Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。

三日以内に投稿できるか微妙とか言ってたのに普通に9000字書いてました。

またお気に入り登録や評価、感想感謝です。それと僕がリビルドワールドのSS書くきっかけになった、「孤独に非」のたっぷり様に認知されててくそうれしかったです。

さて今回戦後処理です。だいたい病院退院までです


Fate/stay hospitalーakila

 

 

 

――真っ白な虚空。二度目の“あの夢”だ。

 

「ああ、またか……」

 

淡い残響が足もとに吸い込まれる。薄靄の向こう、アルファがこちらに背を向け独り言を漏らしている。距離は十数メートルほど、だが声だけは澄んで聞こえた。

 

> 「試行499の評価開始――対象が目標を踏破する確率、一%未満。生還確率、一%未満。不適格。戦力向上を継続」

 

またその番号。“499”──どう考えてもオレのことだろ。

 

> 「旧対象が契約を破棄した要因を考慮……不特定多数の救済を志向する思考の抑止を優先」

 

やっぱ信用できねえ……けど、信用できなきゃ死ぬしな…

 

アキラは舌打ちして手を伸ばす。指先は空気を掻くだけで、声の主には届かない。多分向こうも視認できてなさそうなんで中指を立てておく。

 

> 「現対象は問題行動や言動が見られるものの、社交的人物である。比較的善性よりではあるが、特定人物等以外への興味関心は薄く、自己優先思考につき、危険域を下回る――」

 

勝手に人格診断するなよ

 

不意に視界が滲んだ。輪郭が黒へ反転し、世界が深い闇へ落ち込んでいく。アルファの最後の言葉だけが残響になった。

 

> 「試行498の再現を避けるため、人格変化に留意――」

 

* * *

 

 

 

 

 

 ――「知らない天井だ」。

 

 薄茶色の石膏ボード、天井灯の熱がやけに遠い。人工皮革のベッドに横たわったまま、アキラは深呼吸した。点滴スタンドの規則的な揺れ、薬液の匂い。ここが病院であることを察するまで数秒を要した。

 

(……で、試行499ね。いままでの先駆者たちは全員RTA失敗して、今の走者は俺ってか)

 

額に残る汗を拭いながら呟く。夢の内容は輪郭だけ残り、細部は水に滲む紙のように曖昧になっていく。それでも“アルファを信用し切ってはいけない”という感覚だけは、焼きつくように胸に居座った。

 

 枕もとのモニタが静かな電子音を鳴らす。血圧、脈拍は安定、酸素飽和度も98%。バイタルに著変なし、だな。

数値に加え自分の感覚も確認する。アセスメントするには主観的情報も必要なのだから。まずは状況確認、どう考えても個室の病室、相部屋ではないのが救いか。次に今後、前の戦いの治療で病院に運ばれてるならそれを治療後退院か。さすがに三か月もかからないだろう…前世では同じ病院で3か月まで入院できたがこの世界はどうなんだろうな。金があればいくらでも入院できるのかもしれないが…今の俺はハンターだ、そこまで患者のことを考える立場では今はないのだ。

その後で装備と資金、そしてアルファの真意を改めて探る。まぁ勘ぐられるのも怖いので詳しくは聞けないが。

 

 

 

 アキラが病室で目を覚まし、束の間の安堵を得た直後──ノック音と共に、扉が開いた。

 

「おーい、起きてるか? ……おう、生きてたか。なによりだ」

 

 現れたのは、スーツを身に纏いながらも妙に軽いノリの中年男だった。涼しげな目元と飄々とした笑み。だが、その目の奥に宿る光は、ただの役人のそれではなかった。

 

「久しぶりだなアキラ。今回俺は都市の調整役──まぁ“交渉人”ってやつでここに来てる。よろしく頼むぜ」

 

 そう言って勝手に椅子を引き寄せ、アキラのベッド脇に腰を下ろした。

 

