Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。祝日なんて関係ない仕事だぜ。

まずは謝罪を。三日間の投稿の予定でしたが土日に投稿できず申し訳ないです。
 書き上げることができなかったです。今回も結局最後まで書けませんでしたが、とりあえず投稿しないとと思い、キリがいいところまで書きましたの投稿します。




え?遅くなった理由ですか?もちろんスランプ…よりもダンまちの新刊読んでたり、BF新作やってたりしてたのが原因です()

 あとはリビルド読み直してました。気づけば夜3時まで読んでてさすがに仕事が身につかなかったです。



怪獣蛇号

 

 

 

 

 ──砂の匂いがした。

 

 

 

 戦闘が始まる直前、カツヤは一瞬だけ過去の光景を思い出していた。

 ほんの数刻前、ミズハとのやり取りだ。

 

 ──部隊の配置がすべて整ったことを報告しに来たとき。

 その場には、なぜか一人の少女がいた。

 

「……リリー? なんでここに?」

「カツヤ! 私たちじゃ役不足ってこと!? それとも何!? カツヤが手を出した子じゃないと信用できないってでも言うの?!」

 小柄な体を精一杯に張り、彼女は大声で不満を叫ぶ。

 

 その隣で、ミズハがわずかに苦笑する。

「彼女ね、この作戦に“外部要員を入れる必要はない”って主張してるの。若手だけで十分だ、って」

 

 リリーは勢いよく頷いた。

「そうよ! 外部のハンターなんて信用できないし、足を引っ張るだけ! 私たちだけで戦える! 勝てるんだから!」

 

 その言葉に、カツヤは少し困ったように眉を下げた。

(信用してないわけじゃないんだけどな……)

 

「リリー、これは役割分担なんだよ。俺たちが主力で戦って、外部要員には補助をしてもらうだけ。何も俺たちがおんぶにだっこで頼るわけじゃない。それに外部要員を信じられないのもわかるけどさ。俺の知り合いもいるんだ、俺が信用してるエレナたちくらいは信用してくれてもいいんじゃないか? ……まぁアキラは別にいいか」

「でも! そうやって“信用できる外部”を選ぶ時点で、私たちを信用してないってことじゃない!」

 

 彼女の目はまっすぐだった。

 幼さを残しながらも、誇りと闘志で燃えていた。

 

 ああこれでは話が平行線になってしまう。そう悩み、言葉を失うカツヤに、ミズハが割って入る。

「リリー、少し落ち着きなさい。……カツヤ、外部の件はこっちで対応しておくわ。

 あなたは若手の配置確認を続けて。いい?」

「……了解」

 

 ミズハの指示に従い、カツヤは部屋を出た。

 だが、背中に残ったリリーの視線は、どこまでも熱く、痛かった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 現在。

 指揮車の中で、カツヤは無意識に拳を握っていた。

 目の前のモニターに映る自部隊の動きを見つめながら、

(俺は、指揮官としてやれているのか……?)

 という疑問が、胸の奥で膨らんでいく。

 

 ほんの数十分前、アキラにも「お前は向いてない」と言われた。

 冗談混じりの刃は、図星を刺して骨まで届く。

 

(俺は、人の顔を見すぎる。傷ついた奴が出るたび、次の判断が遅れる。それは“優しさ”じゃなく、ただの弱さだ)

 

 だが、戦いは待ってくれない。

 

 

 

(俺にできるのか? こんな俺でも大丈夫か? いや、それでもやり遂げないといけないんだ)

 

 

 

「──全隊、配置につけ! 砲撃準備!」

 自分の声がスピーカー越しに響く。

 それが自信に裏打ちされた声ではなく、

 “責任に押し出された声”であることを、カツヤ自身が一番わかっていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 ドランカム若手たちが次々にロケットランチャーを構え、荒野の前線に整列する。

 頭上ではジェネレーター車の稼働音がうなり、

 多連装マイマイ砲の砲口がスネークへと向けられた。

 

(うおでっか。ダラ・アマデュラみたいだ……)

 ドランカム若手ほど前線には近くないアキラの肉眼ですらその大きさが否応にもわかる。

 高層ビルほどもある影が、とぐろを巻いてうごめいた。

 

 過合成スネーク──旧世界の生体兵器。光沢を帯びた外皮は金属にも肉にも見え、吸い込む息で砂を巻き上げ、吐き出すたび地平線が揺れる。

 

 

 

 

 

 その中でもカツヤは冷静に指揮官としてあろうとした。

 

(でかい。適当に撃っても当たる。だけど、だからこそ“倒し方”を間違えちゃいけない!!)

