野は目をつむる。その瞳から零れた一滴の涙は、誰にも気づかれぬうちに袖で拭っておいた。

 

 

 

〇ジュリエッタ

 

 高層ビルの一室にて、2人の魔法少女は恋人同士のように手を繋ぎながら、食事を取っていた。片方の魔法少女の目には包帯が巻かれており、その後ろに立つ魔法少女が、口元に食事を運んでいる。

 

「今日の料理も私の手作りですよ、ブルジョワーヌ様。お口に合うでしょうか?」

 

「ええ、とっても美味しいわ。ありがとう、モルジャーナ」

 

 モルジャーナと呼ばれた魔法少女だが、本当の名前はジュリエッタだ。賽ノ目チロリが起こした事件は、ジェーン・ホワイトの存在が居なくなったこの世界でも起きていた。だから今、ジュリエッタは誰にも邪魔されることなく、最愛のブルジョワーヌⅢ世と2人きりで愛し合うことが出来ていた。

 

 しかし、ジュリエッタにとっての一番の幸福であるこの時間は、突然のチャイム音と共に、終わりを迎えることになる。

 

「⋯⋯来客のようですね。私が行きますので、少々お待ちください」

 

 すっかり慣れたモルジャーナの声真似でブルジョワーヌⅢ世にそう告げ、ジュリエッタは包丁を後ろ手に隠したまま玄関へと向かう。この高層マンションに通常の方法で侵入するのは難しい。そうなれば、相手はブルジョワーヌⅢ世の財産狙いの魔法少女か。もしそうならば、最愛の人の障害はこの手で排除しなければならない。

 

 玄関のドアを開き、間髪入れず突き出した包丁は、薙刀により逸らされる。そして、反撃に顔面に熱々のお茶をぶっかけられ、思わず後ずさった。

 

「ビンゴどすなぁ。あんたがここにおるってことは、ブルジョワーヌさんもこん中やね」

 

「貴女は⋯⋯和三盆茶々!! 生きていたんですか!」

 

「なんとかな。んで、どうされます? 抵抗すんなら、ちょっと痛い目見て貰いますけど?」

 

 脅しともとれる発言だが、それしきでジュリエッタは怯まない。幸い、相手は一人。隙を見て急所をつけば、勝機はまだある。そう思い包丁を再び構えたところで、全身を雷に打たれたかのような衝撃が走った。

 

 いや、これは比喩ではない。実際に雷に打たれたのだ。そう気が付いたのは、和三盆茶々の背後に立つ、もう一人の魔法少女の姿を見た時だった。

 

「レイニーさん、お手柄やね。これでまた昇進できるんちゃう? 監査部門のエースはやっぱ違うわぁ」

 

「いやあ、私なんかまだまだひよっこですよ。あの人みたいになるには、まだまだ美しさが足りないです」

 

 和三盆茶々と、レイニー・ブルー。2人の魔法少女は、まるでもうジュリエッタのことは眼中にないかのように、会話をしながらジュリエッタの横を通り過ぎ、部屋の中へ入ろうとしている。しかし、それを止めようにも、雷に打たれてマヒしたのか、身体が自由に動かせない。

 

 やめて。無視しないで。私から、あの人を奪わないで。私の愛を奪わないで。

 

私の、わたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしの!!!

 

 いくら手を伸ばしても、もう届かない。きっとブルジョワーヌⅢ世は、魔法の国で目の治療を受け、そしてレイニー達からすべてを教えてもらうだろう。その時、ブルジョワーヌⅢ世はジュリエッタのことを恨むのだろうか。憎むのだろうか。

 

 それでもいい。それでもいいから、ずっとジュリエッタのことを思っていて欲しい。そうすれば、ジュリエッタとブルジョワーヌⅢ世は両想いだ。その思いをいつか必ず、再び愛へと昇華させてみせる。

 

 そんなことを思い、レイニーと和三盆茶々へといつか復讐することを誓いながら、ジュリエッタは意識を失った。

 

「レイニーさん、ブルジョワーヌさんの治療はどうするん?」

 

