Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る 作:ロシュ
今回少し短めです。そしてカツヤまで書ききれませんでした。
久しぶりにRustやってたら永遠にしてました。
また今回アインス、ツヴァイ、ドライというモブが登場しますが。今回のカツヤ救出作戦でしか出てこないので覚えなくて問題ないです。
アインス──無口で無骨。分厚い前腕と落ち着いた呼吸で、狭路の突破と“守り”を一手に引き受ける前衛。倒れた扉やパネルを即席の盾に変えるのが早く、手信号だけで意思疎通を済ませるタイプ。(役割:前衛/盾)
ツヴァイ──痩せ型の現実主義者。射撃のリズムと声量を管理して隊の“タイミング”を整える、いわばテンポメーカー。制圧射撃と弾薬管理、状況報告の要約が得意で、運転や簡易整備もそつがない。(役割:制圧/テンポ管理)
ドライ──若いお調子者。軽口で緊張を誤魔化すが、指示が落ちれば手は早い。足が軽く回収・搬出に強い反面、目移りしがちで拾い物に釣られやすいのが玉に瑕。だが肝心な場面では列を乱さない。(役割:機動/回収・補助)
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地下へ降りる階段は、湿気と錆の匂いで喉にざらついた。崩れた案内板には「ヨノズカ駅」の文字。先頭のシカラベが手首を一度回して合図を出す。アインスとツヴァイが前衛、殿がアキラとドライ。
靴底が砕けたタイルを踏む音、装備の擦れる乾いた音だけが、やたらと遠くまで伸びていく。
アキラとシカラベ達は遺跡に入って行く。
シカラベの連れてきたハンター達はアキラよりハンターランクは高く、シカラベよりは低いが十二分に戦える戦力であった。
「なんか静かですね~。遺跡の中にはモンスターもいないし、荒野とはえらい違いだ」
「ああ、荒野のモンスターは軒並み若手ドランカムが受け持ってくれてんのかもな」
「とはいえモンスターが潜んでいる可能性も捨てきれない。各自警戒を怠るな」
シカラベの指示に寡黙なアインス
「(短く頷く)」
お調子者のドライが反応
「了解、でもせめて一山当てたいっすね」
この3人の中ではまともな方のツヴァイ
「余計なこと言うな、神経が苛立つ」
「みんなも頑張ってるし、俺も頑張らないと〜」
と無駄なおしゃべりをしつつも、アキラ達は遺物収集を行っている。
「しっかし不気味なほど静かだ。今にも遺跡が動いてもおかしくなさそうだな」
「そりゃ困るぜ! なにしろ今日は風俗嬢のラビーちゃんとデートの約束なんだ! 俺、この戦いが終わったら……」
『いつもボケてる俺がツッコミに入るのもアレだけど、まぁ元気そうで何よりだな』
『まぁそうね、別に優しく仲良くする必要もあるわけでもないし、うまくやればいいと思うわ』
『きち〜笑』
『ただ、いままでモンスターがいなかったから今後絶対に出てこないっていう先入観はしないほうがいいわよ?』
アルファの低い声に、アキラは安全装を一段上げ、頬付けを浅く、銃口は低く保った。
瓦礫の隙間から基板の欠片やカードキーの殻が覗く。ドライが伸ばした手を、シカラベが指一本で制する。
「これは高そうだ!!」
「値踏みは戻ってからだ。今は索敵優先だ、持って帰れなきゃ意味がない」
アキラがインスタントヌードルらしきものを発見し手に取る。
「これは、『あなたもチャージ研しよう! 魔改造ヌードルカップ』? 変な名前だな、こんなのを作る博士は狂ってる……ん?」
最初に変わったのは空気の圧だった。天井の暗い箱が一つ、二つ、明滅し、死んでいた非常灯が順繰りに息を吹き返す。遅れて、遥か上から地鳴りのような唸り。獣臭と土埃が背中を撫でた。
『アキラ気を付けて、どうやらモンスターの群れが駅内に侵入したみたい』
「チッ……撤収だ。戻るぞ!」
