Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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こちらは本日投稿の【2話目】となってます。この前の話を読んでいない場合、そちらを見てもらえると幸いです。まぁ原作勢の方からすると「問題ないね」となりそうですが…


改めて、今話も閲覧感謝です。また感想、誤字報告等感謝です。
家でサビ残して書類書きながら書いてましたので、マジで後半寝てました。ハイ。なんなら間違えてこの次の話を投稿しかけてました。


アキラターズ

 

 

 休息を終えたアキラたちは、再びミハゾノ街遺跡・工場区画へ向けて出発した。

 

 ただし、モニカの随伴に加え屋外支援として、重装強化服二機──ヘックス機とハウンド機が随伴し、依頼内容と目的の変更があった。

 

 目的も変更された。

 

 工場区画の調査から帰還困難者の救援が主目的になった。

 

 

 依頼内容の変更理由は、モニカから得られた情報により今なお多数のハンターが籠城している可能性が高まったためである。

 

 そもそも都市が工場区画の地図を配布したのは、調査の便宜だけが目的ではない。

 

 大量のモンスターに遭遇し、勝ち目がない状況に陥った場合──

 ハンターたちを、あらかじめ想定した地点に集めやすくするためでもあった。

 

 合流地点が分かっていれば、はぐれても希望を持てる。

 救援側も、闇雲に探すより遥かに効率が良い。

 

 そのため、配布された地図には立て籠もりに適した地点が複数示されている。

 

 アキラたちが向かっているのは、その一つ──A89地点。

 

 そしてモニカは、その案内役として同行していた。

 

 ──それは、都市側の判断だった。

 

 仲間を見捨て、一人で逃げたモニカの扱いに、都市は頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 契約違反であるのは事実。

 だが、事実上強制された依頼を放棄したから極刑、では反感を買う。

 

 噂はすぐに広まる。

 最悪、都市の依頼そのものを拒否する流れが生まれかねない。

 

 かといって、無罪放免にもできない。

 

 そこで都市は、もう一度戦場に戻させる(もう一回遊べるドン)という選択をした。

 

 逃げても、結局は同じ場所に戻される。それ自体が抑止になり体裁も整う。

 

 逃走は裏切りではなく、救援要請のためだった──

 そうしておけば、見捨てられた側の反感も多少は和らぐ。

 

 都市の威厳も保てる。

 

 この“軟着陸”のために、モニカは同行させられた。

 

 

 

 

 

 だがこの判断に、エレナは強く反発した。

 

 

 彼女も、モニカの事情が分からないわけではない。

 

 だが仲間を見捨てた者を、ましてやほぼ面識のない信用できない者を同じチームに加える。

 感情面でも、リーダーとしての危機管理でも、受け入れ難い。

 

 とはいえ、都市の要求を一蹴するのも難しい。

 

 そこでエレナは対案を出した。

 

 足手まといになる恐れがあるなら、それを補う人員を用意しろ。

 しかも事情を説明した上で、だと。

 

 正当な要求だったが、現時点でもエレナたちのチームは大所帯であるため、結局この要求は通ることはなかった。

 代わりに都市はエレナたちへの報酬の値上げを提示し、それに同意したのだった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 とはいえ都市は報酬以外に重装強化服二機の随伴を許可した。

 

 工場内部には入れないため、屋外での護送と援護を担当する。

 

 A89地点の建物外まで送り届ける。

 

 もし、それすら不可能なら──

 作戦は根本から見直される。

 

 刺激しすぎない、ぎりぎりの戦力。

 

 それがヘックス機とハウンド機だった。

 

 前回より大規模となった編成で、

 アキラたちは前哨基地を後にした。

 

 ◆

 

 

 それから、しばらくしてA98地区付近にたどり着いた一行は屋内にある目的地に入る前にモンスターを敵寄せ機でおびき寄せ掃討した。

 今回は重装強化服二機も火力役で手伝ってくれたため比較的スムーズに対処できた。

 

 

 エレナは敵寄せ機をもう一度撃ち出して、追加が出ないことを確認する。

 

「……よし。大丈夫そうね」

 

