Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
前話の感想の返事ができておらずすいません。少しえたってました。
今日のジャパンカップもまさか海外馬が一着にくると思っておらず、見事に負けました。次は勝ちます。

さて今回はミハゾノ街遺跡の導入となります。

読み直しながら書いてるんで書くスピードが襲いのだわ。それと明日からFGOで終章序が始まるそうなので余計に遅くなるかもだけど許してクレメンスなの。

それと今回出てくるグレイというキャラはオリジナルキャラだけど、一回しか出てこないキャラなので覚えないでいいです。そんなことよりも明日から12月ってことを気にして下さい。

マジで一年早いっすね…

改めて、感想、評価、お気に入り登録、誤字報告等々感謝カンゲキ雨嵐です。


アキラ付与 追放されたアキラは気ままなセカンドライフを謳歌する。 

 

 

 

虎穴に入らずんば虎子を得ずと言う。

要するにリスクを取らなきゃ手に入らないって意味だ。

 

ちなみにスラムだと孤児は薄暗い路地裏にいる模様。

ダンゴムシみたいな薄暗い場所にいるぞ!とか言ったら、人権保護団体に助走つけて殴られそうである。まぁこの世界、人権もないけどな!

 

まぁ話を戻すが、やり直した人生だったが、なぁなぁの中途半端な生き方はそう簡単には変えられず。

それでも「変えたい」と願ってしまった以上、その覚悟を持ってシェリルと将来結婚する事を決めたし、そのためにアルファと悪魔の契約をしたんだ。

 

タカキも頑張ってるし、俺も頑張らないと——。

 

で、絶対こういうバカな事を考えている時は決まって……

 

 

 

 

「ウッソだろ!なんで俺ばっか襲われてんだよ!!」

『日頃の行いのせいじゃないかしら』

「そう言われるとなんも言えねぇなぁ!」

 

そう、絶賛機械型モンスターと鬼ごっこ中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

five hours later*1

 

 

 

 

 

アキラとレイナ、シオリ、カナエの四人は、俺の車両でミハゾノ街遺跡へ向かっていた。

 

「しっかしアキラ少年、運転上手いっすね〜」

 

助手席でカナエが感心したように身を乗り出してくる。

 

「女より楽さ」*2

 

「はいはい、そういう事言う〜。で、本題なんすけど。

 ほんとに今日はアキラ少年一人で探索するんすか?」

 

前々から、俺はミハゾノ街遺跡の最初の探索は一人で行うと伝えていた。

理由はいくつかあるが、主な理由は——アルファの存在を秘匿したいからだ。

 

 

 

「まぁな。どれくらいの難易度かも、行ってみないとわかんねぇし。

 それになにより、マズくなった時に一人の方が“外聞とか気にせず”とんずらできるからな」

 

「そこまで私は弱くないと思うけど……」

 

後部座席からレイナがむっとした声を上げる。

 

「弱いとか強いとかの話じゃねぇよ」

 

俺はミラー越しにレイナを見る。

 

「はっきり言って、俺のプライドみたいなもんだ。

 どれくらい難しい遺跡かもわかんねぇのに、契約上“レイナたちの安全を確保する”って形になってるからさ。

 余裕があるかどうかもわからんうちは、無茶はしたくねぇ」

 

「……それは、そうだけど」

 

レイナが少しだけしおらしくなる。

 

俺はわざとらしく肩をすくめた。

 

「それに——」

 

「それに?」

 

「“俺を襲ってきた女”と一緒に行くの、普通に怖いからな!」

 

「えー、そんなこと言って〜。

 アキラ少年も割と乗り気だったじゃないっすか? バックから突いてくるときとか楽しげだったっすよね?」

 

「ちょ、ちょっとカナエ?!」

 

真っ赤になったレイナがカナエを指さして叫ぶ。

 

「まぁお嬢はまだ経験ないっすからね〜」

 

「そんなこと、い、言わなくていいから!! 黙りなさい!」

 

「そーだそーだ。俺を襲った痴女は黙れーー」

 

ノリ半分でそう言ったその直後だった。

 

 

 

カナエがすかさず身を乗り出し、俺の顔の横にスッと寄ってくる。

 

「じゃあアキラ少年が黙らせてくださいっす。

 ほら、私の口を“唇で”ふさいでもいいっすよ〜?」

 

「近い前が見えない近いいいにおいがする近い!!」

 

反射的にブレーキを踏みそうになったが、必死で自制する。

 

 

 

「いやいやいや!!

 黙らせるの意味をなんでそっち基準にしてんだお前は!?