「……で、さっそくだが本題に入る。まずはお前、よく生きてたな。重装強化服のハンター二人相手に足止め、しかもうち一人を撃破。遺跡内ではヤジマまで拘束しようとしたんだろ? お前が動かなかったら、クガマヤマ都市に被害がでてた。」

 

 アキラは黙って頷く。その程度の評価は、納得できる。

 

「だがな、その分、お前の体も派手に壊れてる。左腕は再生、全身の損傷、薬剤やナノマシンの調整、ついでに神経接続まで……ざっくり見積もって、治療費は七千万オーラムだ」

 

「……クソ高ぇな」

 

「荒野で全身ぶっ壊されりゃ、そりゃそうなるわな。で、ここからが交渉だ」

 

 キバヤシが端末を開き、資料を表示する。

 表示されたのは、アキラの戦歴記録──ヤジマ戦からネリア戦までの全行動ログ。

 

「お前のこの戦歴を、都市とハンターオフィスが“買いたい”と言ってる。戦果の譲渡ってやつだ。戦ったのはお前だが、公的な記録や報道では“別のハンター”が活躍したことになる。口外禁止契約もセットだ」

 

「……ふざけんな。それが“都市のやり方”ってわけか」

 

「そう言うな。俺も好かれてる方じゃねぇが、お前だって現実は見えてるだろ」

 

 キバヤシは肩をすくめた。

 

「この一連の戦歴、“守秘義務込み”で一億七千万オーラム。ここから七千万引いたら、お前の手元に一億が残る。今すぐ、退院と同時に持って帰れる大金だ」

 

「売らなかったら?」

 

「病院の請求書をそのまま渡すだけだ。都市が出す補助は数百万。残り六千五百万は、お前の借金になる。ハンターとしての活動は──たぶん詰むぞ」

 

 アキラは口を結び、しばし天井を見上げた。

 

 ──悔しい。本当は売りたくない。だが、選べる状況じゃない。

 

「……わかった。売る。借金背負うよりマシだ」

 

 静かに、だが明確にアキラは答えた。

 キバヤシは小さく頷き、端末を操作する。

 

「契約完了だ。これで治療費は都市側が立て替え済み。お前の口座に一億オーラムを振り込んだ。使い道は自由だ──もっとも、お前のことだ。すぐ装備と情報端末に消えるだろうがな」

 

 そう言って、キバヤシは新品の携帯端末をアキラに手渡した。

 

「ハンター認証済み、顔とDNAロック入り。通話、地図、契約履歴、情報データ、全部入りだ。これは俺からのサービスだが、ハンターが使う頑丈なヤツじゃない、あとでまともなのを買いな。」

 

 アキラは端末を受け取ったが、表情は険しいままだった。

 その様子を見て、キバヤシは少し柔らかい声になる。

 

「……まぁ、気持ちはわかるよ。お前にとっては自分の戦いだったもんな。でもな、これが都市のやり方で、大人のやり方ってもんだ。割り切れとは言わねぇ。ただ──その一億、無駄にすんなよ」

 

 

 

 

 

 キバヤシは契約完了の通知を端末で確認すると、一息ついて椅子に深く座り直した。アキラが黙って端末を見つめるのを横目に、気だるげな口調で続ける。

 

「……さてと、ここからが“裏話”だ。もうちょっとだけ付き合え、お前も気になるだろ?」

 

 アキラは無言のまま視線だけ向ける。キバヤシは頷いて話を始めた。

 

「まず、お前の装備──強化服、銃器、情報端末、それから私物や衣類、全部押収されてる。これはまあ、当然だ。都市側としては、お前が襲撃犯かもしれねぇって線もあったからな」

 

「……疑われてたのか、俺」

 

「当然だ。ヤジマと戦ってたってのは“お前の主張”に過ぎなかった。あいつが死んで、ネリアたちが来た時点で都市は『あれ? この小僧、怪しくね?』って空気だったんだよ」

 

 キバヤシは軽く肩をすくめた。

 

