Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
そして遅れて申し訳ありません。自治会などのクリスマス会の手伝いや、コロナで休んでいた分の出勤等でリアルが忙しいのと急な忘年会や年末年始に向けた仕事の集中とか諸々ありまして遅れました。

まぁ一番は書くモチベ維持ができなかった事ですが…。萎えてエタっても、頑張って不定期でも投稿する予定です。失踪するなら失踪すると言いますし、何よりエンディングだけは必ず書きたいので、最悪そこだけ書いて失踪します。

ぶっちゃけ偽アキラ編まで書くか悩み中。もしかすると展開次第で偽アキラが出現しない可能性もあったりしますので…。ただシロウのあれこれは書こうかなとは思ってます。今のところネラーと化したシロウを書きたい欲があるので


加えて今回は閑話です。モチベ回復のために書きたいことを書き上げることにしました。


走れアキラオー(閑話)

 時はさかのぼり──。

 

 カナエとアキラの模擬戦が終わり、ミハゾノ街遺跡の探索に向かう少し前のことだ。

 

 

 

 

 ──-

 

 

 

 訓練場代わりの広場で、アキラは汗を拭いながら大きく伸びをした。足元には、さっきまでともに訓練していたと党の子供たちが息を絶え絶えにして転がっていた。ちなみに本日の訓練は強化服なしで小銃を持ったまま走り込みを行う訓練だった。なおアキラは強化服をオフにして、ただの重いスーツと化した状態で走り込みをしていた。

 

「……で? 今日は大事な商談があるって事、忘れてないですよね?」

 

 シェリルが、腰に手を当てて睨み上げてくる。

 

「わかってるって、言い出しっぺは俺だし。ようやく賭博レースの話がひと段落つきそうなんだ。忘れるわけないって」

 

 その一言に、シェリルの眉がぴくりと跳ねた。

「それならいいですけど……」

 

「目覚まし代わりの訓練が終わったし、そろそろ準備していくか……キバヤシも待ってるだろうし」

 

 

 ──-

 

 

 

 クガマヤマ都市・職員本部局の一室。

 

 簡素な会議室に、アキラとカナエ、それからグレーのスーツに身を包んだキバヤシが向かい合って座っていた。机の上には、アキラがざっくり描いたレース場の図面と、犬型兵器のラフスケッチを手に取ったキバヤシは腹を抑え笑っていた。

 

「……い、いちおう聞くが、これが最終案なんだよな?」

 

 キバヤシは笑いながら、図面に視線を落とした。

 

「“ウェポンドックを武装解除して走らせる”。それを賭博の対象にする? スラムで?」

 

「ああ」

 

「ダメだな」

 

 一拍も置かずに即答だった。

 

「やっぱりか」

 

「当然だ。いや何、この発想自体は俺好みだけどな。ウェポンドックは、分類上“旧世界戦闘兵器”だ。モンスターとして扱われてるし、都市の近くに意図的に持ち込むのは、許可が出ないだろうな」

 

 キバヤシは溜息をひとつ。

 

「今のお前らの実績と信用度では、なおさら無理だ。ただのスラムの徒党とそのお抱えハンターがモンスターを『遊び』に使うなんて話、上に持って行った瞬間に叩き落とされるのがオチだ」

 

「……だろうなぁ」

 

 アキラはあっさり頷いた。

 

「じゃあ、実績と信用度があれば話は変わるか?」

 

 キバヤシはにやりと笑う。

 

「ああ、その通りだ。加えてアキラ自身のハンターランクが高けりゃ高いほどいい! じゃあどうする? ウェポンドックのレースはやめてハンター業に専念するか?」

 

「いや、ウェポンドックがダメなら他の何かで競わせればいい。犬とかはどうだ?*1

 

「犬?」

 

「ああ、もちろんちっさいやつじゃなくて見栄えするでかい犬だ」

 

「…………」

 

 キバヤシは顎に手を当て、しばし黙り込む。

 

「犬か、下位区画でもあんま見ねぇ愛玩動物をよく知ってんな……まぁモンスターじゃないから危険度はウェポンドックに比べれば格段に低い。ただ──」

 

「やっぱ賭博が気に入らないわけか」

 

 アキラが言うと、キバヤシは肩をすくめた。

 