「目の方はすぐ治せそうですけれど、心はすぐには治りませんからね⋯⋯。ショックなことも多いでしょうし、記憶を消して対処することにしましょう」

 

 だから、ジュリエッタは2人の会話を聞くことは無かった。その後、監獄へと連行されたジュリエッタが魔法を使い、ブルジョワーヌⅢ世が自分のことを忘れていることを知り絶望することになるのだが、この時はまだ、その未来を誰も知ることはなかった。

 

 

 

〇アンナ・シャルール

 

「「アンナ、お誕生日、おめでとう」」

 

「ありがとう、じぃじ! ばぁば!」

 

 今日は、アンナがジェントルマン光雄とサブリミナル越子の家に来てから、2度目のアンナの誕生日だ。2人と出会ったのは、去年のこと。当時、誕生日を祝う誰かが居る家族が羨ましくて、放火を繰り返していたアンナを、2人が止め、そして家族に迎え入れてくれた。今では、こうしてアンナの誕生日を、2人が祝ってくれる。だから、もうアンナは寂しくない。

 

「今年は、去年よりろうそくの数が一本増えているからね。アンナ、ちゃんと吹き消すことはできるかな?」

 

「じぃじ、アンナのこと舐めすぎ。アンナ、去年より身体大きくなっているし、余裕だよ!」

 

 アンナは一度変身を解き、変身前の姿で、ふんすと得意げに胸を張ってみせる。そんなアンナの頭を、サブリミナル越子がわしゃわしゃと力強く撫でた。

 

「ああ、アンナはデカくなった。いつか俺たちよりデカくなるかもしれないな」

 

「うん、もーっと大きくなるよ! そしたらね、ばぁばをおんぶしてあげるんだ!」

 

 ジェントルマン光雄とサブリミナル越子。2人は、悪い子だったアンナを叱り、優しく受け入れてくれた、大切な家族。これからは、そんな2人にアンナが恩返しする番だ。

 

 これからも、アンナはこの家で、誕生日を迎えるのだろう。たくさんのことを学んで、成長して、2人のように誰かを助けられるような、そんな素敵な魔法少女になりたい。それが今のアンナの願いで、夢だ。

 

 だが、とりあえず今は、目の前のこの大きなバースデーケーキの火を消すところからだ。ジェントルマン光雄にああ言った手前、一度で吹き消せないと格好がつかない。

 

 アンナの目の前で、ゆらゆらと揺れるろうそくの火。その灯を受けて、アンナの瞳は、キラキラと希望に満ちて輝いていた。

 

 

〇お茶たちょ茶田千代

 

 茶田千代は今、かつてない窮地に立たされていた。

 

「茶田千代さん? この状況、どう説明してくれるのでしょうか? そのよく回る口でちゃんと納得できる言い訳を伝えてくださるのでしょうね?」

 

 茶田千代の右前方に立つのは、この前付き合い始めたばかりの恋人、カレンダ・レンダだ。人事部門に入ってきたばかりの頃は苦手だなぁなどと思っていたが、茶田千代の誕生日の日に告白され、サプライズに弱い茶田千代はそれで陥落。一瞬でほだされて付き合うことになった。だが、そんなレンダの口調が今はとてつもなく厳しい。この感じのレンダは、怒っている時のレンダだということが、茶田千代は理解していた。

 

「あまり茶田千代さんを責めないでくれ、姉さん。茶田千代さんは悪くない。悪いのは騙した私の方なんだ」

 

 そして、茶田千代の左前方に立つのは、おっく・ろっく。レンダの妹だ。おっく・ろっくは、レンダと違い、怒った様子はない。しかし、茶田千代に対し一目惚れしたと伝えてきた彼女の言葉には嘘は感じられず、今も熱い視線をこちらに向けてきている。

 

 茶田千代は、そんな2人の前で土下座の姿勢をとり続けている。何故、このような状況になっているのか。それは、数時間前に遡る。

 

