Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
いつも4日に一回のペースで投稿してるし、3日間以内で投稿するなら3000字くらいでいいかと思ってました。蓋を開けたら1万字超えてました。筆が乗ったのと、キリがいいところまで書いたらこうなりました。

さて今回はカナエVsアキラ(模擬戦)あとの話です。
また例のごとく原作乖離しちゃいましたが、今回の話は一つのくぎりにもなります。もともと書きたかったプロットの一つなので、これが原因で読者の皆様が「うーん、解釈違いWお気に入りから消そW」となっても、もともとこの作品コンセプトの一つなので曲げる気はありませんのでご容赦を。
まぁサブタイ通り、修羅場です()


改めて、閲覧、感想、誤字報告、お気に入り登録、評価付与ありがとうございます。展開も更新もどんどん遅くなりつつありますが、今後も着々と書いていきます。


ウイッチクラフト修羅場ックス

 

 カナエとアキラの模擬戦を見ていた周囲の子供たちの反応は様々だが、おおよそは恐怖、畏怖、尊敬などであった。

 

 

 

 その中でもエリオだけは別方向に衝撃を受けていた。

 

「え、ちょっと待って……俺もいずれ、あの……レベルまで……?」

 

 がっくり肩を落としたエリオに、横のアリシアがぽん、と慰めの手を置く。

 

「エリオ。無理よ。あれは人の領域じゃないわ。あなたはあなたの範囲で頑張りましょう」

 

「……そうだよな」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 カナエの破れた強化服、アキラの大破した強化服、そして激闘が終わり、アキラたちとレイナたちの一団はいまだ訓練所だった場所に立っていた。

 

 カナエが手をパンと打った。

 

「そうだアキラ少年、装備買いに行くなら紹介するっすよ。

 ハンター業で繋がってる業者で、安全で信頼できるとこあるっす」

 

「助かるが……そんなに気にしなくていいぞ? 

 強化服破ったのは俺だし」

 

「いーえ? これはワタシなりの詫びっす。

 それに──」

 

「また戦うときに、安価な強化服だと戦い甲斐がないっすからね!」

(……ああ、再戦の話か)

 とアキラは素で受け止め、頷く。

 

 

 

 

 

 ひと段落ついたところで、シオリが口を開く。

 

「そういえばアキラ様は今後どのような形で活動するご予定でしょうか? 差し支えなければ教えていただきたいです」

 

 そういわれアキラは考える。

 もともとレイナ達を加入させた後は、アルファと話し合って存在する可能性の高い未発見の遺跡探索をする予定だった。そこを探索する予定もあったが、まだ遺物の在庫があるため先にそっちを捌ききりたいという本心と、遺物売買店計画や、小規模賭博場計画もまだ途中であることから、まずそっちを終わらせたいという欲求があった。

 

 

 だが、遺物売買店計画にスラム二大徒党が探りを入れてきたりしている為、機を伺いつつ当初の予定より小規模な遺物売買店に成ること。

 加えて小規模賭博場計画についても都市に睨まれないよう、キバヤシを介して都市がどの程度なら許容できるのかといったすり合わせも進んでいる。

 

 そのため『やることは多いが、進捗が芳しくない』状況であり、強引に進めるよりゆっくりと調整しようというのがアキラとシェリル、加えてアルファの意見だった。

 

 

 

 つまりアキラは今フリーであるのだ。

 

 ただその中でも候補としては、クズスハラ街遺跡ほどではないがかなり大きめの遺跡。

 

 

「そうですね。ミハゾノ街遺跡とかで考えてますね」

 

「そうなのですね。ちょうど私たちも、ミハゾノ街遺跡へ行くつもりでした。ちなみにどのような場所かご存じで?」

 

「まぁハンターオフィスが提示してる情報とかだと、ビル街遺跡で機械系モンスターの迎撃がある遺跡、ですよね?」

 とアキラが確認する。

 

「はい。単独侵入の場合は偵察ボット程度ですが……

 複数人で侵入すると、迎撃も本気になります。

 ハンターオフィスの出張所も整備されていて、宿泊も可能です」

 

「まぁそんなもんですよね」

 

 

「じゃあアキラ少年、あれっす。

 次のミハゾノ街遺跡、一緒に行こっす!」

 