 エレナが随伴機へ向ける。

 

「それじゃあ、行ってくるわ。私たちが戻るまで、ここを確保して」

 

『任せとけ』『危なくなったらすぐ戻れ。外まで出れば俺らが蹴散らす』

 

「その時は本当に頼むわ」

 

 エレナは軽く笑い、チームリーダーの顔に戻る。

 

「これからA棟に入ってA89地点へ向かう。

 敵は減らしたけど、過信は禁物。

 マップもあるけど、通路封鎖の可能性もある。注意して」

 

 全員が頷く。

 

「……よし! 出発!」

 

 号令と共に、アキラたちはA棟内部へ突入した。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ビル内部は戦闘の痕跡はあるが、血痕や死体などは一切なく真新しい状態を保っていた。

 これはこのビルやこの工場が現在も稼働しており、自動復元機能なども機能していることを意味する。

 

 アキラ達は急ぎながらも慎重に先に進んでいた。

 

「しっかしキレイですね。死体の一つもない」

 アキラが今の現状に疑問を覚えていた。

「確かにね。明らかに異常よね……」

 エレナも一緒に唸り始めたの

 

 その会話にシカラベも混ざりだす。

「工場の自動清掃装置とかとは何か違う気がするな。案外生存者が死傷者を運んでどっかで引きこもってるのかもしれないが……それも違う気がするんだよなぁ」

 血痕はある。破片もある。銃痕もある。

 戦闘があったのは確実。

 重傷者や死者が出ても不思議はない。

 

 なのに死体だけがない。

 可能性はいくらでも並べられる。

 でも、シカラベの勘が“違う”と言っている。

 

 

 エレナも同じだった。

 だが、撤退理由には弱すぎる。まずA89地点は確認しなければならない。

 

 エレナはアキラに尋ねる。

 

「……アキラは何か気になることはない?」

 

「そうっすね……俺も生存者が死体を回収したと考えたんですけど、わざわざ武器も一緒に回収する理由が思いつかないんすよね。武器まで回収する余裕あるなら脱出できてるかもしれないですし。それに余裕がないならドックタグとかそれこそ仮死状態の首だけ持っていくとかならありそうなんですが……」

 

 そしてアキラはきっぱり言う。

「まぁ結局わかんないっすね。余力がないのに首もっていくなら、首置いてけ! なぁ! って叫びたいだけっす」

 

 アキラが首を横に振ると、エレナはわずかに安堵した。

 あの直感の強いアキラが何も言わないなら、考えすぎかもしれない。

 

 

 

 いずれにしても今の状況に対する適切なアンサーがない以上、先に進むしかなかった。

 

 

 

 

 ◇

 

 しかし通路を塞ぐ隔壁が現れ、行く手を阻んだ。

 

 案内役のモニカが迂回路を提案するが、エレナは難色を示す。

 

「遠回りになるわね。他はないの?」

 

「残念ですが……」

 

 カナエが口を挟む。

 

「ぶっ壊して進めば良いんじゃないっすか?」

 

「簡単に壊せるならね。稼働中の遺跡の隔壁よ? 

 弾薬消費するのも嫌だし……」

 

「ああ、じゃあ私がやるっす」

 

 カナエは軽く拳を引き、次の瞬間、隔壁に叩き込む。

 

 衝撃変換光が走り、隔壁が砕け散った。

 

 エレナが驚く。

 

「凄い。でも良かったの? あなた、手伝いしない契約でしょう?」

 

「何かあった時にお嬢を抱えて逃げるのが仕事っす。その時に邪魔になるものを壊しただけっすよ」

 

「……助かるわ」

 

 こうして当初のルートを維持して進む。

 

 続く隔壁はさらに頑丈だった。

 

 モニカが言う。

 

「……流石に、殴って壊すのは無理だと思います」

 

 カナエも叩いて確認し、肩をすくめる。

 

「確かに前のより頑丈そうっすねー」

 

 そこでシオリが前に出た。

 

「では、ここは私が。

 カナエに契約外の行動を続けさせるのも何ですので」

 

 居合。

 光の線が走り、隔壁が崩れ落ちた。

 