「だが、お前の手柄を裏付ける証言が取れた。──ネリアの供述だ」

 

 アキラの眉が動く。

 

「アイツ、喋ったのか」

 

「ああ。お前がヤジマと戦ってたこと、そいつを倒したあとで自分たちが襲撃したことも。ネリアは──まあ色々アレな奴だが、都市にまで喧嘩売るような真似はしなかったな」

 

 キバヤシの指が端末の画面をなぞる。

 

「おかげでお前の容疑は晴れた。だから今こうして、正式な評価と報酬になったわけだ」

 

 アキラはわずかに息を吐いた。だが、安堵はなかった。

 

「……じゃあ、死後報復プログラムは?」

 

「うん。あれは厄介だったな」

 

 キバヤシは表情を引き締めた。

 

「都市が調査してわかったことだが──あの依頼、都市やオフィスを通してなかった。完全に“個人指定”だ。つまり、ヤジマが死ぬ直前に設定してた条件で、敵対者の中から“お前個人”を狙うようにプログラムが飛ばされた」

 

「都市には報復されないけど、俺だけ狙われる……そういうことか」

 

「そうだ。これは都市にとっても頭の痛い話だが、合法スレスレのギリギリだ。だからこそ、報酬を上乗せして“黙っててくれ”って話になったわけだ。都市としては、この件は“ヤジマの不慮の死”ってことで処理される。遺物の不正流通の話も全部オフレコ。──公には、お前はあくまで『救援に駆け付けて敵を撃退した英雄』って扱いだ」

 

 キバヤシは言い切ると、アキラの目を真正面から見据えた。

 

「だからこその報酬、そして守秘義務だ。……納得できねぇか?」

 

「……納得なんて、してたらとっくに死んでる」

 

 アキラは自嘲気味に笑った。

 

 キバヤシも口角を上げて頷く。

 

「まあな。だが、お前の選択は正しかった。あれだけの戦果を挙げて、ここにこうして生きて帰って来た。しかも、一億オーラムが手元に残った」

 

 アキラは苦笑しつつも、ようやく力なく頷いた。

 

「で、次はどうするんだ? 装備、拠点、拡張……やりたいことは山ほどあるだろ。これからお前がどんな装備を揃えて、何を狙って、どこへ向かうのか──都市も、俺も、ちょっと興味あるからな」

 

 最後にそう付け加え、キバヤシは立ち上がった。

 

「じゃあ、今度こそ行くわ。まあ、せいぜい頑張れ」

 

 肩をすくめて笑うと、キバヤシはようやく病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 ――ベッドの横で微かなノック音。ドアが開くと、白衣の男が影を落とした。長身マッチョ。銀縁メガネ、鋭い双眸。まるで漫画『K2』のドクターK2がそのまま抜け出たような風貌だ。

 

「今のお前に必要なのは退院手続きでも装備でもない。手術だ」ギュツ!!

 

低く凄みのある声。アキラの失われた腕――そして、退院後の無数の課題はここから始まる。

 

 

 

 

 

白衣の男は歩幅を寸分違えずベッド脇へ寄り、インナーポケットからホログラム端末を取り出した。

 「私の名はクラフト・クラッシュ、再生医療科の主任だ――が、肩書などどうでもいい。重要なのは君の右腕、そして生き残る確率だ」ギュッ!!

 

K2じゃなくてC2じゃねぇか!!(craftとcrash)しかも壊すのか治すのかどっちなんだこの医者、錬金術師かよ。

 

 端末が光を散らし、切断面から肩甲部までの三次元モデルが宙に浮く。骨端は丁寧に処理されているが、周囲には微細な金属片と溶断痕。クラフトは指先でモデルを回転させながら淡々と告げた。

 「選択肢は三つだ」

 

1. **即応義手**――24 時間後に退院可。感覚フィードバックは七割。費用 200 万。

2. **遺伝子培養腕**――移植手術 48 時間後。可動域 100%、費用 800 万。

3. **フル再生**――ナノ再構築を併用。手術即日可能、費用 2,100 万。

 

