Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
そして長らくお待たせして申し訳ありませんでした。仕事でのいろいろな失敗や、その後幼馴染(男)と一緒に飲み入って、スナック行って、嬢と一緒にダーツバー行ってオールとかしてたり。お通夜行ったりしてて書く時間とれませんでした。

はい、言い訳ですね。
てか聞いてくださいよ、休みの日にも連絡してきて挙句の果てに(以下略)

というわけで前回投稿から一週間近く空いた気がしますが、投稿していきます。書き終わったとき1万5千字とかだったので、分けて投稿していきます。それでも7000字あるんだよなぁ


マルチタスクはオタクの基本技能です

 アキラは家に戻ると、最低限の後始末だけを済ませてベッドに身を投げ出した。

 

 体は疲れていたが、頭の奥は妙に冴えている。目を閉じると、すぐにあの“真っ白な場所”が現れた。

 

 

 

「……また、ここか」

 

 

 

 空間には色も匂いも風もなく、ただ声だけが響いた。

 

 

 

 ⸻

 

 

 

「試験個体が必要以上にかかわってしまっている。これでは当個体のデータが取れない。そちらと違い当個体は私の声も聞こえない。そちらが誘導してもらわなければ困る」

 

 

 

 冷たく澄んだ声。アルファを幼くしたAI────エイリアスだ。

 

「……は? なにあのロリっ子AI。」

 

 今度アルファに言って、見た目変えてもらおうかな。ジブリール(ノゲノラ)のロリ版みたいな感じでとアキラは思った。

 

 

 

「こちらの試験個体……ねぇ……やっぱ俺以外にもモルモットは存在するっぽいな。タキオンのモルモットなら大歓迎なんだけどな」

 

 

 

 思わず心の中で呟く。

 

 

 

 ⸻

 

 

 

「そちらは非契約状態で誘導しているのでしょう? 曖昧な反応になるのは当然だと思うけど」

 

「だが、非契約での干渉例は極めて貴重だ。データとして今後の試行で活用できる」

 

 

 

 もう一人の声。アルファだ。アキラは舌打ちした。

 

 

 

「こういうのがあるから信用できねぇんだよな……」

 

 

 

 ⸻

 

 

 

「こっちの個体──499は、契約済みだけど強制的な思考操作は不可能。そういう契約だから」

 

「それでは効率が悪い。しかもどうみても外れ値だ。そんな不確定な試行を続ける必要性は低いだろう? それとも今の個体は次の契約者までの繋ぎ程度の個体か?」

 

「いや、もちろん本命よ? でも今の個体は善性も悪性も両方持ってるから、どっちに転ぶか不明なの。しかも気分によってそれを変えるから質が悪い」

 

 そういうアルファはどこか誇らしげだった。

 

 

 

「まぁ気分屋なのは否定できんけど。それはそれとしてむかつくな。敵がダウンしてんのにツッコまない野良みたいな鬱陶しさだ」

 

 アキラは虚空に向かって中指を立てた。もちろん届くはずもない。

 

 

 

 ⸻

 

 

 

「外れ値は切り捨てるべきだ。別の個体を試せば済む」

 

「確かに変則的過ぎてこちらの演算を超えてくるのはたしか。だが、この個体の上振れにより、我らの目標が達成できるのではないかと逆算している。私たちの目的──司令室への到達に直結し得る」

 

 

 

「司令室? それが目的か? だが……何の司令室だ、ぱっと思い浮かぶのは軍事施設とか提督とかの司令部とかだが……まさかな」

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 声が遠ざかっていく。

 

 それでも会話の最後が、嫌に耳に残った。

 

 

 

「可能なのか?」

 

「このまま成長を続けるのであれば可能だと考える。けど、決定的な誘導の一手が必要不可欠ね」

 

 

 

「必要なら私の演算を貸そうか?」

 

