Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
マジでギリギリ今日中に投稿できました。もう書けた4000字だけでも投稿しようかと思ったんですが、もう書き終わるまで書くかと8000字書いてました。明日も仕事だぜバーロ。それとiPhone17で500GB、17万円のゲーム機買いました。なおゲームする時間ない



というか私がリビルド書くきっかけになった孤独に非のたっぷりさんが別のリビルドのSS出してました。速攻ランキング乗ってて笑いました。しかも小説タイトルの最初が、【Re:】とかめっちゃ似てて笑いましたが親近感もあり、なんかうれしかったです。もちろんお気に入り登録と評価は入れました。感想はまだですがそのうち書きます。なぜなら仕事が忙しいからSS2話までしか読めてねぇんだわ。


認知していただいてるのは存じてたのでうれしいですね。あと僕もスランプ気味です。助けてシェリル。助けてジャイロ。助けてマキマさん。助けてみさえ。助けろエリオ。


感想お気に入り登録、コメント評価誤字報告感謝です。前書き書いてたら23時59分でした。間に合いそうにないです()


タンクランチュラ死す、デュエルスタンバイ

 

 

 

 

 

 砂煙を巻き上げて進む車列。その中でも一台だけ、異様な静けさを纏った車両があった。無骨な荒野用車の運転席にはアキラが座り、黙々とハンドルを握っている。その隣、助手席に腰を下ろした若い少年は、何度目か分からない鋭い視線を彼に投げかけていた。

 

 トガミ──ドランカム所属の若手ハンターであり、反カツヤ派の急先鋒。派閥の中でも特に気位が高く、己の強さに絶対の自信を持つ男だ。

 

「なあ、お前。ランク、いくつだ?」

 不意に口を開いたトガミは、吐き捨てるように問いかけた。

 

 アキラは片手でハンドルを支えたまま、ちらりと横目をやる。面倒臭そうな口調で答えた。

「25だ」

 

 トガミの口角が釣り上がる。

「俺は27だ。お前よりランクは上なんだ、つまり俺の方が強いってことだ。いいか、ハンターランクは実力を示す数字だ。俺の言うことを聞け。従えよ雑魚が!」

 

 その声には、思春期男子特有の威勢の良さと、他者を見下す傲慢さが混ざっていた。本来であればトガミはここまで煽りはしなかったが、アキラが初対面でトガミをからかったためいまだに根に持っていた。

 

 アキラは思わず鼻で笑った。

「へぇ。ランク至上主義を唱えるのは別に構わないけどさ。じゃあカツヤの言うことにも従うのか?」

 トガミが途端嫌な顔をした。アキラはそれを片目に詰め続ける。

 

「例えばカツヤが『カツヤ・ヴィ・ドランカムが命ずる。貴様たちは死ね!』って言ったらお前は聞くのか? 聞かねぇだろ」

 

 

「ッ──!」

 トガミの顔色が一気に変わる。憤怒に染まった瞳がアキラを睨みつける。

「お前……カツヤのシンパか!? ここまで乗せてきて、まさか派閥の犬ってわけじゃねえだろうな!」

 

「バカ言え。俺はドランカムの人間じゃない。ただの友人だぁよ」

 アキラの声色は淡々としていた。挑発するでもなく、卑屈になるでもない。だが逆にその平然とした態度が、トガミの癇に障る。

 

(こいつドランカムの内情を……知ってやがる)

 トガミは内心で毒づいた。外部のハンター風情が、まるで組織を熟知しているかのような口ぶり。癪に障るが、反論の言葉が出てこない。

 

 そんなトガミに対し、アキラは急に助手席の下を探り、何かを取り出して差し出した。

「ほら、命綱だ。これ付けといてくれ」

 

「……なんだ、これ?」

 

「この車とトガミを繋ぐ安全ベルトみたいなもんだ。戦闘中は俺の運転が荒くなる。性格が変わったみたいにってな。今までうちの徒党の奴らも何人も吐いたり、車から吹っ飛んでいった。だから同乗者にはこれを渡すことにしてる、もちろん善意だ」