 普通“口をふさぐ”って言ったら、手で押さえるだろ!!」

 

「へぇ〜? アキラ少年の“普通”って、その程度なんすね?」

 

「その程度でいいんだよッ!!」

 

後部座席で、シオリはこめかみを押さえていた。

 

「……カナエ、やめなさい。運転中にふざけすぎると危ないです」

 

「えー? だってシオリねぇさん、顔真っ赤になってるレイナ様お嬢様可愛くないっすか?」

 

「カナエ!!」

 

レイナの耳まで真っ赤だ。恥ずかしさと怒りと混乱で、さっきまでのしおらしさは跡形もない。

 

「む、無駄口……黙れって言ったでしょ!!」

 

「じゃあアキラ少年が黙らせてくれたら黙るっすよ?」

 

カナエが俺にウインクしながら、さらに距離を詰めてくる。

 

「よし」

 

俺は片手でカナエの額をぐいっと押し返した。

 

「おおおぉぉ?! なにすんすか!!」

 

「物理的に黙らせるんだよ。ほら離れろ、前見えねぇだろうが」

 

「ひっど! レディの扱いが雑!!」

 

「強姦魔相手にレディ扱いは難しいなぁ!」

 

「うるせぇっす!」

 

「おまっ!! 」

 

「あーーーーもう滅茶苦茶よ!!!」

 

レイナは“(死にたい……)”という顔で天井を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

シオリは深く深く溜息をつく。

 

 

車内の騒ぎは、荒野の風よりも賑やかだった。

 

その時——レイナが、何かがプツンと切れたように顔を上げた。

 

「……じゃ、じゃあ……っ!」

 

「ん?」

 

「じゃあアキラが、私の……処女を奪いなさいよ!!」

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

車内が一瞬で静まり返った。

タイヤのロードノイズだけがやけに耳にうるさい。

 

レイナは自分で言った言葉の重さに、コンマ数秒で気づいたらしい。

 

「ご、ごめんなさい!! 今のなし!! 忘れて!!」

 

「1...2の...ポカン!アキラはさっきのはつげんをきれいにわすれた!」*3

 

俺はわざと棒読みで言う。

 

「……って言いたいとこだけど、お前ほんと大丈夫か? しんどい?一回戻るか?」

 

「やめて!変にやさしくしないで!それ以上私を恥ずかしめないで!!」

 

レイナは顔を両手で覆って震えている。

 

アルファが、俺の視界の隅で淡々と言った。

 

『ねぇアキラ。あのレイナって子も自分のものにする気?』

 

『その口、溶接したろうか』

 

 

 

 

 

少しだけ空気を落ち着かせてから、俺はわざといつもの調子で口を開いた。

 

「なぁレイナ、俺が言うのもなんだけどさ……」

 

「……な、なに……?」

 

「もう少し男を見る目を磨いた方がいいぞ」

 

「ッ……な、なにそれ……!」

 

レイナの顔がまた真っ赤になる。

 

「いや、だってさ。さっきの発言とか、選ぶ相手とか、色々ブレブレすぎ。

 お前、変なやつにホイホイついていきそうで、普通に心配なんだよ」

 

「ホ、ホイホイなんて……ついていかない……!」

 

耳まで赤くしながら、小さく拳を握りしめるレイナ。

 

そこへ、空気を読まない生き物が一匹。

 

「おーおーお嬢、図星で動揺してるじゃないっすか〜?

 “処女奪いなさいよ!”って言っちゃう時点で、絶対ほいほいついていくっすよ?」

 

「カナエ!!黙りなさい!!」

 

シオリが淡々と追い打ちをかける。

 

「……レイナ様、アキラ様の言っていることは正しいと思います。実際、カツヤ様にお熱であったじゃありませんか」

 

「うっ……シオリまで……」

 

「そういう意味では、アキラ様はある意味安全です」

 

「は? どこが?」と俺。

 

「アキラ様、基本的に他人に興味ないでしょう?

