Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。また感想や評価お気に入り登録等感謝です。

やっぱり1万字超えてたので分割しました。
できれば続きを明日中に投稿したいところ…すいません強化服買うまでのくだりもカツヤ君と鉄球を使った決闘のシーンも8000字以内で書けませんでした。全部キバヤシとアルファが悪い。あと梅雨なのと伊勢神宮とおかげ横丁行って軽く熱中症になった僕が悪い。すいませんでした。

そういえば長編投稿してちょうど1か月です。前作は3週間で書くの辞めたし、評価も感想も全然つかなくてモチベも皆無でした。今作では応援していただいたり、UAPVなど目に見えた成果がでているのでまだ描き続けれると思います。これからもよろしくお願いいたします。


荒野上でおやすみ

 

 

 ガトリングの発射音が途絶え、路地の中に静寂が戻る。血と火薬と焼けた油の匂いが立ち込める中、カツラギはふらふらと装甲車のボディに背を預けた。

 

「……命がいくつあっても足りねぇな、マジで」

 

 隣でアサルトライフルのセーフティを戻しながら、ダリスが短く頷いた。

 

 そんな中、エレナが車体からひょいと顔を出して、やや意地悪くカツラギを見下ろす。

 

「で、依頼主さん? この緊急依頼の報酬、どうするの? 依頼には特記事項がなかったし、即金でくれるのよね?」

 

「な、なぁ……ちょっと待ってくれ。金になる前の商品はあるんだ! 必ず払う、今はさすがに情けをくれないか?!」

 

 カツラギは手を合わせて媚びるように笑うが、エレナは容赦なく追撃した。

 

「私たち、結構な数の弾と薬、そしてあんたの荷物の盾にもなったのよ? 

 

 正直、今すぐ現金で払えないなら、あんたの“目玉商品”を預かるって形でもいいんだけど?」

 

 カツラギの顔が引きつった。そこはさすがに触れてほしくなかったらしい。

 

「お、おい、勘弁してくれよ。それ、今期一番の売りで……! そいつを質に入れたら今月の売上が……!」

 

「……知らないわよ。命の値段、払えないって言うなら、物で返すしかないでしょ?」

 

 エレナの笑みは変わらないが、完全に“営業の顔”だ。

 カツラギは地面に崩れ落ちそうな勢いで膝に手をついた。

 

 そのやり取りを横で聞いていたアキラは、口渇と頭痛に目をしかめつつ口を開いた。

 

「おーい……カツラギ」

 

「な、なんだアキラ……!?」

 

 カツラギが顔を上げると、アキラは笑みを浮かべながら、AAHのボルトを引きつつ告げた。

 

「俺の報酬も……現金じゃなくてもいいぜ? 武器でも強化服でも、現物支給って形でも全然構わん。まぁ、弾薬費はきっちり払ってもらうけどな」

 

 カツラギの顔がさらに青くなる。

 

「……お前まで物取りに回るのかよ……!」

 

「安心しろよ──俺の取り分は後でいい。エレナさんと先に交渉してくれ。その報酬に合わせて、俺の方も調整してくれ。詳しい交渉は……俺の徒党の“交渉係”に任せる。俺は交渉があんま──」

 

 言い切る前に、視界が暗転した。加速剤の反動と戦闘疲労が一気に押し寄せ、地面へ崩れ落ちるアキラ。

 

「お、い待てアキラ! 交渉係って誰だよ!?」

 

「……シェリル、だよ。あとは任せるわ」

 

 そう呟いた瞬間、アキラの視界がぐにゃりと傾いた。

 

『ええ、任せて。今は休みなさい』

 

 言い残した最後の一言が空中で崩れ落ちるより早く、アキラは前のめりに倒れ込んだ。

 

 地面に転がった少年の身体を、サラが素早く抱え上げる。

 

「やば、意識ない……! けど、生命反応は安定してる。たぶん、過労と加速剤の副作用だね」

 

 その場にいた全員が、安堵と疲労の入り混じった表情を浮かべた。

 カツラギはうなだれながら、煙草に火をつけた。

 

「……こいつら、ようやるわ……」

 

 

 

 

 

 ──数時間後。

 

 エレナはアキラをトラックの荷台に寝かせたまま、通信端末で誰かと話していた。表情は真剣そのもの。足元には、まだ意識の戻らないアキラがうっすらと寝息を立てている。

 

「はい、じゃあ本人が動けるようになったら交渉に出るって形で。で、最初の打ち合わせはそっちの“代表”とってことで……」

 

 通信の相手──徒党の代表として選ばれたのは、シェリルだった。

 