 

「全班、射撃準備完了!」

「いいか、焦るな! 照準を安定させて──」

 

 

 

 

 

 

 荒野に響くのは、一定の間隔で繰り返される爆音だけだった。

 若手たちは隊列を崩さないまま、ロケットランチャーを肩に乗せ、黙々とトリガーを引く。

 

 閃光、爆煙、着弾。高層ビル並みの巨体──過合成スネークは、ただそこにいるだけでひたすらミサイルの雨を浴びていた。かかるのは虹ではなく血肉であり趣もなにもありはしない。いとおかし(迫真)

 

 過合成スネークは呻くでものたうつでもなく、装甲を焦がされるたびに薄く蒸気を上げるだけで、致命的な反応は見せていない。

 

 

 

「いい、いい。角度そのまま。照準、焦らないで」

 指揮車のユミナが冷静に声を飛ばす。アイリが通信を束ね、各班の弾薬残量と冷却インターバルを回していく。

「出力、安定。外装温度、微増……自己修復の兆候あり。──けど、今は撃ち続けて」

 

 とカツヤが言っていると言外に言いながら、あくまでカツヤの指示であると装いユミナとアイリはカツヤの指揮をサポートする。

 

 

 

 

 数十分。若手A班は“安全に撃つ”ことを馬鹿の一つ覚えのように続けていた。ただ安全に削りきる。誰も死傷者は出さずに、みんなのためと、カツヤは指揮を続ける。

 自身の足りない指示は彼女二人に任せる。理想的だった、ただカツヤの不安を除いては。

 

 

 

(このペースなら、いける。時間がかかってもいい。俺が指示できなくてもユミナとアイリがサポートしてくれる)

 

 

 では、(カツヤ)の役割は? 

 

 ふと脳裏に自己嫌悪の刃がカツヤを襲おうとするが、それを必死に胸を抑えるように握り閉める。そして蓋をして棚に上げる。いまは考えるべきじゃないと。

 

 

 

 

 カツヤは自分の胸の奥に灯った、頼りない火を掌で庇うように見つめていた。あとは、焦らないこと。誰かが“やった”と叫ばないこと。──そう思った、そのときだ。

 

 

 

「──おい、あれ、前へ出てないか?」

「ちょ、ちょっと待って。あの砲車……誰が動かしてるの!?」

 

 砂煙の向こう、ジェネレーター車とニコイチの“多連装マイマイ主砲車”が、静止位置からじりじりと前へ。

 通信が一斉にざわめき、ユミナの声が鋭く跳ねた。

「主砲車、止まりなさい! 勝手な移動は──」

 

『──任せて! 今から、私があいつを倒すから!! 任せて!』

 

 

 短く、若い声。カツヤの胃が冷たく縮む。

(リリー……! お前、なんでそこに──)

 

 

 カツヤはすぐさま叫びリリーの無謀とも思える命令違反を止めようとる。

「リリー、止まれ! それはまだ使うタイミングじゃない! それに過合成スネークに近づきすぎだ!! いいから下がってくれ!!」

 

 

『カツヤ! まだ私を信用できないの!? だったら証明するんだから!! 大丈夫! 私たち若手だけで勝てるって、証明するの!』

 

 ジェネレーターが悲鳴を上げ、主砲のゲージが急激に跳ね上がる。

 カツヤは息を呑み、叫んだ。

「発射待て! まだ──」

 

 

 

 轟光。

 

 

 耳の奥を焼くような白が、荒野を貫いた。

 多連装マイマイ砲の束が一斉に火を噴き、飛び出し、宇宙の彼方から目の前にぶち抜いていく編束された光条がスネークの胴体に突き刺さる。

 装甲が裂け、青白い霧が噴き上がる。

 

 

 