「……一緒に、ねぇ」

 

 アキラは少しだけ考えたあと、頭を掻いた。

 

「悪い。最初は一人で感覚を確かめたいんだ。自分がどこまで行けるか、今の実力で測りたい」

 

 カナエは少しだけ口を尖らせ──すぐに笑った。

 

「……いいっすよ。そういうところ、嫌いじゃないっす。んじゃ、二回目からは絶対一緒っすよ?」

 

「うーん、まぁそれはその時に考えようぜ。まぁそれまでにレイナの訓練でもしておいてくれ

 

 

 アキラはシオリに向き直る。

 

「なんでシオリさん。レイナの訓練に関しては進めてもらって大丈夫です。うちの徒党から今のところレイナ達に向けた依頼は出さないつもりなんで。まぁ最悪この徒党で居座ってもらう──ーなんて曖昧な依頼でも出せばドランカムからもなんも言われないでしょうし、お互い良いように使っていきましょう」

 

「かしこまりました。詳細に関しては、シェリル様に報告したほうがいいでしょうか?」

 

「ああそうだな。それで頼む」

 

 

 そうしてその日はお開きになり、アキラとカナエは後日強化服の購入に向かうのだった。

 

 

 

 ◆

 

 数日後。

 アキラの強化服は、いまだ腹部が裂けたまま応急処置。

 徒党でも出歩けるが、とても戦える状態ではない。

 

 そんな中──

 

「アキラ少年、準備できてるっす? 行くっすよ!」

 

 カナエが強化服の破れた胸元を直した“新しいメイド風軽装”でやって来た。

 

「おう、案内頼む。強化服は早く欲しいしな」

 

「任せるっす! ウチの紹介なら安全・品質バッチリっすよ!」

 

 カナエの言う“紹介する業者”がどんなやつか分からないまま、

 アキラは素直に彼女の後についていった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 アキラとカナエは、クガマヤマビル内の装備街を歩いていた。

 

「このへん、場違い感やべぇな……」

 

 周囲には、スラム出身のアキラが普段なら絶対近づかないような店ばかりが並んでいる。

 ガラス張りのショーウィンドウの向こうには、新品同然の銃器や、最新型の強化服、旧世界端末が整然と並んでいた。

 

「気にしないっすよ。こっち側の人間が一人一緒にいるんで、堂々としてればいいっす」

 

 先を歩くカナエは、いつものメイド服姿。

 だが周囲の視線は「コスプレ」ではなく「本物」として扱っているのが分かる。

 

「着いたっす」

 

 カナエが足を止めた先には、他の店より少し落ち着いた外観のビルがあった。

 正面のプレートには、シンプルなロゴと社名が刻まれている。

 

 ──リオンテイルズ社・専属協力工房。ガルガンティア

 

(……よりによって、本家じゃなくて“そっち側”か)

 

 あのメイド服強化服を作ってる連中だと思うと、妙な汗が出る。

 

「大丈夫っすよ。見た目アレですけど、物とアフターはガチなんで」

 

「アレって言うなよ、そこのメイド服の製造元が聞いたら泣くぞ」

 

「泣いてもらってかまわないっす。現場で使う側からしたら、良ければ正義っすから」

 

 軽口を叩き合いながら、二人は自動ドアをくぐった。

 

 中は広いショールームになっていて、マネキンに着せられた各種強化服や、防具パーツが展示されている。

 受付カウンターにいた店員が、カナエの姿を見るなりぱっと表情を切り替えた。

 

「いらっしゃいませリオンテイルズ社様。いつもごひいきにありがとうございます」

 

「どもども。今日は本社関係じゃなくて、こっちの彼の相談っす」

 

 カナエは当然のようにアキラの背中を押し、前に出す。

 

「知り合いのハンターなんすけど、新しい強化服を探しててー」

 

 店員の目が「へぇ」と興味を含んでこちらを見てきている。

 

「ようこそ。当工房では、カスタムメイドの強化服を中心に扱っておりますが、一応それ以外の強化服も取り扱いしております。まずは予算と、必要とされる性能を伺ってもよろしいですか?」

 

 アキラは一瞬、アルファに視線を投げるように意識を向けた。

 

『さっきまとめた希望仕様のリスト、出してあげるわね』

 

