Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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三話目です。やっぱ分割します。
ぶっちゃけ1万字を週一で投稿より、3000字を週3で投稿したほうが読者的にも個人的にもいい気がしますね。
何より長すぎると読むのがしんどくなるし…


とある収集機の依存録

荒野を歩く俺の視界には、今までなかったものが映っていた。

 

 

 ──反応、右前方に一つ。動いてる。たぶん小型のドローンか、あんまり強くないモンスター。

 

 

 

 情報収集機のモニターには、脈動する反応点。大まかな距離と移動速度が表示されている。肉眼ではまだ見えないが、こいつのおかげで不意を打たれることが少なくなった。

 

 

「……便利すぎる。買って正解だったな」

 

 

 

 あれから何件か依頼を達成した俺はハンターランク8になった。それに合わせて装備の更新として、携帯端末と情報収集機ってのを買った。携帯端末ってのは簡単に言うとiP●neとかAndr●idで主に他者との連絡や依頼内容の確認や受注、ネット検索機能などがついている文字通りケータイだ。Twitt○rは無いクソが。ちなみにこのケータイでハンター同士で連絡や情報交換もするらしい。ネットから遺跡の地図やら明日の天気予報やしょーもないゴシップまでなんでもござれだ。

 

 

 

 あと情報収集機ってのも文字通りその場の旧遺跡の地図情報や敵のポップ先や角の向かうに隠れる敵などがわかったりする優れモノだ。もっともスラムの子供でハンターランク10に満たない俺が買える情報収集機なんて安物だし、マトモなハンターが持ち合わせてるソレとは性能が雲泥の差だが。あるとないとではえらい違いだ。

 

 

 ケータイと情報収集機を連携させてマップを開いたりするのも可能だ。

 

 ちなみに今回買ったやつは某野菜人漫画のスカウターもどきみたいな情報収集機だ。戦闘力たったの5か、ゴミめ。

 

 

 

 地面に伏せて、慎重に狙いを定める。視線と照準を合わせて──

 

 

 ──数発。

 

 

 

 乾いた音と共に、標的は倒れた。残骸に近づき、確認。センサーが反応したおかげで、回避も奇襲も失敗なし。

 

 

 戦闘時間の短縮。回収の効率化。無駄な遠回りの削減。

 

 

 

「……やっぱりもう少し早めに情報収集機買っておけばよかったか? 効率がダンチだ。それに余裕が生まれたのかすこぶる順調だし調子もいいし、なんとなくの勘が冴えてきた感じがする」

 

 

 モンスターの死骸の換金率や討伐依頼の達成率は、単純な戦闘力よりも“無駄を省く”工夫で伸びていく。やっぱり、情報は力だ。死なないためにも、金を稼ぐためにも。

 

 

 けど──

 

 

「これ、便利すぎて依存しそうだなー」

 

 

 

 表示されない敵。ノイズで反応が消える空間。バッテリー切れ。過信すれば死ぬ。あくまで「補助」であることを忘れちゃいけない。情報を信じつつ、最後は自分の目と勘で動く。それがこの世界の“正解”だと考える。

 

 

 帰還後、報酬をハンターオフィスで受け取った俺は、いつものように札束をポーチに詰め込もうとして──ふと気づいた。

 

 

「……あれ? 携帯端末に“入金”って項目、あるけど? まさか銀行口座とか作れるのか?」

 

 

 試しに受付の人に聞いてみると、案内された端末でスキャンと手続きを行う。あっさりと口座が作成され、目の前の端末に“所持金:〇〇オーラム”という数字が表示された。

 

 

「やっぱりこれって預金口座とか作れる感じです?」

 

 

「ええ、ハンターオフィスが管理してる公式の預かり口座よ。入金も出金も端末からできるし、クエストの報酬もここに直接振り込めるわ。現金を持ち歩かないハンターは多いのよ」

 

 

「……最高だなぁおい、次から口座振り込みにしてくれ」

 

 

 スラムで現金を持ち歩くのは命取りだ。盗られれば終わりだし、無理に守れば命が飛ぶ。だが、これなら安全だ。暗証コードもあるし、端末のロックもある。少なくとも、殴られただけで中身を抜かれる心配はない。

 

 

 帰り道、俺はいつものように気配を探りながら歩いていた。

 

 

 索敵は収集機。情報の整理は端末。そして金は口座に。そして稼いだ金は年金や税金に……よしやめとこうこの話! 

