Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
水曜日に投稿どうでしょうと思ってたら普通に日またいでました。許せサスケ

研修期間が終わり、イライラしながら仕事終わりにジム行ってゲームしてたら遅れました。馬鹿よあなたは

てか長編が始まり50話突破しました。まだ漫画版を超えれません!


水曜どうでしょうってどれからみればいいかわからない

 

 

 

 

 第1章 徒党の強化と拠点改装

 

 スラムの一角にあるアキラの拠点は、今日も妙な熱気に包まれていた。徒党の戦闘班が一列に並び、それぞれが新品の装備を前にして半信半疑の顔をしている。

 

「これが……新しい強化服か?」

「でも“補助輪”付きだろ? 子供用かよ」

 

 戦闘員の一人が鼻で笑うと、別の者も続く。

 

「昔からあるじゃん。AIアシスト付は動きがぎこちなくなるとかで、馬鹿にされてんの。お前ら素人かって」

「そうそう、人気ないんだよな」

 

 アキラは苦笑しつつ、隣にいるアルファのホログラムを見た。アルファは涼しい顔で腕を組んでいる。

 

『馬鹿にされるのは仕様のせいよ、そもそも肉体改造が済んでない状態で強化服を使用するのは無理があるの。私が改造したものは別物よ。動作補正も反応速度も人間の肉体限界を越えないように微調整しているわ。最適化というやつね』

 

「よーし、お前ら。文句言ってる暇があったら動いて試せ、それまで飯抜きだぞー」

 

 アキラの一言で、戦闘員たちはしぶしぶ装着を始める。次の瞬間、補助輪付きの強化服は彼らの動きをまるで自動車が舗装道路を走るように滑らかに補正した。跳ねた膝が自然に収まり、銃口は狙った位置でピタリと止まる。

 

「な、なんだこれ……!?」

「全然ブレない!」

「嘘だろ、今までのよりずっと使いやすいぞ!」

 

 歓声が上がる。アキラは心の中で満足げに頷いた。

 

 ⸻

 

 続いて、アキラは兵装の割り振りを行った。金はある程度あるので試験的な意味も兼ねている。

 斥候班にはアサルトライフルとハンドガン。割職にはフラグランチャーと小型ショットガン、それにヒートチャージ。盾役には携帯式の拡張防弾シールド〈ミヤビ二式〉。電子職には、アルファが渡した胡散臭い機械。

 

「名前は“誰でもハッキングしちゃう君”だ。かわいいだろ」

「……アキラさん、こいつの名前ふざけてません?」

「本気だよ。しかも自爆機能付きだ。証拠隠滅も計算通りかんぺきーだぜ」

 

 電子職担当の少年が青ざめるが、誰も突っ込まない。慣れていた。

 

 ⸻

 

 拠点内部もまた大規模に変わっていた。寝室、執務室、私室──すべて一億オーラム単位をつぎ込んだフルリフォーム。壁は旧世界技術を取り入れた鉄筋コンクリートの強化版。扉は戦車砲でも簡単には抜けない強度を誇る。

 

「アキラさんとシェリルさんが使う部屋だけくっそリフォームされてるんだが」

「戦闘始まったらすぐさまシェリルさんが逃げれるようにだって。ちなみに俺たちの逃げ場はないらしい」

「さすがすぎる。うちのトップ二人とも独占欲強くないか?」

 

 

 戦闘員たちが感嘆する。アキラは肩をすくめ、建築を仲介したカツラギに通信を入れた。

 

『どうだ、すごいだろ? 旧世界の技術を知ってる小規模工務店を紹介してやったんだ。割引はしてないぞ』

「いやぁさすがカツラギさんですな! ありがとうございます! ダンケダンケ」

 

 カツラギは端末越しに得意げに笑う。アキラは苦笑いで通信を切った。

 

(これで、拠点も戦力も大幅に底上げ……あとは、どんな依頼が転がり込んでくるかだな)

 

 