 視界の端に、簡潔なスペック一覧がオーバーレイ表示される。

 

「統合支援型の強化服で、戦闘支援と情報収集が両方できるやつ。

 ──それと、限定的でいいから、任意の部位に力場装甲を展開できる機能が欲しい」

 

 店員の眉が、わずかに上がる。

 

「……なるほど。全身フルカバーではなく、局所的な力場装甲の展開ですね?」

 

「そうです。常時張るのはエネルギー量の問題もあるし、予算的にも苦しいところがあるんで」

 

『その判断は妥当ね。アキラの出力と今の戦闘パターンだと、常時力場装甲を張るのはオーバースペックだもの。まぁ私に任せてくれたら余裕だけどね』

 

 アルファが横でさらっと毒を吐く。

 

「あと、旧世界端末との接続と、視覚情報の補正機能が欲しいです。

 周囲の情報を拾えるほどセンサーがあればあるほどいい。……予算は、一億オーラム以内で」

 

 店員は端末に素早く入力しながら、短く唸った。

 

「……正直に申し上げますと、その条件ですと“一億以内”はかなり厳しいですね」

 

 予想はしていたが、はっきり言われると胃が痛い。

 

「参考までに、同条件で当工房の標準的な構成にした場合──」

 

 店員は端末の画面をアキラ側に向ける。

 見積りの下段には、はっきりと数字が表示されていた。

 

「おおよそ、1億4000万から5000万オーラムほどになります」

 

「……おお」

 

 思わず声が漏れる。

 

『ここからケチるなら、“力場装甲を外す”か“情報系のモジュールを削る”ことになるわね』

 

 アルファの言う通りだ。

 火力に偏らせることもできるが、それでは“アルファがいる意味”が薄れる。

 

 旧世界の情報を拾って危険を避けることが、アキラの生存率を押し上げてきた。

 ここでそれを切るのは、自殺に近い。

 

(かといって、力場装甲なしでこれから先やるのは……)

 

 ネリア、ヤジマ、タンクランチュラ、過合成スネーク。

 思い返せば、いつ死んでもおかしくなかった修羅場ばかりだ。

 

 この先も同じか、それ以上の戦いが待っている。

 

(ここでケチって死んだら……元も子もねぇか)

 

 でも、一気に1億5000万を切るとなると、貯金もがっつり削れる。

 徒党の運営にも響く金額だ。

 

「うーん……」

 

 アキラが唸っていると、横でカナエが腕を組んだ。

 

「じゃあ、その5000万は自分が払うっす」

 

「は?」

 

 反射的に二度見する。

 

「いや、待て。桁を間違えてないか?」

 

「間違えてないっすよ? 5000万オーラムっす」

 

 さらっと言うな。

 

「さすがにそれは……」

 

「この前、自分がやりすぎてアキラ少年の強化服も骨もボロボロにしたっすよね? 

 それに、ここから先もお嬢様の護衛で一緒に戦うこともあるだろうし、アキラ少年が固くなればなるほど、自分の仕事も楽になるっす」

 

 理屈としては筋が通っている。

 が、いくらなんでもポンと出す額じゃない。

 

「とはいえ、5000万は……デカすぎる。

 借りが大きすぎると動きづらいんだよ」

 

「じゃあ、“借り”扱いじゃなくて“礼”っす。

 今までの借りと、これからの期待値込みで。

 ……それとも、自分にこれくらいの価値もないっていうっすか?」

 

 少しだけ意地悪な笑みで、カナエが首を傾げる。

 

「そうやって言質を取りに来るな」

 

『受けておいた方がいいわよ? このクラスの強化服を、今逃したら次はないわ』

 

 アルファが淡々と後押ししてくる。

 

『それに、“借り”はどうせ増え続けるわ。いまさら一つ二つ増えたところで、誤差ね』

 

「5000万は重いんだよなぁ……」

 

 頭をかきむしりながら、アキラは店員の見積もりに視線を戻す。

 

(ここで妥協したら、どうせ“あの時ケチらなきゃ良かった”って後で絶対思う)

 

 死にかけてから後悔するのは、もう飽きていた。

 

「……わかった」

 

 腹を括るように息を吐く。

 

「本体代1億5000万すべて僕が払います」

 