「やった! 見た!? これで倒したはず!! 私たちの勝利よ!!」

 興奮に震える声が無線を満たし、前線の数人が思わず歓声を上げた。

 

 

 

 次の瞬間、世界が沈む。

 

 スネークの巨体が、微かに身震いした──ように見えた。

 そして、呼吸を一拍置いて、筋肉の束が一斉に収縮する。

 とぐろ。

 巨大な蛇が“守り”に入る動作。外套のように体節を重ね、被弾箇所を内側へ隠す。

 地面が鳴る。砂が逃げる。戦いはフェーズ2へと移行した。

 

 

 

 

「全隊、距離を取れ! いったん下がって、足を止めて射撃を継続──」

 

 ──しかし、若手の耳には、別の言葉が聞こえていた。

 

 

「今だろ!? 装甲がはがれてる!」

「押せ押せ攻め込め! 」

「今が好機だ! 決めろ!」

「もっと近くから撃てばもっとダメージが入る! いまだみんな! ロケラン装填、前へ!」

 

 

 前線の列が、わずかに形を崩す。

 一人が駆け出す。二人目が続く。

 隊列は、連鎖する。

 

 

「待て! 命令無視だ、止まれ!」

 カツヤの声が掠れる。自分でも分かるほど、必死の色が混じっていた。

「頼む! みんな行くな! 下がれ!」

 

 誰も止まらない。

 誰も振り返らない。

「やれる」「今なら」「決める」──熱に浮かされた言葉だけが前へ前へ押し出していく。

 

 

(聞けよ。頼む、ここで引け)

 喉の奥で、乾いた音がした。

(俺の命令じゃなくていい。誰かの声でもいい。今は止まってくれ──!)

 

「前列、戻れ! 撃つならここからだ! 近接は禁じ──」

 

 彼らは突っ込んだ。

 ロケットの炎尾が砂を焼き、肩口の反動が体を前へ流す。

 スネークのとぐろはさらに厚みを増し、巻かれた体節が地表を抉る。

 亀裂が走り、熱が膨張し、空気が悲鳴を上げた。

 そしてとぐろを巻いていた過合成スネークが鎌首をもたげる。

 

「ま、まずい、止まれぇぇぇぇ!!」

 

 カツヤの絶叫と、巨体の“叩き付け”は、同時だった。

 

 

 

 

 ズドォォォン──! 

 

 

 

 地面が反転するような衝撃。

 砂と金属片と肉片が混ざった何かが空へ舞う。

 若手の列は、踏まれた。押し潰された。巻き込まれて、もぎ取られた。

 横合いで、リリーの乗る主砲車がとぐろの裾に弾かれ、片輪が浮いて──

 

 

 

 

 

 横転。

 砲車が回転しながら地面に叩きつけられ、ジェネレーター車がその重量ごと押し潰される。

 火の柱。

 通信が爆裂音で寸断される。

 次いで、誰かの息の音だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

「……前衛、半壊──」アイリの声が震える。

「回線……救難要請が、重複して──」

「ユミナ、退避路確保! 生存反応優先!」

 ユミナの指示が飛ぶ。だが、前列の耳に届くには遅すぎた。

 

 

 

 荒野に、巨体が叩きつけられた余震が遅れて届く。地面の奥で岩盤が呻き、砂丘の斜面がさらさらと崩れ落ちていく。

 指揮車の中、カツヤは手摺に縋りついたまま、汗で滑る掌を握り直した。

 

 

 

(俺は──指揮官として、何も出来てない)

 

 

 

 命令は届かなかった。止めろと言っても、誰も止まらなかった。

 結果は、見ての通りだ。ロケランを抱えた若手の列は踏み荒らされ、救難の呼び声と、ちぎれた通信が空電に溶けていく。

 

 

 

(じゃあ、俺に出来ることは何だ。何をしたい──)

 

 

 

 

 答えは、考えるより先に身体が出た。

 

 

 

「ユミナ、アイリ。──指揮は任せる。俺は前に出る!」

「ダメ! なに言ってるのカツヤ! 一人で死地に行くつもり!?」

「違う。みんなを“生かす”ために行くんだ。俺が囮になる。──その間に、みんなを救出してくれ」

 