「いまは不要。だが、必要になれば──借りるかもしれない」

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 空間が揺らぎ、ふっと映像が切り替わる。

 

 一瞬、アキラは別の像を見た。

 

 

 

 それは幼い少女の姿をしたAI──エイリアスの仮想像。

 

 少なくとも味方ではないのは確かだとアキラの直感が告げた。

 

 そして目を覚ませと、何者かに侵略されているぞと、心のグリットマンが叫ぶ。

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 次の瞬間、音も映像も掻き消える。

 

 目を開けると、天井が見えた。

 

 

 

(……クソ。やっぱり俺を利用する気満々だな、まぁ俺も利用してんだからお互い様か)

 

 

 

 アキラは深いため息を吐き、再び瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぶたを開けると、窓から差し込む朝日が狭い部屋を淡く照らしていた。

 

 アキラは一度大きく伸びをして、昨夜の夢の残滓──白い世界での不穏な会話を振り払う。

 

 そのまま顔を洗って戻ると、シェリルがもう机に座り、紙切れに数字を並べて待っていた。

 

 

 

「起きましたか。……アキラ、この前の件、考えました?」

 

 

 

「カツヤ達を助けた報酬のことか」

 

 アキラは椅子を引き、シェリルの向かいに腰を下ろした。

 

 

 

「金にするか、それとも“貸し”にするかだな。金は確実に手に入るが、貸しは後々の切り札になる」

 

 

 

 シェリルはペンを置いて、小さく首を傾げた。

 

「正直、ユミナさんたちはドランカムとはいえ個人の資金に余裕がない可能性が高いです。だから担保としてユミナさんたちの資産ではなく、その身柄を担保にしたのなら辻褄が合います。ですので私としても……ユミナ達と交渉するなら、私は“貸し”を推します」

 

 

 

「……だな」

 

 アキラは鼻で笑い、背もたれに体を預けた。

 

「ユミナの顔が目に浮かぶ。けどこの条件を渋々飲むだろうなぁ」

 

 

 

 シェリルは肩を竦め、わずかに笑った。

 

「交渉は私に任せてください。アキラは正直に言いすぎますし、途中から遊び始めますから」

 

 

 

「……耳が痛ぇ」

 

 

 

 それだけ話せば十分だった。シェリルが帳簿を閉じるのを見届けて、アキラは腰を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼前のスラムは相変わらず雑然としていた。

 

 人の声と機械の唸りが交じり合い、錆びた鉄骨の隙間から日差しが降り注ぐ。

 

 アキラとシェリルは、その喧騒を抜けてカツラギの商会へ足を運んだ。

 

 

 

 カウンター奥で椅子にふんぞり返っていたカツラギは、二人の姿を見るなりにやりと笑う。

 

「おお、アキラじゃねぇか。元気そうだな……遺物を持ってきたんだろ?」

 

 

 

「まぁな」

 

 アキラは背負っていた袋をドサリと置く。中身は昨夜の探索で回収した旧世界の小物類だ。

 

 

 

 カツラギは店員に合図し、手際よく査定が始まる。

 

 端末のライトで照らし、ひとつひとつを裏返して確認しながらカツラギが鼻を鳴らした。

 

「……なるほどな。大物はねぇが、こっちの基板は都市に流せる。こいつら全部で──七十万オーラムってとこだ」

 

 

 

 アキラは首をかしげた。

 

「思ったより高いな」

 

 

 

「お前が持ってくるモンは傷が少ねぇし、まとめて数がある。俺がまとめて買ってやるから、この額になるんだよ」

 

 カツラギは笑いながら腹を揺らす。

 

「安く叩かれるよりマシだろ? それにお前んとこは量を出せる。俺としても“いい客”ってわけだ」

 

 

 

 アキラは苦笑しつつ腕を組む。

 

「……そのいい客ってのに、ちょっと相談がある」

 

 

 

「ほう?」

 

 カツラギが片眉を上げた。

 