「え? 代わりに建て替えてあげてもいいんすよ?」

 

「5000万の借りなんか想像したくないんだよ。それ以上言うなら、買うの今ここでやめるぞ」

 

「やめないでほしいっす。アキラ少年が弱いと張り合いがないっすから!」

 

 店員が苦笑しながら、端末の確定ボタンを押した。

 

「では、その条件で正式にご契約ということでよろしいでしょうか?」

 

「ああ。納期は?」

 

「基本構成は既製品をベースにいたしますので、調整とフィッティングを含めて数日程度を予定しております。

 本日は採寸と各種設定を行い、後日最終確認という流れになります」

 

 採寸や細かい設定を終えたころには、外はすっかり暗くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 二人は工房を出て、夜の都市を歩き始める。

 

 しばらく無言で歩いたあと、カナエがふと思い出したように振り返った。

 

「ところでアキラ少年。ちょっと寄りたいところあるんすけど、いいっすか?」

 

「強化服の店の次は、どこだ? 装備屋ハシゴはさすがに財布が死ぬぞ。リボ払いも残クレも御免だからな!」

 

「大丈夫っす、財布はもう十分死んでるっすよね。

 そうじゃなくて──“お祝い”っすよ」

 

「お祝い?」

 

「新しい強化服の購入記念っす。それに装備更新をできるほど成功したアキラ少年へのお祝いっす!」

 

 言われてみれば、その通りだ。

 装備更新どころか、“次の依頼”まで辿り着けずに死んでいくハンターなんて、いくらでも見てきた。

 

「……まぁ、確かに」

 

「じゃ、ついてきてほしいっす」

 

 カナエは先導するように歩き出す。

 アキラも特に疑問を抱かず、後を追った。

 

 

 

 

 

 

 ネオンが増え、通りの雰囲気が少しずつ変わっていく。

 飲食店と娯楽施設が密集したエリアを抜け、更に奥へ。

 

(装備街ってこんな奥まで続いてたか?)

 

 違和感がじわじわと増してきたところで、カナエが足を止めた。

 

「着いたっす」

 

 アキラが顔を上げると、視界に入ってきたのは──

 武器屋でも、カスタム工房でもなかった。

 

 

 柔らかい照明に照らされた、高級感のある外観。

 入口には「宿泊・休憩可」の文字と、妙にそれっぽい意匠の看板。

 

 どう見ても、ラブなホテルだ。

 

「……おい」

 

「ん?」

 

「ここ、“装備屋”には見えないんだが」

 

「見えないっすね。装備じゃなくて、“心と身体”のメンテをする場所っすから」

 

 悪びれもせずに言い切る。

 

 

 

 

『アキラ。ここの経営母体は、医療系でも装備メーカーでもないわね』

 

『知ってる。なんとなく名前で察してる』

 

 背中に冷たい汗が伝う。

 カナエは入口の前で振り向いた。

 

「この前言ったっすよね? なんでもするって。

 あ、もちろん“できないこと”もあるっすよ。

 お嬢様殺せとか差し出せとかは、さすがに無理っす」

 

「そんな物騒な“なんでも”望むかよ」

 

「なら問題ないっす。

 今日は、いい買い物したっす。

 その“お祝い”に、アキラ少年にも──」

 

 カナエは一歩近づき、わざとらしく胸元をイジる。

 強化インナーの谷間が、街灯の光を受けてうっすらと影を落とした。

 

 

 

 

 

「全力で、つきあってほしいっす」

 

「……それ、戦闘の話じゃないよな?」

 

 

「どうとるかはアキラ少年次第っすよ?」

 

 にやり、と笑うカナエ。

 どこかでアルファが、小さくため息をついた気がした。

 

 

「いや、俺にはシェリルがいるから」

 

 そうアキラが言い訳をするがそれを遮るようにカナエがアキラをひょいと担ぐ。

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょまてよ!? HA☆NA☆SE! 離してくださいお願いします!」

 

「一名様ご案内~~っす!」

 

 

 

 今のアキラは強化服を着ているとは言え半分故障していた。

 その一方でカナエの強化服は新調されており性能も上がっている。

 つまりアキラはカナエのパワーに勝てなかった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 そのままアキラを担ぎあげたカナエは予約していた部屋にアキラと入室する。