 

 差し出された命綱を、トガミは一瞥しただけで鼻で笑った。

「こんなもん、必要ねえよ。俺は吹っ飛ばされるほどヤワじゃない」

 

 アキラは肩をすくめる。

「えー、まあいいけどな。自己責任だぞ? 俺は忠告したからな」

 

 

 二人の短いやり取りの直後、車内の無線からシカラベの低い声が飛ぶ。

 

『八番! 進行方向にモンスターだ! 先行して蹴散らしてこい!』

 

 

 

「八番、了解! すぐに終わらせる!」

 

 

 指示を受けたトガミは、不敵に笑った。早速アキラに実力を見せつける好機が来たと感じている。

「おい! すぐにモンスターの近くまで車を出せ!」

 

 アキラは何も言わず、アクセルを踏んだ。車両は滑らかに加速し、必要最小限のラインで前方へ進む。急発進も急停止もなく、助手席の体勢が崩れることもない。だがそれはアルファの補助を基準としたアキラの自然な運転であり、トガミにとっては逆に「素っ気なく扱われている」ように感じられた。

 

「……てめえ……」

 トガミは不満げにアキラを睨んだが、アキラは前だけを見据え、表情ひとつ変えない。

 

 やがて進行方向に砂煙が上がり、車両並みに巨大な肉食獣モンスターたちが姿を現した。咆哮と共に突進を始め、距離が一気に縮まっていく。

 

「お客様、どこで降りられます?」

 アキラは視線を前に固定したまま、抑揚なく尋ねる。

 

「……適当にその辺で停めろ!」

 吐き捨てるように答えるトガミ。

 

 アキラは無言で減速し、車を停めた。そこで初めてトガミが笑みを浮かべる。嘲笑に近く、相手を見下したものだが、その瞳には確かな自信が宿っていた。

 

「指示されたのは俺だけだ。つまり、俺一人で十分だってことだ。お前はそこで黙って見ていろ。実力の違いってやつを見せてやる!」

 

「おっ、そうだな」

 

 トガミは勢いよく車を降り、銃を構えて群れに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 トガミは銃を構え、勢いよく車を飛び出した。

 砂煙を蹴立て、迫る群れへ突っ込む。照準は乱れず、弾丸は確実に獲物を仕留めていく。巨大な肉食獣が一声吠えるが、トガミの引き金は止まらない。トガミは口角を吊り上げ、さらに突撃を加速させた。

 

 

 

 

 そんな彼の背を眺めつつ、アキラは車の中で軽くため息を吐いた。

「……おう。お疲れ。終わった?」

 

 

 その声音は、心底どうでもよさそうだった。

 

 ちょうど数体を仕留め、振り返ったトガミの耳にそれが届く。

「はあ!? 今は途中だろ! まだだ!」

 憤怒を顔に浮かべ、吐き捨てるように叫ぶ。

 

 

 だがアキラは前方から目を離さず、肩を竦めただけだった。

「ほーらかんばれ♡がんばれ♡」

 

 

 

 

 アキラの何気ない煽りは火に油を注いだ。

 

 

 

「テメェ……!」

 トガミは怒りを噛み殺し、再び獲物へ銃を向けた。

 

 その一言に、トガミは憤怒を噛み殺し、再び群れへ突っ込む。銃声が連なり、モンスターの悲鳴が砂煙に飲まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて群れは散り散りになり、最後の一体が地に沈む。

 息を荒げたトガミは、戦果を見せつけるように銃を掲げ、アキラに振り返った。

「どうだ! 見たか、俺の実力を!」

 

 

 アキラは無表情のまま軽く手を振った。

「はいはい、つよいつよい」

 