 だから変な手出しもしませんし、扱いもある程度一定なので」

 

「おー、それは確かに」

 

カナエまで頷いた。お前に言われる筋合いはない。

 

レイナは俯き、ぼそっと呟く。

 

「……そんなに、私って見る目ないのかな……」

 

「“見る目があるかないか”じゃねぇよ」

 

俺は肩をすくめる。

 

「経験がなさすぎるだけだ。スラムでも都市でも、最初はみんなそんなもんだろ?」

 

レイナはゆっくり顔を上げる。

 

俺は視線を前に向けたまま続けた。

 

「だからまぁ……慣れろ。

 変なやつに捕まるくらいなら、俺らに相談しろ。

 シェリルでも、シオリさんでもいいし。

少なくとも周りはレイナが不幸になることを望んでいないだろうからな」

 

一瞬の沈黙。

 

レイナは耳まで赤くしながら、小さく呟いた。

 

「……ありがとう」

 

カナエがにやにやしながら肘でつつく。

 

「お嬢、そういうところが男見る目ガバる原因っすよ〜?」

 

「カナエ!?」

 

 

 

「なぁシオリさん。やっぱカナエさん、殴ってでも黙らせたほうがいいかもですね」

 

「ええ、同感です。それとも車から降ろしましょうか」

 

「その時は並走して走るっすよーー!」

 

「無敵だなーーこいつ」

 

心の底から疲れた声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

ひとしきり騒ぎが落ち着き、車内に一瞬だけ静けさが戻った頃、ふと思い出して俺は口を開いた。

 

「そういや、この前強化服のメーカー紹介してもらった時思ったんだが」

 

「なんでしょうか?」

シオリが反応する。

 

「リオンテイルズ社の強化服を扱ってるーとか言ってたろ?

 正直、リオンテイルズ社の関係者だって事、あんまり知られたくないんだろうなーって。

 だから俺も“聞かない方がいいか”と思ってスルーしてたんだけど」

 

一拍おいてから続ける。

 

「カナエが俺に紹介したおかげで、それが明るみになっちゃったんだけどさ。

 それに関しては問題ないのか?」

 

俺が言い終わる前に、シオリとレイナは同時に、深いため息をついた。

 

「ま、まぁ……もう今さらですからね……」

シオリがこめかみを押さえる。

 

レイナも眉尻を下げながら続けた。

 

「私も……会社のことは、あまり触れてほしくなかったから、その気遣いは本当に嬉しいのだけど……」

 

「やっぱ気ぃ遣うだろ?

 企業絡みってどこもめんどくせぇし、下手なこと言うと社会的に死ぬからな」

 

「ええ、だから……」

 

レイナはチラッとカナエのほうを見る。

シオリも同じ方向を見る。

つられて俺も見る。

 

そして——

 

「「「カナエ(さん)が余計なことしなければ済んだ話なんだけどな……」」」

 

三者三様の溜息が、車内に響いた。

 

 

 

カナエはというと——

 

「ちょ、ちょっと! なんすかその“全部カナエが悪い”みたいな空気!?

 あれは善意っすよ!? アキラ少年に似合う強化服を紹介してあげようと思っただけで!!」

 

「善意(迷惑)なんだよなぁ……」

 

「カナエ、悪気がないのは知ってるけど……あなた、口が軽いのよ」

レイナが冷静に刺す。

 

「そ、そんな……私、レイナ様を売り込む気なんてなかったのに……!」

 

「売り込んではいないけれど、結果的に情報漏洩したのは変わりません」

シオリが静かにダメ押し。

 

「ぐふっ」

 

カナエが胸を押さえて前屈した。

 

俺は苦笑しつつ、

 

「まぁまぁ。今さら後悔しても仕方ねぇし。

 レイナの顔が割れたところで困るのはドランカムであって、ウチじゃねぇよ」

 

「それは……そうですけど」

 

レイナはまだ少し不安げだ。

 

その表情を察して、俺は続けた。

 

「安心しろ。ここでは企業ネタでお前をいじめる奴はいねぇし、

 俺もそれをネタにゆする気はねぇ。

 もし変なやつが寄ってきたら、俺が追い払ってやるから」

 

「……っ!」

 

レイナの耳が、ほんのり赤くなる。

 

シオリが咳払いして、空気を整えた。

 

「とにかく、カナエはもう少し発言に気をつけること。

 レイナお嬢様は気にしすぎです。

 アキラ様は……まぁ、いつも通りでいいと思います」

 

「おい、なんで俺だけ評価が雑なんだよ」

 

「だってアキラ様は、その“いつも通り”が一番頼りになりますから」

 

「……それ、褒めてるよな?」

 

「もちろんです」

 

照れ隠しに前を向き、アクセルを少し踏み込む。

 

後部座席では、カナエがぶつぶつ言っている。

 

「ぐすっ……私、悪くないし……ほんのちょっとしか余計なこと言ってないし……」

 

「ほんのちょっと、ねぇ……」

レイナが呆れ声を漏らした。

 

こうして車内には、またいつもの騒がしい空気が戻っていった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