 

 

 

 

 第2章 ドランカムからの接触

 

 拠点の執務室。重厚な壁に囲まれた空間で、アキラは書類の確認を終えたところだった。端末が震え、見慣れない番号からの通信が入る。

 

「……営業か、詐欺か」

 アキラは通話を繋いだ。

 

「お世話になっております。私、民間軍事会社ドランカム外部交渉担当のアサハラと申します。そちらはアキラ様でお間違いないでしょうか?」

 

「保険はもう入ってるんで結構です。あと廃品回収もこの前大掃除で処分したので大丈夫です。あ、おにぎりあたためますか?」

 

「……いえ、そうではなく。私たちはドランカムです。アキラ様でお間違いないですか?」

 

「はい。アキラ様でお間違いないです」

 

 短く答えると、端末越しに“スゥーーー”と息を吸う音が聞こえた。怒りを抑え込んでいるのがありありと分かる。

 

 

 

「実はですね……現在、我々ドランカムでは賞金首《過合成スネーク》の討伐作戦を検討しております。そこで、ハンターオフィスを介して有力なハンターに協力をお願いしているところでして」

 

 アルファの声が脳内に響いた。

『この前カツヤたちが言っていた話ね。おそらくだけどアキラの戦歴を上手く混ぜ込み、カツヤ隊の成果に見せかけるつもりかもね』

『まぁだいたいそうだろうな。もしくは数合わせか、雑魚処理相手だろうな』

 

 アキラは眉をひそめた。

 

「……それで?」

 

「できれば、アキラ様にはうちのカツヤとご一緒に参戦していただきたい。御身の力を加えれば、討伐成功率は格段に上がりますから! それにアキラ様の徒党の皆様も参加していただいても大丈夫です! 是非に!」

 

 

 アキラはしばし黙り、机を指で叩いた。

(これ絶対数合わせか雑用だな。まぁうちの徒党は雑用ばっかやらせてる派遣会社みたいなもんだし間違ってはない……が)

 

 

「契約内容次第だな。そこまでうちの徒党に期待してくれてるなら面と向き合って話がしたいな。俺の徒党を動かす以上、それなりの条件が必要だ。あと──こっちも立て込んでいるんで、そっちに出向く時間がない。契約内容の説明とかなら、そちらさんが来てくれ」

 

「……何を言っているんですか? これはハンターかつ同じ徒党の話合いです。大事な話ですから、ぜひとも我々ドランカムでの面談を」

 

「その徒党のボスを一介の職員さんが呼び出すのは何事だ? 俺たちはドランカムの下請けじゃないんだ。そっちがうちに来るべきだろ? それが営業じゃないのか?」

 

「我々ドランカムはそちらのような弱小とは格が違う! こちらから赴くなど、バカにするにも程がある!」

 

「へぇ、それが本音か」アキラは薄く笑った。

 

「だがなぁあいにく、そんな無礼なドランカムさんのために骨折り損するつもりは毛頭ない。悪いが他を当たってくれ。……ああ、それに俺には他のグループからも賞金首討伐の協力依頼が来てるんでな、そっちで忙しいんだ」

 

 もちろん、そんな依頼は一つも来ていない。だが声は堂々としていた。

 

「……っ!」

 

「他からスカウトが来てる俺に営業をかけるのは満点だ。だが接遇の仕方は赤点だ。いっぺん接遇研修を受け直してこい、三下カムさん」

 

 ブツッと音を立てて、通信は強制的に切れた。アキラは肩をすくめる。

 

(さて、どれくらい慌てるかな)

 

 ⸻

 

 場面は変わり、ドランカム社内。

 

「ふざけやがって! あのガキ、何様のつもりだ!!」

 

 外部交渉担当のアサハラが怒号を上げ、机を叩く。そこへ上司のイシバが現れた。

 

