Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る 作:ロシュ
それに唐突に艦これの呉のイベントに行きたくなり、仕事終わりに今夜行バス乗ってるので、酔いながら書きました。ギリ致命傷です。
地下街の空気はいつも通り淀んでいた。湿気と油と埃が混ざり合ったような匂いが、鉄筋の壁とコンクリ床に染み込んでいる。アキラは徒党の子供数人の引率をしながら、静かに台車を押しながら新型照明ユニットを目的地へと運んでいた。大多数の子供の世話はエリオたちに任せているためアキラが連れている子供はエリオたちでも守り切れない比較的弱者だった。
照明には情報中継機能があり、モーショントラッカーや簡易カメラも備え付けられている。地下街全体を可視化し、制圧を進める都市の作戦の一端らしい。アキラは設置済みの旧型照明を手際よく取り外し、配線を接続し、取り替える。
ガチャンと最後の固定具を締め終えたところで、後方から子供たちの足音が響いてきた。徒党の少年たちが、補給のための部品を入れた小型台車を押してくる。
「よし、それ置いて一旦下がってろ。あとは俺がやる。次の設置位置……向こうの通路だな」
子供たちがうなずき、控えの位置へ下がる。アキラは次の照明を片手で抱え、通路の奥へと進んでいった。
アルファの声が脳裏に響く。
『アキラ。少し警戒して。前方に武装した人物がいるわ』
『同業者か?』
『多分そうね。ただ端末の反応がないの。電源を切っているか、持っていないか。どちらにせよ、こっちの位置情報も向こうには届いていないはずよ』
アキラの足が止まる。通路の奥、開けた広間の端に、人影が立っていた。背中にライフル、腰に拳銃。典型的なハンター装備だ。照明の反射で装備の輪郭が浮かび上がる。
「一応本部に聞いとくか。こちら27番。本部。応答を求む、どぞーー」
「こちら本部。どうした」
「確認したいことがある。今数10メーター先に位置情報を共有できないハンターらしき人物を1名発見した。」
「本当か?」
「少なくとも幻覚じゃないな、俺の手持ちの情報収集機にはバッチリとソイツが写ってる。」
「そうか…端末の故障かもしれないな、もしくはバッテリー切れか。いずれにしても一応確認してくれ。」
「わかった、確認したら本部に連絡を入れる。ちなみにそのどちらでもなかった場合は?例えばコソ泥だった場合とかな」
「まぁどちらでもない場合は、そいつを本部まで連れてこい。もし遺物窃盗犯ならそれなりのおもてなしをする。手段は問わん、好きにやれ。その結果を含めて許可する。状況が進展したら連絡をくれ。以上だ」
「あいあいさー、あとで連絡を入れるぞ。以上」
本部との通信を切ったアキラは現在不審者のソイツに声を掛けようとするとアルファから呼び止められる。
『アキラ、必要な場合は躊躇なく打ちなさい』
『銃弾で解決する可能性が高いだろうなぁ。まぁ不審者やテロリストには譲歩しないのが鉄則か』
アキラは周辺の瓦礫の位置や自身の装備を確認する。同時に引率で連れてきている徒党の子供たちに、「打ち合いが始まったらまず逃げろ。それと本部に27番が戦闘を始めた」と伝えるように教え込む。突然銃撃戦が始まりそうだとアキラに言われた子供たちは青ざめながら必死にうなづく。
『アルファ。何かあったらサポートを頼む、俺が死ぬ可能性跳ね上がったなら、俺の強化服や体の操作権をその戦闘時に限り委ねることを≪許可≫するからな。』
『了解。アキラから≪許可≫がでたし、精いっぱいサポートするわ』
アルファの返事を聞いて気を落ち着かせた後、アキラは覚悟を決めて叫ぶ。
「お疲れ様ぁ!!そこのハンター!多分端末の電源が切れてるぞ!」
反射音が地下街の空気を叩いた。だが返事はなかった。