ミハゾノ街に着いた俺たちは、別れて行動するとはいえ、ひとまずは四人で外郭やハンターオフィス分署を確認して回ることにした——。

 

 

 

まずは外郭と、ハンターオフィス分署の確認だ。

 

受付前の掲示板には、ミハゾノ街遺跡の簡易マップやら、諸注意やら、臨時パーティー募集の張り紙やらがずらっと並んでいる。

ついでにハンター向け各種保険のチラシも山ほど置いてあった。

 

よくある生命保険に、ハンター孤児保険、遭難保険。

「ハンター孤児保険」の文言を見て、レイナがわずかに眉をひそめる。

 

「……こういうのまであるのね」

 

「まぁ、“死んだ後のガキの面倒見てくれるなら安心して死ねる”ってやつだな」

 

言いながら、自分で言っててちょっとゲンナリする。

 

往々にして、遺跡は奥に行けば行くほど高価な遺物が残っている。

だが当然、奥に行けば行くほどモンスターの強さも比例して上がっていく。

 

ハンターたちは、自分たちの力量を測りながら、ギリギリまで深く潜って富を狙う。

そこで力量を過信して、そのまま間抜けに死んだり、取り残されたりするバカが出るわけだ。

 

そういう「リスクヘッジができないバカ」や、「それでも安全を確保したい臆病者」にとって、こういう保険は必要なんだろう。

 

まぁその分、ワンデイ保険ですら割高だし、条件もピンキリだ。

そもそもの話、リスクを取りたくないならハンターなんてやらなきゃいいんじゃねぇの、って意見は——言わぬが仏だ。

(この世界に仏教は存在しないけどな!)

 

俺はパンフレットを戻し、オフィスを出た。

 

 

 

 

そのすぐ近くには、いかにもな荒野の食堂がある。

朝から晩までミハゾノ街で稼ぎ続けて、そのままここで飯食って寝泊まりするキャンパー向けの店だ。

 

もちろん荒野料金なのでとんでもなくお高い。

けど、よう実で出てくる山菜定食*4よりは、多少マシそうな見た目をしている。

あれより酷いと、もはや食品と呼んでいいか怪しいからな。

 

 食堂の向こうでは、朝っぱらからハンターパーティーが揉めていた。

 

「グレイ! お前をこのパーティから追放する!」

 

 ……急に追放系なろうが始まった。

 

 

 

 周囲の野次馬もニヤニヤしながら見ている。

 せっかくだしと、俺もカウンターでコーヒーを注文し、そのまま追放劇を観戦することにした。

 

「な、なんだって? 俺が何をしたっていうんだ!?

 なにより俺はパーティに貢献したじゃないか!」

 

「何言ってやがる! お前がパーティ資金を使って、キャロルって嬢に注ぎ込もうとしてたのは知ってるんだからな!」

 

「ど、どうしてそれを!」

 

「しかもお前、他のパーティの人相が悪そうな女とよろしくやってたんだろ?!

 そんなに他のパーティがいいなら、さっさと出て行け!」

 

「く、くそが! まだ何もやってねぇだろ!

 ……ああわかったよ! このパーティから抜け出してやる!

 そんで向こうのパーティで成功して、お前らをザマァさせて、断罪してやる!」

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 盛り上がってるのは、当事者よりむしろ周りのバカどもだ。

 

「なんか追放流行ってんのか?」

「よーし、俺たちもせっかくだし誰か追放するか!」

 

 隣のテーブルでそんな会話が飛び交っている。

 

 そんなチー付与*5の冒頭みたいに、ノリと勢いでさくっと追放しないでくれ。

 “追放した相棒が後で天下取って戻ってくる”までがテンプレなんだよ、わかってんのか。

 

 

 目の前で追放・ざまぁ・断罪系のフルコースが朝から展開されてくれたおかげで、

 いい目覚ましにはなったらしい。

「今日はツイてる」と笑っているやつまでいる。

 

 あとは悪役令嬢さえいればコンプリートなんだがな。

 ……いや、この世界にそんな文化ないけど。

 

 

コーヒーを飲み干しながら、俺は内心で肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 

一通り、オフィスと周辺の施設を見て回ったところで、レイナたちとは一旦別行動を取ることにした。

集合は「日が暮れるまでに、駐車場か車内で」。

 

「オフィスのロビーとか食堂でも良くね?」と俺は言ったのだが、レイナは露骨に嫌そうな顔をした。

 

「ここでメイド服の従者二人連れて待ってたら、絶対目立つでしょう……。

 あまりジロジロ見られるの、好きじゃないの」

 

