Re:Build ―スラム転生ハンター、旧領域の亡霊と契る   作:ロシュ

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閲覧感謝です。
なんとかGW中に投稿できました。

みなさんGWはいかがお過ごしでしたか?

私はGW前に左胸が締め付けられるような痛みが続いており、循環器を受診して心電図とレントゲンとエコーとって心臓に問題なくて、ストレスで胸痛が出てるという診断が出ました、

さっさと職場変えたい。

改めて、いつも読んでいただきありがとうございます。
閲覧、評価、感想、誤字報告感謝です。


アキラのツガイ

 ヒカルが徒党の支援担当となってから、いくつかの問題は片付き始めていた。

 

 都市側との連絡窓口。書類上の処理。物資搬入の調整。治安維持に関する報告経路。そういった、アキラやシェリルが面倒くさがって後回しにしがちな部分を、ヒカルは一つ一つ拾い上げて整理していた。

 

 そしてその日も、ヒカルは通信越しに帳簿や資料を確認していた。

 

『そういえば、ここの徒党の正式名称って何なの? いままでぼかしてた感じだったから指摘しなかったけど、そろそろ正式な書類とかに書かないといけないから教えてほしいの。それとも私には教えれないような極秘情報なの?』

 

 ヒカルは少しだけ声を潜めて言った。

 

 アキラたちの徒党は、これまで名称を曖昧にしたまま活動してきた。

 遺物売買店、賭博場、スラム区画の管理、都市との取引。場合によっては別の徒党の名前を借りたり、意図的に情報をぼかしたりもしていた。

 

 ヒカルはそれを、情報を掴ませないための工作だと解釈していた。

 

 

 実際、アキラたちは過去にドランカムの関係者を装って仕事をしたこともある。ならば、正式名称を隠すのも一種の防諜なのだろう。ヒカルはそう深読みしていた。

 

 

 その言葉に、アキラとシェリルが同時に苦笑いした。

 

「そうですね……そろそろちゃんと決めないとですね」

 

「うん。いやまじで忘れてたよ」

 

 ヒカルが目を瞬かせた。

 

『……?』

 

 それから、数秒ほど沈黙した。

 

『え、ちょっと待ってください。何を決めるんですか?』

 

 アキラとシェリルが声を揃えた。

 

「「何って、徒党名」」

 

『決まってなかったんですか?! うそでしょ!? ここの徒党設立されて何年目なんですか?!』

 

 ヒカルの声が裏返った。

 

 アキラは視線を斜め上に向けてテキトーに答える。

 

「ははは。一年くらいかな」

 

『四〜五年ですよね!?』

 

 ヒカルが即座に訂正した。

 

『いやほんとになんで決まってないんですか?! 遺物売買店とか賭博場の運営とかスラム区画の管理や教育とか都市との連携をずっとやってきてるのに。なぜ決まってないんですか?! これ私が間違ってます?!間違ってないですよね?!』

 

 シェリルは静かに頷いた。

 

「正論ですね。なんで決めなかったんですか?アキラ?」

 

「おっと心はガラスだぞ?」

 

 アキラが胸に手を当てて言うと、ヒカルは即座に返した。

 

『力場装甲くらい堅そうなガラスですね」』

 

「いいツッコミだ。レイブンクローに五点」

 

『レイブンクローってなんですか!? 賢そうに見えるけど……ってか話をそらさないで!』

 

 アキラがしゅんと肩を落とした。

 

 シェリルがその頭をよしよしと撫でる。

 

「アキラ、大丈夫よ。人は些細なことで怒られるわ。たとえ責が自身にあったとしても、ね」

 

「シェリルさんやい。俺は今、味方から追撃された気がするんじゃが」

 

「気のせいよ」

 

「ほんとかなーー」

 

 ヒカルはこめかみを押さえた。

 

『じ、実際ちゃんと決めないとまずい案件ですよ?』

 

「それはそうだけどさー」

 

 アキラは一度沈んだ声を出した後、数秒で復活した。

 