「……おいどうしたアサハラ、状況を聞かせろ」

「お疲れ様ですイシバさん! 例の弱小の徒党に交渉を試みましたが、あのアキラというバカは我々を一蹴しました! アイツ……我々を愚弄するような態度で……!」

 

 イシバは深くため息をついた。

 

「馬鹿者。お前が余計なことを言うからだろうが。ミズハさんが言ってたろ、そのアキラは今、カツヤの対抗馬としても、替え玉としても最有力候補なんだ。他の依頼が来ているという噂まである。これ以上拗れさせてどうする」

 

「……っ!」

 

「私が行く。お前も同行しろ。頭を下げる覚悟をしておけ」

 

 ⸻

 

 数時間後、再びアキラの端末が鳴る。

 

「先ほどの無礼をお詫びします。我々、ドランカムのイシバと申します。実際にお会いし、正式な条件を提示させていただきたい。報酬はもちろん、ドランカムで余剰となっている武器弾薬も提供可能です」

 

 アキラは椅子に深く腰掛け、口の端を上げた。

(ようやく話が分かる人間が出てきたな)

「これはこれは丁寧にありがとうございます……ではそういことでしたらぜひともお待ちしております。それといつぐらいの来られますか? ええ……」

 

 そのやり取りに、アルファの乾いた笑いが響いた。

 

『効いたみたいね、あのブラフ』

 

 

 

 

 

 

 

 第3章 シカラベからの接触

 

 数日後。またアキラは拠点の執務室で報告をまとめていると、端末が鳴った。アキラは画面を確認し、シカラベと書いてある画面をタップし通話を繋ぐ。

 

「パエトーンのアキラです。お疲れ様ですシカラベさん」

 

「ぱえ? お前アキラだよな?」

 

「はいアキラさんです。で、どうしたんすか? この前のヨノヅカ駅以来ですけど……ドランカムの過合成スネーク討伐の話?」

 

 

 

 

 シカラベは一瞬黙り、眉をひそめた。

「……なんで知ってる?」

 

「ドランカムから誘われたからな。そりゃ知ってるさ」

 

「……そうか」

 

 ドランカムの連中が同時並行で声をかけているのは想定内だった。だが、こうして即座に情報が流れてくるあたり、シカラベもさすがに嗅覚が鋭い。

 

「シカラベさんもそっちに行くんです?」

 

「いや、別件だ。俺らが狙ってるのは別の賞金首モンスターだ」

 

「……へぇ……なるほど」

 

 シカラベが声を潜める。

「でだ、アキラ。俺らと組む気はないか? お前の腕を借りたい」

 

 アキラは少し考え、口元を歪めた。

「検討に検討を重ねます検討を加速させます」

 

「はは、まあそうだろうな。ただ、詳しい話は顔を合わせてやりたい。……今夜、歓楽街の居酒屋に来い」

 

 そう言って一方的に通話が切れた。

 

(……結局、シカラベの方も賞金首狩りか。しかも別口とはな)

 

 アキラは小さく息を吐き、椅子にもたれた。

 

 

 

 

 

 

 第4章 歓楽街の居酒屋での対面

 

 歓楽街の一角にある三階建ての店。三階は娼館、二階は嬢がウェイトレスを務める半分キャバクラのような酒場だった。艶やかな香水の匂いと、甘ったるい笑い声が混じり合い、場違いな華やかさを放っている。

 

 アキラが二階の扉を押し開けると、奥の大きなソファ席に見知った顔があった。シカラベ、ヤマノベ、パルガの三人。いずれもドランカムの古参派だ。左右には嬢が一人も腰掛けておらず、シカラベたちの席は異様に静かだった。

 

 

 

 

 

「おう、来たな。座れ」

 シカラベが手を挙げる。

 

「お疲れっすシカラベさん。いやーさっき一階で店主にガキが来る場所じゃねぇぞって言われたんすけど……実際なんでこんな場所が話し合いの場なんです?」

 

 

