Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。そろそろストックのそこが見えてきました、さっさと書かないとですね。


スラム兄弟

 翌朝、アキラはいつものように朝早く目を覚ました。まだ薄暗い部屋の中、隣で小さく寝息を立てるシェリルの姿があった。布団の端をしっかり握りしめたまま、安心したような顔で眠っている。

 

 アキラはそっと起き上がり、物音を立てないように支度を始めた。

 

 まずは工場の様子を確認するついでに、数日分の保存食と予備の弾薬、簡易ツールなど、必要になりそうな私物をまとめて持ち帰る準備をするつもりだった。

 

 廊下に出ると、早朝にも関わらず、数人の子供たちが既に起きて掃除や見回りをしている姿が目に入る。元はバラバラだった徒党の面々が、少しずつ秩序を取り戻しつつあるようだった。

 

 入り口付近まで来たところで、シェリルが部屋着のまま追ってきた。

 

「アキラ、おはようございます……もう出かけるんですか?」

 

「ああ。昨日言ってた通り、工場に残してある私物を持ってこようと思ってな。あと、罠の点検もしないと」

 

「でしたら、私も同行します。道中の安全確認にもなりますし」

 

 シェリルの提案を受け、二人は再び工場へ向かって歩き出す。途中、何人かの子供たちが目礼を交わしてくる。まだ完全な信頼には程遠いが、少なくとも彼らの中で“アキラ”という存在が少しずつ浸透してきている証だった。

 

 工場に着くと、アキラは罠の設置場所や動作確認をシェリルに説明しつつ、手慣れた様子で装備品の入ったコンテナをいくつか運び出していく。シェリルはその手際に感心しつつも、黙ってメモを取り続けていた。

 

 やがて一通りの荷物をまとめ終え、二人は再び拠点へ戻る。

 

 戻ってきた時には、拠点の空気はすでに朝の活気を帯びており、子供たちが朝食の準備や雑務に取り掛かっていた。

 

 荷物を一通り運び込んだアキラは、大広間にて配膳を手伝っていたシェリルに声をかける。

 

「シェリル、工場の方の拠点、子供を何人か常駐させていいか?」

 

「もちろんです。あそこはうちの防衛線にもなりますから。選抜は私がやります」

 

 こうして、アキラとシェリルの拠点運営が本格的に動き始めた。

 

 廃工場と徒党の拠点。二つの拠点をつなぐ“人喰い工場”という名の防衛線。

 

 アキラの生活は、確実に変化していた。そして、これから先に訪れる幾多の戦いと出会いが、彼をどこへ導いていくのか──

 

 その運命は、まだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 日が傾きかけた頃、拠点の門が、コンコン、と控えめに叩かれた。

 

 少しして、監視係の子供が足音も荒くアキラのもとに駆け寄ってくる。

 

「大変です、アキラさん! 誰か来てる。……外から!」

 

「誰だ?」

 

「えっと……他の徒党の使いの人で……武器は見えなかったけど、なんか……偉そうだった、です」

 

 その言葉にアキラは小さく息を吐き、腰のホルスターにそっと手を添える。無言のまま拠点の門へ向かって歩き出すと、空気を察したシェリルもすぐに隣に並んだ。

 

 鉄扉を開けると、夕焼けを背にした男がひとり立っていた。薄汚れたマントの裾を風に揺らし、だがその下から覗く防護スーツの端と、腰に収まったホルスターがただの浮浪者でないことを語る。立ち姿には無駄がなく、視線は獲物を狙う獣のように研ぎ澄まされていた。

 

「……俺に何の用だ?」

 

 アキラの問いに、男は両手をゆっくりと持ち上げて敵意のないことを示し、穏やかな笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「俺はトト、シジマさんの使いでね。今日は──取引の相談に来た」

 

「取引?」

 

「ここから南側の区画だ。……今は誰の縄張りでもないだろう? 元シベアの連中が使ってた倉庫や住居跡、今は空き家だ。で、噂では、そこが“あんたの縄張り”になってるらしいじゃないか」

 

 アキラは何も言わず、男を睨み返すわけでもなく、ただ静かに見つめた。

 

「もし管理に手が回らないのなら、我々に任せてくれ。正規の取引として買い取る。報酬はオーラムでも現物でも構わない」

 

 その言葉に、アキラはちらりと隣のシェリルへ視線を流す。彼女は一拍だけ考え込み、アキラに考えを伝える。

 

「判断はアキラにお任せします。ただ……今の人員と物資では、あの区画まで管理するのは難しいです。負担だけが増えてしまうかと」

 

「……そうだな」

 

 アキラは短く頷き、再び使者に向き直った。

 

「悪くない話だ。土地に未練はない。──だが、条件が何点かある」

 

「聞こう」

 

「俺の工場には手を出すな。今後、そっちの連中が近づくのも禁止だ。そんで、うちの徒党とそっちの徒党が互いに不干渉でいきたい。それが守れるなら、売ってやる」

 

 使者は少しだけ目を細め、口の端を上げた。

 

「さすが、“人喰い工場”の主。シジマさんもあんたを敵に回す気はない。条件、確かに承った。……支払いは物資と通貨、どちらをご希望で?」

 

「両方だ。食料と弾薬を少し。あとは通貨で頼む。それと弾はAAH対応で頼む。ぶっちゃけ金額に関してはテキトーでいい。そっちの徒党としてもガキが率いる徒党に譲歩したってなったら舐められるだろうし。気持ちの金額さえ払ってくれたらいい」

 

「了解した。明日には揃えて届けさせよう」

(クソが、気持ちの金額だなんてこっちのメンツとプライドで払える額が変わるじゃねぇか! 下手に安く買ったら俺たちの徒党の価値が低くなるし、高く買い叩いたらガキに譲歩したって舐められる。クソみたいな条件持ってきやがって……)