「はい。ええ、分かってます。じゃあ“現物でも可”ってのはアキラの伝言で、カツラギさんとしてもその方向が望ましいということですね」

 

 電話口のシェリルはかなり狼狽していたが、徒党の副リーダーとして、アキラの彼女として応じた。

 

 

 

 アキラはすぐに都市の病院へと運ばれたが、簡易検査の結果、特別な医療行為は不要との診断だった。ただ加速剤や医療ナノマシンなどの蓄積がレッドゾーンに近かったため透析を軽く実施。診断としても過剰な疲労と薬剤反応による昏睡——ただ休めばいいと、あっさり返された。

 

 病院を出たあと、エレナはシェリルと連絡を取り、最終的にアキラを徒党内で看護することに決めた。シェリルが彼の世話を引き受けると名乗り出たのだ。

 

 

 エレナとサラは徒党の正面口でアキラを下ろすと、その身柄を預けるためシェリルと接触した。金属の防護ゲートの向こう側に、顔を強ばらせたシェリルが立っていた。

 

「……アキラは無事ですか?」

 

「今は寝てるわ。加速剤の副作用もあるし、疲労も限界みたい。医者もしばらく休ませてやってくれると言っていたわ」

 

 シェリルは無言でうなずいた。その顔は影を落としてた。

 

「それと……」

 

 サラは少しだけ躊躇ってから、やや低い声で続ける。

 

「緊急依頼の報酬について、アキラは現物支給でも可って伝言を残してたわ。依頼主のカツラギもその方向で話を進めたいって言ってきてるわ」

 

「……アキラが目覚めるまで待っていただくことは難しそうですか?」

 

「一応私たちのチームが先にカツラギと交渉をして、その後にアキラの交渉になるから。ある程度の余裕はあるかも、ただ私達も先立つものが欲しいのは事実だし、ゆっくり目の交渉をしても1日2日で終わると思うわ」

 

「そうですか……教えていただきありがとうございます」

 

 シェリルはわずかに唇を引き結び、小さく息を吐いた。

 

「わかりました。私が、アキラの代わりに交渉します。アキラが頼ってくれたなら、私はアキラのために働きます。アキラが望んだように」

 

「……本気でやるの?」

 

「守られてばかりなのは、もう嫌なんです。今度は、私がアキラを守る番です」

 

 その目に宿る強さを見て、エレナはふっと口元を緩めた。

 

「そう。頼もしい彼女さんね。じゃあ、がんばって」

 

「ええ。頑張ります」

 

 そう告げると、シェリルは通信端末を取り出し、カツラギに直接アクセスを試みた。

 

 この交渉が、どれほどの荒波を越えることになるかを、まだ知らないまま──。

 

 

 

 

 カツラギに連絡を入れた数時間後、シェリルたちは指定されたトレーラーに姿を現した。同行者にアキラと定期的にハンター業を手伝っている徒党のハンター数人とエリオを引き連れていた。着古したジャケットに、アキラが選んだ可愛らしいワンピース。その上に防塵コートを羽織り、顔つきはどこか緊張と決意の入り混じったものだった。

 

 トレーラの前にはダリスが警備しており、シェリルが自己紹介をするとカツラギから話を聞いていたダリスはシェリルを案内する。案内された先には商品の仕入れ先との打ち合わせを終えたカツラギが座っていた。機械油と鉄錆の匂いが漂う中、シェリルは一礼をして歩み寄る。

 

「……はじめましてカツラギ様。アキラの徒党で副代表を務めております、シェリルと申します」

 

 一応の礼儀を尽くしたその声に、カツラギは低く笑った。

 

「へぇ、お目付け役の女かと思えば……ずいぶんと“しっかりした”お嬢さんだ」

 

 手元のタバコに火をつけながら、カツラギの目がじろりとシェリルを舐めるように観察する。彼の視線には、好奇心と試すような色が混じっていた。

 

「で? 寝てるアキラの代わりに、あの報酬の話をしに来たのか」

 

「はい。アキラが昏倒した今、徒党を守る責任は私にありますので」

 

「……ふん。ずいぶんと殊勝な心がけだ」

 

 ふいにカツラギの表情が冷たくなり、言葉のトーンがわずかに低く沈む。

 

「ただなぁ。アキラの代わりとはいえ、スラムのガキどもの徒党の一人が、俺に“取引”を持ちかけるってのは……ちょっと笑える話だな?」

 

 ダリスがわずかに体を動かす。緊張の気配が場に走った。だがそれよりも恐ろしいのは、カツラギの声だった。笑っていない。完全に“試している”声だった。

 