 

 

 ユミナが歯を食いしばる音がインカムに乗った。

「……分かった。後方指揮は私とアイリがやる。絶対に戻ってきなさい」

「任せた」

 

 

 

 ハッチを押し上げ、熱風に身体を晒す。

 バイクに跨る一瞬、胸のどこかが“折れる”音を聞いた。指揮官であることをやめる音だ。

 代わりに、前へ行く足が軽くなる。

 

 

(失わせない。これ以上は)

 

 

 バイクにまたがり、エンジンを一度だけ空吹かし──スロットルを全開。

 ユミナとアイリの静止を、砂煙がさらっていった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「どうする……ユミナ?」

 

 

 アイリの声は震えていた。指揮車のモニターに、真っ赤な救難シグナルが雪崩れるように増えていく。

 ユミナは目を閉じ、ほんの一拍だけ迷った。カツヤを止めたい。出来るなら、今すぐにでも後ろ襟を掴んで引き戻したい。だが──

 

 

 

(私が行けば、ここが空く。ここが空けば、誰も動かなくなる。今の若手は、まだ“私の指示”だけでは動かない。──“カツヤが言っている”と、言い添えない限り)

 

 

 

 迷い落着きのない指先が、ふと止まる。

 

(……いる。ちょうどいい位置に。若手の列と外部要員の間に彼はいる。ドランカムの若手としてごまかせて、しかも、あの無茶な奇行についていける彼なら──)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユミナはチャンネルを切り替えた。

「アキラ、聞こえる?」

 

 

 

 ◆

 

 

 砂塵の海に、閃光が連続して咲いた。

 耳を劈くような轟音。

 その中心を突っ切って、一台のバイクが突進していく。

 あの走り方、あの無茶な加速──カツヤしかいない。

 

「おいおい……さすがに冗談だろ? レイド戦に単騎で突っ込むなんて……バカだろ*1

 アキラは望遠スコープ越しに呟いた

 照準の先、スネークの巨体の下で、燃えるような影が走っていた。

 

 

『彼、たぶん無断で単騎突入したわね』

 アルファの声が冷静に響く。

「あいつの顔見りゃわかる、くっそ表情曇ってるし」

『止めないの?』

「止められるかよ、あれは英雄ムーブってやつだ、俺の柄じゃないだろ」

『でも行けって言われたら行くつもりよね?』

「もちろん。……死にたくはないが、友人が目の前で死にかけてるときに日和ってるやつじゃねぇよ」

 

 

 

 

 短い間をおいて、アキラの無線に指揮車から連絡が入る。

『アキラ、聞こえる?』

「聞こえてる。いまバカみたいにバイクで飛び出したカツヤを見た気がするんだけど……気のせいであってほしいんだけど……あいつ指揮官だろ?」

 

『いえ、気のせいじゃないの。そして、お願い……いや命令よ。──カツヤを手伝って』

「……報酬は? ちゃんと“無茶した分”も出るんだよな?」

 

 ユミナは迷いなく言い切った。

『頑張るわ! 具体的には……カツヤが!』

「はは。言質は取ったからな。じゃ、精いっぱい働くとするか」

 

 通信が切れるのと同時に、外周の砂煙が別の向きに弾けた。

 アキラの車が、エンジンの唸りを上げて走り出す。

 

 

 

 

 

 *

 

「──さぁ、命令だ。死なない程度に稼ぎに行くぞ」『サポート全開で頼む』

『了解。全力でやるわ。ただし負荷が凄いから今のうちに回復薬を飲んでおいて。あと口腔内に含んでおいて、適度に回復してね』

『リジェネね。りょーかい! さて、援護兵として頑張りますか!』

 

 アキラは運転席から首を伸ばし、ポーチから回復薬を引き抜いた。アンプルを歯で割り、薬液を舌下に含む。苦い熱が粘膜にまとわりついた。加えてタブレット型の回復薬を口腔内に入れておく。両方とも旧世界製の回復薬に近い代物で値は張るが、いまは使うべきだと思えた。

 

 

 

 

 

 

 前方、砂煙の帯が一本、彗星の尾のように伸びている。

 

(あれが、カツヤズバイクの軌跡だな。この後を追うぞ(トレース、オン)!)