 

 

「……ちょっとずつだけど、文明人っぽくなってきた気がする」

 

 

 相変わらず、荒野は死に満ちている。

 

 

 でも俺には、少しずつ増えていく選択肢があり、生き延びる選択肢を選んでいくしかない。

 

 

 

 

 


 

 拠点に戻ると、いつもの油と金属の匂いにホッとした。

 

 

 ここは、俺がまだスラムの徒党に紛れていた頃、探索の途中で見つけた古い工場跡地だ。壁は崩れ、屋根は半分抜けているが、それでも四方を塞げて、雨風をしのげて、鍵もかけられる場所──俺にとっては実家のような安心感だ。

 

 

 とはいえ最初はただのゴミ山だった。けど少しずつ、俺はここを“住める場所”に変えていった。

 

 

 廃材で組んだ棚。拾い物の布をかぶせた簡易ベッド。打ち捨てられたクッションや座椅子。油で拭いた工具を並べた修理台。カーテン代わりのシートと、ドアにかけたチェーンロック。

 

 

「あー……やっぱ、落ち着く」

 

 

 荷物を下ろし、装備を点検し、銃のバレルを拭いて。ついでに水道代わりの雨水タンクで顔を洗う。石けん代わりの洗浄ジェルもあるし、殺菌剤も常備してる。そして監視カメラの設置などの防犯もばっちりだ。

 

 最近買ったケータイでネットサーフィンしてたらトラップの設置方法や銃の手入れの方法とか色々学ぶことができたのもあって以前よりかなり罠の設置や機械いじりが効率的になった。わかんないけど、なんかわかった! ってことが多くなったのも多い。(旧領域に少し接続し始めたおかげでなんか変わってきてる)

 

 

 スラムで拾った道具。ハンターになって手に入れた物資。工夫と試行錯誤の末、ようやく「生き延びるための拠点」から「帰ってくる場所」になった。

 

 

 情報収集機は壁に固定したラックに収めてある。携帯端末は充電器に刺しっぱなし。周囲を見渡して、侵入の痕跡がないことを確認してから、ようやくホッと息をついた。

 

「……人間、慣れるとどこでも生きていけるんだな。住めば都っていうし」

 

 

 以前の俺なら考えられなかった。この世界に転生して、初めてスラムに落ちた時──誰も信用できず、誰にも頼れず、ただ“死なないように”とだけ動いていたあの頃からは想像もつかない。

 

 

 今は違う。ほんの少しだけど、生活に「余裕」がある。

 

 

 飯を落ち着いて食える場所。寝る前に装備を整える習慣。数日先の予定を立てられる時間。

 

 

 

 けれど──

 

 

「……でも、依存しすぎるのはよくないよなぁー」

 

 

 情報収集機にしても、携帯端末にしても。便利すぎて、使わない理由がない。でも、それに甘えて“自分の目”をサボれば、いざという時に死ぬ。油断と過信の先にあるのは、ただの“死”だ。とはいえ前世でも割とスマホ依存症だった気がするが……

 

 

 

 依存はする。でも、超えてはならない一線がある。

 

 

 

 ──そんな風に依存しないように、と考えていた頃の俺が将来アルファに依存しない“ギリギリの一線”を保とうとするとは、さすがに本人も思ってなかった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 昼過ぎまで雲ひとつなかった空が、突然きしむような静寂に包まれた。

 

