Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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えーーーーーー。更新遅くなり申し訳ありませんでした。ただたんに書く気力とやる気がなかったことと、月末で忙しかったからです。
代わりに頑張って今日から3~4日間頑張って毎日投稿します。
そんでもってとりあえず今日は書き上げたヤツを二話連続投稿します。それで許してクレメンス。これも全部ハサウェイの肉欲が悪いんだ(まだ見に行ってない)

改めて、いつも読んでいただきありがとうございます。気が付いたらだらだら本編が76話くらい投稿してて、完結まで200話かかりそうですが…マジで要約と物語の取捨選択がむずいんすよね。


アキラ刑に処す

 出発前。

 

 アキラは徒党の自室内で、黙々と装備の手入れをしていた。

 

 銃身のチェック、給弾機構の調整、反動吸収機構の再確認。

 いつもと同じ作業だが、今日は少しだけ念入りだった。

 

 理由は単純だ。

 

 ──対力場装甲(アンチフィールドアーマー)弾。

 

 一発五百万。

 正真正銘、「当たれば助かるが、外したら心が折れる」弾丸である。

 

「数発でいいとは言ったけど……ほんと高ぇな」

 

 実際のところハンターランクが50に到達するとこの弾丸も500オーラムと格安で手に入るのだが、今のアキラのランクは28でありその領域に達していない。

 

 また高いから買わないという選択肢もなかった。ブリーチの浦原喜助のように、死なないように死ぬほど準備するといった極論を振りかざすわけではないが、まぁ準備することに越したことはないと思っていた。

 安全を金で買うという価値観をこの世界でも行っているだけだった。なお、荒野に出てる時点で全然安全ではないのはご愛敬である。

 

 第一ハスクラゲーを前世でも嗜んでいたアキラにとって苦労して集めた素材(オーラム)を使って強い物資を手にするという流れは学習していた。下位モンスターを頑張って狩ってた一か月後にG級ハンターになって、苦労して作った武器を売却することはザラであった。

 それに「そういや一生懸命周回してたうんこ爆撃機の狩猟笛今使ってないなー。テオの狩猟笛の方が雑に強いし」と軽く後悔するのも経験済みである。

 

 したがって、アキラが高額の対力場装甲弾を買うのも必然であった。将来的に楽に手に入るものも、今欲しいなら苦労して手にするというゲーマー精神は健在なのである。

 

 まぁそれはそれとして多少愚痴りながらも、結局数発を購入した。

 使わずに済めばそれでいい。

 だが「持っていなかった」せいで死ぬのは、論外だった。

 

 併せて、ドレットノートにも手を入れ改造をしておく。

 

 拡張装甲。

 出力配分の見直し。

 火力側のモジュールを一段だけ強化等、だ。

 

 

 

『……大分改造してるけど、使う気はないのよね?』

 

『使わずに済むならな。一応の保険だ』

 

『あなたの言う“保険”は、だいたい最終的に発揮されるのよね。ほんと悪運というか奇運というか……』

 

『そんな数奇な運命(主人公補正)持ってないと思うけどな』

 

 アルファのため息が、通信越しに聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 そして翌日。

 

 工場区画の救援・調査依頼は、都市の長期戦略部の名義で正式に下りた。

 

 内容はシンプルだ。

 

 ──行方不明ハンターの捜索。

 ──異常挙動を見せる警備機構の調査。

 ──必要なら、即時撤退可能。

 

 最後の一文が、やけに強調されていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 ミハゾノ街遺跡、工場区画の外れ。

 

 荒野に設営された簡易拠点は、都市が用意した前哨基地としては十分すぎる規模だった。

 組み立て式の大型建造物を並べ、簡易防壁で囲っただけの無骨な構造。しかし内部には、重装強化服、戦闘車両、人型兵器までが整然と配備されている。

 

 ──使われていない、という一点を除けば。

 

 それらはすべて、防衛用。

 工場区画への本格投入は、現時点では想定されていなかった。

 

 過剰武装で遺跡を刺激してしまうことで、“遺跡全体が敵に回る”可能性が高くなるため、外縁部で待機となる。

 

 

 そのため工場区画に足を踏み入れるのは、いつも通り──雇われたハンターだ。

 

 

 

 

 

 アキラは、エレナを中心としたチームの一員として、基地内の一室で説明を受けていた。

 そこにはシカラベとトガミ、そしてキャロルやレイナ達の姿もある。

 

 説明役の都市職員は、淡々と資料を表示する。

 