代わりに、その人物がこちらに気づいて、手を振ってきた。笑みを浮かべ、わざとらしいほど大げさな身振り手振り。指で端末を指し、壊れてるとでも言いたげに肩をすくめ、次に「こっちへ来て」とでも言うように手招き。
「……」
アキラの眉がわずかに動く。自分の声は明らかに通った。それなのに、向こうの声は一切聞こえない。
「……おかしいな。俺の声が届いてるなら、そっちの声も普通聞こえるよな」
『そうね。通路の構造からして、遮音効果はないはずよ』
アキラの指がゆっくりとトリガーガードにかかる。違和感は確信に変わっていく。
「耳は聞こえてんだろうに、声を返してこない。ジェスチャーだけっておかしいだろ、喉が潰されたか?それなら声帯を作り直す改造とかをすればいいだろ……疑いだすとキリがないな。やましいことでもしてんのか?」
『その可能性が高いわ。しかも……』
アルファのトーンが僅かに鋭くなる。
『あの身振り、事前に用意していたように滑らかすぎる。嘘をついている顔じゃないけど、ほんとのことを言ってる顔でもなさそうね。』
「これは嘘をついている味がしそうだ。」
アキラは手早く背後を確認し、すぐ近くで待機していた徒党の子供に目を合わせ、瞬きを4回。それはアキラが“戦闘の可能性あり”だと前もって伝えた合図だった。
子供は躊躇なくうなずき、荷物を放り出して通路の奥へ駆けていった。
アキラは深呼吸し、再び視線を前方の不審者に向ける。その笑顔はまだ崩れていなかった。まるで舞台の役者のように、台詞を言わずに芝居を続けている。
「本部、本部。こちら27番。応答を求む」
「こちら本部。結局どうなった、平和的解決はできそうか?」
「その逆だ、多分戦闘になる。残念だ、これが最後の会話にならないといいけどな」
「了解、すぐにそちらに増援を送る。それまで足止めを頼む。死ぬなよ27番、死なれるとデータがロストするからな。」
「了解、応援ありがとよ。以上」
通信が切れる。
いずれにせよ油断はできない。アキラは男の動きを注視していた。だが通信を切った瞬間、わずかにアキラは気を抜いてしまった。
次の瞬間だった。暗闇を裂いて銃声が轟いた。
ヤジマが懐から拳銃を抜き放ち、凄まじい速さで3連射してきたのだ。一発目の銃弾がアキラの右頬を掠め、熱い痛みが走る。
弾道はあと数センチもずれていれば頭蓋を貫通していただろう。二発目が放たれるよりも早く、アルファが強化服の駆動を制御し、アキラの身体を強引に横に逸らす。次の瞬間、硬質な破裂音——携帯していた情報端末が砕け散っていた。
第二射が端末に命中し、電子部品の火花が闇に飛び散る。もしアルファの介入がなければ、今の弾丸は胸部に直撃していたに違いない。
そして三発目。身体を翻した拍子に視界の隅に映ったコンクリート片が粉砕され、破片が雨のように降り注いだ。
3発もの殺意に満ちた銃撃を浴びながら、アキラ自身はかすり傷で済んでいたのは奇跡的と言えた。それもこれも瞬時に働いたアルファの自動回避のおかげだ。頭上からぱらぱらと瓦礫片が降りかかる中、アキラは荒い息を吐きながら近くの崩落した壁の陰へと飛び込んだ。
肺が焼けつくようだ。危うく即死するところだった。
頬には生温かい血が一筋流れ、じんじんと痛む。心臓が嫌になるほど大きく鼓動している。
アキラは震える呼吸を整え、状況を把握しようと頭を振った。
暗闇の中、柱の陰に身を隠したヤジマの姿が完全に見えなくなっている。
しかしアルファが即座に探知結果を送り、視界に赤い輪郭を浮かび上がらせた。おかげで敵の位置は把握できているが、同時に簡単には当てさせてもらえないことも理解できた。
今の奇襲は、相手が十分にこちらの警戒心を解いたタイミングを見計らって仕掛けられたものだ。まるで殺気を感じさせない自然な態度からの突然の速射——人間相手の戦闘に特化した技術だ、とアキラは直感する。
今まで人間の敵が侮って隙を見せることで生き延びてきた面もあったが、今回の敵にはそれがない。