 「さらに〈外骨格アタッチ・ソケット〉を肩部に埋め込むか否か。追加 20 万。もちろん保険は効くが、ハンターのお前は加入していないと聞いている」

 

「フル再生の方が、俺の遺伝子使うヤツですよね。」

 

「そうだ。だが、万全ではない。拒絶反応はゼロではなく、定期的なナノマシン投与が必要になる。保守費用は年間で300〜500万。だが、将来的に高負荷任務を想定するなら、機械義手のほうが合理的な場合もある」

 

 アキラは唸るように天井を見上げた。

 

「……でも、生身の腕のほうが“感じ”はいいんですよね?」

 

「そうだな。触覚も、神経伝達も、君の“本来の体”と限りなく近くなる。ただし、あくまで理論上だ。」

 

 アキラは少しだけ笑って、残った左手で額をこすった。

 

 「遺伝子培養でお願いします。金はかかるけど、やっぱり生身がいいや。」

 アルファが心の中で小さく笑う。『資金繰りを考えたわね』

 

 クラフトは頷き、握手の代わりにアキラの左手首を掴んで脈を測った。

 「明朝 0600 に前処置、0800 オペ開始。午後にはリハビリを叩き込む」

 掴んだままの力は万力のように強く、アキラはわずかに顔をしかめた。

 「一応聞いとくけど、オペはあさってで、前日の昼からオペ後まで絶食ですよね。」

 

 「無論だ、全身麻酔後の挿管で喉に管が通る際に嘔吐反応が発生する。」

 「で、ゲロられたら窒息リスクが高くなるから絶食ですよね。」

 

 「ああ、詳しいな。経験者か?」

 「オペを受ける側ではなかったですけどね。それで、同意書とかは今書けばいいです?」

 

 「無論だ」クラフトは口角をわずかに上げると、ドアを開けて去った。扉が閉まる寸前、看護師に向かって低く指示する声が聞こえた。

 「明後日オペを行う、面会一名だけ通せ。師長には私から伝える、転倒検知を切るな。以上だ」

 

* * *

 

 十数分後、再びノック音。こんどは遠慮がちな二回。

 「……入って」と言うより早く、ドアがそっと開き、金色の長髪が覗いた。

 シェリル――顔色は悪いが、瞳だけが真剣な光を帯びている。

 

 「アキラ……!」

 彼女は駆け寄り、残された左腕を掴むと同時にブレーキをかけた。切断痕を見て、一瞬躊躇する。それでも覚悟を決めたようにベッドに腰を下ろし、そっと抱きついた。

 「生きて……いてくれて、本当に、よかった……」

 嗚咽まじりの声。アキラは照れくささを隠すように左手で彼女の背を叩く。

 「心配してくれてありがとう。――それとネックレス、なくして悪かった。大事にしてたのに…」

 首元を見ると、かつての銀鎖は無い。それでもシェリルは首を振る。

 「私の方こそ……無事ならそれでいいの。また何か買いに行きましょ?何か贈らせてほしいから」

なお、シェリルにとってそのネックレスは自身の男だというマーキングでもあったのは余談である。

 

 

 

 シェリルは息を吐き、アキラの額にそっと額を寄せた。

 「もう少し一緒にいたいんだけど、面会時間も限られてるから。また連絡します。アキラが帰ってくるまで、徒党のことはいつも通り任せてください。ーーーアキラが帰ってくるの、みんな待ってますから。」

 「――ありがとう。頼りにしてる」

 

 看護師が面会終了時間を告げる。

 彼女は名残惜しげに立ち上がり、毛布を直してからドアへ向かった。

 「明日も来るわ。安心してオペ受けてくださいね」

 「おう。帰りは気をつけろよ」

 シェリルが微笑み、アルファが小声で『精神安定、良好ね』と呟く。モニターの心拍が穏やかなリズムを刻んでいた。

 