「今回の異常は、本来の警備範囲を逸脱した機械系モンスター、

 あるいは遺跡全域を警備対象とする新型警備機構の可能性が高い」

 

 画面に映し出されたのは、複数の稼働ログと破壊痕。

 

「出現元と見られているのは二か所。

 市街区画のセランタルビル、そして工場区画の各工場施設です」

 

 市街区画の映像に切り替わる。

 

「セランタルビル周辺は、すでに簡易防壁で完全封鎖しました。

 この措置によって、市街区画の事態は収束に向かっています」

 

 次に表示されたのは、工場区画全域の俯瞰図。

 

「しかし、工場区画は違う。

 出現元が特定できていない以上、全域封鎖は非現実的です」

 

 つまり──

 

「対象となる警備機構の製造元、あるいは出現元の特定。

 それが、今回の最優先事項です」

 

 そして、間を置かずに続く。

 

「そのため今回の依頼の全容としては、調査のために工場区画へ入り、まだ帰還していないハンターたちの救援となります」

 

 その言葉と同時に、エレナが端末の情報を確認し、顔を険しくした。

 

「……ちょっと。生還率、6割切ってるんだけど?」

 

 室内の空気が、一段重くなる。

 

「現時点での帰還率です」

 職員は淡々と答える。

「死亡が確定したわけではありません。

 工場区画は構造物が多く、籠城に適した場所も存在します。

 救援が間に合う可能性は──」

 

「それを信じて、ここに突っ込ませる気?」

 

 エレナの声は、鋭い。

 

「撤退判断は、そちらに委ねています」

「危険と判断した場合は、即時撤収。

 その判断材料を持ち帰っていただければ、それで結構です」

 

「それが出来なかったから、未帰還者が続出してるんでしょう?」

 

 一瞬、沈黙。

 

「……そうですね」

 職員は認めた。

「だからこそ、あなた方には“違う結果”を期待しています」

 

 エレナは小さく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 ここから先は、

 慎重で、静かで、

 そして何より──撤退できる判断力と武力を持つ実力者たちが行く。

 

 エレナは視線をチーム全体に走らせ、短く言った。

 

「──行きましょう。

 帰る判断は、私がするわ。異論はないわね?」

 

 誰も異論はなかった。

 

 こうして工場区画への探索が始まった。

 

 

 

 

 

 

 工場区画の入口。

 

 機械系モンスターの残骸が散らばり、血痕がそこかしこにある。

 だが、死体は見当たらない。回収されたのか、あるいは──まぁ考えても仕方ない事、か? 

 

 隊は三組の合同。指揮はエレナが執る。

 

 前衛にシカラベとトガミ。

 中央にエレナとサラ。索敵と指揮。

 後衛にアキラとキャロル。

 

 そして隊列の中ほどにレイナがいた。

 左右にはシオリとカナエ。配置だけ見れば、護衛だということは誰の目に見える。

 

 

 

 レイナは気づいている。

 気づいたうえで、何も言わない。言える立場でもない。

 

 短距離通信を確認し、隊列が進む。

 

 

 

 探索は「順調」に見えた。

 トガミの動きが良い。局所索敵も丁寧で、制圧も早い。

 だがその分、ペースが上がり負荷も増える。

 

 

 アキラもやや遅れ気味ではあるものの、これといって指摘するほどではなく、先輩ハンターたちについて行ってる時点で問題ないと判断されている。

 一応見落としや索敵ミス、致命的なミスを起こしそうになった場合等はアルファのフォローがあるため保険もしっかりしている。

 

 

 

 そして、割を食うのはトガミだった。

 

 彼は全力で走っている。

 なのにさらに速度が上がる。

 誰も文句を言わず追従する。

 心が、体力が削れていく。

 

 そこでシカラベが低く言った。

 

「トガミ。もっとゆっくり進め」

 

「……大丈夫だ! やれる!」

 

 意地が口から出た。

 だがシカラベの目が冷えた。

 

「お前の都合なんて聞いてねえ。

 指示に従えねえなら潰すぞ」

 

 それでトガミは、ようやく呼吸を整えた。

 “気遣い”ではなく“命令”で救われた形だった。

 

 

 その直後、エレナの索敵が前方に偏る。

 

「……前方から反応多数検知。来わよ。迎撃態勢を、位置を下げる。落ち着いて構えて」

 

 

 

 エレナは淡々と、戦いの形を作る。

 

 工場内の広い空間。停止した製造機械が並ぶ。

 遮蔽物に隠れながら迎撃。

 

