Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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荒野より怖いのは同族。7歳児が目指す“居場所”は錆びた工場でした。

二話目です。今回は7歳児アキラ君の話です。誤字とか文脈とか考えてたら永遠に投稿できない気がします。


スラムチルドレン、秘密基地を建てる

 親の死から、だいたい二年。

 

 多分、俺は今、七歳になったところだと思う。いや、本当に七歳かどうかは怪しいけど、まあそういうことにしておく。こっちの世界じゃ正確な日付なんてわからないし、誕生日どころか季節の変わり目すら怪しいから、年に一回あるスラムの祭りみたいなのを目安にして「あーまた一年経ったな」って判断してる。社会人時代の曜日感覚がガバガバだった頃の方が、まだマシだったかもしれん。カレンダーもスマホも、こっちにはないからやっぱ今世の方がマシだな。

 

 

 で、その七歳の俺が、ついに自分の拠点を持つことにした。早速独立である。

 

 場所は、スラムの外れにある廃工場の跡地。錆びた鉄骨、割れた窓、崩れた天井。まともな建物とはとても言えないが、それでも雨風はギリしのげるし、人目にもつきにくい。何より、スラムのクソガキや徒党の奴らがそうそう足を踏み入れない場所だったのが決め手だった。

 

 

 ここの存在を知ったのは、元いた徒党の雑用仕事で周辺の廃墟を漁っていた時だ。中を覗いてみたら、ゴミと鉄くずの山の中に、それでもまだ使えそうな空間がぽつんと残っていた。最初はただの物置扱いだったけど、時間をかけて少しずつ片付けて、雨漏りを板で塞ぎ、隙間風を布切れで防ぎ、寝床に毛布や布切れを敷き詰めた。そうしてようやく、人間が暮らせるレベルになった。

 

 

 そしてここが、俺の最初の「拠点」になった。秘密基地、根城、隠れ家……呼び方は何でもいい。とにかく、俺が初めて「自分だけの場所」として持った空間だった。子供の頃に憧れた秘密基地を異世界で作ってみるのも悪くはないよね。ここをキャンプ地とする! ってな

 

 

 そこからの俺は、金策と勉強に全振りした。

 

 

 物拾い、スリ、万引き、死体漁り。前世じゃ軽犯罪とされていたものに全力で取り組み、日々の生活を凌いでいく。中でも死体漁りは効率がいい。使える服や靴、まだ動きそうな銃や小物、道具はありがたく拝借した。もちろん、初めは胃の奥がズンと重くなるような罪悪感もあった。でも、そんな感情よりも、生き延びることのほうがずっと大事だった。

 

 

 加えて、読み書きも独学で学びはじめた。

 

 スラムの地べたに転がってたボロい教本や、雨に濡れてページがくっついた雑誌をかき集めて、前世の知識と照らし合わせながら、なんとかしてこの世界の言語を覚えていった。もちろん、誰も教えてくれる奴なんていない。スラムじゃ読み書きできる大人の方が珍しいし、そいつらがガキ一人に時間を割いてくれるわけがない。

 

 

 死んだ親すら、自分の名前を満足に書けなかった。そういう世界だ。

 

 識字率? そんなもんあってないようなもんだろう。日本だと識字率は高いが、アフリカとかの識字率は低い。それは暮らす環境やら経済能力が関係するが。当然この世界のスラムのガキや大人がマトモに読み書きできるわけがないのだ。生きていくのに精一杯だから。

 

 

 でも俺は違う。文字が読めなきゃ契約もできねぇし、数字がわからなきゃ金も騙されて取られる。俺の目標はただ「生き延びる」だけじゃない。スラムを出て、いつかハンターとして名を上げることだ。そのためには、読み書きぐらいできないと話にならん。

 

 

 

 ……というわけで、七歳の俺は、スラムの外れにあるボロ工場を自分の拠点にし、日々を生き延びるために知恵と手を働かせていた。

 

 だがこのままじゃ、どのみち使い潰されて終わる。だから俺は、もっと強くなる必要があった。もっと金を稼ぎ、もっと武器を手に入れ、もっと頭を使って、このクソみたいなスラムを出る。

 

 そのための準備は──この拠点から、始まったんだ。

 

 

 とはいえ、どれだけ読み書きを覚えたって、腹は膨れない。銃弾は飛んでくるし、スラムに住む俺と同じクズ共は隙あらば俺を襲ってくる。だから俺は、生き延びるために手段を選ばなくなった。

 

 


 

 スリ、物拾い、死体漁り。この三点セットは今や俺の主力金策ルートだ。

 

 

 特に死体漁りはやっぱり効率がいい。争いが絶えないスラムじゃ、ちょっと探せば新鮮な死体が転がってるし、奴らのポケットからは案外色んなモノが出てくる。中には拳銃なんかもあった。とはいえ、大半はジャムりまくったポンコツで、トリガー引いた瞬間に暴発する可能性のある鉄の塊。怖すぎるので、そういうのは問答無用で売った。自分で撃つより、阿呆に売った方が安全だし儲かる。