 

 スロットルを踏み抜き、車体をわずかに浮かせて段差を飛ぶ。後方の外部要員が、いやいやの手つきで担架とフックを取り出すのが視界の端に見えた。

 

 

 

 

『接敵まで十秒。右前方、飛行型三、地走型五。──まとめてやれる?』

「任せろ。覚悟も実行も決断もすべて俺の役割で、負うべき責任だからな!!」

 

 

 

 ハンドルを切りつつ、ウィンドウ越しにを突き出し、DES複合銃を連射。乾いた音が続き、飛行型の腹に穴が空く。弾道が砂の上に縫い目を描き、地走型の足首を持っていく。車体の左側面を擦る影──スネークの尾。

 アキラはブレーキを一瞬だけ踏んで重心を沈め、そのまま逆ハンドルで尾を掠めて抜けた。

 

 

 

『正面、カツヤ。スネークのヘイトを取ってる。──行くわよ』

「どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!」

 

 

 視界の先で、カツヤのバイクが跳ねた。熱線が荒野に筋を刻み、爆風が砂塵を巨大な花のように咲かせる。カツヤは、その花弁の縁を掴むように滑り、ギリギリで外へ逃がす。

 

『右半身第三節、外皮が薄いわ。そこを狙うわ! いま!』

「あい!」

 

 

 アキラは車を横滑りさせて射角を開き、露出した柔肉へ徹甲連射。内圧が弾け、粘つく霧が噴き出す。

 

 

「カツヤだけにスネークからの熱い視線(ヘイト)は独占させないぞ! こっち向けや! 爬虫類モドキ!!」

『薬を飲み込んで!』

 舌の下で溶かしていた回復薬を一気に喉へ落とす。熱が食道を駆け、四肢の震えがすっと引いた。

 

 

 

「──さぁここが舞台だ! かかって、こいやぁあああああ!」

 

 

 スネークの眼孔がアキラを捉える。喉の奥でエネルギーが集まり、白熱の奔流が吐き出される直前、アルファは車を全力でハンドルを回し紙一重で避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようカツヤ、俺も混ぜろよ!」

「な、なんで来た!?」

「ユミナに頼まれたんだよ! それにヘイトもポートフォリオも分散したほうがいい!」

「ポートなんとかはわかんないけど……よし手を貸せ! 指揮官命令だ!!」

「ハンドラー1、了解!!」

 

 

 

 

 一瞬で、呼吸が合った。

 カツヤが右へ膨らんで視線と尾を引き、アキラが左から節間へ突っ込む。

 スネークが左へヘイトをとれば、アキラが射って後退。

 スネークが右へ体節を巻けば、カツヤがバイクで腹を掠めて徹甲を置いていく。

 

 

 

 まさに“阿吽の呼吸”であり、気色の悪いことに彼らは意図せず、自然にそうしていた。

 主人公格二人が互いを支えあい、互いに戦う。

 互いの癖を知っている。

 互いに「ここで引く」「ここで押す」を嗅ぎ分けている。

 砂が割れ、熱線が跳ね、尾が砲台を折る。──それでも二つの点は、決して交差せず、必要な瞬間にだけ重なる。

 

 

 

『生存者の回収が始まった。外部要員、渋々だけど動いてる。“ドランカムの若手”が囮をしてるうちに、担架を回すって』

「よし。こっちはまだ行ける。カツヤ、右の節、抑えるぞ!」

「任せろ!」

 

 

 そこからは、ただの“作業”だった。

 アキラがヘイトを集め、スネークの首を左に振らせる。

 カツヤがその死角から節間を穿ち、傷口へ爆薬を滑り込ませる。

 炸裂、痙攣。スネークの動きが半拍遅れる。

 回復の熱が、口腔の残滓からじわじわと浸みてくる。

 

 

『次の周期でかなり削れるはずよが。──三、二、一』

「合わせろカツヤ! ──三、二、一、いま!」

 

 

 アキラとカツヤが腹側に飛び込み、全弾を節間へ叩き込む。

 巨体が「痛い」と初めて告げるように、短く鳴いた。

 

 

 

 