「分かってんのか? こっちは都市の金と商売の流れを握ってるんだ。お前みたいな小娘が逆らっていい相手か、よく考えてから口を開いた方がいいぜ?」

 

 一瞬、シェリルの肩が揺れた。顔色もわずかに青ざめた。カツラギの商売相手は荒野でモンスターと殺し合うハンター達、そのハンター達に向けている武器商人の凄すごみは、スラム街の子供には少し強すぎる。シェリルは気圧けおされ、震えていた。

 

 だが―

 

「……お言葉ですが、カツラギ様」

 

 シェリルの声がわずかに震えながらも、はっきりと上ずらずに続く。

 

「私は、アキラの副代表として、そして徒党の代表としてこの場に立っています。都市の権威も、金の流れも、貴方には及びません。でも……私の後ろには、ハンターのアキラがいます」

 

 小さく深呼吸してから、彼女はゆっくりと笑った。

 

「もし、アキラの代わりに来た私を“叩いて従わせる”つもりなら、それはお止めください。彼はそれを望まない人ですし、私はそれを許さない女です。なによりこれはハンター側と商人側の交渉です、そんな子供が気に食わないという些事なことでハンターとの契約をぞんざいに扱うという風評被害が万が一にも広まってしまう恐れがありますよ」

 

 沈黙。

 

 カツラギが目を細めた。ダリスが眉をひそめ、何かを言いかけて──カツラギが手を挙げてそれを止めた。

 

「……ハハッ。なんだ、嬢ちゃん肝が据わってるな、流石はアキラの連れってことか」

 

 ふっと、カツラギはタバコの煙を吐き出してから大きく笑った。

 

「怯えてんのに、その目だけは折れてねぇ。いいじゃねぇか……なるほど、アキラが信頼するわけだ。ガキのくせに、筋が通ってる」

 

 立ち上がり、コートの裾を払う。

 

「すまんが試させてもらったぞ、なんせハンターが連れてきた交渉役がそのハンターの彼女でかつ子供なんだ、商人として信用できるかを判別するのは必要だからな。──さて本題だ、嬢ちゃん。お前さんたちの条件、まずは聞かせてもらおうか」

 

 シェリルは小さく頷いた。

 

「ありがとうございます。では、アキラが事前に口頭で確認した通り、“現物支給込みでの報酬”を前提として……まずはエレナ様たちへの支払い条件の確認から入らせていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキラが寝かされた簡素なベッドの傍らに、シェリルは椅子を引き寄せ、じっとその顔を見つめていた。

 

 目を閉じたまま動かない少年の表情は、どこか苦しげで、それでもどこか安らかでもあった。頬はやつれ、眉間には深く皺が刻まれている。熱こそないが、全身が鉛のように沈み、彼がまだ意識を取り戻す気配はなかった。

 

 シェリルは小さく息を吐くと、震える手でアキラの手をそっと握り締める。冷たくもなく、温かすぎるわけでもない、その手がたまらなく愛おしかった。

 

「……またこんなにボロボロになって……」

 

 ぽつりと呟いた言葉は、誰にも向けられてはいなかった。自分に向けてか、それとも彼にか。判然としない。

 

「ほんと、いつも……守ってもらってばっかりね」

 

 声が震えた。張り詰めていたものが、音もなくほどけていく。

 

 この数日、彼女は必死だった。交渉も、調整も、判断も、全部アキラのため。徒党の皆を守るため。そしてそれは、すべてアキラが命を懸けて繋いだ未来のためだった。

 

 だけど、それでも——。

 

「……大丈夫よ。今度は、私が守る番だから」

 

 その言葉は誓いだった。彼の隣にいると決めた、あの日からずっと胸の中にあった、誰にも負けない決意だった。

 

 彼の手を両手で包みこむようにして、そっと額を寄せる。

 

「だから、お願い……帰ってきて、アキラ……」

 

 目を閉じた彼の顔を見つめながら、シェリルは静かに涙を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 気がついた時、アキラは真っ白な空間に立っていた。

 

 どこまでも白く、奥行きも地平も存在しない。無限のホワイトアウト。世界の描写をサボったような空間で、音も風も気配もないのに、不思議と恐怖は湧いてこなかった。

 

 ──これは夢だ。しかも、明晰夢だ。

 

 そう理解するのに時間はかからなかった。前世でもアキラは夢をよく見ていた。ゾンビに追われ、喰われ、そしてゾンビとして人を追う夢。恋人とイチャついた末にふと空から鉄骨が落ちてきて死ぬ夢。異世界転生して、チートを貰い損ねて奴隷人生を送る夢……などなど。さすがに今際で生死を掛けたゲームを国でして生き延びる夢は……たぶんあったな。