 アキラは苦笑しながら周囲を見回す。二階の店内は照明が薄暗く、甘い香水と煙草の煙が漂っていた。赤いベルベットのソファに腰かけるシカラベたちの周囲にはいないが、他の席では艶やかなドレス姿の嬢が何人も寄り添っている。どう考えても子供が来る場ではない。

 

「こういう場所の方がいいときもあるんだ。まぁそういうことにしてくれ。それと、何か頼むか? ここの酒はうまいぞ?」

 

 シカラベはグラスを掲げ、にやりと笑う。

 

 

「あー、この前酒飲んでバカしたんでジュースにしますわ。それで──そちらの二人は?」

 

 アキラが視線を向けると、シカラベの隣で煙草をふかしていたパルガが、ニヤリと口角を上げた。

 

 

 

 

「俺はパルガ。シカラベと同じドランカムのモンだ。シカラベとは付き合いが長ぇ。……お前の噂は耳にしてるぜ。強いらしいじゃねぇか」

 

 低い声に挑発が混じっていたが、目には好奇の色が浮かんでいる。

 

 続いてヤマノベが、背もたれにどっかりと寄りかかりながら口を開いた。

「俺はヤマノベだ。同じくドランカム所属だ。お前がアキラか、シカラベからもお前の名前はよく聞く。見た目はまだガキだが──どうなんだ?」

 

 探るような目線。アキラは肩をすくめ、あえて軽い調子で返す。

 

「アキラです。見た目通りのガキです──ハンターとしては“実力相応”にやってるつもりなんで。まぁ、これからよろしくお願いしますわ」

 

 その言葉にパルガがふっと笑い、ヤマノベも片眉を上げる。シカラベはグラスを傾け、満足そうに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 シカラベはグラスを机に置き、腰を少し前に乗り出した。

「……さて、本題だ。俺たちが狙っているのは《タンクランチュラ》って賞金首モンスターだ」

 

 アキラは眉をひそめた。耳にしたことはある。装甲をまとった巨大蜘蛛。弾丸を弾き返す硬殻を持ち、単独で荒野を荒らす危険種。

 

「依頼はハンターオフィス経由じゃねぇ。ハンター同士の依頼だ、意味はわかるな? よし……それで俺たちは“戦歴”がそのまままるっと欲しいんだ」

 

 シカラベは指先で机を叩き、低く続けた。

「成功した場合の金は、経費を差っ引いて頭割りだ。弾薬や燃料、必要な補給は経費として落とす。ただし──借金の建て替えや新しい武器代は対象外だ。そこは勘違いするな。降りたい奴はそこで降りろ、って話だ」

 

 隣でパルガとヤマノベが黙ってグラスを傾ける。二人とも、すでに内容は理解済みなのだろう。ここで口を挟む必要はないという空気だった。

 

 シカラベはソファに深く背を預け、アキラをじっと見据えた。

「……俺たちは確実にタンクランチュラを仕留める。その戦歴を手に入れて、ドランカムに突きつける。そういう算段だ。アキラ、お前の力を借りたい」

 

 

 

 

 

 

 アキラはテーブルに肘をつき、グラスの水滴を指でなぞりながら少し考え込んだ。

 派手な照明と甘い香りの中、シカラベの視線だけが妙に重く突き刺さってくる。

 

「……なるほど。非公式の依頼で、戦歴は丸ごと自分らの手柄。報酬は経費差し引いて頭割り。借金と武器代は対象外」

 

 言葉をひとつずつ繰り返し、確認するように口にした。

 

「シカラベさんが本気なのは分かりました。ただ──俺としては“条件次第”っすね」

 

 シカラベの口角がわずかに上がる。

 

「条件?」

 

「はい。例えば経費の線引きはきっちり見せてもらうこと。……それと、途中でやっぱり無し! お前なんかに払わねぇぞバーカ! って裏切られても困りますしね」

 

「まぁ今のところは依頼が失敗しても500万オーラムは払う予定だから安心しろ」

 