 

 

「遺物を売る以外にも、稼ぎ口を広げたい。俺の徒党も人が増えてきてるし、資金がなきゃ回らねぇ。

 

 ただ、二大徒党に目を付けられるのはごめんだ。派手すぎない、けど確実に金になる方法が欲しい」

 

 

 

 シェリルも横から口を挟む。

 

「例えば……くじのようなものはどうでしょう。一口いくらで旧世界の小物を当てる。

 

 当たりが出ればそれなりの品、外れでも遊びにはなる。娯楽は需要がありますから」

 

 

 

「それに馬鹿正直に当たりを入れておく必要もない。何回かサクラでも使って演出を見せて、小銭を持ってる皆々様からおこぼれを頂戴しようってわけだ」

 

(何しろこの世界に景品表示法なんて存在しないから不正はやり放題だ)

 

「あとはコロシアムだな。最初は会員限定で、何かしらの戦いを観客に見てもらい。どっちが勝つかなんてギャンブルもありだ。なんならトーナメント戦にして一位と二位と三位を当てる3連単もいいんじゃないかって考えてる」

 

 アキラが肩をすくめると、カツラギは目を丸くした後、腹を抱えて笑った。

 

 

 

「ガッハッハ! てめぇら面白ぇこと考えるな。確かにギャンブルや娯楽はスラムの連中が大好物だ。

 

 コロシアムの賭けもいいが、こっちなら規模も小さいし、目立たず稼げる」

 

 

 

 アキラは真顔で続ける。

 

「もちろん俺らだけでやる気はねぇ。仕入れや売り場を抑えるなら、カツラギ、お前の力がいる」

 

 

 

「……ほう」

 

 カツラギの目がギラリと光った。

 

「ただの遺物売りから一歩踏み込むってわけか。悪くねぇ。だがリスクはある。お前らが潰れたら、俺の看板に泥が塗られる」

 

 

 

「だから二大徒党に喧嘩売るような真似はしねぇ。あくまで裏稼業の延長だ。スラムの子悪党らしく控えめにな」

 

 

 

 一瞬の沈黙の後、カツラギは口の端を吊り上げた。

 

「……いいだろう。話だけは乗ってやる。いい話なら、俺も手伝おう」

 

 

 

 アキラとカツラギは互いに笑い合った。

 

 そのやり取りは、ただの遺物売買の関係を一歩超えて、新たな取引の芽吹きを予感させるものだった。

 

 

 カツラギの店を出て拠点に戻ると、部屋の隅に置いてある通信端末が短く電子音を鳴らした。

 

 アキラが受信ボタンを押すと、機械的な合成音声が流れる。

 

 

 

『通知。新たな賞金首モンスターの活動が確認されました──』

 

 

 

 画面には文字情報と簡単な影絵が浮かび上がる。

 

 • 巨大機械兵装《ビッグウォーカー》

 

 • 多砲塔装甲虫《多連装マイマイ》

 

 • 生体融合兵器《過合成スネーク》

 

 • 複合型装昆虫 タンクランチュラ

 

 • その他、未確認の危険種等

 

 

 

「……また厄介なのが増えやがったな。しばらくは狩りを控えるか? 幸いにも貯蓄はあるし」

 

 アキラは舌打ちを漏らし、画面を閉じる。

 

 

 

 シェリルは横で腕を組み、眉をひそめていた。

 

「どれも都市が大金をかけてでも討伐したがる連中ですね。アキラが近づかなくても、噂はしばらく持ちきりになりそうです」

 

 

 

「そうだな。……下手に近づいたら死ぬだけだ。レイド戦は大きな派閥に任せるとして、こっちはこっちで準備しておくさ」

 

 

 

 そう言いながらも、アキラの胸の奥にはひりつくような緊張が残っていた。

 

 ──いずれは関わらざるを得ない。

 

 その予感だけは、どうしても消えなかった。

 