「そうだな。東部の“自主経済”に、スラムの賭博が妙な影響を与えるのは望ましくない。愚か者とはいえ、下手にあぶく銭を掴んだスラムの住民が、都市の商品ではないものに金を落とすようになれば、統計が乱れる」

 

「でもさ」

 

 アキラは、ためらいもなく切り込んだ。

 

「どうせスラムの奴ら、あぶく銭は全部使いきるぞ。で、使いきったら飢えて、働くしかなくなる。だから這い上がるやつは希少なんだ、違うか?」

 

 職員の視線が鋭くなる。

 

「働くって言っても、スラムで真面目に仕事があるわけじゃない。結局、ハンターになるか、都市で奴隷みたいに安い仕事するか、だ」

 

 アキラは肩をすくめ、淡々と続ける。

 

「馬鹿正直に命張って荒野に出て、遺物拾って、都市に持ち帰る。東部に恩恵をばらまく。……それは変わらないだろ?」

 

 少しだけ、沈黙が落ちた。

 

「賭博であぶく銭を得た弱者は、それをあっさり浪費して、さらに金遣いが荒くなって、やがて破産する。結局、スラムはスラムのまま。強者になれる奴はごくわずか」

 

 アキラは真顔のまま、むしろきっぱりと言い切る。

 

「だったら、最初から“賭博込みの経済サイクル”として、都市側でデータ取った方が合理的じゃないか?」

 

 キバヤシは、思わずといった様子で笑った。

 

「お前は自分の出身地を、よくもそう残酷に分析できるな。ませてるというか、拗らせてるというか。最近のガキはこんなもんなのか? 子供の成長は早いね」

 

「俺たちが外れ値なだけだとは思うが……まぁなんにせよ、スラムは変わらない。これは事実だ」

 

 アキラの前世でもギャンブルで破滅している人間を見てきた。救えないもの、救われるよりもギャンブルをしたい愚か者。勝てないことをわかっているのにのめり混むものなど多くいた。自身の職場ではないが、友人はそういった精神が壊れた人にかかわる仕事をしていたし、また聞きではあるがどのようなものかは理解していた。何よりアキラも前世では軽度のギャンブル中毒であったため、冷静かつ残酷に客観視することができた。

 

 アキラの視線が少しだけ鋭くなる。

 

「俺たちの徒党がレース場を握る。賭場を握るってことは、暴力も厄介事も握るってことだ。少なくとも都市とかかわりのある俺たちの方が、他所のギャングが勝手に賭場を開くより、まだマシだろ?」

 

 キバヤシは椅子にもたれ、天井を見上げる。

 

「……都市としては、賭博そのものを全面的に認めるわけにはいかねぇ。だが、経済への影響を“観察する価値”はある。スラムでの小規模賭博が、貧富の差や犯罪率にどんな変化をもたらすか。ハンター登録数にどう影響するか」

 

 やがて、視線を戻す。

 

「条件付きで、“試験的な運用”として認めよう」

 

 アキラの眉がわずかに上がる。

 

「ここで許可を出していいのか? お前にそんな権限はなかったと記憶しているが」

 

「まぁ俺にそんな権利はないぞ。ただ上もこの小規模賭博に関してさっき言ったように試験的価値はあると踏んでいる。それに今はスラムの二大徒党に力が集まりつつある。第三勢力の存在によって少しでも勢いとかがマシになればいいと思ってる。それにあちらさんと違ってアキラは都市との連携もできてるし、反抗的でもない。従順な存在、なんてのは失礼だが少なくとも都市はお前たちに期待しているぞ」

 

 その期待が果たして、これからのアキラ達徒党の成長に期待しているのか、それともアキラ本人に対してなのか、はたまた都市にとって都合のいい駒としての期待なのかは知らない。最終的にこの徒党の利権やすべてを明け渡して、利益の数%でも配当され続けるのなら比較的幸せな生活を送れるだろうと踏んでいるためだ。将来のために、今は我慢する。その悪癖か人間としての理性は、前世から変わらない。

 

 

 

 

 アキラはさらに今の賭博システムの概要をシェリルに伝えるように指示する。

 

「賭博は犬を使ったドッグレースのみです。武装兵器やモンスターは禁止。賭け方に関して最初は──単勝と二連単のみの予定。規模もスラム内に限定し、都市は表向き一切関与しないという方向性でいかがでしょうか」

 

「おうそれで概ね問題ない。で、表向きは無関係だが、裏ではどうする?」

 