 

 部屋内暖かい空気と、わずかに甘い香りが流れており、後にわかった事だがその部屋には媚薬成分のお香が焚かれており準備万全だったのだ。

 

 

 そうしてカナエによりベットに放り投げられたアキラはなんとか着地するが、すぐさまカナエに組み付かれ、いつもレイナに行う時のようにアキラの服を脱がせ剝いていく。

 

 そしてアキラは一糸纏わぬ姿となる。

 

「なんで年上相手だといつも俺の方が襲われてんだよ!?」

 

『まぁご愁傷様ね』

 アルファの顔から、もうたすからないゾ 。と言われているような気がした。

 

 そしてカナエが一瞬でメイド強化服を脱ぎ、強化インナーも脱衣しアキラ同様生まれたままの姿になる。

 カナエはその恵まれた肢体をアキラに見せつける。

 

 

 アキラの背筋を、一筋の冷たい汗が伝った。ああ、もう助からない……と

 

 

「じゃあいただきま~~す」

 

「ンアッー! (≧Д≦)」

 

 

 

 

 ♡

 

 

 

 

 その数時間後、つやつやなカナエと、息も絶え絶えになっているアキラの二人が行為の後の余韻に浸っていた。

 

 もっとも余韻に浸っているのはカナエだけであり、アキラはカナエ上位のプレイにより尊厳も威厳も体力も破壊されていた。

 

「いやー、流石のアキラ少年もこっちはまだまだっすねー」

 

 カナエはアキラの少年を見ながらそう言った。

 

 またアキラの少年は小さいわけではなく、なんなら同世代よりは栄養状態も健康状態も良かったため大きい方であると擁護をしておく。

 

「はーっ、はーっ、うる、せぇ!」

 肩で呼吸するアキラはカナエに返す。

 

「まーでも、思ったよりは楽しめたっす! あ、ピル飲んでるんで子供の心配は大丈夫っすよ!」

 強がるアキラを見たカナエはニヤニヤしつつ、自身の下腹部を摩りながら答える。

 

 

 

 格闘戦では善戦? したアキラだったが、ベッドの上の戦いでは勝てなかったのだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 アキラは、カナエに紹介された業者経由で強化服の相談をするため、都市に出ていた──はずだった。

 

 

 

 夕方を過ぎても戻らず、夜になっても連絡なし。

 深夜を越えて、ようやく帰ってきたのは、早朝に差しかかる頃。

 

 拠点の部屋に入ってきたアキラは、しわしわのピカチュウのような表情かつ、どこか気まずそうに視線をそらしていた。

 

「……ただいま」

 

 いつもの調子で言おうとして、わずかに声が引きつる。

 

 

 

 ベッドの端に腰かけていたシェリルは、手元の端末から顔を上げた。

 化粧も落として、寝巻き姿。目の下にはうっすらとクマができている。

 

「おかえりなさい、アキラ」

 

 声は穏やかだが、目が笑っていない。

 

「強化服の店って、そんなに“居心地がよかった”んですか?」

 

 言いながら、何かの情報を閉じるように端末の画面をスリープにする。

 

 

 

 

 アキラは肩をすくめた。

 

「……いや、その、いろいろありまして……」

 

「“いろいろ”ね」

 

 シェリルは一度だけ深く息をつき、立ち上がる。

 

「とりあえず、座ってください」

 

 指さされたのは、ベッドの端。

 アキラは観念して腰を下ろした。シェリルはその真正面、椅子を引き寄せて座る。距離は近いのに、空気は妙に遠い。

 

 

 

 

 

 しばしの沈黙。

 先に口を開いたのは、シェリルの方だった。

 

「アキラは、これからもいろんな人と関わっていくんでしょうね」

 

「……まあ、そうだな」

 

 

 

「ハンターとしても、徒党のボスとしても。仕事の相手も増えるし、助け合う人も増える。きっと、私の知らない“誰か”と親しくなることも、これから何度もあると思います」

 

 そこで一拍、言葉を切る。

 視線はアキラをまっすぐ見据えたまま。

 

 

 

 

「……それでも、私はアキラが“私を一番に思ってくれている”って、信じたいです」

 

 アキラは黙って、その言葉を飲み込んだ。

 