その気持ちは俺も理解できた。

ミハゾノ街クラスになると、金持ちのハンターや企業関係者は珍しくないが、それでもメイド二人従えたお嬢さまは、いい意味でも悪い意味でも目立つ。

 

「じゃ、車で待機ってことで。

 鍵、これ預けとくわ」

 

俺は車の合鍵をシオリに渡した。

 

「お預かりします。

 レイナ様が休めるよう、車内の片付けもしておきますね」

 

「ごめんなさい、助かるわ」

 

レイナが小さく頭を下げるのを見てから、俺は一足先に遺跡の方角へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、今乗ってきた車はシカラベから貰った報酬の車だ。

イメージとしては、トラヴァーサーマーク2*6みたいな装甲輸送車を少し小さくした感じ。

 

前に使っていた荒野用車両と違って、今回はオープン座席じゃない。

いわゆるシールド仕様、つまり屋根も扉も、全部がっつり装甲で覆われている。

 

荒野の車は基本的に、すぐモンスターを銃撃できるよう吹き抜けになってるタイプが人気だ。

撃ちやすい代わりに、当然守りはガバガバになる。

 

俺一人だけで乗るなら、それでもよかった。

けど、シェリルを乗せて荒野を走ることを考えると、吹き抜けでは銃弾や破片から守り切れない可能性がある。

 

だから今回は、防御を優先してシールド仕様。

 

需要がオープン座席より低い分、流通量も少ない。

そのうえ装甲は分厚くなるし、その鉄の塊を高速で動かせるモーターやエンジンも高性能なものが必要になる。

結果として、値段は「まぁまぁいいお値段」だったらしい。

 

六人乗りで、後部にはそれなりに遺物も積める。

屋根には銃座も載せられるし、後ろにはバイクを搭載するスペースもある。

もっと大量に遺物を回収するときは、荷台を牽引できるオプションもついてる。

 

正直、かなり気に入っている。

 

オープンじゃないおかげで外から中が見えにくく、今日みたいにメイド服二人を乗せていても、そこまで目立たないのもポイント高い。

 

大きさとしては、昔の世界の「ハイエース」より一回りデカいくらいか。

荒野を走る鉄の箱としては、わりとコンパクトな部類だろう。

 

俺はそんな相棒を一瞥してから、改めてミハゾノ街遺跡の方角を睨む。

 

——さて、ここからが本番だ。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってやつだな。

 

ただし、できれば虎に丸かじりされない範囲で、だ。丸のみも御免だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  レイナたちと別れて、一人になった。

 

 ミハゾノ街の中心部にそびえ立つ、あのバカみたいにでかいビル——通称セランタルを見上げながら、俺は小さく息を吐く。

 

「……でけぇな、おい」

 

 単純に“高い”だけじゃない。

 前世で見たアベノハルカスより、縦にも横にも一回りどころじゃなくデカい。

 高さだけでいえば東京タワー、いやスカイツリークラスだろ、これ。

 

 もちろん通天閣や京都タワーなんかとは比べものにならない。

 あっちはあっちで味のあるシルエットだけど、ここまで来るともはや「ビル」というより「縦に伸びた城塞」だ。

 

 

 

 ついでにエッフェル塔とも比べようとして、そもそもエッフェル塔を生で見たことがない事実に気づく。

 そういやエヴァでエッフェル塔が武器にされて、無残にもぶっ刺されて散ってたシーンがあったな。

 あれ、コンプライアンス的に大丈夫だったんだろうかと、当時いぶかしんだ記憶がよみがえる。

 

 ……まぁスタァライトでも東京タワーが折れたり吹っ飛んだりしてるから、今さらか。

 塔はエンタメ界隈じゃ、だいたいロクな目に遭わない運命らしい。

 

 あの時の東京観光を思い出す。

 

 ひとりで東京タワー行って、展望台でスタァライトごっこしたら、周囲の一般人にクソ真顔で見られたんだよな。

 あれはあれで、なかなかの羞恥プレイだった。

 

 ——スタァライトはいいぞ。

 あんなん見たら真似したくなるのは、オタクとして自然な流れだろ。たぶん。

 

 

 

『そろそろ思考の渦から戻ってきて、現実の方をちゃんと見なさい、アキラ』

 

「見てる見てる。見てるけど、問題は——」

 

 セランタルの足元を、アルファのマップ表示越しに眺める。

 

「……正面から行ったら普通に死にそうなんだよなぁ」

 