 天井を疾走する小型多脚機の群れが現れた瞬間、濃密な弾幕がそれを叩き落とした。

 

 アキラは複合銃で機銃のような弾幕で面を焼き、

 サラが高性能弾で残りを刈り尽くし、

 硬い個体はキャロルが一発でぶち抜く。

 

 

 シカラベとトガミが側面と床走りを捌き、態勢崩壊を阻止。

 

 その間、レイナは撃ち遅れまいと必死に銃を振る。

 だが──ほんの一瞬、反応が遅れた。

 

 壊れかけの多脚機が、床の陰から銃口を起こす。

 

 レイナが気づいた時には、もう遅い。

 

 

 

 ドガシャン!! ──踏み潰す音が響く。

 

 

 

 カナエが何事もなかったように着地して、レイナの半歩前に戻った。

 

「お嬢、今のは“見えてた”ってことにしとくっすよ」

 

 レイナの顔が熱くなる。悔しさと、情けなさで。

 シオリは何も言わない。ただ、護衛の位置を崩さない。

 

 

 

 敵の増援が止まらない。

 

 

 

『アルファ、これ終わるのか?』

 

『分からない。生産拠点なら、在庫は“尽きるまで”出る』

 

『そこになかったらないですねーって、ならないか。在庫捌ききるか、撤退するのか……まぁつくづく救援依頼じゃなくて良かったな……』

 

 

 

 今回は都市依頼で依頼内容は探索や調査だ、撃破自体は仕事にならない。

 弾薬費で赤字になる心配は薄い。だが精神的にしんどい。

 

 そこでエレナが判断を下した。

 

「一度退くわ。切りがない。前哨基地まで戻るわよ」

 

 シカラベが怪訝そうに言う。

 

「まだ調査が──残弾も──」

 

「残弾が半分切ってから帰ろう、じゃ遅いのよ。

 敵の量が想定外だし。そこまでを成果として持ち帰る、それでなんか言われたら私が対応するわ」

 

 明るい声で、エレナは全体を引っ張った。

 

「ゆっくり退く。優勢は変わらない。蹴散らしながら戻るわよ」

 

 撤退が決まる。

 

 だが──その瞬間、短距離通信に声が割り込んだ。

 

『助けてください! お願いです!』

 

 全員が硬直する。

 

 エレナが即応する。

 

「あなた誰? どこ? 位置情報送って。こっちからは掴めないわ」

 

『分かりました! 今送ります!』

 

 送られてきた座標を見て、エレナが顔をしかめる。

 救助対象は“敵側の戦線”の向こう。しかも別通路は敵反応で埋まっている。

 

(……助けに行くには、戦線を押し上げる必要がある)

 

 それは撤退直後にやる判断ではない。

 見捨てる、という言葉が脳裏をかすめる。

 

 

 

 

 だがその時、トガミが声を上げた。

 

「俺が行く! 援護してくれ!」

 

 焦り。

 証明欲。

 今ここで何かを掴まないと、自分が自分でなくなる気がした。

 何より自身と同年代のアキラにも実力が劣っていて、護衛連れのオジョウサマにも若干負けている気がする。

 

 タメのハンターに負けている、それだけで先走る理由ができてしまった。

 

 

 

 エレナは一秒だけ黙り──シカラベが否定しないのを見て決断した。

 

「分かった! 全員で援護! 戦線を上げて救出する! 

 手早く、でも焦らない! いいわね!」

 

 火力が一点に集中し、戦線が押し上がる。

 

 

 トガミが突入。

 ドアを蹴って──中にいたのは、倒れた女と、扉を開けた自身に銃口を向ける機械たち。

 

 死神が鎌を振るうように見えた。

(あっ、死んだ)

 

 その理解がトガミの体感時間を引き延ばした。

 

 

 だが、次の瞬間。

 

 機械たち次々沈黙していった。

 

「あくしろよ! さっさと連れ出してトンズラするぞ!」

 

 アキラの声。そして銃の一撃だった。

 さらに牽制。トガミが女を掴む。

 アキラが擲弾で室内を焼いて、離脱。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 隊は撤退を成功させた。

 

 

 

 安全圏に近い場所まで下がり、一息つく。

 

 救出された女が頭を下げた。

 

「本当に……ありがとうございました。死ぬところでした」

 

 だがトガミは、素直に受け取れない。

 自力ではなかった。アキラに救われた。また救われ、また負けた。まだ俺は弱いのだと見せつけられた。

 それが悔しい。

 