ヤジマは最初から全力でアキラを仕留めにきていた。その厄介さに、アキラは奥歯を噛み締める。ガキ相手に本気になってやがる、と悪態を付ける。
『アキラ、大丈夫? 今の攻撃、完全に不意を突かれたわね』
視界の片隅に映るアルファの虚像が心配そうに問いかける。アキラは短く息を吐き、「平気だ…かすっただけだ」と低く答えた。
実際は平気ではなかったが、そう答えるしかない。ここで怯んでいては、本当に殺される。
アルファもそれ以上言及せず、すぐに冷静な声で告げる。
『敵は柱の陰。まだ無傷みたい。かなりの手練よ、気をつけて』
アキラは頷いた。
頬の痛みも今は意識の外だ。
強化服のセーフティを解除し、各種サポート機能を戦闘モードへ最大化する。
同時にポーチから小さなアンプルを取り出し、迷うことなく嚥下した。
超高性能な旧世界製の回復薬だ。喉を焼くような薬液が体内に染み渡り、数秒と経たず全身に活力が漲るのを感じる。加えて病院から購入した麻薬鎮痛剤も飲み干す。
加速剤はすぐさま飲み込めるように口腔内に放り込んでおく、いずれ唾液で溶けるだろうが溶けるまでに戦いが終わってなければどうせ加速剤はを服用することになる。
じわりと筋肉の震えが収まり、視界が一段澄み渡った。
「…いける」。アキラは自分に言い聞かせるように呟いた。
アルファの補助AIが危険領域をハイライトし、リアルタイムで最適な行動プランを提示してくる。
ヤジマはこちらの出方を窺っているのか、柱の陰から動く気配はまだない。
ならば先手を取るまでだ——アキラは素早くグレネードを一つ取り出すと、迷いなく敵の潜む柱の向こう側へ放り投げた。
アルファが注意喚起と同時にカウントダウンを声に出す。
『3、2、1…』
直後、鈍い爆音とともに閃光と破片が辺りに撒き散らされた。
爆風で地下街の埃が一斉に舞い上がり、視界が白く煙る。柱のコンクリートが欠け飛び、断末魔のような鉄骨の軋みが響いた。
しかしアルファのセンサーには依然としてヤジマの反応が残っている。
「仕留め損ねた…!」
アキラは舌打ちした。
だが効果はあった。センサー表示によれば、ヤジマは柱から離れ、周囲の残骸の陰へと一時退避したようだ。アキラは逃さず即座に追撃する決意を固める。
爆発で立ち込めた煙に紛れ、アキラはすかさず小型の煙幕弾をもう一つ投げ込んだ。
辺り一帯は濃い白煙に覆われ、視界もモニターも真っ白に染まる。
それを確認すると、アキラは腰のワイヤーガンに手を掛けた。
アルファが即座に状況を読み取り、電子マップに迂回ルートを描き出す。
『右前方の梁にワイヤーを掛けて、高所から回り込めるわ』
その指示に従い、アキラは素早くワイヤーガンを撃ち出した。
鋼鉄製のワイヤーフックが闇の天井へと一直線に飛び、遠くの梁にがちんと音を立てて固定される。
次の瞬間、巻き取られるワイヤーに引っ張られ、アキラの身体が宙を舞った。
強化服の中で肉体が悲鳴を上げるが、アルファの自動制御が姿勢を安定させる。
濃密な煙幕と暗闇に紛れた高速移動——常人の目には捉えきれない、奇襲への奇襲だ。
上空から大きく弧を描いて回り込んだアキラは、ヤジマの背面側に着地した。
足音を殺して崩れた瓦礫の上に降り立つと同時にA2D突撃銃を構え直す。
その瞳には既に恐怖も迷いもなかった。
極限の集中状態に入ったアキラには、周囲の景色が驚くほど鮮明に映っている。
宙に漂う粉塵の一粒一粒までもがはっきりと見え、秒針が遅れたような感覚すら覚えた。研ぎ澄まされた動体視力で、僅かな煙の揺らぎの向こうに人影を捉える。
——いた。
わずか数メートル先、瓦礫に紛れて身を潜めるヤジマの姿が見えた。
手には先程と同じ拳銃が握られている。
こちらに気付いていない背中へ、アキラは狙いを定めた。
アルファの補正映像が照準をターゲットに同期する。引き金にかけた指に力が込められた。
(これで、倒れろ!!)