 

 男はアキラとシェリルに会釈し、背を向けて去っていった。

 

 その後ろ姿が夕陽に溶けて見えなくなった頃、アキラは一言だけ、ぽつりと呟く。

 

「縄張り争いなんて、やる気もねぇしな。……金になるなら、くれてやるさ」(ナワバリバトルなんかスプラト○ーンだけで十分だっつーの)

 

 その横顔を見つめていたシェリルは、小さく頷いた。彼女の顔には、少し安心したような──そしてどこか誇らしげな微笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 翌日、午後の空気が埃と熱を含んで揺れている頃、シジマの使者は再び姿を現した。今度は二人の荷運びを連れ、トラックのような旧型の自動車に荷を積んできていた。

 

 簡易広場のようになっている徒党拠点の中庭には、アキラの拠点に所属する子供たちが集められていた。皆、沈黙のままその光景を見つめている。何が起きているか、まだ完全には理解できていないが、“アキラの判断”に何かしらの意味があることは察していた。

 

「約束通りの物資だ。弾薬二箱、保存食二箱、飲料水、それと通貨十万オーラム。……悪くない条件だろ?」

 

 男が荷台を開き、積み込まれていた箱の中身を見せる。弾薬はスラムでは入手困難な規格のもので、保存食も都市製の缶詰が中心だ。アキラは慎重に一つ一つを確認しながら頷いた。

 

「中身に嘘はないようだな。取引成立だ。……その代わり、もう一度言っておくが、こっちには二度と干渉しないこと。子供たちにも、俺にも」

 

「分かってるって。……これは徒党同士の契約だ、それを反故にするほど俺らも馬鹿じゃない」

(くそが、誰が好き好んで人喰い工場の主っていうバケモンと関わるかよ。こっちからもごめんだ)

 男は口角を吊り上げながら答え、荷運びに手伝わせて荷を下ろすと、さっさと引き上げていった。

 

 本来シジマの徒党だと、シェリルの弱小徒党を恐喝して土地を強奪する事も可能であった。だがシェリル達の徒党を今纏めているのはあの悪名高い人喰い工場の主アキラであり、その戦闘スタイルは奇襲やゲリラ戦法を好んで使っておりそのアキラと正面切ってやり合うと徒党の損害が大きいと判断したため、シジマの徒党は穏便に契約という形でシェリル達のテリトリーを買収した。

 

 

 

 その様子をじっと見ていた子供たちの間にざわつきが起こる。

 彼らの表情は、どこか驚きと期待に満ちていた。これまで“工場の主”と畏怖されてきた存在が、自分たちのために動き、資源を手に入れた──その事実が子供たちの心を少し変えたようだった。

 

「て、ことはシジマの徒党とやり合わないで済んだのか?」

「俺はてっきりこの徒党が乗っ取られるのかと思ったぜ……」

 

 

 引き渡しが終わり、荷物の整理と受け取りを終えた後、アキラは拠点の屋上に立って夕暮れを眺めていた。

 その隣に、そっと立つ人影。シェリルだった。

 

「お疲れ様でした、アキラ。……良い取引でしたね」

 

「まぁ、金も物資も手に入ったし、不要な土地を手放せた。現実的には妥当な判断だろ?」

 

 そう言いながら、アキラは淡々とした口調で続ける。

 

「本当はあの土地も、いつか使えるかもしれないと思ってた。でも、維持する余裕がない以上は手放すしかない。余計なものを守るのは、余計な命を背負うのと同じだ。それにいくら考えても結局なる様にしかならならないし、あまり気にしすぎるのも良くないな」

 

 それはアキラなりの信念であり、生存戦略だった。現実的に、余力がない状態で守れるものなど限られている。だから、手放せるものは手放す。その代わり、本当に守るべきものを見誤らないようにする。

 

 シェリルは小さく笑う。

 

「……それでも、貴方は子供たちの前で交渉をした。それがどういう意味を持つか、わかってやっている」

 

 アキラは少しだけ、視線を横に向ける。

 

「……見せることで信頼が生まれるかもしれないしな。でもほんと必要最低限の演出だよ? 俺は別に、カリスマになりたいわけじゃないし」

 

「わかっています。……でも、貴方のそういうところ、私は嫌いじゃありませんよ」

 

 その言葉に、アキラはわずかに照れたように視線を逸らした。

 

 どんな年齢になっても異性には敵わないな……と内心のアキラだった

 

 夕日が工場の鉄骨を赤く染めていた。風が、熱を少しだけ冷ますように吹き抜けていく。

 

 遠くで笑い声が聞こえた。今日の夕食は、シェリルが手配した保存食の缶詰と、手に入った水で作った薄いスープだろう。

 

 そして、ここから始まる“少しマシな生活”の第一歩だった。

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。仕事辞めたんで遊んできます。

なお、宇宙兄弟は休載してるので続きが見れなくて残念です。無事に帰って来いよ南波兄弟。

余談というか補足というか
現段階で原作との相違点
1.すでに工場という拠点を持つアキラ
2.すでに情報収集機とか武器持ってハンター業を開始しているアキラ
3.原作より早めのシベアファミリー崩壊RTA
4.原作より早めかつ未成熟のシェリルとの出会い
5.なぜか冴えているクラフトスキル等
6.シェリルの徒党で暮らすアキラ
7.シジマさんとの直接な交渉や取引に来た大人の殺害無し
8.ドランカムからの勧誘
9.すでにハンターランク10超えている

等があります。これからどうなるのかお楽しみにおねがいします
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