 エレナは女に目を向ける。

 

「モニカさん。どうしてあなた一人だったの? 他の人は?」

 

「……それは……」

 

 モニカは言い淀む。

 

 そこでキャロルが明るい声で割って入った。

 

「エレナ。細かい話は基地に戻ってからにしましょ。

 “今ここで”仲間が籠城してる場所を知ってるとか言われても、こっちも困るでしょう?」

 

 エレナは一拍置き、頷いた。

 

「……そうね。まず戻りましょう」

 

 モニカが、ほんのわずか安堵の息を吐いた。

 

 

 

 それを見て、シカラベとシオリとアキラの目が細くなる。

 ──警戒の目だ。

 

 レイナも同じものを見て、背筋が冷える。

 さっきまでの「助けた」空気が、ひっくり返りそうな気配。

 

 カナエは笑ってアキラの肩を叩いた。

 

「アキラ少年ーようやく終わりっすね。でも依頼は拠点に戻るまでが依頼っすよ?」

 

「わーってるよ、土産モン手にしたんだ、さっさと帰るに決まってんだろ」

 

 こうして、彼らは“救助”を一つ成功させた。

 

 

 

 だがモニカの表情は、救われた人間のそれではない。

 何かを置いてきた顔だ。あるいはほかの感情を秘めている。

 

 

 

 

 工場区画依頼は、まだ終わっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 アキラたちは、無事に前哨基地へと帰還した。

 

 エレナが帰還報告を入れると、担当の職員がすぐに姿を現す。

 

「まずは、無事で何よりだ。……だが、戻ってくるのが少し早いな。問題があったのか?」

 

「ええ。あと──救助対象を一人、助けてきたわ」

 

「おっ、本当か! それは……」

 

 職員が安堵の表情を浮かべ、話を続けようとしたところで、エレナは淡々と情報共有に入った。

 戦闘の規模、敵の数、弾薬消費量、撤退判断に至った理由。

 

 その間、モニカはひどく居心地が悪そうだった。

 

 

 

 視線は定まらず、落ち着きなく指先を動かし、情報収集機器の提出を求められた瞬間には、目に見えて動揺した。

 

 それに職員も気づいたらしく、やや怪訝そうな声で言う。

 

「すまないが……君が、君のチームとはぐれた状況についても把握する必要がある。

 思い出したくない記録だとしても、提供してほしい」

 

「…………分かりました」

 

 モニカは観念したように肩を落とし、データを提出した。

 

 職員は軽く解析を進め──そして、画面を見た途端、表情を険しくした。

 

「……お前、

 他の連中を見捨てて、逃げてきたな?」

 

 その一言に、モニカは叫んだ。

 

「だったら、死ねって言うんですか! 私、ただの地図屋ですよ!? ただの地図屋が正面切って勝てるわけないじゃないですか!! 」

 職員にヒステリックに詰め寄るように声を荒らげていた。

 

 

 

 

 ──-

 

 報告を終えた後、アキラたちは弾薬補充だけを済ませ、そのまま再出発することはせず、基地内で長めの休息を取ることになった。

 

 ハンター用に解放された休憩室。

 アキラはエレナ、サラ、キャロル、レイナ達と同じテーブルを囲んでいた。

 

 エレナは、難しい顔をして口を開く。

 

「……正直に言うとね。彼女のしたこと、分からなくはないのよね」

 

 視線の先には、部屋の隅で一人座っているモニカの姿があった。

 

「まあ、確かにそうっすね。死んだら元も子もない、だったら後ろ指刺されてもみっともなく生還する、誰だってそうする。俺だってそうする。場合によりますけどね」

 

 アキラも同意する。

 

 それは単なる相槌ではなく、本心だった。

 一方で別の事も考えていた。

(女性軽視とか差別をするわけじゃないが、女は感情で動いて、男は理屈で動くから。何故逃げて来たという男性の言い分と、死にたくないから! と言う感情で言い訳する女性っていう構図はどの世界でも変わらんのかもしれんな。実際会議でほぼほぼ本決まりの時にわめき叫んで会議の進行ができなくなったことも前世であったしな──ー)

 

 モニカに向ける視線がネットでの『女さん』扱いになっていた。

 

 

 

 だがいずれにしてもあれは言い訳というより、

 罪悪感に押し潰されないための、最後の支えに()見えた。

 

「……自分で受けた仕事なら、また違ったんでしょうけど」

 

 サラの言葉に、アキラも小さく頷く。

 