静かな殺意と共に、アキラは引き金を絞る。
アキラはすかさずA2Dのトリガーを引き、3点バーストの弾丸が火を噴いた。
だがヤジマも反応が早い。床を転がって弾道を躱し、瓦礫の裏に逃げ込むと、煙幕を展開する。
『煙の中に逃げたわ。反応はまだある。追って』
アルファの指示と共に、アキラは背中から閃光グレネードを取り出し、煙の中心へ投擲。爆音と閃光で敵の動きを封じると同時に、滑り込むように前進する。
閃光に対応してA2Dの照準補正が切り替わり、光の屈折データからヤジマの輪郭が浮かび上がる。
アキラはすぐさまグリップ付きのワイヤーガンで敵の足を狙い撃ち、拘束用のケーブルを巻き付けるが——
「舐めんなよッ!」
ヤジマがナイフでワイヤーを斬り払い、逆に拳銃で反撃してくる。
アキラは身体をひねって回避、だがその弾は強化服の脇腹を掠め、火花が飛ぶ。
内部機構の状態監視センサーが赤く点滅し、アラート音が鳴る。
『ダメージ警告ね、強化服にかなりのダメージを喰らったわ。 運が悪いとあと数発でスーツが根を上げるわ』
「……っ、そろそろケリをつける!さっさと来てくれよ!援軍様よ!!」
アキラは呼吸を深く整える。意識が狭まり、心拍が一定のリズムに整う。
“過集中”が再び発生させる。
視界が明確になり、周囲の動きがスロウモーションに見える。壁の埃が剥がれて落ちる様までが見える。
アキラは拳銃をしまい、接近戦に切り替えた。
ナイフを逆手に握り、足音を消して瓦礫の裏へ回り込む。ヤジマが警戒しつつ覗いた瞬間、アキラは躊躇なく飛び出して膝裏を切り裂いた。
「ッが、ああああっ!?」
ヤジマが叫び、姿勢を崩す。
「どうせお前の方が強化服の性能は上だろ!ならフェアに行こうぜ!お互いのスーツ損耗させてなぁ!!」
アキラは即座にA2Dの銃床で頭部を殴打。追撃で肩にナイフを突き立て、動きを封じた。
「メカクシ完了、ってな!」
ヤジマが呻きながらも抵抗の意志を見せたため、アキラはためらいなく四肢の腱を切断して動きを奪い、さっきヤジマが切断したワイヤーで拘束した。
「俺はお前が遺物窃盗犯だろうがただの散歩に来たハンターだろうが関係ない。これは任務だからな、恨むなら上を恨め」
血を流しながら転がるヤジマ。その瞳には屈辱と憎悪が混じっていた。
瓦礫の上に押さえつけられたヤジマは、もはや反撃の意志すら見せなかった。
肩、膝、肘、アキレス腱──すべてを断ち切られ、ワイヤーで縛られた体を動かすこともできず、血と汗と唾液を混ぜながら、口だけは動かし続けていた。
「……ガキのくせに……潰すだけじゃ飽き足らず、嬲りやがって……!」
アキラはその言葉を聞いても無表情のまま、ヤジマの腕を踏みつけた。内部フレームの軋む音。表皮が破れ、断面が覗く。
(……やっぱり、義体か)
腕の断面には、筋線維も血管もなかった。あったのは、銀色の駆動ラインと、断裂した合成皮膚の継ぎ目。
「義体人か。そりゃ、腱を切ったぐらいじゃ足りねぇわけだ」
アキラは静かに腰のホルスターから拳銃を抜き、ヤジマの手首に銃口を向ける。脇の関節に正確に狙いを定め、関節軸ごと破壊するつもりだった。
そして引き金に指をかけた——その時だった。
「な、なにしてるのアナタァッ!!」
『避けなさい!アキラ!!』
甲高い声が響いた直後、銃声。爆ぜるような破裂音と共に、アキラの肩が弾けた。
「ッ、あぁ……!?」
咄嗟に振り返る。瓦礫の陰から現れたのは、レイナだった。
震える両手で銃を構えている。
レイナの目は完全に混乱に染まり、理性が飛んでいた。視線の先には、血だらけになって転がるヤジマ。そしてその四肢に銃を突きつけるアキラ。構図だけ見れば拷問にしか見えない。
アキラの表情が強張る。右手は反射的に銃をレイナへ向けかけていた。
「……撃ちやがったな、このアマァ……!」
理性を投げ捨てた ように冷えた声。アキラの目は、怒りと緊張で冷たく凍っていた。
その一瞬、レイナの顔が青ざめる。目を見開き、口元が震える。だがそれでも動けない。
アキラはそのまま引き金に指をかけかけたが——