 今日、茶田千代はいつものようにレンダとデートをした。そして、いつものようにキスをしたり、その⋯⋯詳しくは言えないような、えっちなこともした。それまでは、まだキスまでだったので、それが茶田千代にとっても初めての経験だったのだ。

 

 だが、全てが終わった後で、レンダだと思っていたのが実は、レンダに変装したおっく・ろっくだったということが分かってしまったのだ。それに気が付いたのは、息を切らしてレンダが部屋の中へとやって来た時だった。レンダが2人いるという状況に理解が追い付かず思考がフリーズする茶田千代の前で、おっく・ろっくが申し訳なさそうに変装を解いたことで、ようやく自分が何をしてしまったかを理解した。

 

 正直、茶田千代は騙された側である。だが、結果として浮気のようになってしまったことには変わりない。レンダの怒りは分かるし、だからこそ茶田千代はこうして土下座をし続けている。

 

「うう、ごめんなさい、レンダ⋯⋯。許してください⋯⋯」

 

 目に涙を浮かべ謝る茶田千代を見て、レンダは大きくため息を吐いた。レンダも、茶田千代が悪くないことは分かっているのだ。だが、理解できても腹が立つのは仕方がないことである。こうして自分が感情をかき乱される相手は、茶田千代だけだ。だからこそ愛おしく、手放したくない。レンダは、血を分けた妹と正面から向き合った。

 

「さあ、我が妹よ。ゆっくりと話し合おうじゃありませんか」

 

「⋯⋯ああ、そうだな。悪いが姉さん相手でもこの思い、譲るつもりはない」

 

 2人はそう言いあい、茶田千代を置いて部屋を出て行ってしまった。残されたのは、土下座の姿勢のまま、ぽかんと間抜け面を浮かべる茶田千代のみ。いったい何を話し合うのかと耳をそばだてた茶田千代に聞こえてきたのは、激しい戦闘音。予想外の事態に、茶田千代は悲鳴をあげ、腰を抜かす。

 

「ひぃぃぃぃ!? お願いだから、私のために争わないでぇぇぇ!?」

 

 人生で一度は言ってみたいと思った台詞を、まさか本当に言う日が来るとは思わなかった。しかし茶田千代のその言葉は2人は届かず、戦いの音は止まる気配がない。

 

 お願いだから、どうか2人とも無事でありますように⋯⋯!

 

 両手を組んで祈りつつ、茶田千代は2人が帰って来るのをじっと待った。やがて戦闘音が止み、ボロボロになった2人が戻ってきたことで、茶田千代はほっと息をつく。2人とも笑顔なのが気になったが、とにかく無事でよかった。

 

「もー、2人ともいきなり戦い始めちゃうからびっくりしちゃったよ! ⋯⋯えーと、それで、話し合いの結果って、どうなったのかな?」

 

 2人を心配しつつも気になっていたことを尋ねると、2人の笑みが深くなる。茶田千代は何故か猛烈に嫌な予感を覚えた。

 

「ええ、その件ですが。決着はつきませんでした。お互い一歩も譲らずに、話し合いは平行線となりまして」

 

「そこで、妥協案を取ることにした。これなら、誰も傷つくことはない」

 

「えーっと、その妥協案って⋯⋯?」

 

 嫌な予感がますます膨れ上がる中、さらに尋ねてみる。すると、レンダとおっく・ろっくは、2人して茶田千代の前に膝をついた。そして、その姿勢のまま、懐からそれぞれ異なる宝石の付いた指輪を差し出してくる。

 

「「茶田千代さん、私と結婚してください」」

 

 予想外の形で行われた、姉妹同時プロポーズ。そのサプライズの極致とも呼べる愛の告白に、茶田千代の胸は大きく高鳴った。そう、茶田千代はロマンティックなシチュエーションに滅茶苦茶弱いのであった。

 

「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

 茶田千代は雰囲気に流されるまま、顔を赤くして2人のプロポーズを受け入れた。このことは魔法の国で大きく広まり、茶田千代は“最低の二股女”、“女喰いの魔王”として有名になるのだが、それはまた別のお話。

 

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