* * *

 シェリルとの再会の余韻がようやく静まった頃、今度は無遠慮なノック音が響いた。

 

 扉の向こうから、ぞんざいな声が聞こえてくる。

 

「よぉ、もう立ち上がって怒鳴る元気はあるか?」

 

「……キバヤシかよ」

 

 入ってきたのは、相変わらずのスーツ姿に無精髭を生やした男──都市の交渉人、キバヤシだった。彼は見舞いの品と称して栄養ドリンクをアキラの枕元に放り、カツカツと靴音を鳴らしながら近づいてくる。

 

「さて、回復途中ってのはわかってるが、いくつか話を通しておきたい。都市としての対応も含めてな」

 

 

「身分証明書の再発行は終わった。あとは私服と靴、送っといたぞ。……ほかに必要なもん、あるか?」

 

 アキラは端末を受け取ったあと、少し考えてから答えた。

 

「いまのところは思い浮かばないな。ひとまず武器とかの交渉をしようかと思うけど、あと車な」

 

「了解。お前らしいな、さっそく次を見据えていやがる。もっと無茶無謀をしてくれ、そして俺を楽しませろ」

 

「うるせぇ。」

 

「ああ、それと──車両の補充も必要なら都市側から補助が出せる。お前の功績は確かに記録されている。ま、口止め料の中に含まれてると思ってくれ」

 

 そう言い残すと、キバヤシは携帯を耳に当てながら退室していった。

 

アキラは端末を起動し、カツラギの連絡先を呼び出した。すぐにあの鼻にかかった声がスピーカー越しに響いてくる。

 

「おう、アキラじゃねぇか! 死んでなくてなによりだ。シェリルさんから聞いてるぜ?病院暮らししてるって、かなり心配してたぞ」

 

「それな。で、いま全装備ロストしてんだ。悪いけど、ひとまず見積もり組んでくれ。7000万以内で、強化服、CWH対物突撃銃、A2Dライフル(俺用にカスタム済み)、あとは車両と端末、弾薬、ワイヤーガンも。細かい雑費も込みで頼む」

 

「へいへい、任されたよ。お前が帰ってきたらすぐ動けるようにしとくぜ。ついでに例のサイドバッグ付きの車両も取り寄せとくか?」

 

「頼む。信頼性優先でな」

(・・・一応シズカさんにも連絡して相見積もりとっとくか)

その後アキラは同条件でシズカにも声を掛けておいた。

 

 

 

 

 

 

 夜半、病室の天井を眺めながらアキラは考える。

 ――強化服、車両、銃、消耗品、端末…入用が多いな

 残金 2000万以上で当面の遠征費を確保したい。

 「オーラム…足りるか?……いや、足りさせる」

 

 アルファが応える。

 『未知遺跡の捜索ルート、いくつか候補を置いておくわ。退院後すぐに確認してね』

 「了解。」

 

 深夜零時、点滴が落ち切り、室内灯が自動で減光する。

 “未知の遺跡で稼いで、装備を拡張し、もう一度先を目指す”――脳裏に描いた計画を反芻しながら、アキラは静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オペ室は、無機質な白と青の照明が交錯する無音の世界だった。

 

 術前麻酔の効き目が回り、アキラは朦朧とした意識の中、天井の照明を見上げていた。

 

 

「……準備はいいな、アキラくん」

 

 声を掛けてくる凄まじい迫力の医者。白衣の裾を翻し、鋭い目つきにギラリと光る。何も知らずに出会えば、半グレの幹部か、街の裏側を仕切る重鎮のようにも見える。

 

「い、いつ見ても風格あるよな、先生……K2みたいだ……」

 

 アキラがぼそりと呟くと、医者は鋭く眉を動かした。

 

「……K2? 知らんがな」

 

 短く返すと、手袋を嵌め、カチャリとメスを掲げる。

 