「データを共有します。売上、参加者数、近辺の暴力事件との相関等ですね……」

 

 小さく笑い、指を一本立てる。

 

「それから。スラムの治安維持は、私たち徒党の責任です。賭場で暴動が起きた場合、即時鎮圧します」

 

「オッケーだ」

 

 キバヤシはあっさりと頷き、最後に小さく付け加えた。

 

「──では、君たちの“賭場”に、都市は乗りましょう。せいぜい、上手く回してくれ」

 

 

 

 

 

 ──-

 

 

 それから数日たち──レース当日

 

 徒党の拠点から少し離れた場所を買収し、子供たちと大人たち総出の作業で、あっという間に“レース場らしきもの”へと変貌を遂げていた。

 

 スクラップを拾って柵を作り、錆びた鉄骨や木材で簡易スタンドとゲートをでっち上げる。楕円形のトラックの内側には、ひときわ目立つ巨大なオオケヤキと書かれた板が立っている。

 

「コースは一周二百M。第1コーナー回って、オオケヤキの脇抜けて第2コーナー、そっから直線。……まぁ、それっぽいだろ」

 

 計算通り、完璧ー*2と言いながらアキラが説明する。なお計算したのはアルファである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 晴れ渡る空の下、簡易スタンドにはスラムの人間がぎっしり詰めかけていた。安酒と焼いた肉の匂いが混ざり合い、ざわめきと笑い声が渦巻く。

 

 粗末なスピーカーから、やけに張り切った男の声が響き渡った。

 

「──晴れ渡る空の下、ここスラムレース場には大勢の人が来ています!」

 

 観客のあちこちで歓声が上がる。

 

「今年から、あなたの、そして私の夢が走ります。あなたの夢はなんですか? わたしの夢は──ギャングスターです!!」

 

 どよめきと笑いが一斉に起きた。

 

『これから始まる大レース! 第一回ダイナマイトドッグレース!*3 実況解説はジョン・カビランがお送りします、よろしくお願いします!!』

 

「誰だよ」「カビてそうな名前だな」「もっと腹から声出せ!」

 

 

 

 

 

 貴賓席でスーツを着たアキラがが小さく肩をすくめる。その横に座っているのはこれまたきれいなドレスを着てアキラに寄りかかる美少女のシェリルだった。

 

「あいつ、声がデカいから採用したんだけどな……まぁセンスが一番俺と合ったからなんだけど」

 

「まあ、盛り上がってるしいいんじゃない?」

 

 

 

 

 シェリルは冷静に観客席を見渡していた。賭券売り場の前には人だかりができ、徒党の子供たちが慣れない手つきで賭け金と掛札を捌いている。

 

 

 

 貴賓席とは言うが、前世の競馬場みたいなものではなく、立ち見の一般席と差別化した屋根のある座席であった。もちろん視察としてキバヤシも座っており、他にもレイナ達やカツラギなども座っている。

 

 

 

 

 

『さあ、それでは出走表の確認ですッ! 本日のダイナマイトドッグレース、8頭立てで行われます!』

 

『1番 コグリキャップ。堂々の一番人気です』

「コグリいけぇえええ! お前がナンバーワンだああああああ!」

 

 

『2番 カイジェ。こちらも支持を集めています』

「ざわ……ざわ……」

「カイジェに倍プッシュだ!!」

 

 

『3番 ミネリュウタイ。スタート力やコーナリングに注目が集まっています』

「ミネェ! 差せぇ!!」

 

『4番 ミズシマイッペ。逃げ宣告がありますが、その展開になるかどうか』

「イッペ! 逃げろぉ! お前に全財産賭けてんだからな!!」

 

 

『5番 ゼンソクナオヤ。最高速度でぶち抜くと言われています。スピードは十分、あとは持つかどうか』

「ナオヤァ!! 最高速度でぶち抜け!」

「ぶちゃけダサいおもうてんねん。ナオヤの掛札買わんやつ」

 

 

『6番 アカイホシノツダ。コンディションは悪く、最後まで粘れるか? 空中分解しないか願うばかりです』

「ツダ! お前は赤い星じゃねぇ! 彗星だ! は三倍速で蹴散らせや!」

 