シカラベの声で隊列が反転。走りに切り替え、踊り場に差し掛かった瞬間、鋼の悲鳴を上げて非常シャッターが落ち切る。
「切るか?」
「時間を食う。音もデカいしモンスターが寄ってくるぞ」
ツヴァイが即答し、手のひらを下げて声量を抑えるよう示す。
シカラベたちはその後移動し、別の最寄りの非常出口を目指した。
しかしそこには別のハンター達が群生に絡め取られて乱戦の渦だった。
飛び散る薬莢と血と肉、甲高い悲鳴。
「突っ込めば共倒れだ。別ルートで上へ抜ける。走れ。足、止めるな」
その後もアキラ達は他の出入り口に向かうが、どこもかしこもモンスターが溢れており、地上に戻らず一旦遺跡の奥に戻りつつ撤退戦を行うことにした。
そしてアキラ達が体力的に底が見えてきたため、頑丈なシャッターが降りている店内で籠城することにした。
「とりあえず3時間ほど休もう。その間に敵も減るだろう」
「その分ハンターも減りそうだな」
ツヴァイが呑気に言う。
「すまん、今のうちに仮眠していいか?」
「こんな時にも寝れるのか、さすがだな」
ドライが言う。
そうしてアキラは眠りについた。起きたのは5時間後だった。
アキラは謝るが、その間にシカラベ達も交代で休憩をとりつつ、どう撤退するかを話し合っていたらしい。
「それで、どうするんですか?」
「単純だ、強引に突っ切って地上に戻る」
「ちなみに考えたのは俺!」
ツヴァイが笑う。
「とはいえ力を合わせて一気に逃げるのが生存確率が高い。まだ俺たちが5体満足の内にな」
『アルファ、どう思う?』
『そうね、5人全員が無事生き残るにはこの手に限るわね。ただアキラ一人の生還だと、今この場で逃げだして私の指示に全て従えば余裕で帰れるわよ』
『なるほど、まだ絶望するには早いって事か』
「シカラベ、わかった。俺もその案賛成する」
「よし決まりだな。あと10分後に出発する、全員準備を済ませろ」
「「「「おう」」」」
その後アキラ達は時間通りに、そこから抜け出した。
低天井の保守通路に折れたところで、微かな擦過音。アキラは掌を立てて停止合図、壁際へ身を貼りつける。息を一拍飲み込むほどの暗さの中、影が一つ、壁に片手を預けて姿を現した。もう片方の腕は負傷しているのか庇いながら動く。顔色は蒼白、息は浅い。
「……ユミナ?」
呼ばれた少女は目を見開き、膝が落ちかけても銃だけは離さない。
「……お願い助けて」
掠れた声がやっとのことで音になる。
「下に、みんなが、カツヤがいるの。突然、モンスターの大群に襲われて……。私は上へ行って救援を呼ぶって言ったけど、他の子は下に戻るって……途中でシャッターが降りて取り残されて、よくわからない球体みたいなロボットとの戦いで手首をやった……でも、呼ばなきゃ。下のみんなが——」
「カツヤ、だと?」
シカラベが舌打ちし、露骨に顔を歪めた。
「最悪の名を出しやがった。ガキに銃持たせて講釈垂れる英雄気取り、下手な爆弾を抱えたもんだ」
ユミナは怯まず首を振る。
「彼はそんな人じゃない。あの人は仲間を見捨てない。今は下で休んでる、はず……だから私が上から道を開けるの」
アキラは腰のポーチから回復薬をためらいなく差し出した。
「とりあえず飲めよ、手ェ痛めてんだろ」
「いや、これ高い回復薬よね。受け取れないわ」
「人命より高いもんなんてねぇよ。まずは生き残るのが先だ」
ユミナは一瞬の逡巡を飲み込み、唇を結んでから一気に流し込む。甘い薬臭が通路に漂い、皮膚の突っ張りが引くように表情がほどけていった。腫脹は目に見えて退き、指先が震えずに握れる。手首の固定布を外し、握り直した銃が、もうブレない。
「——かなり効くわね。ありがとう、アキラ」
「——下へは行かねぇぞ」
シカラベが吐き捨てた。低い声だが、刃が立っている。
「ここを開けたら上に抜ける。救援は外に任せりゃいい。カツヤに関わるのはごめんだ」
ユミナの喉がかすかに鳴る。アインスは無言で正面を押さえ、ドライは息を潜めて壁に背を預けた。
