Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。

なんで大晦日にハーメルン読んでるんですか?暇ですか?私もです。
実際いつも読んでるほかの二次創作も年末年始更新されてなかったりしてますね。

年越しそば食って、ハイボール飲んで出来上がってますが。ギリ更新できました。というものの、4000字程度と少なめですが。


アキラ・ロマネスク

 

 

 キャロルと別れたあと、アキラは指定していた場所でレイナたちと合流した。

 すでに日が傾きかけており、そろそろハンター業を終わらせて帰路に付くものも多い。

 

「悪い、待たせたか?」

 

「いえ。こちらも今来たところよ」

 

 そう答えたレイナは、額の汗を軽く拭った。長時間の移動と打ち合わせのせいか、さすがに少し疲れが見える。

 

「じゃあ、城壁門まで送る。中位区画までは——」

 

 言いかけたところで、レイナが小さく息を吐いた。

 

「……その前に、シャワーを浴びたいわ」

 

 アキラは一瞬だけ瞬きをしたが、すぐに頷いた。

 

「そうか。今日は暑かったしな。じゃあ……うちの徒党に寄っていくか?」

 

「え?」

 

 その一言に、反応したのはシオリだった。

 

「待ってください。スラムの浴室にお嬢様を入れるなんて……衛生面が心配ですし、そもそも——」

 

「それはごもっともだな」

 

 アキラは即座に同意する。

 

「俺は風呂好きだから、浴室まわりには割と金を使ってるけど……中位区画基準で見たら、天地の差だろうし」

 

 それでも、レイナは一歩も引かなかった。

 

「……わたしだって、汗くさいままでいたくないの」

 

 そう言って、ちらりとアキラを見る。

 

 その視線の意味を即座に理解できた者は、場に三人いた。

 シオリは目を見開き、カナエはにやにやと口元を緩める。

 

(……今まで、そんなこと気にしていなかったはずなのに)

 

 シオリの中で、警戒レベルが一段階跳ね上がった。

 

 一方のアキラは、首をかしげてから、あっさりと言った。

 

「デリカシーに欠けるかもしれんが……、レイナからそんな臭いしないと思うけどな。むしろいい匂いだろ」

 

「——っ!?な、ななな、何言ってんの!?」

 

 レイナは一瞬で顔を赤くし、思わず一歩下がった。

 完全に不意打ちだったらしい。

 

「……アキラ様は、たまに無自覚に爆弾を投げますね」

 

 シオリが低い声で呟く。

 

 

 

 

 

 結局、話はまとまった。

 一度アキラの徒党拠点に寄り、シャワーを浴びてから城壁門へ向かうことになった。

 

 拠点へ向かう道すがら、アキラはシェリルに通信を飛ばし、レイナが浴室を使いたいと言ってるから到着次第、誰もレイナたちの入ってる浴室に入れないようにと指示した。

 

 

 

 

 

 

 

 拠点に到着すると、案内役としてシェリルが合流した。

 

「では、こちらです」

 

 浴室の前で、レイナは一瞬だけ立ち止まった。

 

「えっ……三人で入るの?」

 

「世話役として私が付きます」

 

 シオリが当然のように言う。

 

「それに」

 

 シェリルが微笑んで続けた。

 

「少しは免疫をつけるのも必要かと思います。殿方と入るわけではありませんし……もしかして、そちらの方がお好みですか?」

 

「ななななな訳ないでしょ!」

 

 即答だった。

 

 

 

 その間に、シオリは浴室内へ先行し、目を光らせる。

 盗聴器の有無、排水、備品、清潔度——問題なし。

 

「安全です。……想像以上に、まともですね」

 

「だろー?」

 

 アキラは軽く肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 湿った空気が廊下に滲み出る中、三人が浴室へ入るのを見届けてから、アキラは壁に背を預ける。

 

 隣には、カナエがいた。

 

 

 

「アキラ少年って、シェリルお嬢さんと一緒に風呂入ってるんすよね?」

 

 カナエが、いかにも軽い調子で振ってくる。

 

「……まあな」

 

「今は一緒に入らないんすか?」

 

「レイナとシオリさんが入ってるから、さすがにそれはちょっと……」

 