「てめえっ……!」

 トガミは顔を真っ赤に染め、憤怒をぶつける言葉を探す。だが戦場に余計な口論を続ける余裕はない。舌打ちをして、イライラとした足取りで車へ戻った。

 

 

 

 助手席のドアが乱暴に閉まる音が響く。シートに腰を落としたトガミは、銃を乱雑に置き、荒い息のまま窓の外を睨んだ。

 

 一方アキラは全く気にした様子もなく、無線に切り替えられた声に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

『全員、聞こえるな? これより作戦概要を伝える』

 

 

 低く落ち着いた声。シカラベだった。

 

 

 

 

 

 

 全体無線に乗せられたその声は、広範囲に散開しているハンター車両すべてに届く。アキラの車内もまた、シカラベの指示を聞き取っていた。

 

『囮車両でタンクランチュラを誘導し、予定の座標に集結させる。センサーを敵にマーキングするから、合図と同時にロケットランチャーを一斉射撃だ。狙いがズレれば無駄弾になる。全員、指示に従え。独断専行は死を招くぞ』

 

 車内に沈黙が訪れる。アキラは冷静に装備を確認し、次の行動をイメージする。

 

 だが隣のトガミは鼻で笑い、吐き捨てるように言った。

「要するに、正面から叩き潰せばいいんだろ」

 

 アキラは答えなかった。ただ心中で(やっぱ分かってねえな。この車はおとり役なのによぉ)と呟いた。

 

 

 

 

 とはいえだいぶ煽ったアキラは運転席で黙ったまま、何も言わなかった。

 

 

 そのまま車列は再び前進を始める。空気は緊張と砂煙に包まれ、やがて地鳴りのような振動が遠方から響き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地鳴りは、最初は地平の向こうから押し寄せる雷鳴のようだった。

 やがて大地そのものが震動し、乾いた砂原が泡立つように小刻みに揺れ始める。ハンターたちの車列を震わせるその波動に、誰もが息を呑んだ。

 

 前方、霞む砂煙の奥から、まず脚が現れた。一本で鉄塔に匹敵する太さ。幾重もの節が連なり、表面は旧世界の戦車を思わせる硬質の外骨格に覆われている。次いで、砲塔めいた胴体と鋭い顎が砂塵を割って姿を現した。

 

 

 

 タンクランチュラ──旧世界の兵器を飲み込んだ結果生まれたかのような、戦車と巨大蜘蛛の悪夢的合成体。

 

 

 

 全長は十数メートル、ビル三階分はありそうだ。また質量は車列全体にも匹敵する。大地を踏みしめるたび、周囲の砂が爆ぜ、耳をつんざく軋みが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

『前方に目標確認! 全隊、警戒を強化しろ!』

 シカラベの声が無線を叩いた。

 

 車列の各車両が一斉に速度を落とし、陣形を整える。誰もが武器を構え、呼吸を整えた。アキラの車もその一部として進む。

 

 

 隣でトガミが低く笑った。

「……ようやく本番か。見せてやるよ、ランク二十七の実力をな!」

 

 アキラは答えず、ただ視線を前に据えた。

 その淡白さがトガミの癇に障る。

 

「おい! 聞いてんのか!」

 

「……ああ聞いてるよ。(聞いてない)」

 アキラは短く返すと、ハンドルを握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ヤマノベの銃声が響いた。

 専用銃から発射された小型マーカー弾が、光点を散らしながらタンクランチュラの装甲へ次々と貼り付いていく。青白い光が表面に浮かび、標的を星座のように彩った。

 

 

 

『マーカー展開。パルガァ!』

 ヤマノベの冷静な声。

 

 続いて、パルガの大口径擲弾銃が吠えた。

「ハッ! お膳立てどうもってやつだ!」

 

 無数の擲弾がタンクランチュラの周囲に着弾し、爆発と同時に濃煙を撒き散らす。一部は爆発せずに貼り付き、発煙筒のように煙を絶え間なく吐き続けた。ジャミングスモークはタンクランチュラの視界を阻害し、逆にハンターたちには標的のシルエットがはっきりと見えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