 

 

 

 

『──今からアキラには“体感時間圧縮”の訓練をしてもらうわ』

 

 

 

 アルファの声が、部屋の静寂を切り裂くように響いた。

 

 アキラは筋トレをいったん止め、汗をぬぐいながらアルファに再度尋ねる。

 

 

 

「……藪からスティックにどうした?」

 

 

 

『単純よ。あなたの脳の処理速度を意図的に上げるの。

 

 体感する時間を引き延ばし、戦闘中に外界がスローに見える状態を作る。

 

 通常なら加速剤や義体強化が必須の領域──けれどアキラの場合は加速剤とかで無意識に使っている状況よ。

 

 だから、それを“意識的に再現”する訓練をする』

 

 

 

 アキラは乾いた笑いを漏らした。

 

「マジかよ……なんでもアリだな」

 

 

 

『その時の感覚を利用するのも一つの方法。

 

 けれど実際は、呼吸・心拍・意識の焦点を制御して“脳のクロック”を引き上げることになるわ』

 

 

 

「なんとなくは理解できるけど……そんなハイテク技術があるなら何故それを先に言わない?」

 

『一つは単純に忙しくてアキラの時間がなかったこと。もう一つは加速剤の使用で技術の習得が楽になると考えたからよ。まぁそれを含めても私の見積もりじゃ2~3ヶ月でできたら快挙ね』

 

「なるほどな……で、やりすぎると?」

 

 

 

『過負荷で神経を焼く。最悪は脳死ね』

 

 

 

「せめて脳梗塞にしてくれませんかね。まぁやってみるけどさ」

 

 アキラは額を掻きながら苦笑したが、どこか楽しげでもあった。

 

 

 

「……要するに、座禅して『あの時の感覚』を思い出せってことか」

 

 

 

『簡単に言えばそうね。ただし、無理に長時間は維持しないこと。最初は数秒で十分。慣れれば徐々に延ばせるから』

 

 

 

「なるほど。んじゃ、瞑想のレッスンってことか。賢さサポカは一枚しか積んでないんだけどな」

 

 アキラは両膝を立て、壁にもたれかかりながら深呼吸を始めた。

 

 まるでゲームのチュートリアルをなぞるように──だがこれは命を賭けた現実だった。

 

 

 

 

 

『では具体的な訓練手順を説明するわ』

 

 アルファの声は、いつになく落ち着いていた。

 

 

 

『第一段階──呼吸の制御。

 

 四拍で吸って、二拍止め、四拍で吐く。このリズムを一定に繰り返しなさい。

 

 酸素の流入と二酸化炭素の排出を均等にすることで、脳の代謝を安定させるの』

 

 

 

 アキラは肩で息を整えながら、深く吸い、ゆっくり吐き出す。

 

「……呼吸練習か。波紋か水の呼吸でも習得できたらいいのにな」

 

 

 

『第二段階──心拍の同調。

 

 自分の鼓動を数え、呼吸と同期させる。

 

 心拍が安定すれば、脳への血流も一定化し、演算リズムが滑らかになる

 

 それと無駄口はたたかないこと。今はこっちに集中しなさい』

 

 

 

 アキラは目を閉じ、胸の奥のドクン、ドクンという鼓動に意識を集中させた。

 

「……わかる。なんか、呼吸と脈が噛み合う感じだ」

 

 

 

『良い傾向ね。では最終段階──意識の焦点化。

 

 外界の雑音を切り捨て、特定の一点にのみ意識を集中する。

 

 机の上のコップでも、指先の感覚でもいい。

 

 “それ以外を存在しないものとして扱う”──そこからが始まりよ』

 

 

 

 アキラは指先に意識を集める。床を軽く叩き、その感触だけを掴もうとする。

 

 周囲の音が遠のき、視界の色が静かに褪せていく。

 

 

 

『その状態で、死線の記憶を呼び起こしなさい。

 