『7番 ソウルイータードット。独特の存在感を放っています。その死神の鎌はすべてを切り裂く刃となるかどうか』

「魂が共鳴してこの犬を買った方がいいと思った」

「Excalibur~~~♪ 聞かせてやろう、あれは私が(以下略)」

「つまみ出せこのうるさいの」

「ヴァカめ! この犬以外にあり得ん!」

 

『8番 ハリボテエレジィ。コーナリングが大の苦手とのことですが……奮闘に期待です』

「曲がれぇえええええええ!!」

 

『以上、8頭立てのレースとなりますッ!!』

 

 

 

 

 カオスな歓声が、レース場全体を揺らす。

 

『さあ、犬たちが続々とゲートインしていきます! 風速一メートル、絶好のコンディション! 逃げるのか!? 刺すのか!? スラム犬生の命運を賭けた──夢の大勝負!! まもなくスタートです!!』

 

 スタート係の男が、合図用の錆びたホイッスルを口にくわえる。静寂が、ほんの僅かに場内を支配した。

 

 ──ピィィッ!! 

 

『今スタートしました!!』

 

 八つのゲートが同時に開いた。

 

『おっとォ!? ミネリュウタイとミズシマイッペが飛び出したぁぁ!! とんでもない加速だ!! 後続を置き去りにする!!』

 

 

『イッペ! 逃げ切れるか!? 大逃げのイッペ!!』

 

 スタンドが揺れる。

 

『その後ろにゼンソクナオヤ! 実に綺麗なフォームでコーナーへ! 外からはアカイホシノツダが信じられない勢いで上がっていく! 内でじっと構えるのはコグリキャップ! 中団にカイジェとソウルイータードット、最後方にぽつんと……ハリボテエレジィ!! がんばれ!!』

 

「エレジィいいいいいいいいい!?」

「あああーっ、もうふらついてる!」

 

 

 

 

 

『第1コーナーに殺到する先頭集団! ミネリュウタイ内、ミズシマイッペ外! イッペ、まだ行く! まだ行く!! 10バ身のリード!!』

 

「イッペ! 逃げ切れるか!?」

「いや無理やてアレ……」

「ところでバ身って何?」

「しらん、俺たちは雰囲気でレースを見てる」

 

『その後ろから、ゼンソクナオヤが余裕の表情! さらに大外を回ってアカイホシノツダが来た! ツダが猛烈な勢いで詰めてくる! 恐ろしい末脚だ!!』

 

 赤い布の犬が砂埃を巻き上げながら、とんでもない速度でコーナーに突っ込んでいく。

 

『ツダがコーナーを──曲がり切れない!!』

 

 ドガシャァァァン! 

 

「ツダ、壁に激突──!! 速いだけでは勝てないッ!! アカイホシノツダ、ここで無念の自爆!!」

 

「赤い彗星が散ったぁぁ!」「やっぱツダじゃダメなんよ!」

 

 

 

 観客席の一角から悲鳴と笑いが同時に上がる。その横を、慎重にコーナーを回るコグリキャップが通過していった。

 

『内側ではソウルイータードット! シンメトリーの取れたフォームで第1コーナーを抜けていく!』

 

「Excalibur~~~♪」

「だからこいつつまみ出せって! イライラする!!」

 

『カイジェは中段キープ! “ざわ……ざわ……”とした雰囲気をまとって、第2コーナーへ向かいます!!』

 

 

 

『そしてハリボテエレジィ! ハリボテエレジィ! まがれ!! ……あ──っと転倒──!! 第1コーナーで曲がり切れず、予想通りの転倒だぁ!!』

 

「エレジィィィィ!!」「知ってた!!」

 

 子供たちの悲鳴とも笑いともつかない声がスタンドに響く。犬は体に纏っていた段ボールをぶら下げたまま、きょとんとした顔で起き上がろうとしていた。

 

 

『さあ、舞台はオオケヤキの脇! 第3コーナーへ! 依然として先頭はミズシマイッペ! 大逃げのイッペ! 逃げ続けるイッペ!!』

 

「イッペ! 逃げ切れるか!?」

「イッペ行けぇぇ!」

 

 しかし──。

 

『……おおっとォ!? イッペの脚色が怪しくなってきた!?』

 

 ミズシマイッペの足取りが目に見えて重くなっていく。

 

『イッペ失速! イッペ失速!! そのまま犬群に捕まった!!』

 

「イッペェェェェ!!??」

「くそがぁああああ借金地獄じゃねぇか!!!」

 