 

「信じたい、と思ってます。

 でもね──」

 

 シェリルは自嘲気味に微笑んだ。

 

「“信じられること”と、“信じたいと思うこと”は別なんですよ」

 

 淡々とした声なのに、指先が膝の上で強く握られている。

 

 

 

 

「だから、お願いがあります」

 

「……なんでも言ってくれ」

 

「これからアキラが、誰か“女の人”と何かしらの関わりを持つときは──」

 

 言葉が少し濁る。

 それでも、目は逸らさない。

 

「必ず、私に一報入れてください」

 

「……」

 

 

 

「私のことを案じてくれるのは嬉しいです。心配かけたくないって思ってくれるのも、すごくありがたいです」

 

 シェリルは、そこで初めて視線を落とした。

 

「でも、“私の知らないところで”女を手籠めにされるのは、御免です」

 

 その言い方は随分と辛辣だったが、自分自身にも向けられているようだった。

 

 

「重い女だって、自分でも思います。束縛したいんだろうなって分かってます」

 

 ゆっくりと顔を上げる。

 瞳は揺れているが、その色は決意に近い。

 

 

「でも、私をこうしたのはあなたです。

 

 

 

 

 

 ──責任、取ってよね?」

 

 

 

 からかい半分に言うような調子だったが、その奥にあるものは冗談ではない。

 

 

 アキラは、素直に頭を下げた。

 

「……悪かった。ほんと、ごめん」

 

 

 

 

 言い訳を挟む余地はないと自覚していた。

 サラさんとの関係、カナエさんとの関係、レイナからの思い。

 

 他の女性との距離等を曖昧に濁した自分──どれも、シェリルを傷つけるのに十分すぎた。

 

「今後は、隠すさず。……ちゃんと、話す」

 

「そうしてください。怒るかもしれないし、拗ねるかもしれないですけど、それでも知らないよりは何倍もマシです」

 

 シェリルは、ふっと力を抜くように息を吐いた。

 

「それと、もうひとつ」

 

「まだあるのか……」

 

「あります。というかこっちが本題かもしれません」

 

 

 

 

 

 シェリルは少し言い淀んでから、軽く笑った。

 

「別に、アキラが望むなら子供も産みますよ。結婚も構いません。……というか、私としてもそっちのほうが都合がいいです」

 

「……」

 

「でも、アキラはまだそれを望んでいないんですよね?」

 

 図星だった。

 アキラは小さく目を伏せる。

 

 

 

 

 アルファとの契約、死線の連続、まだ見えていない“決戦”の影。

 それらを考えれば、「家庭」や「子供」という単語を現実のものとして口にするには、あまりにも自分はガキだと自覚している。

 

 

 

 シェリルは、そんなアキラを横顔からそっと見る。

 

 

 

 

 アキラが変わったのは、初めての強化服購入前ぐらいからだ。

 

 明らかに“死に近い場所”を選ぶようになった。慎重なはずの彼が、どこかで自分の寿命を削っているような戦い方をし始めたのを、シェリルは見逃していない。

 

 

 

 

(理由は、教えてくれないけど……)

 

 それがアルファの存在であるとは知らない。

 ただ、自分の知らない“何か”がアキラの背中を押し、崖へと近づけているのだと感じていた。

 

 

 

 

 本音を言えば、徒党の運営なんて二の次でよかった。

 アキラと二人暮らしで、どこか安定した土地に移り住んで、身を隠しながら静かに暮らしていく。

 そんなありふれた未来で十分だった。

 

 

 今でも、すべてを放り投げて西部のどこかに消えるプランを捨てきれていない。

 

 

 

 

 

(それでも、アキラは止まらない)

 

 それが、彼の選んだ道で。

 自分が惚れた男の生き方なんだと思えば、否定することもできない。

 

 だからこそ、せめて──

 

(どこかで、縛っておかないと)

 

 いつのまにかどこかへ飛び去ってしまいそうなその背中を、繋ぎとめておく楔が必要だった。

 

 

 

 

 

 

 シェリルは、もう一度だけ、まっすぐアキラを見る。

 

「……本当はね。徒党なんて、どこかで売っちゃってもいいと思ってます。あるいは誰かを傀儡のトップにして、私たちはさっさと逃げるとか」

 