すんでのところで止めた。
「……いや。違う…、これじゃ何も、変わらないじゃないか…」
呟いて、銃口を下げる。息を吐いたアキラの顔に、苦いものが滲む。
(俺があのとき、レイナにバカな事を言ったから……)
(その時点で、こういう事態になる可能性を潰しておくべきだった)
右肩が痛む。撃たれた箇所は浅いが、血はそこそこ出ている。
(なんだよ、結構当たんじゃねぇか…)
脳裏で「団長!!」と叫ぶライドと、撃たれるオルガの妄想で頭を冷やしていく。
「ふぅーーー。レイナ。落ち着け」
アキラは低く、だがはっきりとした声で言った。
「そいつは“義体人”だ。人間じゃない。外装だけ人間のふりしてるけど、中身はほとんど機械だ。まぁ体の至る所を機械に変えて、頭だけが人体なんてテセウスの船みたいな、こういう奴らはどこから人ではなくなるのか、疑問ではあるが…」
レイナはまだ呆然としていた。震えながらも、ようやく銃を下ろす。
その背後から、やや遅れてシオリが駆け寄ってくる。
「も、申し訳ございませんアキラ様!お嬢様を止めることが出来なかった私に全ての非があります!!ですから、私はどうなっても構いません!許していただけるなら、お望みであればこの体、この命を差し上げます。ですから、どうか、どうかお嬢様の命だけは!!」
青ざめた顔で、シオリは勢いよく頭を下げる。
(お嬢様がアキラ様を撃った直後に私たちの反応を超えるほどの早撃ちがアキラ様にはできた!あの瞬間にお嬢様が反撃されている可能性は大いにあった!これは、私の責任です…)
アキラは苦笑しながら右肩を押さえた。
「まぁ、撃たれるような事をしてた俺も悪いかもしれない……それに急所外れてよかった、肝臓とか肺ならマズイからな…」
その時、通路の奥から複数のライトがこちらに向かって走ってくるのが見えた。
ハンターたちと都市の支援職員たち。数人が駆け寄り、周囲の状況を確認する。
「ここか!?」「27番、無事か!!」
アキラは肩を押さえたまま、疲れたように腰を下ろした。
「27番はここだ!戦闘して負傷した!回復薬で誤魔化してるが戦闘続行は無理だ!」
その後他ハンター達に肩を借りて、レイナ達を一瞥したアキラは援軍に来たハンター達にヤジマを任せる事にした。もちろん遺物強奪犯を捕獲したのは自身の手柄だと譲らずに身柄だけ渡す事にした。
「よぉし、あとはよろしく……。死なせるわけにはいかねぇから、本部の指示通り生け取りにした。ワイヤーで固定してるし、義体の関節部は全部破壊してる」
オフィス職員のリーダー格の男が、ヤジマに近づいて指示を出した。
「そっちの27番のために早急に医療班呼べ。こっちの泥棒は都市オフィスの要請に基づき、本人の身柄を引き取る」
ヤジマの体を見る。まだ息はある。だが、その目は憎悪と苦痛と、どこか勝ち誇った色が混じっていた。それをはまるで逃げ切ったと伝えてくる目だった。
ヤジマの体が、がくりと弛緩する。口元に微笑が浮かんでいた。
「おい……!?なにしやがった!」
『……自殺ね。おそらく毒物か何かで死んだわ』
そして、次の瞬間。
「自殺だと!?たかが遺物強奪だろ!それだけ強制労働が嫌かよ!」
この場では何も言えなかった。アキラは肩を押さえながら、職員に視線を向けた。
「……もう任せる。俺は肩をやられてるんだ。本部の言うとおり生け取りにして、その身柄をあんた達に渡したんだ。その後で死なれてもそれは俺の責任じゃない。だから、生きて、渡したという功績や報酬はいただくぞ。もちろん報告書は書くし、送信する」
「まぁ、仕方ない。それについては受理する。自殺したが、最悪脳を読み取って記憶を探る。義体ならデータファイルやバックアップがあるかもしれないからな。27番、お疲れ様だ。もうすぐ医療班が着く、診てもらえ」
「いや、都市で診てもらうよ。ついでに装備も直したい」
そう言って歩き出す背中を、隊員は止めなかった。
職員とのやり取りを終えたアキラは、地下街からの帰還を選んだ。右肩は鈍い痛みを訴えていたが、それ以上に問題なのは、強化服の損傷だった。