 後続が一気に迫る。ミネリュウタイもスタートの無理が祟って失速し、ゼンソクナオヤが前に出る。

 

『ここでゼンソクナオヤ! 華麗なフォームで先頭に躍り出た!!』

 

 

 

『だがしかし! 第2コーナーを回りきったところで、ゼンソクナオヤの脚も重い! 飛ばしすぎたか!? 速度の出し過ぎか!? ここにきて失速だぁ!!』

 

「ドブカスが!!」

「首くくって死んだらええねん!」

「あっち側に立つんはナオヤやなかったな!!」

 

 

 罵声が飛ぶ中、それでもナオヤは必死に前脚を動かし続ける。

 

『後ろからはカイジェ! 不穏な空気をまといながらインを突く! 外からはソウルイータードット! 伸びてくる! そして──!』

 

 

『後方待機だったコグリキャップだぁぁ!!』

 

 灰色の犬が、砂煙を切り裂くように加速していた。

 

『直線コース!! さあ直線だ!! 先頭はゼンソクナオヤ! しかし脚が止まりかけている! 外からカイジェ! その外! さらに外からソウルイータードット! そして大外をぶん回して、コグリキャップが来たぁぁ!!』

 

 観客席の一角から、誰かが叫ぶ。

 

「コグリ!! いけえええええええ!」

「ナオヤ気張れえええええ!!」

「魂で叫べ! 俺らの魂を喰らって、走れよソウルイーター!!!」 

 

 

 

 

 声援に押されるように、コグリキャップが一段階ギアを上げた。

 

『差すッ!! 差すッ!! コグリキャップ、まずはゼンソクナオヤをとらえた! ナオヤ沈む! ナオヤ沈む!! さらにカイジェを交わす! ドットと並ぶ!!』

 

 

 

『残り五十! 四頭横一線だ! 内からカイジェ! その外、ソウルイータードット! さらに外にコグリキャップ! 大外、必死に食らいつくゼンソクナオヤ! しかし──!』

 

 ジョン・カビランが、肺の底から声を絞り出した。

 

『しかしコグリ先頭! コグリ先頭! コグリ一着! コグリ一着!!』

 

 ゴール板代わりに立てられた鉄骨を、コグリキャップが胸を張って駆け抜けた。

 

『記念すべき第一回ダイナマイトドッグレースの勝者は、コグリキャップだあああああ!!』

 

 スタンドが爆発したような歓声に包まれる。

 

『右足を挙げたコグリ! 鳴り響くコグリの遠吠え! 一番は俺だと、ここに刻んだコグリ! 間違いなくスーパードックです。コグリキャップです!!』

 

『二着はカイジェ! 三着、僅かにソウルイータードットか!? ゼンソクナオヤは四着に沈んだ!! ミズシマイッペ、完全に歩いてゴールイン! ミネリュウタイもヘロヘロでの入線! アカイホシノツダは残念ながら競走中止! ハリボテエレジィは……今、立ち上がったところです!!』

 

 子供たちの「エレジィ──!!」という声と、どっと起こる笑い。

 

『お手元の賭券は確定までお持ちください!』

 

 ジョン・カビランの声が、最後にもう一度場内に響いた。

 

 

 

 

 ──-

 

 レースが終わっても、スラムの熱は冷めなかった。

 

 払い戻し所の前では歓喜と罵声が入り混じり、酒瓶が打ち鳴らされ、負けた者も勝った者も、結局は笑って騒いでいる。

 興行としては、これ以上ない成功だった。

 

「……悪くないな」

 

 人混みを眺めながら、キバヤシが低く笑った。

 

「都市としても、これはいい商売になるだろう。

 金は動く、数字も取れる。あとは──回し方次第だ」

 

「へへ、次は何売り込もうかね」

 

 カツラギが指を折りながら、もう次の算段を始めている。

 周囲の商売仲間たちも、今後の売上や人の流れを想像して、楽しげに声を上げていた。

 

「いやぁ、想像以上だったな」

「次はもっと人呼べるぞ」

「賭け方、増やせねぇかな」

「犬じゃなくて犬耳生やした女の子が走っている絵を書いてるね。どうして?」

「そうだったらいいなって」

「ふーんきみは絵がうまい!」

 

 

 その喧騒の少し外で、シェリルがふう、と小さく息を吐く。

 