 即答だった。

 

 カナエはにやりと笑う。

 

「正直になればいいっす。入りたいっすよね?」

 

「あとがマジで怖いからパス。というか、レイナの面倒を見るつもりではいるけど……責任は取りたくないからな!絶対めんどくさいことになるだろ!」

 

「はいはい。そういうことにしとくっすよ」

 

 納得したような、していないような返事だった。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 一方、浴室の中。

 

 湯気の向こうで、レイナは無意識にシェリルの方を見ていた。

 濡れた髪、しなやかな体の線。

 

(……私より、胸はありそうね)

 

 そう思った瞬間、はっとする。

 

(な、何考えてるのよ!?)

 

「レイナお嬢様。お体を洗いますよ」

 

 シオリの声に、現実へ引き戻される。

 

「え、ええ……」

 

「どうぞ、好きに使ってください」

 

 シェリルはそう言って、くるりと背を向けた。

 

 その拍子に、鎖骨の少し下、白い肌に残る痕が目に入る。

 

「――っ」

 

 レイナの顔が、一気に熱を帯びた。

 

(き、キスマーク……!?)

 

 慌てて視線を逸らすが、心臓の鼓動は収まらない。

 

「……?」

 

 シェリルは気づいた様子もなく、穏やかに湯をすくっている。

 

 

 

 

 

 

 洗い終えたあと、三人は結局そのまま湯に浸かった。

 静かに肩まで沈むと、レイナがぽつりと口を開く。

 

「……そういえば、シェリルも大変ね」

 

「? 何がでしょう?」

 

 色気を含んだ仕草で、シェリルが首を傾げる。

 

「アキラもだけど……二人とも、中位区画から落ちてきた人か、

 もしくは他の都市で、それなりに裕福だった子なんじゃないかなって思ってて」

 

 一度言葉を切り、湯面を見つめる。

 

「スラムに来てから、今までの生活と違うことばかりだったでしょ。……苦労したんだろうな、って」

 

「……ええ。そうですね」

 

 シェリルは一拍置いて答えた。

 

「苦労は、しましたね」

 

(中位区画以上の出身……私とアキラが、そう見えているのね。本当の中位区画の人も騙せるくらいにはおかしいのね私たち…)

 

 内心で小さく驚きながらも、表情には出さなかった。

 

 湯の音だけが、しばらく続いた。

 

---

 

 やがて三人が浴室を出ると、外では予想外の光景が広がっていた。

 

 アキラとカナエが、軽く組手をしている。

 ……軽く、とは言い難い。

 

 床にはひび、壁には浅い凹み。

 多少の被害は、確実に出ていた。

 

「……」

 

「……」

 

 シェリルとレイナは、同時に声を張り上げる。

 

「「なにやってるんですか、あなたたちは!!」」

 

 アキラは一瞬だけ目を泳がせ、カナエは「いやぁ」と笑った。

 

 静かな時間は、どうやらここまでだった。

 

 

 

 

 

 

 シェリルとレイナの一喝で、即席の組手は強制終了となった。

 

 アキラが壁の凹みを見て、軽く頭を掻いていると――

 

「じゃあ次は、アキラ少年と私が風呂に入る番っすねー」

 

 何事もなかったかのように、カナエが明るく言った。

 

「待ちなさい!そんなの許さないわ!」

 

 即座に、レイナの鋭い声が飛ぶ。

 

「……なら、私ももう一回入ろうかしら」

 

 さらっと追撃するシェリル。

 

「シェ、シェリルさん!?」

 

 レイナが目を見開く。

 

 シェリルは一瞬だけ微笑んでから、首を振った。

 

「冗談です」

 

 そして、アキラの方を見る。

 

「……アキラ。わかってるわね?」

 

 口元だけが笑っていない、暗黒微笑。

 

「――――っす」

 

 アキラは一拍置いて、即座に姿勢を正した。

 

「はい。一人で入ります」

 

「えー、いいじゃないですかー」

 

 カナエが不満げに言う。

 

「せっかくですし、背中くらい流しますよ?」

 

「命が惜しいので遠慮します」

 

 即答だった。

 

 そこへ、シオリが一歩前に出る。

 