歩くたびに膝の関節部がぎしぎしと音を立て、背中の冷却系統は完全に沈黙。アキラはスーツのダメージ表示を確認し、内心で舌打ちした。セーフティ補助も、駆動支援も、まともに動いていない。
『このままじゃ仮設任務の受注は無理ね』
アルファの声が淡々と響く。
「だろうな。都市に戻ったら、すぐ修理だ。……金、下ろさないと」
『既にカツラギ経由で指定業者に連絡しておいたわ。即日修理、100万オーラム。作業時間は1時間。到着したら預けるだけでいいらしいわ』
「修理助かる」
防衛班詰所の裏手に回った瞬間、白いワンピース姿の少女が走ってきた。
「アキラッ!!」
シェリルだった。息を切らして駆け寄る彼女の目は赤く、いつもきちんと整えている前髪も乱れていた。
アキラは右肩を押さえながらも手を上げて応じる。
「大丈夫、大したことはない……」
そう言いながらも、スーツの肩口は破れ、内側のシャツまで赤黒く染まっているのが見えた。シェリルの顔が見る見る青ざめた。
「どこが大丈夫ですかっ……!? さっき、アキラか怪我したって、連絡があって、急いで来たのに……!」
アキラは、目の前で今にも泣き出しそうな顔のシェリルを前に、なんとも言えない表情を浮かべた。申し訳なさ、気まずさ、けれどもそれを押し込めるような強さ。
「……悪い。ほんとに。だけど、少しだけ、聞いてくれ」
シェリルはゆっくり頷いた。アキラは小さく息を吐き、声を低くした。
「さっき戦ってた相手……“遺物の窃盗犯”だった。オレはそいつを倒した。けど──」
言葉を選ぶ間も惜しんで、アキラは要点を簡潔に告げていく。
ヤジマの正体、義体であったこと、レイナに撃たれたこと、そいつが自殺した事等を話していく。
「申し訳ないけど……この件の交渉頼めるか? 身を挺したんだ、割とぶん取れるはずだ…」
一瞬、シェリルの瞳が揺れた。だがすぐに、彼女は真剣な顔で頷く。
「……わかりました。アキラがそう望むなら、私が全部引き受けます。徒党には、“暴漢に襲われたけど無事だった”くらいに抑えます」
「助かる」
そう返すアキラの声に、わずかに安堵の色が滲んだ。
そのまま二人は、近くに停められていた車へと向かう。
アキラが運転席に乗り込む
「シェリル、乗ってくれ」
後部座席に乗り込んだシェリルの隣にアキラも座り、肩を休めながら息を整える。
車体がなめらかに滑るように動き出した。
窓の外には仮設基地の光が小さく揺れ、次第に遠ざかっていく。
車内はしばらく無言だった。沈黙を破ったのはアキラだった。
「なぁ。たぶん、また俺は怪我すると思う。そんな気がする。どこの誰かにやられるかわかんねぇけど……時間の問題だ」
シェリルはうなずいた。表情は既に、ただの少女のそれではない。
「わかっています。アキラに何かあったら、すぐに動けるように準備しておきます。装備も、人も、情報も……できるだけ動かします」
「……ほんといつも頼りすぎだな。ありがとな」
シェリルは小さく笑った。けれどその目は真剣だった。
「当然です。だって、アキラのためですから」
アキラはその言葉に、一瞬だけ頬を緩めた。
車はゆっくりと都市のゲートをくぐる。まだ薄明かりの残る空の下、次の戦いの気配だけが、確かに近づいていた。
読了感謝です。
原作の相違点として、アキラもヤジマも早期決着を目指しました。
どう考えても『僕は悪くない、だって僕は悪くないんだから』と括弧付けて、ヤジマを倒した後身動き取れないようにダルマにして捕獲しました。
なお、生け取りにしたけどヤジマ自殺しました。あーあ、全て職員のせいです。
そして疲労してるアキラ+過集中の連続で頭がぼーっとする+戦闘で強化服故障しかけて出力の低下等の状況でした。
その結果、感情的になったレイナの弾丸が無事アキラに超エクサイティング!!してアキラが撃たれました。
流石に銃弾1発で希望の花は咲きません。
次回は某死亡後の保険によって命を狙われるアキラ君です。ネリアとの素敵なパーティーしましょう。
追記
艦これの呉市立美術館のイベント楽しみなんですが、バスでガチ酔いしました。寝ます