「……おー、凄いな」

 

 アキラが感嘆し、刀に目を向ける。

 

「その刀、旧世界製か?」

 

「いえ、現代製です」

 

「現代製でそれか……」

 

 アキラが興味深そうに見ている横で、

 モニカは隔壁の断面を見つめ──ほんの一瞬だけ視線を険しくした。

 

 

 ◆

 

 やがてA89地点に辿り着く。

 

 そこは工場内の倉庫。籠城に適した場所。

 だが通路を塞がれれば脱出困難な、救援前提の避難地点だ。

 

 扉を開ける。

 

 中に救援を待つハンターたちはいない。

 

 あるのは──

 破壊された多脚機の残骸。

 壊れた携帯防壁。

 そして、床に倒れているハンターたち。

 

 エレナが顔を歪めた。

 

「……手遅れだったようね」

 

 シカラベも落胆を隠さない。だがすぐ切り替える。

 

「トガミ。生死確認だ。軽く揺すって声をかけろ。仮死モードなら起きる」

 

「分かりました」

 

「誰も起きなければ全員を運び出す準備だ。今回は死体が残ってる。

 重傷者が混じってるかもしれねぇ」

 

 トガミが動き出す。

 

 そしてレイナ達もその死体たちを確認していった。

 

 

 

 

 

 その横で、モニカが呆然としたようにハンターたちを見ていた。

 無意識に、ぽつりとこぼす。

 

「……何で……」

 

 アキラが眉を上げる。

 

「何でって、何かおかしいのか?」

 

「いえ、その……“これしかいない”のが」

 

 モニカは言いにくそうに言葉を探し、続けた。

 

「私が言うのも何ですが……戦況、そこまで酷くはなかったはずなんです。

 犠牲が出ても、半分以上はここに逃げ込めると思ってました」

 

「なるほど。じゃあ──他の避難場所に逃げた可能性は?」

 

「……そうですね。そうだと、いいんですけど」

 

 モニカは無理に笑おうとして、結局、悲しげに口元を歪めた。

 

 倉庫内の確認は進む。

 生存者はまだ出ない。

 

 エレナは迷っていた。

 

 ここにいる者を「生死不問で回収して撤収」するか。

 それとも「他の避難地点を当たって生存者を探す」か。

 

(残弾はまだある。ここまで戦闘なしで来れた。……死体を運ぶより、生存者を探した方が良い?)

 

 何より奇妙だったのは、ここに来るまでの道のりで、明らかに激戦の痕跡があったのに、死体をほとんど見ていないことだ。

 

 血痕はある。破片もある。銃痕もある。

 だが肝心の「末路を迎えた人間のそれ」が、どこにも転がっていない。

 

 なのにこのA89で、ようやく“結果”が固まった形で出た。

 

(ここで相打ちになった……なら、他は逃げ切った可能性が上がる)

 

 だからこそ、エレナは「次の避難地点」を考え始めていた。

 

(モニカと相談して決める? できれば基地と連絡を……)

 

 だが現在の通信状態は不安定だった。

 

 外で待機している重装強化服を中継すれば基地と繋がる──はずだった。

 実際、途中までは繋がっていたのだ。

 

 それがA89付近で、ぱたりと切れた。

 

(甘く見たわね……でも、その時は引き返す状況じゃなかったんだけど)

 

 悔やんでも仕方ない。エレナは切り替える。

 

 その時だった。

 

「目を覚ましたやつがいるぞ!」

 

 トガミの声。

 

 エレナが駆け寄り、アキラたちも続く。

 だがモニカだけは、立ち尽くしたままだった。驚きと、ほんの少し険しさが混じる。

 

 

 目を覚ました男は義体者だった。

 胸から下と左腕が欠けている。仮死モードで辛うじて生き延びたらしい。

 

「……こ、ここは……?」

 

「大丈夫。助けに来たわ」

 

 エレナは落ち着かせるように状況を簡潔に説明した。

 

 男──イージオは呼吸を整え、表情を緩める。

 

「そうか……助かった。仮死モードもいつまで保つか分からなかったからな」

 