 

 夢とは、脳の情報整理によって生じる副産物であり、レム睡眠時の意識の遊泳。その程度の知識は前世でネット漁りしていた頃に知っている。

 

 だが今のこれは、違う。

 覚えていられる。意識が明瞭で、現実のように感じられる。まるでこれは──何かを“見せられている”ような感覚だ。

 

 視線の先、純白の空間にひときわ浮いている存在がいた。アルファだ。

 

 アキラの傍らに、微動だにせず立っている。無表情で、何かを処理しているように目だけが高速で動いていた。彼女はアキラの存在には一切気づかず、ただ機械的に口を開いた。

 

「1回目。失敗。未到達。対象死亡による継続不能。支援方法を要検証」

 

 記録を読み上げるような、冷たい声。

 

「2回目。失敗。未到達。対象死亡による継続不能。戦闘支援を要検証」

 

「15回目。失敗。依頼破棄による継続不能。対象は生存。誘導方法を要調整」

 

 ひたすらに続く「失敗」の連続。

 

 アキラは一歩、また一歩とアルファに近づく。だが彼女は反応しない。まるでアキラの存在が最初からなかったかのように、思考の中に没入している。

 

(──これは……まるで、あれだ)

 

 アキラの脳裏に過去に見た映像やゲームの断片が浮かぶ。

 

 刀と語り合い、己の心と対話する「BLEACH」の斬魄刀解放シーンか? いや、無機質なモノリス越しに指令を交わす「NERV」のブリーフィングシーンかもしれない。だけどこれはあれだ「NieR:Automata」のドローン同士が話し合うまったく熱のない試行を言い合うシーンみたいだとアキラは思った。

 だがアルファはどれとも違い、だがそれらを彷彿とさせる“何か”だった。

 

「497回目。失敗。エリア9に到達。対象死亡。戦闘支援方法を再検討」

 

「498回目。失敗。最終エリア到達。依頼破棄。対象と完全敵対。処理済み。消息不明」

 

「499回目。実行中。未到達。経緯確認中。以上」

 

 最後の報告が終わった瞬間、世界から色が消える。

 白は黒へ、光は闇へ。すべてが飲み込まれていく。

 

 闇の中、アルファだけが光の輪郭を残して佇んでいた。だがその姿も徐々にノイズに侵食され、やがて、音もなく消え去った。

 

 アキラの意識もそれに引き込まれるように沈み──夢は、終わった。

 

 ……はずだった。

 

 それでも、目覚めた彼の意識には、妙な重みが残っていた。記憶しているのだ。夢を。アルファの声を、数字の列を、すべて。

 

(……なんか久しぶりにこういう夢みたな、Fateみたいなサーヴァントの夢を見ているような……この世界まさかタイムリープ系? ちがうか、SF系はあまり詳しくないんだよな……)

 

 夢とは、脳の情報整理によって生じる。

 であるのならさっきの夢は俺の頭の整理か? ただのオタク特有の妄想か? 考えるほど止まらなくなる。

 

 夢の中のアルファのセリフが頭の中で何度も反響する。アルファは、どれくらい試行してきたのだろう。いやあれはただの妄想とか夢だったのでは? なぜ今も試行を続ける? いや続けている? 何か目的があるのか? アルファの目的はよくわからん遺跡の攻略だ。

 

 

()()()()

 

 

 これはオタク特有とか馬鹿な思考だ、でないと今以上にアルファを疑ってしまう。俺の命はアルファに握られてんだから。アルファにはアルファの目的があり、俺には俺の目的がある。それは今も変わらない。だから大丈夫なはずだ。

 夢だと分かっていても──いや、夢だからこそ。

 あの光景は、アキラの心の奥に、静かに疑念という名の爪痕を刻んだ。

 




読了感謝です。いつもアキラに仕事を押し付けられてるシェリルに感謝を。
このあとは覚醒したアキラの話から強化服買って都市巡回までを、書けたらいいなぁ・・・

なるべく三日に一回のペースで投稿したいんですが、7月から新しい職場で勤務予定なので忙しくなると思います。書く内容はほぼ原作準拠の流れになるんですが、アキラが新しい遺跡を発見するまでの間でスラムならではのオリジナルストーリーを書く予定です。まぁ当分先かもです。

なお、魔王城でおやすみは未読未履修です。まったく知らんのにタイトルをもじったのはこれが初めてです。
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