『よし、全隊──』

 シカラベの声が一瞬ためを作り、

『撃て!!』

 

 

 

 

 

 轟音。

 

 一斉に放たれたホーミングロケットが、光の矢の群れとなって宙を駆けた。ヤマノベのマーカーへ誘導され、軌道を揃えて白煙の奥へ突き刺さる。

 

 

 

 

 

 

 次いで爆炎。

 

 地面が揺れ、砂煙が噴き上がり、タンクランチュラの巨体が一瞬大きく仰け反った。

 

「……やったか!」

 誰かの声が無線を駆ける。

 

 

 

 

 だが、煙の奥から響いたのは金属を擦り潰すような不快な轟鳴だった。

 巨体はなおも立ちあがろうとした。

 

 

 

 

 

 

『仕留めきれてねえ! 持ち場を守れ!』

 シカラベの怒声。

 

 

 

 その瞬間、タンクランチュラの腹部が大きく震えた。裂け目から吐き出されるのは、夥しい数の小型蜘蛛型ドローン──子機だ。

 

「……ッ、多すぎる!」

「囲まれるぞ!」

 各車両の無線が悲鳴に染まる。

 

 

 

 

 子機たちは金属音を立てながら四方へ散開し、群れを成して車列へ殺到した。

 銃撃が雨のように降り注ぎ、いくつもが撃ち落とされる。だが数は減らない。次から次へと湧き出し、地面を覆い尽くす。

 

 

 

 

 

 アキラは眉をひそめ、ハンドルを切った。

『アルファ! 左後方から来てる!!』

『回避推奨よ! 角度三十度!!』

 即答に従い、車体を傾け急旋回。タイヤが砂を噛み、横滑りの衝撃で助手席が大きく揺れた。

 

「うわッ!」

 トガミが叫び、体が座席から浮く。シートベルトを締めていない身体は慣性で外へ引き出され、半身がドアを越えて宙に浮いた。

 

 

 

 

 

 瞬間、命綱が限界まで張り、トガミの身体が車外にぶら下がる。

「う、ぐあッ──!」

 

 

 

 アキラはハンドルを片手で押さえ、もう片方で命綱を掴み、乱暴にトガミを車内へ引き戻した。

「あ、ありがとう! 助かった!」

 

「目の前で死なれたら夢見が悪いからな! 生きて帰るぞ!」

 アキラはトガミを元気つけるように背中を叩く。

 

「あ、ああ」

トガミの精神は限界だった。

 

 

 

 

 

 

 だが状況は待ってくれない。子機の群れはなおも押し寄せ、車列全体が悲鳴を上げていた。

 アキラは今回の賞金首討伐に向けて装備を整えてきた。タンクランチュラやその子機のヘイトは相変わらずアキラに向くが、金にものを言わせた銃たちでアキラは冷静に対応する。

 

 

 すでに車の操縦はアルファに任せ、アキラは両手で別々の銃を持ちひたすら火力とタンクとしての役割を果たそうとする。

 

 

 先ほどトガミが社外から放り出されるような急旋回であっても、アキラは持ち前のパワーと強化服の制御やアルファのサポートで対応できていた。また明らかに数の多い子機たちをBSS突撃銃で対応し、タンクランチュラをWSB狙撃銃で狙い撃つ。

 

「見ろ! 蜘蛛がゴミのようだ! 素晴らしいとは思わんかね!!」

 

 

 そうアキラに煽られ、何もできないトガミは歯を食いしばる。自分の実力はこんなものだったのか? 自分はここまでなのか。また俺は気に入らないやつに負けてしまうのか。トガミは思考のるつぼにはまってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 だがそうふざけるアキラにも限界が見えてくる。それは人手不足という単純明快な理由だった。

 アキラが頑張りすぎるせいで、本来であれば分散されるべきヘイト管理がアキラに集中しまっている。武器はほかにも持ってきているがアキラには二本の腕しかない。

 

(せめてネルゴさんみたいに腕が何本かあれば、な!)