 

 それに、拾い物は銃だけじゃない。

 

 たとえば女性モノの下着だ。これを適当にそれっぽく演出して、「美人のちゃんねーが付けてたやつもらったぜ!」なんて言いふらせば、小汚いおっさんたちが嬉々として金を出して買ってくれる。スラムの性欲が経済を回している。ちなみに、パンツの方が高く売れる。需要があるってことだ。世界が変わっても、男の性癖はそう簡単に変わらないらしい。

 

 

 前世でも聞いたことある。風俗でパンツ持ち帰りオプションが1000〜2000円ってやつ。俺は買ったことないけど……やっぱあれって、商売として成り立つんだな。ちなみに飲尿オプションとかもあったらしい。あれはマジで誰得なのか謎だった。

 

 ……まぁ、俺が言えた立場じゃないけどな。7歳で女物の下着を拾って売り捌いてる少年なんて、普通に考えて相当アレだ。

 

 

 それはともかく、拳銃の話に戻る。

 

 売ったジャンク銃を資金に、俺はついに「整備済み」のセミオート拳銃を一丁手に入れた。スラムの闇市場、いや、ただの物騒なフリーマーケットで。値段は相場より安かったが、それでも俺にとっては大金だった。中古で、所々傷もあるが、ちゃんと動く。試し撃ちして問題なし。手にした時はちょっと震えた。

 

 

 この時点で、俺の装備は急に「ガキの小銭稼ぎ」から「殺るか殺られるか」のサバイバルにシフトした感じだった。

 

 防衛手段を持つってのは、かなり心の余裕が生まれる。町の治安部隊なんか、スラムのことはほとんど放置だ。トラブルが起きても、見て見ぬふり。だから俺は、自分の身は自分で守るって決めた。銃一丁で完璧に守れるわけじゃないけど、丸腰よりは遥かにマシだ。防具も欲しかったが、なにせ7歳児が着れるような防弾チョッキとかあんま見たことないが、高いとは言え命に代えられないから安物の防護服を購入した。ナメられるのが一番危ないからな。

 

 なお、一気に貯金が消えた。

 

 

 でも安全を金で買えるなら、いくらでも出したいのが本音だ。

 

 整備済みって言ってもスラム品質。いつ弾詰まりするかわからんし、そもそも売ったやつも信用できねぇ。けど、俺には他に選択肢がない。だったら、できる範囲でリスクを減らすしかない。つまり、整備は自分で覚える、弾は信頼できるルートで確保する、ついでに、使い方も徹底的に練習する。

 

 

 そういうわけで、俺は自分の拠点、工場跡地で、こっそり射撃訓練を始めることにした。もちろん、ちゃんと動作確認の取れた銃で。整備不良のジャンクは練習用にも怖すぎて使えない。弾は貴重品だから、一発一発を大事に撃つ。

 

 腕を上げれば、それだけ生存率も上がる。射撃ってのは、ただ引き金を引けばいいってもんじゃない。構え、呼吸、トリガーの感触……FPSで鍛えた前世の経験も、ここにきてようやく役に立ち始めた。

 

 武器も揃った。環境も防護服もある。

 

 だが──これを使いこなせる身体がなければ意味がない。

 

 

 もちろん、体作りもするつもりだ。……というか、しない理由がない。

 

 子供のうちに筋トレしすぎると身長が伸びない、なんて話も昔聞いたことがあるけど──ぶっちゃけ、そんなもんどうでもいい。今の俺にとって、身長よりも「生き残るための筋力」のほうが遥かに重要だ。伸びる命がなきゃ、背が伸びても意味はないんだよ。

 

 

 銃は軽くないし、持って走るにも体力が要る。鍛えるに越したことはない。

 

 筋肉は裏切らない。そう信じてる(キリッ)。……まあ、腹筋が6LDKとか大胸筋が歩くような、そんなゴリマッチョを目指すつもりはないけどな。

 

 目標は、筋力と持久力を兼ね備えた「戦える身体」。その第一歩として、今日からトレーニングメニューを組むことにした。

 

 

 

 俺は今、間違いなく進んでるはずだ。このクソみたいなスラムの中でも、少しずつ前に。

 

 

 

 工場跡地は俺にとって、ただの寝床じゃない。

 

 ここは俺専用の秘密基地であり、訓練場であり、資材置き場であり、最後の逃げ場でもある。

 

 

 入り口は鉄柵とがれきで封鎖し、目立たないルートだけ残してる。内部の構造も少しずつ把握して、今は手作りのブービートラップを何箇所か仕掛けてある。といっても、映画や漫画に出てくるような派手なやつじゃない。足に釘が刺さる簡易式のトラップや、ドアを開けたらガラクタが落ちてくるレベルのもんだ。でも、それだけでも不用意に入り込んだやつには十分な警告になる。もちろんトラップ設置でどこに仕掛けたか自分が忘れないこともかなり大事だ。自分の罠にハマるなんてマジでダサい。