 荒野を歩いていたアキラは、情報収集機(安物)のレーダー画面がノイズで滲み、緑の同心円がまるで濡れた紙のインクのようにじわりと拡散していく。

 

 

 

「……マジか。色無しの霧じゃねぇか!!」

 

 

 視界の端から、白でも灰でもない“透明が濁ったような膜”が這うように広がりはじめる。日差しは確かにあるのに、風景がわずかに彩度を奪われていく現象──それを、旧市街のハンターたちは《色無しの霧》と呼ぶ。

 

 

 

 顕著な前兆はない。気圧も温度も大きくは変わらず、ただ数分のうちに光が曇りガラス越しのように鈍る。霧成分の詳しい分析は未だ不明だが、揮発性の旧世界ナノマテリアルが空気中で凝集し、局所的に“死んだ領域”を作り出すとも言われている。

 

 〈視覚機器の錯乱〉〈レーダー・ソナーの減衰〉。幸い人体への影響はないが、機械類が軒並み一時的にショートする広範囲EMP現象みたいなものだ。五大統治企業でも“詳細不明・収束待ちが基本”という代物だ。

 

 

 ──まずい。ここは天然の遮蔽物が乏しい。

 

 

 アキラはAAHのストックを抱え、足早に崩れた道路脇の陥没へ滑り込んだ。地下配線跡の浅い溝に体を伏せると同時に、背負い袋から簡易マスクを引き抜き、鼻と口を覆う。視界は一層白茶け、輪郭のすべてが水墨画のぼかしのように揺らいでいた。 

 

 

 霧の縁で風が止む。耳鳴りが強調され、世界が遠ざかる感覚──まるで酸素そのものに色がなくなるみたいだ、とアキラは息を潜めた。

 

 

 頭の中で復唱する。

 

 〈濃度上昇は十〜十五分でピーク〉。

 

 〈機器の誤作動は最短三分〉。

 

 〈拡散は風次第だが一時間以内には薄れる──ただし完全消散までは動くな〉。

 

 

 トリガーガードの内側に置いた指が汗ばむ。銃も電子機器も、いまはただの重りだ。撃てば着弾点は霧に飲まれ、目標を失って跳弾する危険がある。ここで戦闘は自殺行為。 

 

 

『こういう時は退くのが正解だ』──頭の奥で、かつて仕入れた教本のフレーズが冷たく鳴る。

 

 

 五分、十分。手首の脈拍と呼吸数を淡々と数えながら、アキラは霧の色味がわずかに薄れていくのを確認した。レーダー画面のノイズも徐々に収束し、ブザー音がか細く一度鳴って止まる。

 

 

「……終わった、か?」

 

 

 慎重に立ち上がる。遠景の廃ビル群はまだ霞んでいるが、輪郭は先ほどよりはっきりしている。喉の奥を焼く臭いも薄まった。 

 

 

「助かった。……色なしの霧、マジでシャレにならねぇな」 

 

 

 数歩進んで、吸い込む息に鉄錆と乾いた砂の匂いが戻ったことを確認する。マスク越しに深呼吸を一つ。

 

 再び歩き出しながら、アキラは情報収集機のログを保存した。発生時刻、GPSの粗い座標、濃度の推定グラフ──いつか高性能モデルに買い替えたとき、役立つかもしれない。

 

 

 結局、荒野は毎回 “知らない罠” を投げてくる。

 

 だが今日の教訓は単純だ──霧の気配を感じたら、迷わず遮蔽に潜り、やり過ごすこと。

 

 生き残りたければ、それで充分だ。

 

 

 

 


 

 

 ハンターとしての業務を遂行していったある日、アキラがランク10に到達した。アキラは10歳くらいだった。

 

 

 

 いつものスラム街のハンターオフィスの女性職員に

 

「あんたしょうもないモンばっか納品してランク10って……一応規則だからなんも言えないけどさ、子供なんだしもうちょっと華やかしい戦果や依頼を達成してランク10になったってチヤホヤされたくないのかい?」