 ビルの周囲をうろついている機械型モンスターたち。

 どいつもこいつも、明らかに“セランタルを守ってます”って顔したゲートキーパー系の反応だ。

 

 

『セランタルの警備はかなり堅牢ね。普通は単独・初見で突っ込む場所じゃないわ』

 

「だろ?」

 

 だからと言って、ここまで来て何もせず帰るのもシャクだ。

 

「……まぁ、今日は“前哨戦”だ。

 セランタル本体は後回し。周りのビルで肩慣らししつつ、使えそうなルートがないか探す感じで行こう」

 

『賢明ね。その判断は褒めてあげる』

 

「先生に褒められたーやったー。

 じゃ、近場のビルから攻略していきますかね」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 セランタルの少し外側にある、中規模くらいのオフィスビルへと侵入した。

 

 中はどこもかしこもホコリと瓦礫まみれだが、機械系の雑魚モンスターが何匹か徘徊している。

 ちょうど良い肩慣らし相手だ。

 

 フロアを数階ぶん掃除したところで、アルファがふと口を開いた。

 

『アキラ。ちょっと立ち止まって』

 

「ん?」

 

 視界の隅に、薄く半透明のマーカーが浮かんでいる、ただのコンクリ壁の上にべったりと貼り付いている。

 

「……どう見ても、ただの壁なんだが」

 

『旧領域上では“ここに扉があります”って全力で主張してるわ』

 

「マジかよ。隠し通路か?」

 

 手探りで壁を押したり叩いたりしてみると、カン、と金属的な音が返ってきた。

 位置を変えてさらに押すと、ゴウン、と重い感触とともに壁が横へスライドする。

 

 ——隠しハッチ、確定。

 

 

 

「よし、ビンゴ。いやマジで、旧領域接続者で良かったと思う瞬間だな」

 

『でしょ? さ、降りましょう。地下に何かあるはずよ』

 

「地下、ねぇ……」

 

 ちょっとだけ嫌な予感がして、俺は先に釘を刺しておく。

 

「アルファ、地下ってさ。例の“回線”とか、どうなの?」

 

『構造的に電波は通りづらいし、旧世界の中継設備もほぼ死んでるはず。

 私との回線が悪くなったり、最悪完全に切れる可能性もあるわね』

 

「やっぱりか……」

 

 さすがに笑えない。

 

「じゃ、ルール決めとく。

 アルファとの回線が“これ以上落ちたらやばい”ってラインになったら、その時点で即撤退。

 欲張らない。死にたくない」

 

『了解。閾値は私の方でも監視しておくわ』

 

「頼んだ」

 

 そうして俺は、ハッチの向こうの暗闇へと足を踏み入れた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 地下施設は、思った以上に“生々しく”残っていた。

 

 蛍光灯はほとんど死んでいるが、非常灯の残骸や、壁に貼られた古い案内表示。

 床には社員用と思しき案内矢印が薄っすらと残っている。

 

 ただ、それらは肉眼だとほぼ判別不能で——

 

『社員食堂→』『非常階段』『セランタル連絡通路』と書いてあるらしい。

 

 

 

「……便利すぎて逆に怖ぇな、これ」

 

『便利なものは大体怖いものよ。あなたも、私もね』

 

「自分で言うのかよ」

 

 矢印に従って進んでいくと、やがて一際大きな扉に突き当たった。

 

 扉の上には、旧領域UIでしか見えないホログラム文字が浮かんでいる。

 

 ——社員食堂/STAFF DINING

 

「……社食か」

 

『中は期待できるわよ。食料庫だったら、なにかしら残っているはず』

 

「いやいや、食える状態で残ってるわけないだろ」

 

 そう文句を言いつつも、俺は扉のロックを解除して中に入った。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 そこは、大型社員食堂だった。

 

 長机と椅子、崩れかけたカウンター、奥には厨房スペース。

 壁際には冷蔵庫や自販機、食品ストッカーらしき棚も並んでいる。

 

「……思ったより、“そのまんま”だな」

 

 ライトを照らしながら、俺は棚を漁っていく。

 

 封の切られていない缶詰、レトルトパック、乾麺っぽいもの、謎の粉末飲料。

 腐って原形を留めてないのも多いが、外装だけ見るとまだマシそうなものもチラホラある。

 

「とはいえ——これはさすがにもう食えないよな……」

 

『ええ。賞味期限切れも多いでしょうしね。

 それに旧世界の住人ならまだしも、今のアキラだと“体の都合上”、消化しきれない食品とかもありそうよ』

 

「体の都合上?」

 