 

 

 で、罠だけじゃなく、射撃訓練も並行して進めてる。

 

 最初は工場内でドラム缶とかコンクリ壁を的にして、拾った空き瓶を置いて撃つ。立射、しゃがみ撃ち、カバーからのピークショット。前世で覚えた基本フォームを思い出しながら、ひたすら反復。撃ち終わったら空薬莢を回収して保存。金になるかもしれないし、薬莢ってのは地味に痕跡として目立つ。隠れるためには、こういう細かいとこにも気を遣う。

 

 

 ある程度弾薬の補充ルートが安定してきたら、次は荒野でのエイム練習だ。

 

 銃は確かに護身用として優秀だが、当たらなきゃ意味がない。脅しに使うにしても、こっちが狙って撃てるって前提がないと、逆にナメられる。

 

 しかも実銃の扱いは初めて。撃った反動とか、狙いのズレとか、前世のサバゲーとはわけが違う。

 

 

 ……いや、でも前世のサバゲーの時点で俺、クッソ下手だった気がするんだよな。

 

 目の前の敵に撃ったのに全然当たらなくて、逆に俺だけヒット取られて退場とか、普通にあった。なんでやねん。FPSでも最初はエイムガバガバで、射撃訓練場こもって感度調整してた記憶あるし……ってことは、こっちでも地道に練習しなきゃいけないってことか。

 

 

 ……もしかして、俺って銃の才能ない? 

 

 ガンナーじゃなくて、別の武器にした方がいい感じ? いや、冗談抜きで。

 

 よし、いっそ狩猟笛をメイン武器にして、サブで水属性ヘヴィボウガン背負ってワイルズに荒野を駆け回るか。

 

 そんで乗り物はバイク。名前は……もちろんセクレトだな。ただそのバイク呼んでも全然来てくれなさそう。呼んだらはよ来いセクレトよ。

 

 

 ……うん、現実逃避はこの辺にしておこう。

 

 現実は厳しい。スラムはもっと厳しい。だからこそ、死なないために訓練を重ねよう今日も一発一発を大事に撃ち、少しでも生存率を上げる。そういう日々を、誰にも知られず、静かに積み重ねていく。

 

 

 

 


 

 

 

 夕暮れの鉄骨工場は、今日も静かに獲物を待っていた。

 

 入り口近くの薄闇で、錆びたドラム缶をついばんでいたネズミが一斉に散る。次の瞬間──カシャン、と硬質な音。足首の高さに張ったワイヤーが切れ、吊っていたジャンクパーツが慣性のまま振り子になって襲来した。

 

 

「ッぐあ!」

 

 

 鈍い悲鳴とともに、侵入者の脛が鈍色の鉄塊にえぐられる。反射的にかがんだ体を待っていたのは、床一面にばらまいたガラス片とスパイク付きの木片。悲鳴が二重にこだまし、重い身体が床に転げた。

 

 

「くそなんだこれは!!!」 

 

 

 梁の影で見ていたアキラは、息を殺したままカウントを取る。

 

 ──三、二、一。抵抗が弱まるのを見計らい、遮蔽を離れて滑り込んだ。両手はすでに犯人の腕を逆関節で極め、口をふさぎ、ガキサイズとは思えない速度と重さで地面に叩きつける。

 

 

「動くな。静かにしてりゃすぐ終わる」

 

 

 覆面の男は呻きながら拳銃を探そうとするが、指先はワイヤーで縛られ感覚がない。アキラは無感情に自身の腰にブラ下げていた拳銃を抜き侵入者の頭、心臓にそれぞれ一発ずつ弾丸をお見舞いし侵入者の息を止める。

 

 

 身ぐるみを剥ぐ作業は手早い。ブーツの鉄芯、厚手のジャケット、ポケットの紙幣、ミニツール、未使用の医療キット──使える物と売れる物を一つずつポーチに詰め、血の付いた衣料と素人改造のジャンクだけを足元に蹴り戻す。 

 

 

 転がる男を見下ろして、アキラは小さく肩をすくめた。

 

「足元見てないからこうなる。スラムじゃ気ぃ抜いたヤツが先に死ぬんだぜ」

 

 

 工具箱の蓋を閉じると同時に、外の風がひゅうと金属の骨組みを鳴かせる。工場は再び静寂を取り戻した。

 

 アキラは小さく鼻歌を漏らしながら獲物の山を抱え、奥の作業台へ引き上げていった。

 

 

 罠はもう一度リセット。今日も“人喰い工場”は、彼の明日を買うための自動販売機であり続ける。

 




読んでいただき感謝感激です。次回は8~9歳のアキラ君です。なんか一万字超えてるので分割する可能性ありです。

なお、秘密基地を作った事がありますが数ヶ月後には大人の手によって入れなくなってました。
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