「話せる? 何があったのか。

 他に生存者がいそうな場所があるなら教えて」

 

「分かった。俺たちはA棟の調査に──」

 

 そこまで言ったところで、イージオの目が大きく見開かれた。

 

 怯えたように、顔が強張る。

 

「……何で、あいつが……お前がここにいるっ!?」

 

 視線の先──モニカがいる。

 

「まさか、お前ら……あいつの仲間か!?」

 

 シカラベが一歩前に出て、低い声で宥める。

 

「落ち着け。あの女がお前らを見捨てたのは、こっちも把握してる。

 今ここにいるのは懲罰だ。案内役として連れてきている」

 

 だがイージオは、困惑を強めるだけだった。

 

「……見捨てた? お前、何を言って……」

 

 シカラベも眉をひそめる。

 

「違うのか? じゃあ何が──」

 

 この瞬間、全員が察した。

 双方の認識が致命的にズレている。

 

 

 イージオは震える右手でモニカを指差し、言葉を絞り出した。

 

「あいつは……あいつが……!」

 

「あいつが俺たちを襲ったんだ! 

 見捨てたんじゃない! 

 あいつは──モンスターと一緒に、俺たちを殺そうとしたんだ!」

 

 その瞬間、全員の視線がモニカに集まる。

 

 モニカは驚愕し、すぐに首を激しく振った。

 

「違います! そんなことしてません! 

 ……酷すぎます! 私が逃げたからって、そんな噓──」

 

 言い方は“被害者”だった。

 演技に見えない。少なくとも表面上は。

 

 エレナは迷う。

 

(本当に演技じゃないなら、相当追い詰められている。でも相手が嘘をつく動機もある。錯乱してる? 正気だとしても恨みを持ってモニカを追い込むのには十分だわ)

 

 エレナは証拠を求める。

 

「あなたの話、証拠はある?」

 

 イージオが焦る。

 

「……証拠って言われても……本当だ!」

 

「ログは? 情報収集機器のデータ。

 無理なら無理でいい。無理強いはしない。けど──」

 

 暗に言っている。

 証拠なしなら信用できない、と。

 

 イージオは険しい顔で吐き捨てた。

 

「渡せない。命惜しさに何でも漏らす三流と一緒にするな」

 

 その言い方に、アキラが妙に感心した顔で頷いた。

 

「まぁ、そうなるか。交渉は可能か?」

 アキラがそのハンターに笑みを浮かべて訪ねる。

 

「アキラさん! そんな人の意見を聞く必要はないと思います、たぶん混乱してるんですよ? ね?」

 

 アキラは誤魔化そうとするモニカを見てから、エレナに目を向ける。

 エレナはその視線の意味を理解し、そのハンターとの交渉を行おうとした。

 

 

 その間にアキラはモニカを視界に入れつつ、シカラベと密談を始めた。

「シカラベ、あんたの勘はどういっている?」

「……俺の理性では白だと思ってるが、勘は黒って言ってるな。アキラは?」

 

「俺もどっちかというと黒に近いと思う。どっちにしても警戒するべきだと思う。いや、油断しない方がいい気がする」

 

 その二人の会話にトガミも混ざる。

「お、おいアキラ。それにシカラベも何を言ってるんだ?」

 

 そのトガミにアキラとシカラベは口を揃えて言う。

「「多分、モニカが嘘をついている」」

 

 

 

 

 ◆

 エレナとイージオの交渉は難航していた。イージオの希望やハンターとしての矜持が、エレナたちの時間のなさと情報不足から交渉は進んでいなかった。互いにこのままじゃまずいと思っているが、着地点が見つからなかった。

 

 

 そしてアキラは変わらない現状を打開するため、アルファを頼ることに決めた。

『アルファはどう思う? どっちが正しいと思う?』

 

『そうね、状況判断としてはどちらともあり得ると思うわ』

 

『知ってる。で、アルファならどう判断、いやどう対処する?』

 

『そうね、じゃあ試しに噓発見器のモノマネでもしましょうか? 案外人の顔や筋肉、さらにバイタルデータがあればその人が嘘をついているのかかどうかがわかるわよ?』

 