「逃げるって」

 

「だって、アキラが死ぬの、嫌ですから」

 

 あっさりと言い切る。

 

 

 

「でも、アキラが“やるべきことがある”から戦ってるのも知ってます。私が止めたら、多分アキラはもっと傷ついて、私にも嘘をつくようになる」

 

 それは嫌だった。

 

 

 

「だから私は、アキラが選んだ戦いを支えます。

 徒党の運営も、後ろ暗い交渉も、女関係の後始末も、できる限り全部、私がやります」

 

 そこまで言ってから、苦笑した。

 

「……なので、これ以上勝手に飛んで行かないように。さっきみたいに、ちょっとくらい足枷つけても、バチは当たりませんよね?」

 

 アキラは、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……わかってる」

 

 その言葉は、最初は重かった。

 次いで、どこか肩の荷が下りるような軽さもあった。

 

 

 

「俺も、いまはやるべき事がある。

 子供とか、家庭とか……正直まだ考えきれない。まだガキなんだ。将来のことなんか、うまく決められねぇ」

 

 

 一瞬、シェリルの胸に冷たいものが走る。

 

 

(ああ、やっぱり私は“選ばれない”んだ……)

 ああ、自身は降られたのだと、またごまかされたのだと、悲しく泣きわめきたい本心を必死に抑える。

 

 感情のままに言葉を発することも、アキラへの負担になるから。

 だからこれからも我慢しなければならないのだと、そう。

 

 

 

 

 

 

 

 そう思いかけたところで、アキラの言葉が続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……けどさ」

 

 アキラは、シェリルを真正面から見た。

 

「こんな時に、こんな感じで言うのはマジで嫌なんだけど」

 

 一度喉を鳴らし、言葉を選びなおす。

 

 

 

「俺は、シェリルにだけは誠実でいたいと、ずっと思ってる」

 

 

 

 アルファへの契約も、都市との取り決めも、徒党との責任もある。

 だが、今この瞬間のアキラの視界には、それらは一切映っていなかった。

 

 

 そこにいるのは、自分に全てをかけてしまった一人の少女だけ。

 

 

 

 

 

 

 その声音は、これまでのアキラとはどこか違って聞こえた。

 強がりも、照れ隠しも、軽口もない。

 まっすぐで、逃げも隠れもしない“覚悟”だけが乗っている。

 

 シェリルのまつ毛が震え、彼の次の言葉を待つ。

 

 

 

 

 アキラはゆっくりと姿勢を正した。

 そして──ポケットから、小さな黒いケースを取り出す。

 

 シェリルが僅かに目を見開いた。

 

 

 

 

 そのケースは、彼がずっと前から持ち歩いていた。

 旧世界の文化に由来するものだなんて、今の世界の誰も知らない。

 

 買ったのは、いつだっけ。

 

 まだハンターとしての活動が落ち着いていた頃。

 曖昧に“将来”なんて想像してもいなかった頃。

 けれど、なぜかその時──

 アキラは、小さな工房のショーケースに置かれたリングを見て、

「買っておこう」と思ったのだ。

 

 

 その理由を、今のアキラはようやく理解していた。

 

 差し出すべき相手が、この世界でたったひとりできたからだ。

 

 

 

 アキラはケースを開いた。

 

 

 

 そこには、細身の銀のリングがひとつ。

 

 この世界には存在しない“婚約指輪”という文化。

 だが、アキラにとっては──決意と誓いの象徴だった。

 

 

 

 

 

 

「だから──」

 

 深く息を吸い込む。

 覚悟を飲み込むように。

 

「全部、一通り終わったら」

 

 その先にどれだけの血と死があろうと。

 その先に自分が立っている保証などどこにもなくても。

 

「僕と、結婚していただけますか?」

 

 

 

 その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。

 

 シェリルの思考が、一瞬白く飛ぶ。

 その横で、見えない場所にいるアルファもまた、自身の演算結果と照合しきれない違和感を覚えていた。

 

『……結婚? ここで?』

 

 契約者の発言ログに、予測外のワードが追加される。

 

 

 

 

 ようやく意味を結びつけた瞬間、シェリルの目から涙が溢れた。

 

「……ほんと、ずるいです」

 

