だいぶ前回と時間が経ってしまいました。
すいませんでした。
少なくても1週間に1話は投稿出来るよう頑張りますのでよろしくお願いします。
光に辺りが包まれたというのにいつまでも防御壁に衝撃は来ない。攻撃魔法ではなかったのか。どうなったか確認する為ゆっくりと目を見開くと、辺りの光景が一変している事に驚き、思わず防御壁を解いてしまう。
「な、なんだこれは……」
先程まで教室にいた筈が、まるで西洋の講堂の様な風景に早変わりしていたのだ。
「幻覚か?………いや違う……まさかこれは……!?」
一種幻惑魔法の類いかと疑うがそんな魔力残滓は感じられない。かといって自分に催眠系魔法を掛けられた痕跡もない。そして先程から気になるこの肌を伝う濃密な魔力濃度。これは地球ではなく、むしろなのは達のいる『ミッドチルダ』に近い。
「召喚されたってのか。俺達全員別次元に……」
愛護が辿り着いた結論はミッドチルダの様な魔力に満ちた世界の何者かに集団転移されただった。
だがそれはとても信じ難い事象だ。次元を超えての転移は莫大な魔力を必要とする。それをクラスメイト全員同時になんて正気の沙汰とは思えない。なのはやフェイト、はやてやヴォルケンリッター全員の魔力足しても圧倒的に足らないだろう。だが、それ以外に考えられなかった。自分の想像すら出来ない巨大な存在による仕業か、はたまた何万人による大規模魔法か。だが、手段だけが問題では無い。
「一体…何のために……」
「「〜〜ッ!!」」
「ん?あぁ、悪い」
「「ぷはぁ!!」」
この現状を作りだした者への畏怖に囚われ、2人を護ろうと抱き寄せていた事をすっかり忘れていた。危うく呼吸出来ず窒息して堕ちかけていた2人を慌てて解放すると、枯渇していた酸素を吸収しようと過呼吸気味になる。
「はぁ…はぁ……あんたねぇ!私達の事庇ってくれたのは感謝するけど、もう少し優しく抱き締めなさいよね!死んだらどうするのよ!」
「あ〜、死ぬかと思ったぁ」
「悪かったって」
「まぁ、こんな美少女を思いっきり抱きしめたいって気持ちは分かるけどね!」
「確かにそうだな。もっとすずかの感触確かめておけばよかったな」
「愛護くんったら、冗談やめてよ〜///」
「私も入れろっ!!」
アリサがいつも通り口煩く突っかかってくるが、内心彼女に感謝する。得体の知れない未知の存在に恐怖していた自分だが、彼女と言葉を交わした事で少し落ち着きを取り戻す事が出来た。
彼女達も冗談を挟んだ事で冷静さを取り戻したのか、周りの風景が変わっている事にようやく気が付いた。
「………てかここどこなのよ?」
「分からん。だけど恐らくはミッドチルダの様に魔法が富んでいる次元世界だろう」
「ミッドチルダってなのはちゃん達が行った所だよね?」
「あぁ、何があるか分からない。2人は俺の側を離れないでくれ」
「うん」
「本当に大丈夫なんでしょうね?もしなんかあったらなのはに『愛護は役立たず』って言いつけるから」
「お前…俺の事情知っててよく言えたな」
「ふん、悔しかったら護ればいいのよ」
すずかは頷くと愛護の言う通り裾を掴む。アリサも気丈に振る舞うが裾を掴む手はすずか以上に震えていた。彼女の事だ、自分の分だけでも負担を軽くするために平気な素振りを見せていたのだろう。普段は口が悪い癖に、こういう所は周りを見て行動出来る。本人には絶対に言わないが優しさに満ちているのが彼女の取り柄だろう。愛護も、そんな姿を見て弱気になってられないと、いつ攻撃が仕掛けられても彼女達は護ると決意を固める。
「ようこそトータスへ。私はイシュタル・ランゴバルド、以後お見知り置きを」
そんな時、イシュタルと名乗る老人を先頭に、30人余りの修道士の様な格好をし、自分達を崇める様に祈りを捧げる者達が姿を現した。彼等を観察するが、彼等からは大した魔力は感じられない。いかに戦闘中でないとはいえ、この程度の魔力量では小石の次元転移すら不可能だろう。
その後、場所を移したイシュタルは自分達を召喚したのはエヒトという神という事、そしてそのエヒトが魔人族に苦戦している人類を救う為、助太刀として自分達より力に優れている上位世界である愛護達を召喚したのだと。
皆が戦争と言われ戸惑う中、愛子先生が断固拒否し、即刻帰還させる様懇願する。社会科を専攻とし、心優しい彼女がそんな危ない事に生徒達を巻き込むなんて許せない事であった。
しかし、自分達にそんな力は無く返す事なんて出来ないとイシュタルが言うと、愛子先生は絶望し、生徒達はパニックに陥った。