『そんな芸当できるのか、なんでもありだな。だが今の状況だとあいつらの手とかを触って脈拍触診しながら会話なんてリスキーだぞ? どっちかが、敵の可能性が高いんだからな。まぁいきなり襲われることはないだろうし……一応触ってみるか、イージオは肩叩くからそれで脈拍とれるか?』

 

『できるわ。じゃあアキラが彼女たちに質問して、そして体の反応とかから嘘かどうか確認してみるわ。ただ義体者とかの場合、顔の筋肉もいじったりしてるかもだから、正確性は落ちるけどね』

 

『わかった、今は手詰まりなんだ。やってみよう』

 

 

 アキラは納得して頷く。そしてまずイージオに尋ねることにした。

 アキラはしゃがみこんでイージオの肩をたたきながら聞く。

 

「なぁ。もう一回聞くけどモニカに襲われたって話、本当か?」

 

「本当だ」

 

 即答だった。

 

「……そうか」

 

『アルファ』

 

『高確率で真実よ。義体者だから絶対とまでは言えないけれど、ね』

 

『了解』

 

 アキラは次にモニカへ向き直る。

 

「同じく確認だ。襲ってないって話、本当か?」

 

「ちょっと待ってください! そいつの話を──」

 

「答えろって、別に今から襲って食うわけじゃないんだ。状況を整理したいだけなんだ。な?」

 

 アキラはモニカの手を握りながら聞く、若干頬が赤くなった気がしたり声が若干上ずったりしたが気にせいだと考える。

 さすがにこの年で男性への免疫が皆無なんておかしいと考えた。では、いまの照れは演技、か? とも考えたがまずはモニカの反応を探るのが先だった。

 

 

 モニカは一度息を詰め、はっきり言った。

 

「襲っていません。信じてください」

 

『アルファ』

 

『嘘ね』

 

『……マジで?』

 

『割と高確率でマジな嘘よ。で、どうするの?』

 

 

「そうか……わかった」

 その瞬間、モニカ以外のメンバーに近距離汎用通信で連絡を試みた。

【モニカは嘘をついている可能性がくそ高い。全員警戒してくれ】

 

 レイナとトガミはその顔に驚きの表情を表した。

 その一方で、先輩ハンターやシオリたちは表情を変えなかった。

【わかったわ。なぜ気づけたの?】

【勘、直感、フィーリング。まぁいろいろと】

 

【それでどうしますか? 捉えますか?】

 そう提案してきたのは意外にもシオリだった。実際この状況だとモニカがレイナに手を加えること可能性が強くなったための確認でもある。

【そうね。あとは少し泳がすか、もう少し探ってくれない?】

【わかりました。その間に準備をお願いします】

 

 

 そうしてアキラはもう一度モニカに尋ねる。

 

「わかった。じゃあモニカは俺たちの敵──じゃないんだよな?」

 

 

 さぁ答えろ、とアキラは心で叫んだ。

 

「ええ! もちろんです! 私はみなさんの味方です! だからs」

 

『アキラ、嘘よ』

 

『OK』

 

 

 その瞬間、アキラの中で何かが静かに切り替わった。

 

 

 モニカの両手は、まだアキラの手の中にあった。

 強く握っているわけではない。

 だが、逃げようとすればすぐ分かる程度には、確かに触れている。

 

 

 そして、ほんのわずかに──重心を落とした。

 

 踏み込むほどではない。

 だが踵から足裏へ、体重の乗り方を変える。

 同時に、モニカの手首を包む角度をほんの数度だけ変えた。

 

 合気道の基本。

 力を加えない。

 相手の「立っている前提」を壊す。

 

 

 

 モニカは一瞬、違和感を覚えた。

 

 足が、軽くなる。

 床との距離感がずれる。

 

(──まずい)

 

 気づいた時には遅かった。

 

 アキラは引いていない。

 押してもいない。

 

 ただ、そこに立たせないようにしただけだった。

 

 

 モニカの身体が自然と前に流れる。

 崩れた軸を修正しようとして、反射的に力を入れる。

 