 

 

「悪い。俺は“顔を売る”より“弾を買う”方が好きだ」

 

 

「とてもガキとは思えないね。あんたひょっとしてガキの義体のおっさんか何かかい?」

 

 

 

 ちなみに義体とは自分の意識やもしくは頭以外が全て機械のサイボーグみたいなモノ。一応厳密には違うし、人体改造したサイボーグ人間もこの世界には存在する。この荒野で生き残るために体を改造して少しでも生き残る手段を得ているのだ。ちなみに体が破壊されても仮死保護プログラムっていう仮死でそのまま生き残る事も出来るらしい。今のところ俺はそんな改造する金もする気もない。自分で改造しようとしても某海賊少年漫画のサイボーグみたいに体の前だけサイボーグになっちゃうしな。まぁあっちのスーパーなアニキは成長イベントで全身サイボーグになったけど。

 

 

「ま、とりあえずハンターランク10達成おめでとさん。ハンター本登録のためにクガマビルのハンターオフィスに行きな。防壁と一体化してるから行ってみればすぐにわかると思うけどネ。一応地図も渡しとくね。あ、あと一番大事なのがこの黒いカードね。この黒いカードを持っていけば向こうで本登録してくれるサ」

 

 

 

 送り出され向かったのはクガマヤマの都市を囲む城壁、その城壁にあるクガマビルに向かった。

 

 

 デカすぎんだろ。

 

 

 ビルがあまりにもデカすぎて軽くドン引きしたアキラ。それもそのはず、このビルはクガマヤマ都市を守る城壁と一体化したビルであり、この壁内外の都市経済を繋げる中継地点で、都市機能の要所なのだ。供物と同様に立派である程よい。

 

 

 

 ハンターオフィス本部へ入ったアキラは、エントランスの案内板を見て、再登録窓口に向かう。そこで古い紙片のハンター証と黒いカードを差し出すと、スーツ姿の女性職員が丁寧に受け取り、新しいプラスチックID、正式なハンターライセンスを差し出す。

 

 

 ちなみにこのハンターライセンスを売っても人生数回遊べる金にはならない。

 

 

「それでは改めまして、アキラ様──ハンターランク10へのご昇格、おめでとうございます。こちらが正式登録後のIDになります。再発行手続きの詳細説明は──」

 

 

「あっ、要点だけで大丈夫です」

 

 

 端的な返事に職員は微笑し、正式なルールを二分でまとめ説明した。手続きが済んだ直後、横合いから軽い口調が割り込む。

 

 

 

「おっと失礼! 君がウワサの“スラム上がりの新星”かな?」

 

 

 光沢ジャケットを身を包んだ男が名刺を差し出してくる。肩口には〈ドランカム〉のロゴ。

 

 

「──ドランカム広報部のセルジオ。若きハンターには飛躍の舞台が要る。うちに所属すれば装備提供、広報展開、スポンサー契約も──」

 

 

 アキラは名刺を眺め、ゆっくりと男の目を見た。

 

「悪いが、当分俺はソロでやって行くつもりだ。……それに、軽薄な態度のキャッチはあまり好きじゃない、他をあたってくれ」(風俗や居酒屋のキャッチは別として)

 

 

 淡々とした言葉だが、銃を肩に掛けた姿勢は軽く威圧を含む。セルジオは肩をすくめ、だが引き下がらない。

 

 

「まあまあ、考えが変わったら連絡してくれ。──ドランカムはチャンスを逃さない者全てのハンターの味方だ」

 

 

 セルジオは軽口を飛ばしつつ去っていく。アキラは名刺を二度ほど弾いてから、ポケットにねじ込んだ。

 

 

(どこの世界でも営業職ってのは大変だな。俺にはできねぇや)




読了感謝です。今日中にもう一話は出します。そろそろ転職先が決まらないとまずい。金ないよおおお

なお、とあるシリーズは未履修です。曲とパチンコくらいしか知識ないです。
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