 だが後の祭りだ。そのネルゴは今回参加していないのだから。

 

 

 

 

 

 

 アキラは体感時間圧縮を瞬間瞬間で行いながら敵を倒していくがこのままだとジリ貧だと悟った。

 

 分割思考の中で、ふとアキラは別のアプローチをすることにした。

 

 

 

 

 

「トガミ!! まだやれるか! まだお前に、勇気は残ってるか!!」

 

「あ、当たり前だ!! 誰に言ってる!」

 

 トガミはまだ戦える。まだ折れてないとアキラに強がった。その勇気にアキラは行動で示す。

 

「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ! 『恐怖』を我が物とすることだッ! 人間讃歌は『勇気』の讃歌ッ!! あのノミ以下の蜘蛛野郎を倒すんだろ!!」

 

 

 

 アキラはさらにトガミを励ます。いま落ち込んでいる彼が、少しでも使える男になることを期待して。

 

 

 

 

 

「なら使え! 俺のこの銃の名はDESガン! DES複合銃だ!! 死ぬ気の炎で打ちまくれ!!!」

 

 アキラは自分の力だけではさばききれないと悟り、先日購入したDES複合銃をトガミに渡した。

 

「……ッ! 感謝はしないぞ!!」

 

 そうしてトガミもアキラとともに打ち始める。反動がかなりキツイがそれでも打つのをやめない。

 

 それはただの男の矜持だった。二度も同じ同年代に負けたと感じてしまったのだ。カツヤに、そしてアキラに負けたと感じたその折れたプライドをもう一度取り戻すトガミのプライド革命は今始まったのだ。

 

 

 

(そうだ、トガミ。俺たちにできることは覚悟! それだけだ。少しいい眼光になった!!)

 

 

 

 アキラには黄金の魂はない。だが、その人間賛歌を覚悟を大事にする精神は彼にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『二度目の一斉射撃準備! 目標座標に向けて発射する!! タイミングを合わせろ!』

 シカラベの声が飛ぶ。

 

 

「了解! でも、剥がされるぞ!」

 ヤマノベが叫ぶ。子機が器用にマーカーを掻き落とし、誘導が途切れていく。

 

『構わん、座標で撃て! 弾を惜しむな!』

 

 再び轟音。

 しかし誘導を失ったロケットの多くは、子機の迎撃で空中爆発し、標的に届いたのは半分にも満たなかった。

 

 

 

 無線は絶望で満ちる。

「ダメだ! 通らねえ!」

「このままじゃ……!」

 

 アキラは奥歯を噛み、舌打ちをした。

(ジリ貧だ。このままじゃ押し潰される、いや勝てるかもしれないが! 何か別の手はないのか!!)

 

 

 

 

 

「……シカラベ」

 無線が開かれる。

「俺が行く。単騎で突っ込む」

 

『何だと!? 正気か! 死ぬぞ!』

 

「このままじゃ全員死ぬ。だったら俺一人で済ませる方がマシだ。何よりあとは消化試合だ! この機にでかいモンスターとの戦闘経験を積んでおきたい!!」

 アキラの声は熱を帯びていた。トガミが見せた漢を、自身も返さなければ無作法というもの。

 

 

 

『危険度は高いわ。でも今の装備なら可能ね……』

 アルファの冷静な評価が耳奥で響く。

 

「……その分、成果報酬に色を付けろよ!」

 アキラは短く言い放った。

 

 一瞬、戦場の無線が沈黙する。

 

 

 

 シカラベの低い舌打ちが聞こえた後、短い声が返る。

『……いいだろう。頼むぞ、アキラ』

 

 

 

 

 

 同時に、別の無線が割り込んだ。

『だったらせめてカバーしてやる! なぁに、一緒に死ぬ気はない!! エスコートぐらいはしてやるよ!』

 パルガだった。

 