「今回の移植は、君の遺伝子をもとに再生された腕だ。理論上は完全互換。だが、痛みも拒絶も、一切を見越して手術するのが我々の仕事だ。……それを忘れるな」

 

 ──ギュッ。

 

 肩に手を置かれたアキラは、思わず背筋を伸ばした。

 

「今のお前に必要なのは、感謝ではない。治療が必要なのだ!」

 

(……なんか聞いたことあるセリフだな)

 

 そのまま意識は途切れ、世界が白く染まっていった──。

 

 

 

 *

 

 

 

 次に目を覚ました時、アキラは病室に戻されていた。

 

 左肩から先には、見慣れた色の肌。神経接続の違和感もなく、五本の指が微かに動く。

 

「……戻ってきたか」

 

 そっと拳を握ってみる。問題なく動いた。アルファのサポートがなくても、すぐに戦闘に復帰できるだろうという感触。

 

 そして、ドアが開く。

 

 例の医者が、まるで仁王像のように仁王立ちしている。

 

「ふむ、起きたか。──これを渡しておく」

 

 そう言って彼が差し出してきたのは、手術で使ったと思しきメス一本。消毒済みとはいえ、光を反射する刃が不気味に光る。

 

「これは今回、お前の命を救った一本だ。次の手術の時も、俺がこれを使ってやろう。……縁起物だからな」

 

 言い終えるや、彼は無言で踵を返し去っていった。

 

「……え、えぇ……?」

 

 唖然としたままメスを見つめていると、後から入ってきた看護師がこっそり囁いた。

 

「先生、毎回ああ言うんですけどね。次の手術で持って行っても『不潔だから使わない』って言うんです」

 

「……なんじゃそりゃ」

 

 思わず脱力するアキラだった。

 

 

 

 *

夕刻。病室の照明がほんのりと橙色に染まり、窓の外の都市灯がにじむ時間帯だった。シェリルが外出している間、アキラはベッドに背を預けて端末の画面をスクロールしていた。カツラギとシズカの見積もりが既に届き、最終的な装備調達のプランも固まりつつある。

 

 そんな時──

 

 コンコン。

 

「失礼しますー……アキラくん、起きてる?」

 

 扉の隙間から、エレナの声が優しく響いた。サラを引き連れて、ひょっこり顔を覗かせている。

 

「ちゃんと両腕ある?って治療済みか、残念。」

 

「おいコラ」

 

 アキラが半眼で睨むと、エレナが慌てて手を叩いた。

 

「ちょっとサラ、フォローになってないっての! ……アキラ、大丈夫だった? 本当に心配したよ。シェリルさんから通信で連絡は受けてたけど、病院とか腕なくなったって聞いて、さすがに冷や汗出たから……」

 

「まぁな。けっこうやばかった。それでエレナさんたちは基地の任務中ですよね?忙しいのに来てくれて助かります」

 

 アキラが笑うと、エレナは安心したように小さく息を吐いて、ベッドの横に腰かけた。

 

「まぁ仕事終わりだから心配しなくていいわ。あ、シャワーは浴びてきたから臭くないはずよ」

 

「いつもいい匂いなんで安心してください。」

 

「いつも通りの軽口ができるようで安心したわ」

 

 そう言ったエレナの目に、アキラはその視線を避けるように、視線を窓の外へ逸らす。

 

「こんな怪我これからも多いでしょうし、気にしすぎず頑張りますよ」

 

「まぁハンター業なんてそんなものだからね」

 

 サラが強く言い切る。

 

 それから数分、三人はたわいない雑談を交わした。戦場の愚痴、遺物の売却先の話。時間は緩やかに、静かに流れていった。

 

 

 

「生きて帰ってきた。それだけで、儲けもの――よアキラ。お疲れ様、私たちも明日のことがあるから失礼するわね」

 

 アキラの言葉に二人が立ち上がり、それぞれに別れの言葉をかけた。

 

「退院したら、また一緒に依頼行こうね」

 