「そもそも、お嬢様の入浴という理由で浴室をお借りしただけですから」

 

 淡々と、しかし有無を言わせぬ口調で続ける。

 

「私たちが汗を流す必要はありません」

 

「そうよ!」

 

 レイナも腕を組んで同意する。

 

「……ちぇー」

 

 カナエは肩をすくめた。

 

「残念っす。またの機会っすね」

 

 その言葉に、アキラは内心で深く安堵した。

 

(助かった……いろんな意味で)

 

 浴室の使用権は、こうして平和裏に回収された。

 

 壁の修理費という、現実的な問題だけを残して。

 

 

 

 

 

 

 結局、浴室は俺一人で使うことになった。

 

 湯船に浸かりながら、ふう、と息を吐く。

 

「これが……シェリルと、レイナと、シオリが浸かった湯船かー。

 テーマパーク来たみたいでテンション上がるな~」

 

 ――そんなことは、ない。

 

 もし俺が某動画サイトの住人だったら、ここで画面端に

【59595959】とか【REC】とか【けむりさん「これがわしらの仕事納めじゃ!」】とか流してたかもしれんが、

あいにく俺にそんな趣味はない。

ほんとだよ、アキラ嘘つかない。

あーきりゃぴーなっつすき。

 

 

 

 ……落ち着け。

 

 

 

 余計なこと考えてると、ほんとに変な方向に転びかねん。

 

 そうやって頭を空っぽにしようとした、その時。

 

『それでアキラ、少しいいかしら?』

 

『ん? なんだ、アルファ』

 

 湯の中で、意識だけが切り替わる。

 

『アキラたちが帰った後くらいから、ミハゾノ街遺跡が荒れてるというか……

 これから、かなり大きな騒ぎになりそうよ』

 

『? どういうことだ?』

 

『今日のお昼頃、アキラがミハゾノ遺跡のセランタルビルで

 門番を倒したでしょう?』

 

『あー……あいつな』

 

 妙に頑丈で、妙に律儀な、あの門番。

 

『あの個体がいなくなったことで、ハンターたちが一斉にセランタルビルへ向かったの。そこまでは理解してると思うんだけど、それの被害が拡大してるみたいね』

 

『……嫌な予感しかしねぇな』

 

『その通りよ。短時間で大量の侵入を検知した結果、セランタルビルの防衛機能レベルが上昇したわ』

 

『……あー』

 

 理解した瞬間、背中に嫌な汗が浮かぶ。

 

『結果として、内部の自律防衛機構が活性化 これまで抑制されていたエリアが解放され始めてる』

 

 

 湯の温度が、一段下がった気がした。

 

『……で、ハンターたちは?』

 

『事態収束に向かうものや、これを機に稼ごうと思ってるものも含めてかなり盛り上がってるわ。事態を理解している人もいるけど、大半は「うまい話」だと思ってる』

 

『最悪だな』

 

『ええ。近いうちに、都市も動くでしょうね』

 

 俺は天井を見上げた。

 

 ほんの数時間前、自分がやったことが、

もう歯車を回し始めている。

 

『……風呂あがったら、シェリルに共有しとく。少なくとも俺の不始末が一因の可能性がすこぶる高いが、ハンターたちが馬鹿みたいに殺到したのも悪い。うん、そうしよう』

 

『それがいいわ』

 

 念話が切れる。

 

 しばらく、湯船の中で動けなかった。

 

「……やっぱり、風呂は体はキレイになっても。やることはキレイに片付かないよなぁ…」

 

 独り言を呟いてから、俺は湯船を出た。

 

 

 

 

---

 

 体を拭いて浴室を出ると、外ではすでにレイナたちが待っていた。

 

 ……が。

 

 俺の顔を見た瞬間、

 シェリルが、何かを察したように目を細める。

 

「……アキラ?」

 

「後で話す。ちょっと、面倒なことになりそうだ」

 

 その一言で、空気が切り替わった。

 

 さっきまでの軽い空気は、もうない。

 

 風呂は終わった。

 休憩も終わりだ。

 

 

 

 

 次は――仕事の時間らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。

改めて今年一年ありがとうございました。
よいお年を
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