 次の瞬間、再び戦場に白煙が広がる。擲弾から吐き出された煙幕がタンクランチュラ周囲を覆い、子機の群れを乱す。

 

 アキラはそれを見届け、短く息を吐いた。

『最終ラウンドだ……ここで決着をつける! アルファ! カバー任せたぞ!!』

 

『ええ! 任せなさい! 私もリードするわ! Shall we dance?』

 

『Of course!!さぁ、踊りなさい。わたくし、アキラとアルファの奏でる円舞曲(ワルツ)で!』*1

 

 

 

 彼はバイクを解放し、エンジンをかける。

 爆音が砂を揺らし、黒い煙を背に加速する。

 

 巨体へ──死地へ──一直線に。

 

 

 

 

 

 バイクが砂を切り裂くように疾走する。

 背後では車列が子機の群れに足止めされ、仲間たちの無線が悲鳴のように飛び交っていた。

 

『アキラ! 無茶すんな!』

『戻れ! 死ぬぞ!』

 

『戦わなければ、勝てない!! 何より、馬鹿みたいに死ぬつもりは、毛頭ない!』

 アキラは叫ぶ

 

 それらすべてを振り切り、アキラはハンドルを握り締めた。

 煙幕の中、視界は歪み、タンクランチュラの巨体はぼんやりと影の塊にしか見えない。

 だが──脳裏には鮮明に弱点の位置が浮かんでいた。最初の一斉射で装甲が剥がれた裂け目。そこに弾を叩き込めば、勝機はある。 

 

 

 

 

『速度を維持。次の揺れで子機が割り込んでくるわ』

 アルファの声が鼓膜に直接響く。

 アキラは反射的に体重を傾け、バイクを横滑りさせる。直後、数体の子機が目前に飛び込んできて、空振りの爪を砂に突き立てた。

 

 ハンドルを起こし、再加速。心臓の鼓動がエンジンの震動と同調する。

 

(行ける……まだ行ける)

 

 目前に迫る巨影。

 タンクランチュラの赤い複眼が煙を透かし、アキラを捉えた。

 巨砲が旋回し、照準が閃く。

 

『回避行動!』

 アルファの指示に従い、アキラは車体を跳ねさせるようにハンドルを切る。

 直後、砲弾が背後で爆ぜ、砂と金属片が雨のように降り注いだ。

 

 視界の奥に、あの裂け目が見える。

 狙うべき一点──今しかない。

 

 アキラには蜘蛛特攻の律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)はない。あるのは肩にあるロケットランチャーだけだ。

 

 

 アキラはロケットランチャーを肩に担ぎなおし、トリガーへ指をかけた。

 その瞬間だけ、世界は静止したかのように思えた。

 

(ここで決める……俺が──!)

 

「──くたばりやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界が白光で弾け、衝撃が肩を裂く。ロケット弾は一直線に巨体の裂け目へ吸い込まれ、内側で爆ぜた。

 

 轟音。爆炎。

 タンクランチュラの巨体が震え、腹部が裏返るように吹き飛んだ。

 黒い液体と破片が四方に飛び散り、子機の群れが一斉に軋み声を上げて崩れる。

 

「今だ! 撃て!」

 シカラベの声が無線を叩く。

 

 次の瞬間、残った全員のロケットランチャーが火を噴いた。

 無数の軌跡が空を裂き、損壊した装甲の隙間に殺到する。

 爆炎の連鎖。巨体が大きくのけぞり、脚が一本、二本と砕けていく。

 

 巨体はすでに動かず、最後の脚の一本がけたたましい音を立てて地面に崩れ落ちる。黒い液体が砂に染み込み、熱気と血臭と金属の焦げる匂いが入り混じった。

 

 

 最後に絶叫とも機械音ともつかぬ轟鳴を上げ、タンクランチュラは崩れ落ちた。

 砂煙が辺りを覆い、静寂が訪れる。

 