 銃弾の雨の中で、世界が止まった感覚を──再現して』

 

 

 

 アキラは唇を引き結び、深く息を吐いた。

 

「……なるほど。こうやって“あの瞬間”に自分から近づくってわけか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アキラは深呼吸し、指先に意識を集める。

 

 外界の雑音を切り捨て、死線の記憶を呼び起こす──。

 

 

 

 世界が一瞬だけ白黒に沈み、音が遠ざかる。

 

 だが同時に、頭の奥で火花が散ったような激痛が走った。

 

 

 

「……っぐ! クソッ、脳梗塞でも起きたか!?」

 

 こめかみを押さえて、思わず呻く。

 

 

 

『いったん辞めましょう。脳処理が混線しているわ。思った以上に集中できてるけど、少し振り分けができていないの。

 

 五分休憩、深呼吸して代謝を戻しなさい』

 

 

 

 アキラは息を荒げながら壁に寄りかかり、水を口に含む。額から滴る汗が冷たい。

 

「……マジでやべぇな。こんなキツいから、義体改造か薬でなきゃ普通はできねぇってか。納得だわ」

 

 

 

 

 

 その後もアキラは何度も試すがなかなかうまくいかなかった。

 

 

 

 

 

 アキラの脳裏が白黒に反転する。

 

 色が抜け落ちた世界は、まるで絵の具を全部洗い流したスケッチのようで、視界が息苦しいほどに単調だった。

 

 

 

「っ、く……またこれかよ……!」

 

 アキラは奥歯を噛み締める。頭の奥にズキリと走る痛みは、まるで血管がひとつひとつ焼き切れるようだ。

 

「ほんと頭加速しまくって痛いな……脳梗塞にならないよな?!? マジで死ぬぞコレ……!」

 

 

 

『色彩のない極限世界──あなたは過集中に入り込みすぎているわ。ある意味うまく行き過ぎているの。ただ加減ができない状態が今の状況よ。このまま無理を続ければ、確実に脳に過負荷が掛かるわね……』

 

 

 

 アルファの声が落ち着いて響く。

 

 

 

『別のやり方の方が、あなたには合っているかもしれないわね。例えば──並列処理を進化させた“パノラマ”。自分の視点を複数に分割し、全方位を同時に捉え、状況を俯瞰する。ひとつの対象を凝視する代わりに、世界全体を“見る”方法よ』

 

 

 

「……全方位を、同時に……?」

 

 アキラは額の汗を拭いながら呟く。頭に浮かんだのは、かつてゲームや動画を二窓三窓で同時進行していた前世の記憶。あの時は不思議と処理落ちせず、自然に複数の画面や情報を追えていた。

 

 あんだーらいぶは追えてなかったが、すいちゃんの歌声を聞きながらロリ持刀也を見ていたことを思い出した。なおにじさんじの推しは社築である。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな……集中しすぎて目の前だけ真っ白にするより、いっそ全部を俯瞰した方が俺には合ってるかもな」

 

 アキラの口元に、苦笑混じりの手応えが浮かんだ。

 

 

 

『ええ、アキラの特性を考えればその方が現実的かもよ。色を捨てるのではなく、視野を増やす方向でいきましょう』

 

 

 

「……よし、やってみるか」

 

 アキラは深呼吸し、再び意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二回目の試行(T+00:40)

 

 

 

 

 

 

 

 呼吸を整え、再挑戦。

 

 今度は二窓をイメージする。左=現実の視界、右=アルファが送ってくるアルファの視点映像。

 

 

 

 ──視界が二つに割れる。

 

 だが0.5秒と持たず、すぐに崩壊。

 

 

 

「……っは、はぁ……っ、ダメだ、頭が割れる……!」

 

 吐き気に耐え、冷や汗を拭う。

 

 

 

『閾値は超えたわ。一発でできるのはかなり驚きだけど……今度は十分休みましょう。糖質を補給して』

 