『腸内細菌叢とかね。

 今のあなたの身体は、“この時代の食べ物”に最適化されてるわ。

 旧世界基準の保存料とか油脂とか、負担が大きいかもしれない』

 

「なるほどなぁ……」

 

 俺は棚からひとつ、缶詰のような、レトルトパックのようなものを手に取った。

 

 自然と、裏面に視線が行く。

 成分表示、製造会社、そして——

 

 製造日と、消費期限。

 

 ……そこに何かが書いてあるのはわかる。

 けど、文字は俺には読めなかった。

 

『アキラ、見てもわかんないでしょ?』

 

「まぁ、そうなんだけどよ。

 原材料とかがわかればいいなぁと思っただけだよ」

 

 そう、濁す。

 

 本当は、違う。

 

 いつ、どのくらい前に、ここで人が暮らしていたのか。

 この街の時間軸を、数字から逆算したかった。

 

 ——数百年前か、数千年前か。

 

 その手がかりを、ここから拾えないかと思った。

 だけど、その考えをアルファに説明する気には、なんとなくなれなかった。

 

 

 

 

 

 俺は缶詰を棚に戻し、代わりに床に落ちていた別のパックを拾い上げる。

 魚のイラストが描いてあった。たぶんサンマかサバか、そんな感じの青魚。

 

「しかし“食べれないもの”ってのも色々だな……。

 過熱してないモンスターの生肉とかか?」

 

『さすがに加熱してなきゃお腹を壊すわよ。

 寄生虫もいるし、未知の毒素も多いわ』

 

「まぁ、とりあえず——リュウジ信じてるぞ、ってことで」

 

『誰?』

 

「知り合いの料理人。過度な期待をされて一瞬おもちゃになった人だよ。」

 

 ここに残ってるのは、さすがにリュウジでも救えないだろう。

 缶詰はともかく、レトルトや乾物はもう中身が崩壊している。

 

 それでも、食堂自体は面白い。

 

 厨房側に回ると、錆びたコンロやオーブン、調理器具が散乱していた。

 その中に——数本、まだ“使えそうなもの”があった。

 

「……お」

 

 比較的錆の少ない、シンプルな調理用ナイフ。

 刃はくすんでいるが、折れてはいないし、持ち手もしっかりしている。

 

『よく見つけたわね。』

 

「前から、こういうの欲しかったんだよな……」

 

 ネリアとの戦闘で、近接武器の重要性は嫌ってほど思い知らされた。

 銃とワイヤーだけじゃどうにもならない場面が、あの時いくつもあった。

 

「これなら、腰につけておいても邪魔にならねぇし。

 “いざ”って時に首とか関節狙えるしな」

 

 鞘代わりになる布を探しながら、ふと頭をよぎる。

 

「……毒入りスープなんて、さすがにないよな」

 

『なにその物騒な単語』

 

「代わりに、毒持ちモンスターはいるかもしれねぇけどな」

 

 ナイフを腰に固定し、食堂の探索を一通り終える。

 

 食料として持ち出せそうなものはほとんどないが、

 「旧世界の社員食堂がどういう構造だったか」という情報と、このナイフを拾えただけでも収穫だ。

 

『アキラ、回線品質が少し落ちてきてるわ。そろそろ“これ以上は危ない”ラインに近い』

 

「了解。じゃ、もう一箇所だけ覗いて帰るか。

 この食堂と連絡してるメイン通路、まだ先があるだろ?」

 

『……本当に“一箇所だけ”?』

 

「一箇所だけ」

 

 そう言って、俺は食堂奥の通路へと足を踏み出した。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 食堂の先には、小さな管理室と、その奥に重そうなセキュリティドアがあった。

 

 ドアには物理パネルはついておらず、その代わり——旧領域UI上に「セキュリティレベル4」と表示されている。

 

「出たよ。絶対ヤバいもん隠してる扉じゃん……」

 

『ここ、本来は管理職と技術部だけが入れる区画ね。

 ロックの形式は……問題ないわ、数分あれば解除できる』

 

「創作ものなら、ここ開けたらボス戦突入なんだよな」

 

『現実でもだいたいそうよ』

 

「やっぱそうかよ」

 

 ぶつぶつ言いつつ、アルファの指示通りに端末に触れ、配電ルートのパズルをいじっていく。

 しばらくすると、ロック表示が赤から緑に変わった。

 

『解除完了。開ける?』

 

「……ここまで来て開けなかったら、男が廃るだろ」

 