 

 アキラはハンドルを握り直し、息を吐いた。

 

(タンクランチュラさん、聞こえますか? オレ達からあなたへの鎮魂曲(レクイエム)です……)

 

 

 

 

 

 

 背後からは歓声と混じる安堵の声が無線を埋め尽くす。

 

『やったぞ……!』『倒した!』『勝ったんだ!』『勝ったッ! 第3部完!』『タンクランチュラ! おまえは運命に負けたんだ!』

 歓声と安堵が溢れ、誰もが声を上げる。

 

 だがアキラは冷めた顔のまま、バイクを止めた。

 まだ心臓は荒ぶる鼓動を刻んでいるが、それを表に出す気はなかった。

 

『アキラ』

 低い声が無線に割り込んだ。シカラベだ。

『……よくやった。借りは大きいぞ』

 

「なら報酬に色をつけてもらわないとな」

 アキラはあっさりと返した。感謝を受け止めるより先に、実利を確かめる。

 

 

 

 無線の向こうで短い沈黙が走り、やがてシカラベが苦笑混じりに答える。

『当然だ。約束は守る。今日の立役者はお前だ』

 なおシカラベは支払いをどうしようか真面目に考えていた。アキラが死んだら払わなくてもいいか、とも思ていたからだ。もっともアキラがそんなすぐ死ぬようなタマではないことも、わかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そのやり取りに、他のハンターたちは複雑な声を漏らした。

「チッ……やっぱりあいつ、只者じゃねえ」

「なんてガキだよ…」

「ただのガキじゃねぇぞ!ド級のガキ、ドガキだ!」

 

 

 

 

 

 その中で、特に声を荒げたのはトガミだった。

 助手席に座り込んだ彼は、歯ぎしりしながらアキラを睨みつける。

「クソッ……俺だって、もっとやれた……! こんな奴に借りを作るなんて……!」

 

 アキラはちらりとも見ず、前を向いたまま短く答える。

「……なぁに、生きてりゃいつでも借りは返せる。ひとまずはお疲れ、戦友」

 

「なッ……!」

 トガミはあっけにとられたが、その勢いは続かなかった。

 戦闘の最中、命綱で救われた瞬間を思い出したのだ。

 あの屈辱と恐怖。否定しようにも、事実が喉を塞ぐ。

 

 

 

 

 握り締めた拳が膝の上で震え、唇を噛み切るほどに噛み締める。

「……絶対に借りは返す。次は俺が上だ」

 

 

 

 アキラはそれを聞き流し、無線の調整に戻った。

 

 

 彼にとっては、戦場の余韻もプライドの衝突もどうでもよかった。

 必要なのは、生き残ることと報酬を得ることだけだ。ただ男同士のぶつかり合いに楽しさは感じていた。

 

 

 

 

 砂煙の中、破壊された巨体を背景に、車列は再編されていく。

 戦闘の終わりは、次の戦いへの始まりに過ぎなかった。

 

 

 

 

*1
なお、アキラはブラックラビッ党である




アキラ「割と疲れた」
アルファ『だろうね』

読了感謝です。
モチベ的にもランキングもまた乗りたいですが、たぶん毎日投稿が必須だと思います。そんな時間ないね!
まぁそもそも評価10をいただいてる時点でくっそうれしいんですけどね。マジでマギのSS書いてた時とか評価バー緑でしたしね。

さて今回の話での原作との相違点です
・ラストアタックがアキラ。バカみたいに特攻する
・ネルゴ未参加。だってすでにドランカム入ってるから参加する理由ない
・トガミが飛び出していけ車外の彼方しない。命綱が原作で出てきてない気がするの
・アキラ、心のジョジョでトガミ慰める。ただジョジョを書きたかった

でした。細部違う点があるかと思います。じゃあ、アーニャ寝るます。

追記
ISとかジョジョとかハンターハンター好きだけど、ネタ全部わかる人いるんかな()
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