当然アリサや、すずかにも動揺が走るが、魔法の存在を認知して尚且つ愛護が魔導師と知っていた為他の者よりは冷静でいられた。
「ねぇ、あのジジイのいってる事本当だと思う?」
「まだ分からないが、アイツらに俺達を元の地球に戻す能力は無いだろう。召喚したのがエヒトとやらの仕業だとしたら、戻るのもエヒトの力頼りだな」
「そんな……」
愛護の一言に、2人の身体を不安が支配する。だが愛護は助けは必ずある事を確信していた。
「大丈夫だ。こんな事態、時空管理局が見逃すはずが無い。必ずなのは達が助けに来てくれる」
「本当?」
「あぁ、エヒトがやった事は紛れもない時空管理局の法に触れる事柄だ。放置するとは思えない」
「なら助かるのね!」
「……でも1つだけ問題がある」
「…え?」
愛護が考える救出までの障害、それについて話そうとした時、天之河が声を張り上げた。
「皆、イシュタルさんに文句を言ってもしょうがない。俺は……戦おうと思う!」
イケメンの世界を救う宣言に女子生徒達の大半が目を奪われる。そして彼の言葉に坂上、八重樫、白崎達いつものメンバーが賛同する。一軍メンバーが賛同した事をキッカケにクラス全体は参加する流れと化した。愛子先生が1人反対しているが、誰も気にも留めない。だが、こう言う時に声を張り上げ自分の意見を述べる人物を愛護は知っている。
「ちょっと…‼︎……ってなんで止めるのよ愛護!」
アリサが否定しようとする所を愛護が静止する。アリサからしたら、時空管理局頼りに助けが来るのだから戦う必要は無いという考えなのだろう。だが、そこが落とし穴だ。
「……今は形だけでも協力する姿勢を見せた方がいい」
「なんでよ!時空管理局が助けてくれるんでしょ!」
「あぁ、
「……それ、どういう事?」
「え……え……?」
頭のいいアリサの事だ。さっきの一言だけで本当は理解したのだろう。それでも信じたく無くて意味を尋ねている。すずかは察しがつかない様で2人の顔を交互に見合っている。
「時空管理局は必ず助けに来てくれる。でもそれがいつなのかは分からない。もしかしたら数日で迎えが来るかも知れない。しかし数週間、数ヶ月、下手したら1年以上掛かってしまうかも知れない」
「そ、そんな……」
「……どうしてそんな掛かると思うの?」
「可能性の話だ。前はジュエルシードによる次元振や度重なる交戦があり、比較的早く駆け付けられた。しかもプレシア・テスタロッサというネームバリューもあった。でも今回は戦闘があった訳でも無い。次元振もない。エヒトの名前がどこまで有名かも分からない。しかも時空管理局が管理している次元世界は幾つも存在する。その中の1つの魔力発生事案に即座に対応するか分からないし、それ以上の事件が起きて後回しにされる可能性だってある」
「「………」」
「その間一切協力しない姿勢を取ったら待遇も自ずと悪くなる。協力しない奴に飯を与える程余裕があるかも分からないからな。だからせめてなのは達が助けに来てくれるまでは従っていた方がいいだろう」
愛護の話に黙ってしまう2人。愛護は心を痛める。こうなる事が分かっていて敢えて話したのだ。自分には安心させる程の自信が無いから。
そんな愛護に小さく呟くアリサ。
「私達、生きて帰れるの……?」
なんでもいい、何か希望のある言葉が欲しいと願うアリサ。いくらなんでも、これ以上の絶望は彼女の心を壊しかねない。彼女達を安心させようと虚勢を張ろうとした愛護の脳裏を過ぎるあの光景。目の前で死んでいく時空管理局の戦闘員達、護ると誓った愛する人が敵の攻撃で重症を負い病院に搬送される姿。
トラウマのフラッシュバックに吐き気を催し、嗚咽を漏らす。
「おぇ……⁉︎」
「どうしたの…?」
「大丈夫…?」
気分悪そうにする愛護を心配し、背中をさする2人。
「だ、大丈夫だよ………2人共、俺は弱いから、なのは達みたいに絶対護る、絶対助かるなんて格好いい事は言えない。でも、俺の命が続く限りはお前達2人に傷なんて負わせない」
震える2人の手を握って答える。2人は少しは安心したのか笑顔を見せてくれた。やはり2人には笑顔の方が似合う。
「ねぇ……手、震えてるよ」
「え?………あ」
「締まらないわねぇ、シャキっとしなさいよ」
「悪い、こんな情けない俺で……」
「ううん、そんな愛護くんだから安心できるんだよ」
「………それってどういう事だ?」
「深く考えなくていいの。あなたはあなたのまで居てくれれば」
そう言って笑う2人だが、終始意味が理解出来ない。それでも彼女達の笑顔を護りたいと強く思ったのだった。
ご愛読ありがとうございました。