 その隙に、カツヤがアキラに目線をやり、そのあとにマイマイ砲車両に、リリーの元へ向かう。

(まぁ、いいか。しばらくは俺だけでもヘイト買えるだろ)

 

 

 

 

 

 

 アキラはハンドルを切り、スネークの眼孔の正面へ踊り出た。

「ほらー鬼さんこちら、手のなるほうへ!」

 

 

 

 白熱光。

 視界が真っ白に弾ける。

 アルファのカウントだけが、冷たく脳裏で進む。

『一秒、二秒、──はい、避けて』

 横へ跳ぶ。尾が遅れて地面を裂く。車が一瞬宙を飛び、着地。サスペンションが悲鳴を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 外周では、外部要員たちがいやいやながらも走っていた。担架。ワイヤー。切断工具。

「くそ、割に合わねぇぞ……」「でもカツヤが前でやってんだ、今逃げたら報酬がなくなる」

「逃げたらむしろ後で請求書が飛んでくるわよ」──ユミナの皮肉混じりの指示が無線に流れ、担架の列が動線を作る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 砂煙の向こうで、カツヤは見つけた。

 半ばちぎれた装甲の陰。血に濡れた布。──下半身のないリリーが、そこにいた。

 

「……リリー」

 呼びかけに、彼女の瞼がわずかに震える。

 上半身だけの身体が、呼吸に合わせて微かに上下した。

 

「ごめん……なさい」

 擦れた声が、風にほどける。

「勝てると思ったの。──若手だけで、やれるって。認めて、ほしかったの」

 

 

「謝るのは、俺の方だ」カツヤは膝をつき、割れたバイザー越しに額を寄せた。

「止められなかった。守れなかった。……俺が、指揮官なら」

「違う。カツヤは、すごいの。前に進んで、私たちを導いて、くれる人。……だから、今も、助けてる」

 微笑みとも、痙攣ともつかない表情が、唇の端に浮かぶ。

「見てて。私、最後まで……、戦ったよ」

 

 指先が、空を掴むみたいに動いて、止まった。

 

「──任せろ。見てる。忘れない」

 

 カツヤはその手を包み、そっと地面に置いた。視界の端で、巨体がよろける。

(戻ろう、そして終わらせる)

 

『カツヤ!』アキラの声が無線を打つ。

 

 

『そろそろ俺もしんどい! 俺も助けてくれよ! てかはやく戻れ!』

「──ああ、すぐ行く」

 

 

 砂を蹴る靴音が、すぐに戦場の喧騒に混ざった。

 二つの点が、再び一つの線になる。

 

 

 アキラが笑う。

「お別れはすんだな? 死んだやつらの分も生きて、戦うぞ! 大将! ……あ、あと報酬は弾めよ?」

「……ああ。約束だ、約束したんだ。みんなの分も、あと癪だけどお前との約束も守るぞ」

「言質は取ったからな! さて、野郎ども出航だ!」

 

 

 白と黒の巨影の間を、二つの小さな光点が駆けた。

 阿吽は、もう言葉すらいらない。

 “残ったもの”を抱えて、前へ。

 ただ、前へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
おまゆう




アキラ(勝手に凸って死んだらそれは自業自得だと思うが…まぁ言わぬが仏だな)
アルファ(この試行499番めっちゃ自由すぎる。)
ユミナアイリ「「まじでサポート行ってくれるの?!」」


読了感謝です。
 読み直してて、力場装甲とか力場斥力とかを武器にアタッチメントで搭載する設定がすでに原作にあるの忘れてました。やっぱ読み直ししないといけないですね。

 マジでもう原作の詳しい内容覚えてないです。ビルの壁面で戦うのも二回するのなんて覚えてないですし、なんならキャロルと一緒に仕事してた地図屋の子なんて原作にいないしよぉ…いなかったよね?
 


あとさすがに読み直しとかもろもろの理由で4日に一回をめどに投稿することにします。すいません。支援兵で戦場を駆け抜けてたら時間ないです。

追記
怪獣8号はジャンププラスで読んでましたが途中で読むのやめましたね…作風は嫌いじゃないんですが。ヒロインの魅力が刺さらなかったのが一番の理由です。
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