 深呼吸一つ。

 俺はドアのハンドルに手をかけ、ゆっくりと押し開けた。

 

 その向こうにあったのは——広めのホールと、その奥に並ぶ複数の端末群。

 そして、壁一面に投影された、立体的なビルのマップ。

 

『……当たりね。セランタルのフロアマップよ』

 

「マジかよ」

 

 近づいてみると、テナント一覧、フロアごとの用途、非常ルートや連絡通路の情報までびっしりと表示されている。

 リオンテイルズ社のフロアも、しっかりマークされていた。

 

「うわ、なにこれ。セランタルのフロアマップ丸ごと入ってるじゃん。

 これ、すげぇ高値で売れそう」

 

『そうね。ただ、このまま流すと“どこから拾ったのか”勘付かれるわ。

 旧領域関連のメタ情報を削って、“建物の構造データを偶然拾った”って形に編集すればいい』

 

「情報商売にも手ぇ出すか……。

 そのうちシェリルに“ちゃんと帳簿つけろ”って怒られそうだな」

 

 マップデータを端末にコピーし終えたところで、アルファが小さく警告音を鳴らした。

 

『……アキラ。さっきセキュリティを外した時点で、一部の防衛システムが再起動したみたい』

 

「ボス戦フラグ立った?」

 

『立ったわね』

 

「だよなぁ……」

 

 とはいえ、ここまでの収穫を考えれば、そろそろ引き上げるべきだろう。

 

「よし。じゃあ今日はこれで——」

 

 そう言いながら、ホールの奥にあるもう一枚の扉に、つい視線が行ってしまった。

 

 ——気になる。

 

『アキラ』

 

「わかってる。“開けたらボス戦”だよな。

 わかってるけど……」

 

 少しだけ。

 中を覗くだけ。

 開けて、見て、すぐ閉めれば——

 

『死亡フラグを自分で説明しながら立てるの、やめない?』

 

「中身だけ確認したら帰るって。俺だって学習はしてるんだよ」

 

 言い訳をしながら、俺はその扉の前に立った。

 

「……失礼しまーす」

 

 そっと、扉を押し開ける。

 

 ——そこには。

 

 薄暗いホールの中央に、巨大な機械仕掛けの“何か”が鎮座していた。

 複数の砲塔とセンサーアイ、脚部と思しき多関節のフレーム。

 どう見ても、“セランタル方面のゲートキーパーくん”です本当にありがとうございました、という風格。

 

 開いた扉の隙間から差し込んだ光に反応してか、そのセンサーアイの一つがギロッとこちらを向く。

 

 目が合った。

 

「あ、お邪魔しましたーー」

 

 反射的に、スッと扉を閉めた。

 

『アキラ、今ので完全にロックオンされたわ』

 

「知ってる!!」

 

 踵を返し、一気に駆け出す。

 

『背後から高速反応接近中。

 はい、鬼ごっこのお時間よ』

 

「だから嫌なんだよ地下探索って!!」

 

 非常口ルートを全力で引き返しながら、俺は心底から叫んだ。

 

 

 

 ——で。

 

 絶対こういうバカなことを考えてる時は決まって——

 

「ウッソだろ! なんで俺ばっか襲われてんだよ!!」

 

『日頃の行いのせいじゃないかしら』

 

「そう言われるとなんも言えねぇなぁ!!」

 

 そう、現在進行形で機械型モンスターと鬼ごっこ中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
スポンジボブ風

*2
アキラはコブラでもない

*3
ポケモンで技を忘れるときの効果音。というかなぜあんな簡単に忘れることができるんだ。

*4
ようこそ実力至上主義の教室へというラノベで出てくる食堂の無料定食。おいしくないらしい。二次創作でもよく見る人気メニュー(大嘘)

*5
追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 という漫画の一ページ目

*6
バトルフィールド6の乗り物




ボツシーン
シオリ「ではカナエも追放しましょうか」
レイナ「えっ」
カナエ「じゃあアキラ少年と組むっす」
シオリ「やっぱり追放はなしで」
レイナ「」

読了感謝です。
旧領域接続者じゃないとわからない通路とかあってもいいだろうと思い従業員入口からアキラくんはお邪魔してます。また今回コンニチワしてきたゲートキーパーくんはセセランタルの門番とは全くの別個体です。似たような機械はあっても管轄が違うので性能も違います。セントラル前の門番より弱いです。


余談
チー付与はどうやら原作小説と漫画版で全然内容が違うらしいですね。
半ぐれ達も好きでしたが、なんやかんや暗殺の母が一番キャラが経ってると思います。
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