「復帰祝い、私がご馳走する!」

 

「期待しとくわ」

 

 アキラは笑って、軽く手を振った。

 

 

 

 扉が閉まると、病室は再び静寂に包まれた。だが、空気は確かに少しだけ柔らかくなっていた。

 

 

 

 

 

 翌朝、退院。

 

 手続きはすべて都市が代理で処理しており、請求書の類はアキラの手元には届かなかった。

 

 ただ一枚だけ、医師からの手紙と共に置かれていた付箋がある。

 

 

 

 >【担当医:クラフト医師】

 >「お前の腕は完璧に仕上げておいた。壊すなよ。あとメスは大事に持っていけ、お大事にな」

 

 

 

「悪い人ではないんだよなぁ……」

 

 前世で出会ってきた多くの医者の中でも割と上位にランクインするドクターKもどき。もちろん善性のDrとおかしなDrの上位に入る。

 

 

 

 

 

 病院の自動ドアが静かに開いた。

 

荷物を肩にかけたアキラが外へ踏み出す。

 

 そして、門の脇に立つ一人の少女の姿に気づく。

 

 小柄な体をきゅっと縮めるようにして、両手を胸の前で組み、じっとこちらを見つめている。スラム時代のボロではない、都市でも浮かない控えめなワンピース姿。その姿を見ただけで、アキラの頬が少し緩んだ。

 

「……シェリルごめん、待った?」

 

 名前を呼ぶと、少女の肩がピクリと震えた。

 

 次の瞬間、シェリルは駆け寄ってきて、アキラの胸に飛び込むように抱きついた。

 

「……ばかっ」

 

 声は震えていた。泣いているのかと見下ろせば、目元をきゅっと引き結んで、必死に涙をこらえていた。

 

 アキラはそっとその背中を抱き返す。

 

「待たせた。けど……ちゃんと戻ってきた」

 

 それだけ呟くと、シェリルはふるふると首を振り、アキラの胸元に顔をうずめた。

 

「……戻ってきてくれて、ありがとう。でももう、あんな無茶しないでよ」

 

「あー……うん。考えとく」

 

 心配をかけたことは自覚していた。だが、それでも危険に飛び込むしかない時がある──そんな想いが喉まで出かけて、アキラは飲み込んだ。

 

 今は、無事に帰れたことだけを伝えるべきだ。

 

 互いの体温が確かに存在を伝え合うように、しばらく二人は言葉なく抱きしめ合っていた。

 

 

 

 




シェリル「だってよ!アキラ!腕が!!!」
アキラ「腕の一本くらい、安いもんだ」

読了感謝です。
8/9からバトルフィールド6のオープンベータがあるので友人とがっつりやる予定です。

さて今回のお話で大きな原作との相違点ですが
1:片腕欠損なので治療費が原作以上
2:さらに原作以上にボロボロなので治療費が増える
3:ネリアとヤジマの捕獲で割と評価されてる。
4:ヤジマの件はすでに広がってるのでこれ以上広めるなという暗黙の高額口止め料
5:謎の医者ドクターK、ブラックジャック先生は当直明けで休み
6:原作ほど手取り多くない(原作1億、今作9000万)
7:原作アキラのような、装備費に全ぶっぱしないので装備費が控えめ(原作8000万、今作7000万)

等が挙げられます

この設定で取りあえず今後展開できると結論づけれたのでこのようになりました。

追記
Fate作品まともにやってるのFGOだけですね(FGOをfate作品に含むと怒られそうですが)
fatezeroや、fatesnは視聴済みです。あとプリヤも見てます。なんなら一番好きなのプリヤです、美遊かわいいですよね。雪華の誓いみて号泣しましたもん。FGOで美遊狙ったのに、その前にイリヤが凸れたのはいい思い出です。
そういえば月姫も触ってるんですけど、月姫はfate作品に入るんですかね。あいにくプレイしたのはPS4のリメイク版なので旧作はプレイしてないですけど…
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