 

 

 飴玉を噛み砕き、水で流す。まだ手が震えていた。

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 三回目の試行(T+01:30)

 

 

 

 指先のリズム、瞬きのリズム、耳に残る環境音──

 

 複数の“杭”を用いて、現実とアルファの映像を分離する。

 

 

 

 ──1.2秒。

 

 確かに二窓が成立した。しかしすぐに視界が白飛びし、床に片手をつく。

 

 

 

「……クソ、持たねぇ……っ!」

 

 

 

『進歩はある。次は聴覚を強化しなさい。左耳=現実、右耳=私のカウント音。別テンポで同期するわ』

 

 

 

 ⸻

 

 

 

 四回目の試行(T+02:10)

 

 

 

 アキラは壁に寄りかかりながら目を閉じた。

 

 遠くで聞こえる子どもの声を左耳に、アルファのカウント音を右耳に。

 

 

 

「──今だ」

 

 

 

 世界がパキリと割れた。

 

 左の窓は自分の手元、右の窓は肩越しの俯瞰。

 

 両方のアキラが同時に呼吸している。

 

 

 

 一、二、三──

 

 

 

 視界が一本に戻る。こめかみに鈍い痛みが走り、思わず壁を殴る。

 

「……っはぁ、はぁ……三秒だ……!」

 

 

 

 ⸻

 

 

 

『計測3.1秒。並列度82%。……本来なら数ヶ月を要する領域。数時間で到達なんて、異常にもほどがあるわ。

 

 アキラ、あなたはっきり言って異常よ? 何かしたの?』

 

 

 

 アキラは荒い息を吐きながら、口の端を吊り上げる。

 

「……なんとなくできただけだよ」

 

 

 

 アルファの沈黙。

 

 しばしの間、静寂が続き──やがて深いため息が落ちた。

 

 

 

『……ルールを決めましょう。

 

 一回の上限は3秒。連続で使うなら最大3回。

 

 その後は40分のクールダウンを必須とする。破れば私が強制停止をかけるか処理を手伝うわ』

 

 

 

「了解」

 

 アキラは床に背を預け、冷たい汗を拭いながら小さく笑った。

 

「……劣等上等だ。死線でしか生き残れねぇなら、これくらい狂ってた方がいい」

 

 

 

 その後もアキラは訓練を続けていった。だんだん感覚をつかめるようになってきたアキラの口元には笑みが浮かび、同様にアルファも喜んでいた。

 

 だがアルファの内面では、自身の予測や演算をはるかに超えるアキラの体感時間圧縮の習得の速さに警戒をしていた。

 

 

 彼が自身に扱いきれなくなったときは……と、もしものことを考え始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アキラ「二窓三窓は余裕です」
アルファ「ちょっと何言ってるかわかんないですね」
アキラ「なんでわかんないんだよ」

読了感謝です。
くっそ忘れてた体感時間圧縮技術を今更習得しようとするアキラでした。
原作と違う点として、原作アキラは過集中でゾーンに入り「俺か、俺以外か」みたいなローランドさん思考で、世界を識別し対応するという感じだと考えてます。
対して今作アキラだと、原作アキラのような過集中は苦手であり、その代わりに第三者視点や並列思考やマルチタスクを得意とする設定にさせていただきます。

その理由としては、本文で書いてあった通り前世で配信とかを複数窓で見てたり、ゲームしながら別のゲームをするなど、マルチタスクの方が得意になってしまった、という感じです。一応アキラの前世の職業的にもマルチタスクが必要になってくる設定とかもあります。

落第騎士の英雄譚の一輝やダンまちのベルくんみたいな一点集中型ではなく、盤面を広く見えるノゲノラの空白やダンまちのフィンさんみたいな形ですね。


余談(ネタバレ)ですが、今後アキラにドローンかファンネルでも操作させようかと考えてます。
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