 都市の長期戦略部。

 事実上、拒否権のない依頼。

 

 ろくに面識もない者同士を組ませ、

 それでも“プロなんだから死を受け入れろ”というのは、あまりに一方的だ。

 

 エレナも同じように考えているらしく、表情は硬い。

 

 

 

 だが──キャロルだけは、どこか割り切った笑みを浮かべていた。

 

 それが、アキラには少し気になった。

 

「キャロルは……随分平然としてるな。前に組んでた相手(バディ)だろ?」

 

「あら? 女の関係ってあんがいカラっとしてるものよ?」

 

 キャロルは即答する。

 

「それに断れない依頼を押し付けておいて、プロ根性を期待されても困るっていうのも同意見だしね。

 今回の件は、都市側の調整ミス。私はそう思ってる」

 

「結局上は現場のことわかってないンだろうな」

 

 アキラは頷きつつ、思う。

 

 エレナたちとキャロルの差は、

 倫理観というより、信用の置き方の差だ。

 

 

 

 キャロルが、ふっと柔らかく笑った。

 

「だからね。

 初対面の私を見捨てずに助けてくれたアキラとは、これからも良い関係を築きたいの」

 

「ぶっちゃけ見捨てたかったってそん時思ってたけどな!」

 

「それでも、よ。結果としてアキラは私を助けてくれた。違う?」

 

「……違い、ません」

 

「でしょ? アキラは自身のことを非情だと思ってるかもしれないけど、少なくともアキラの善性で私は救われたの、その実績があるから、またなんかあったら助けてほしいなーって、そう思うワケ」

 

 キャロルとアキラが話している間に、サラが割り込む。

 

「そうよアキラ。普段ふざけたりよくわからない事いうけど、私とエレナを救ってくれたじゃない。私たちの恩人が、恩人を馬鹿にするのはあまり好きくないな──」

 

「そうね。もちろんすべてを救うとかそんな大層な事は求められてるんじゃないんだし、自分ができる範囲でしたいことをやればいいんじゃない? だから私たちも助けてね!」

 

 サラとエレナも笑い、アキラをからかう。

 この空気を面白く考えたカナエがレイナの背を押すが、レイナは嫌と訴えており、残念がった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 部屋の隅で、一人座るモニカ。

 

 陰鬱な表情で、何度も溜め息を吐いていた。

 

 それを、少し離れたテーブルからトガミが見ていた。

 

 難しい顔で息を吐き、やがて立ち上がる。

 

 自動販売機で飲み物を買い、それをモニカの前に置いた。

 

 モニカが顔を上げる。

 

「……まあ、何だ」

 

 トガミは視線を逸らし気味に言う。

 

「助かったんだからさ。

 そこだけは、喜んどけよ」

 

 モニカが驚いたような顔をする。

 

「俺は命懸けであんたを助けたんだ。

 そのあんたが、自分が助かったことすら喜ばないなら……ちょっと困る」

 

「……ありがとうございます」

 

 その言葉は、かすかだった。

 

 だが、確かに届いていた。少なくとも自分(トガミ)が行ったことは無駄じゃないと、そう思う事ができた。

 

 

 

 空元気に近い笑顔ではあったが、モニカはトガミに向かって笑い、深く頭を下げた。

 

 トガミはその様子に、照れ隠しのように顔をわずかに強張らせると、何も言わずに背を向けて自分のテーブルへ戻っていった。

 

 席に着いたトガミは、柄にもないことをしたな、と小さく苦笑する。

 

 だが、そのおかげで──

 自分の力だけではモニカを助けられなかった事実が、少しだけ曖昧になった。

 

 胸の奥が、ほんのわずか軽くなる。

 

 モニカは、その様子を遠目に見ていた。

 

 そして今度は、作り物ではない笑顔を浮かべていた────ーどこか含みのある笑みを。

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。
この連続投稿でモニカとの決着まで行けたらいいと思ってますが、脳内プロットの時点でモニカ戦は前編後編の二部展開予定です。だから長くなんだよなぁ・・・

それでもPVもAUも各話1000行ってるし、この多くのSSの中でまだ1000人近くついてきてくれてるって考えるとうれしいですね。
リビルドワールドSSが終わったら多分ダンまちのSS書きそうな予感がする。


余談
勇者刑に処すはハスクラゲーしながら見てて「あれ?結構面白れぇな!」となってます。
昔に比べてアニメも毎期3作品くらいしか追えてないんだよなぁ…
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