「おけです。ただ依頼なんて基本先着順ですし、ドランカムがやろうとしてる他の賞金首討伐も参加予定なんですよねー」

 

 そういうとシカラベはニヤリと笑いながら返す。

「大丈夫だ、万が一カツヤの方の依頼に間に合わなかったら、その分の違約金とか交渉は俺がやろう」

 

「えぇ? いいのか?」

 

「正直カツヤには失敗してもらいたいからな! あと敬語抜けてるぞ」

 

 

 アキラは失敬ととぼける。

「さすがカツヤの事嫌ってますなぁー」

 

「不満か? 友人なんだろ?」

 

 

 訝しむシカラベに、アキラは真面目な表情で返す。 

「友人とはいえ同じハンターです。それはそれこれはこれですよ、前にも言った気がしますけど」

 

「あとは金より命が優先なんで、かなりやばくなったら逃げますよ。それでもいいならシカラベさんの案に乗ります。まぁ借りもありますしね」

 

 嬢の笑い声にかき消されるような軽口で言いながらも、アキラの目は真剣だった。

 

 

 

「……だいぶ勝手がいいが。悪くねぇな」

 シカラベはグラスを傾け、満足げに酒をあおった。

 

「じゃあ、お前の言う“条件次第”ってやつを、今度具体的に聞かせてもらおうか。……それで良けりゃ、一緒に行くんだな?」

 

「もろちんです」

 アキラは肩をすくめて返す。その声に、パルガとヤマノベが静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 アキラとシカラベの交渉が終わった後、アキラは帰る予定だったが、ここのおすすめ料理のパイとミラーァノ風ドリアを食べることにした。

 またアキラの後にも他のハンターとシカラベは交渉をするため、顔みせのためにもアキラはしばらく同席することにした。けっして嬢が可愛かったりエロいからという理由ではないのだ。

 

 

 

 その後ヤマノベが呼んでいた人たちが来た。

 借金持ち二名と、その監視役としてコルベを連れてきていた交渉役のトメジマだ。トメジマは借金を抱えながらも腕は立ち、金のためなら口約束程度では従順になるいい人材を連れてきた。

 

 アキラがちょうどテーブルに届いた料理を楽しんでいると、借金持ちの一人──カドルが顔をしかめて吐き捨てた。

「おいおい、こんなガキを誘うのかよ!」

 

 トメジマも苦い笑みを浮かべて続ける。

「口は悪いが、俺も同意見だ。報酬がそんなガキと同じじゃ文句も言いたくなる。こっちだって命がけなんだ、使えねぇやつを頭数に入れるなら実力相応の報酬にしてくれよ、な?」

 

 背後でコルベが無言で様子を伺っている。酒場のざわめきの中で、空気がひときわ重くなった。

 

 

 

 シカラベが鼻で笑う。

「実力相応なら……お前らに一オーラムも払えねぇよ」

 

 挑発的な沈黙が流れる。アキラは肩をすくめ、軽く笑った。

「シカラベ、察してやれよ。借金持ちのハンターが、無償で戦ってくれるんだ。とんだボランティア精神じゃねぇか。ありがたく“実力相応”にしてやれよ」

 

 カドルがテーブルを叩いて立ち上がり、怒鳴った。

「テメェ……!」

 

 しかしアキラは完全に無視して、頼んでおいた料理に手を伸ばす。熱々のミラーァノ風ドリアをひと口、続いてパイを頬張った。

 

「──このパイ、死ぬほどうめぇ!」

 

 わざとらしい大声に、近くにいた嬢たちがくすくすと笑い、カドルはさらに逆上する。腰から銃を抜き、アキラに向けて構えた。

 

「ぶっ殺す!」

 

 その瞬間だった。

 

 

 アキラは手にしていたパイのフォークをひねり、カドルの口へ寸止めで突き込んだ。カドルの手の銃口は、アキラの左手に軽く押し逸らされ、床に向けられていた。

 

 目の前に迫ったフォークの銀が光る。

 