 その瞬間を、アキラは逃さなかった。

 

 手首を返す。

 肘を畳む。

 体を密着させ、重心を自分の内側へ引き込む。

 

 

 

 投げではない。

 拘束だ。

 

 床に落とす前の、捕獲。

 

 

 

 

 ──のはずだった。

 

 モニカの体表に、嫌な感触が走る。

 

 

 

『アキラ! 手を離しなさい!!』

 

 空気が、弾く。

 

「……っ!」

 

 モニカから力場障壁が展開された。

 

 

 

 全力ではない。

 だが、関節の噛み合いを強引に外すには十分な出力。

 

 

 

 合理も、効率も無視。

 純粋な膂力と装備性能による突破。

 

 後方へ跳ねる。

 床を蹴り、距離を取る。

 

 

 

 同時に、空気が変わった。

 

「──ッ!」

 

 レイナが息を呑む。

 

 シオリは即座に一歩前へ。

 カナエは何も言わず、レイナの半歩前に立つ。

 

 銃口が上がる。

 全員が、迷いなく。

 

 

 

 

 モニカは睨みつけながら、アキラを見た。

 

 さっきまでの怯えた表情はない。

 作られた被害者の顔も消えている。

 

 そこにあったのは──計算が狂った者の苛立ちだった。

 

「……ずいぶん、乱暴じゃないですか」

 

「嘘つきに礼儀を払う必要なんかねぇだろ」

 

 

 

 アキラの口調が一気に荒くなる。相手への敬意を感じさせない、敵として扱う時の口調であった。

 

「嘘? 何を言ってるんですか? 噓なんかついてないですよ」

 

「じゃあ今のは? ただの地図屋が俺の体術を無理やり力場装甲で対応するってのは、無理があるだろ」

 

 アキラは笑う。

「お前基地で言ってたよな。『ただの地図屋です。戦えないです』って。もうその時点で嘘ついてたじゃねぇか女ァ!」

 

 

 

 一拍。

 

 モニカは、笑った。

 

「……疑われたから、身を守っただけですよ?」

 

『アキラ。相手はもう隠す気もないわね』

 

『ああ』

 

 アキラは一歩、前に出た。

 

「じゃあ確認は終わりだ」

 

 それだけで、十分だった。

 

 モニカの笑みが消える。

 代わりに、冷たい光が目に宿る。

 

「……やっぱり、あなたがたは厄介ですね」

 

 敵意が、はっきりと立ち上がる。

 

 もう誤魔化さない。

 もう取り繕わない。

 

 その瞬間、

 モニカは完全に敵になった。

 

 




モニカ「私は敵です!」

レイナとトガミ以外「うん、知ってた」
読了感謝です。
いつも通り7000字を一日で二回投稿してますが、まぁだらだら書くよりもいいかなと思いました。
こっからモニカ戦まで突っ切ります。さぁて頑張るぞい()

そして今作でもアルファ式噓発見器のお出番でした。オリジナル要素で脈拍も測ってます。え?モニカの手を握った理由ですか?イケショタに照れる地味め女子の絡みが見たかったからですが?(大嘘)普通にアキラはモニカがほぼ黒だと思ってたので、油断してる間に柔道や合気道モドキで捕獲しようとしてました。まぁ失敗に終わりますが。

ちなみにボツ案として、「とりあえず四肢に弾打って、モニカさんダルマ状態にして連れて帰りましょうか」といった懐かしのヤジマみたいな扱いにしたりする案や、イージオを治療したのち「情報吐いてくれなきゃ治療をやめるゾ」や「情報吐かないなら撃って殺します」みたいな感じで脅したり、最終的に殺す案もありました。で、最終的にそういやこのイージオさん後で登場するから殺しちゃダメじゃん!となり生存しました。



余談
最近ドリフターズを読み初めまして、まだ10話くらいっすけど面白いっすね。やっぱり島津とか薩摩藩のキャラはぶっとんでて好きですね。他作品だとゴールデンカムイの鯉登少尉とかも好きです。キエエエッ!!(猿叫)首置いてけ!烈風オイテケ!
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