アキラはシカラベの横に立ち、視線だけを前に置いたまま口を開く。
「助けに行くんじゃない。使うんだ」
「は?」
「下で火力がもうひとつ動いてれば、俺たちの背中の圧が薄くなる。入口から押されてる限り、上だけ目指しても後ろから噛みつかれる。数がいる。噛み合う場所じゃ、特に」
シカラベは舌打ちし、肩を揺らす。
「その“もうひとつ”がカツヤだってのが最悪だ。あいつは現場を掻き回す。連れて歩きたくねぇ」
「連れて歩く必要はない。カツヤには勝手に動いてもらって、タイミングだけ合わせる。俺たちは上から動く。向こうは下で突破をかける。互いに敵を分散させれば、群れの圧は割れるだろ」
ツヴァイが短く口を挟む。
「理屈は通る。流れが、群れが二つに割れれば、逃げ切れるかもしれん」
シカラベは眉間を押さえた。
「理屈で死体は軽くならねぇ」
「だが重い腰は軽くなるぞ」
アキラは続けた。
「ユミナは下のルートを知ってる。案内役がいる分、時間のロスは少ない。シカラベの嫌う“迷走”はしない」
ユミナは息を呑み、すぐに頷く。
「私が案内します。命令も聞きます、勝手な事はしません」
「それとな」
アキラはシカラベを見ずに言う。
「ここで切り捨てたら、ドランカムとしてもカツヤを失うことになる。それはドランカムとしての損失じゃないか?」
ユミナがわずかに目を伏せ、再び前を向いた。シカラベは沈黙する。
「借りの話もある」
アキラは淡々と続けた。
「少なくともカツヤはまだ義理堅いだろ。こっちから借りを作れば、何かしら俺たちの利益になる」
「情と金の両建てかよ」
シカラベが鼻で笑う。
「嫌いじゃねぇ提案だが、相手がカツヤだ」
アキラは一拍だけ間を置いた。
「じゃあ条件を出せ。呑める範囲で乗るだろ、ユミナが」
ユミナが「え? 私?!」という顔をする。
シカラベの目が横目でアキラを射る。
「一つ。アキラが前に出ろ。危ない橋は全部お前が渡れ」
「ああ」
「二つ。お前が死にかけたら切る。判断は俺がする」
「お、う」
「三つ。合流しても指揮は取らねぇ。通路を開けるだけだ。向こうが勝手をすれば、その瞬間に切る」
「か、かなり条件がきついけど……わかった。正直危なくなったら俺も逃げるし。——タイミングだけ合わせれば十分だ」
ツヴァイが情報端末から顔を上げる。
「決まりだな。結局シカラベ、お前も甘いなぁー」
シカラベは短く笑い、舌打ちで打ち消した。
「クソ。……わかったよ。状況を動かせなきゃ切る」
「十分だ」
「ユミナ」
シカラベが彼女に視線を投げる。
「勝手な事をするな。わかったな?」
「はい」
アインスが入口から手信号を送る。接近。
シカラベは呼吸を一つ整え、隊列を切り替えた。
「先行、俺とアキラ。中列ツヴァイ。後列ユミナ、アインス、ドライ。——下へ降りる。騒ぐな、殺して通れ」
アキラは頷き、ユミナと目を合わせる。彼女の瞳は揺れていない。
背後では、まだ獣のうねりが続いていた。上では機械の目がきらめく。
その狭間で、彼らは一歩、下へと踏み出した。
『右後方、低いのが二。床を這って接近。左側方、換気ダクトから微小個体一』
「右、やるわ」
ユミナが遮蔽から銃口だけを出し、乾いた二発で這い寄る影を止める。肩は沈まず、視線は揺れない。
「左は俺が払う」
アキラが短点射でダクト口を叩き、飛び出す前に引っ込めた。
「背面三、距離十五」
アキラが冷たく告げ、角待ちで短いフルオートを流し込む。弾の切れ際で呼吸を一つ置き、即座にマガジンを交換。
金属の匂いと獣のうねりを背に、短い合図が重なる。アキラとシカラベが道を押し開き、ツヴァイがリズムを刻み、アインスとユミナが背後を刈り込む。開くべき扉、通すべき道、その先に待つのは若き隊長──カツヤ。
そうして一行は、カツヤの元へ向かった。
読了感謝です。
次は曇りまくったカツヤ君をかけるはずです。