 椅子から立ち上がり、そのままアキラに飛びつく。

 

「うれしい……!」

 

 その一言に、これまで溜め込んできた不安も、嫉妬も、諦めも、全部混ざっていた。

 

 アキラは強く、彼女の身体を抱きしめる。

 

「ごめん。本当にごめん。いつもいつも迷惑かけ──」

 

 

 最後まで言わせない。

 シェリルは、アキラの言葉を自分の唇で塞いだ。

 

 それは長いキスではなかった。

 数秒、唇が触れ合っただけだ。

 

 それなのに、互いにとっては永遠にも等しく長く感じられた。

 

 唇を離し、互いの顔を見る。

 

 

 

 初めて会った頃は、シェリルの方が少し背が高かった。

 いつの間にか追い抜かれていて、それだけの時間を共に歩んできたことを、今になって思い知る。

 

(ずっと迷惑かけてきたし、これからも迷惑かけるんだろうな)

 

 それでも、とアキラは思う。

 

(だから、その全部に責任を取らなきゃならない)

 

 

 

 これから起こりうる戦いも、決戦も、別れも。

 何を失おうと、その最後に胸を張るための「覚悟」は、自分が引き受けると決めた。

 

(覚悟は、俺の担当だからな)

 

「だから、これからもよろしく」

 

 アキラが言うと、シェリルは涙を拭いながら微笑む。

 

「……ええ。これからも、末永くよろしくお願いします」

 

 

 

 アキラはその手を優しく取り、シェリルの左手薬指に──

 ゆっくりと指輪を通した。

 

 この世界に存在しない儀式。

 けれど、ふたりにとってはたった一つの意味を持つ行為だった。

 

 指輪がぴたりと収まる。

 

 シェリルは堰を切ったように泣きながら、アキラの胸に飛び込んだ。

 

 

 

 再び唇が重なり合う。

 今度は、さっきよりも少し長く。

 やがて二人は、絡めた指を離さないまま、寝室へと歩いていった。

 

 

 甘く、幸福に満ちた二人の未来を、

 世界はきっと祝福してくれる──誰もが、そう信じるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、一人のAIを除いて。

 

 

 

 

『……新規パラメータ発生。

 契約者の長期生存確率の振れ幅、許容値超過。

 今後の行動方針に、予測不能な変数が追加』

 

 アルファは、淡々とそう記録しながらも、

 演算結果と自分の中に芽生えつつある「何か」の違いに、

 ほんの少しだけ、戸惑いを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カナエ「あっ、いろいろご愁傷様っす。また強化服取りにいこうっす」
アキラ「ほんま、おまえ…」
カナエ「でも結果的によかったじゃないっすか」
アキラ「よくない!!」





ボツシーン1
アキラ「あっ、ごめん。カナエさんに絞られた後だから、そんな出n」
シェリル「うるさい、出せ!」
アキラ「赤い玉でちゃうって、止せ!アーーーーーーッ♂」
ボツシーン2
カナエ「孕めオラァ!」
アキラ「逆ぅ!てかここ青藍島だったんか?!」

読了感謝です。
修羅場ドロドロ展開を止めるためには純愛をぶつけるほかありませんでした。はい。

もともと原作シェリルがカワイソ…と思ったのが今作品を書いたきっかけの一つでもあるので、今作品くらいは幸せになってもらいます。まぁ原作も幸せそうではありますが。いったんヒロインレースに決着をつけときます。
ちなみに書いてる途中でシェリルとの絡みどうしようか…と考えてたところ、「そや!結婚させたらええやん!」となり、そっから筆が乗りました。

なお、今後アキラが他女性とフラグを立てないとは言ってない模様。


常に責任、とか覚悟、とか宣うアキラに覚悟と責任を背負ってもらいましたが、まぁこれからも脳破壊は免れないからね☆


余談
ウイッチクラフトワークスは漫画読んで世界観や背景描写が結構好きでハマった作品の一つです。もちろんつよつよヒロインとよわよわ主人公の絡みも大好きでした。高身長神スタイル美女とかそりゃ惚れるって。まぁそのヒロインが主人公にガチ恋してたんですけどね。
ドはまりして漫画も全巻持ってます。アニメOPも大好きです。カラオケでは歌いにくいですが…
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