 

 わずかに唇に触れた感触に、カドルの顔色が変わる。

 

 

 

 

「……おい、パイ食わねぇか?」

 

 

 アキラが冷ややかに笑う。その台詞の意味を理解した瞬間、カドルは青ざめて後退った。

 

 

 一瞬の動作。無駄のない洗練された制圧。

 その場で見ていたヤマノベとパルガは、互いに視線を交わし、わずかに頷いた。──子供だろうと、この男の実力は本物だ。

 

 

 

 フォークをテーブルに置いたアキラは、あえて飄々とした声で言う。

「マッチポンプか何かか? それならもうちょいマシなエキストラでも読んでこいよ。……戯曲すら出来ねぇよ」

 

 嬢たちが笑いをこらえ、煙草の煙が漂う。アキラの挑発に、場の空気が完全に支配されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 フォークを置いたアキラの横に、ふわりと甘い香りが漂った。ウェイトレスを兼ねる嬢のひとりが、にこやかに腰を下ろしてくる。

 

「アキラ君みたいな面白い人、初めて」

 

 艶っぽい声と、無邪気な笑み。アキラは一瞬で固まった。

 

(……ふ、ふ……うーん)

 

 脳内で警報が鳴る。

 

(確定で俺のコト好きじゃん!?)

 

 心臓が勝手に早鐘を打ち、顔が熱くなる。必死に念話を飛ばす。

 

『アルファさん助けて! 俺この娘好きになっちまう!』

 

 アルファのため息混じりの声が返る。

『馬鹿ね。これは接客よ。客商売のテンプレート文句に決まってるじゃない? それにこんな女よりいい女がここにいるわよ』

 アルファはすぐさまドレスアップして煽情的な恰好でアキラを誘惑し始めた。

 

(いやでも今の目、絶対マジだった! やばい、これは恋だ! おれの心がチェーンソーみたいに粗ぶってるぅぅぅ)

 

 

 アキラの頭の中では、銃声よりも大きな劇場版の主題歌が鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 カドルは青ざめた顔で後退り、腰を抜かしそうになりながら銃をしまう。もう一人の借金持ちも目を逸らし、グラスを強く握っていた。場の空気は完全に凍りついている。

 

 そんな中、シカラベが豪快に笑い声を上げた。

「ははっ! 悪いなアキラ。仲間に銃を向けないって契約はしてなかったな。許せよ」

 

 アキラは肩をすくめ、テーブルに残ったドリアをつついた。

「……まぁ俺は気にしないけどな。けど二度目は許さんぞ」

 

「頼もしいぜ」

 シカラベの笑みは鋭く変わる。視線はカドルやトメジマに向けられていた。

 

「おい、お前ら分かっただろ? こいつはガキでも、下手な大人よりよっぽど強ぇ。文句があるなら今ここで潰されてから言え」

 

 沈黙が落ちる。借金持ちたちは唇を噛み、トメジマでさえ言い返せなかった。

 

 シカラベはグラスを掲げ、締めの言葉を吐き出す。

「つまり──裏切ったら速攻でミートパイにしてやる。いいな?」

 

 冗談めかしたその言葉に、嬢たちが小さく笑い、しかし誰も逆らうことはできなかった。

 

 

 

 

 シカラベはその場の空気を完全に掌握し、交渉を有利にまとめる。

「……ってことで、この場は終わりだ。次は仕事の話に移るぞ。アキラ、少し付き合え」

 

 アキラは頬を引きつらせながらも、内心でため息をつく。

(……結局、俺はダシにされたってことか、まぁいいけどさ)

 

 

 

 




シェリル「すごいリフォームしますね」
アキラ「たとえ他の階すべて爆破されてもこの部屋は無事だぞ」
シェリル「謎技術ですね」
読了感謝です。
話を書いてたら給料日になったのでイライラ収まりました。それと木曜休みなんで友人たちとチェーンソーマン見てきます。
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