「……なんとか終えましたね」

 

 安堵と疲労が混じった声だった。

 

 アキラは、まだざわめき続けるレース場を見渡しながら、首を横に振った。

 

「いや」

 

 短く言ってから、口角をわずかに上げる。

 

「これからだ」

 

 スラムの夜空に、まだ興奮の余韻が漂っている。

 負けた者も、勝った者も、次を夢見ている。

 

「人のユメは終わらない」

 

 アキラは、静かに言った。

 

「レースも、また」

 

 その言葉を合図にするかのように、

 どこかで次の開催を囁く声が、もう上がり始めていた。

 

 ──閑話・了。

 

 

 

 

*1
ウェポンドックが存在するならそれの元になったドック(犬)が存在するはず。それが今生きているのか、はたまたデータ上でしか存在しないのかは不明。今作では存在するとします。

*2
ブルーアーカイブのユウカのセリフ。太ももが太い会計。代わりに確定申告と年末調整してくれ…

*3
ダイナマイトボートレースのパロ。最初は犬6頭立てにする予定だったが、他にもパロしたい犬名があったので追加出走。なおボートレースは最大6艇立てのレースである。




スラムといえば、ギャンブルやろ!住〇江もまぁまぁ治安悪いし!(われらが住之〇に大風評被害)
といわけで賭博場編でした。

麻薬、暴力、金、S〇X、ばい〇ゅん、賭博等スラムならではのオリジナル展開です。
この興行に関してさらに某二大スラム徒党から睨まれますが、アキラとシェリルには関係ないです()

東企連は自主的な経済活動を重視しているので、許可なしで賭博やるとさすがにまずいから都市も巻き込んで賭博場開いてます。めんどくさくなったら都市に利権とかを渡すつもりのアキラです。


また私自身も競馬と競艇が大好きなので、競馬回は書きたかった感じです。馬じゃなくてウェポンドックを走らせた方がリビルドワールド的にも頭ぶっとんでていい案だと思ったんですよ。ただどう考えても武装解除したウェポンドックを都市の近くで走らせるのは重罪すぎる気がしたので、都市から許可出るまでは犬で代用することにしたアキラです。
まぁ多分ウェポンドックが走ってるレースの描写はしませんが…


またレース実況もウマ娘のSS読んでて書きたくなったので書きました。
ただどのレース実況にするかかなり迷いました。

案1 オグリキャップモチーフのレース(採用)
理由 ウマ娘でちょうどオグリキャップのラストラン衣装と、アニメしてるシンデレラグレイの影響。あと漫画原作で有馬記念ラストランが描写されたので書きたくなった。

案2 ディープインパクトモチーフのレース
理由 競馬名実況動画見てて、「飛んだ!間違いなく飛んだ!」など追い込みからの一気に抜き去る最後の衝撃が大好きだから。あれを幼少期に見てたら頭おかしくなるよ。

案3 ドウデュースモチーフのレース
理由 万馬券を始めて当てた思い出のあるレースだから。2023年の有馬記念で、「並んだ!捉えた!」で脳焼きした。友達と飲んでる中馬券を当てた。その金でiPhone15を買った。


まぁ結局オグリキャップでしたがね。書いてて楽しかったぞ(あとがき書いてる時点で5~6時間掛かってる)


ちなみに犬のネタ解説
1コグリキャップ
競走馬オグリキャップ
2カイジェ
漫画カイジ
3ミネリュウタイ
ボートレーサー。どっちかというと毒〇まとかの方が好き。
4ミズシマイッペ
某通訳の人。ギャンブルで負けて捕まったあの方。青のパーカーがトレードマーク
5ゼンソクナオヤ
禪院直哉をモチーフ。映画見てから一か月経つが、まだ頭に残ってる。
6アカイホシノツダ
機動戦士Gundam GQuuuuuuX。赤い彗星のシャア専用ヅダ。アニメ放送後、シャアがツダに乗ったシャアの死因が自爆だと誰しもが予想できた。スイセイじゃなくてホシなのは字数制限のため。
7ソウルイータードット
漫画ソウルイーターをモチーフ 。ノット!も好きだが、無印の方が好き。炎炎消防隊よりも好き。
8ハリボテエレジィ
ハリボテエレジー、あれは馬だ。段ボールでもガムテでも中の人もいない、いいね?「曲がれえええええええええええええええええええ」
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