 シェリルは小さく息を吐いてから、周囲を見回した。

 

「まあ、この機に正式名称を決めちゃいましょう。ついでに古参幹部たちも招集しましょう」

 

「? ほかのメンバー要る?」

 

「アキラのネーミングセンスは皆無だし、他の子の案の方がいいと思うわ」

 

「うーん残当。真実って残酷よね。人の心とかないんか」

 

特大ブーメランですね(あなたが言いますか)

 

 ヒカルがぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

 そうして、急遽、徒党名決定会議が開かれることになった。

 

 集められたのは、エリオ、アリシア、ルシア、ナーシャ。さらに、たまたま拠点に顔を出していたレイナやシオリまで巻き込まれた。

 

 レイナたちに関してはただ巻き込まれただけであり、徒党の古参幹部でもない。ましてや名義上はドランカム所属のため完全な部外者である。ただ古参幹部たちを含めた会議にレイナが同席していることをエリオたちが特に何も言わないのはご愛嬌である。

 

 レイナたちは未だにドランカムでの居場所はなく、カツヤの話題で持ち切りのドランカムに戻るのも落ち着かない。*1

 そんなレイナにとって、割と気兼ねなく遠慮もほぼ必要ない*2環境であるアキラの徒党は、結構居心地がよかった。そのため特に用事がなくてもアキラの徒党に顔を出していたりする。

 

 保護者(シオリ)としては思うところはかなりある。

 知人であり親しいハンター(アキラ)の運営する徒党とはいえ、スラムの徒党や孤児たちを相手にする行為はレイナの教育に悪いのではないかとシオリは憂慮していた。

 

 かといってレイナを居心地の悪いドランカムに戻すのも憚られるし、何よりシオリとしてもあまり好いておらず関わりたくない女たらし無料善意提供マシーン(カツヤ)と関わらせる方が教育に悪そうなので今の現状をよしとしていた。

 

 

 なおカナエはカナエで自身の価値観の元、シオリの保護者ムーブを見て、「おもしれー」と思い行動していた。

 あとはカナエとしてもアキラというおもちゃを気に入っているという理由も大きい。

 

 

 実際シオリたちは、アキラたちの徒党のスペースを借りてレイナの訓練をしている。

 もちろん最初は遠慮していたが、特に散らかしたりボロボロにしても何も言われない環境であること。

 そしてレイナをアキラに合わせておけばモチベも保たれること、アキラの前で無様な恰好はできないと奮い立たせより積極的に訓練に励んでいた。

 

 

 何よりアキラ自身がレイナたちの訓練に参加したり、アキラが気まぐれな同僚(カナエ)とちょくちょく組手*3をしてくれてるおかげでカナエのガス抜きにもなったりする。

 

 

 そういった様々な視点から、シオリはアキラ達の徒党でレイナが過ごすことを許していた。

 なお、本来はレイナの方が立場が上であるため、許可を出すのはレイナである。いびつな主従関係は継続していた。

 

 

 

 言わずもがな、レイナがしょっちゅう徒党に顔を出すのはアキラが主な目的である。

 誰の目からも露骨であったが誰も指摘しなかった。

 

 実際シェリルの視点からもレイナがアキラに向ける感情は()()()()()()()()()()()()ものだと理解しているため、特に口出しをしなかったし、シェリルが特に何も言わないならエリオたちから言うことは何もないのだ。*4

 

 

 

 

 

 

 突然の招集に、普通なら何事かと緊張するところだ。

 

 だが、集められた面々は招集された自身たちとアキラとシェリルの顔を見るなり、「ああ、いつものことか」といった顔をした。

 

 

 

 エリオが代表して尋ねる。

 

「それで、今回は何ですか? 襲撃ですか? 抗争ですか? 都市からの無茶振りですか?」

 

「いや、徒党名を決める」

 

「……徒党名?」

 

 エリオが首を傾げた。

 

 アリシアも少し考え込む。

 

「あれ? そういえば、正式な名前ってありませんでしたね」

 

「でしょ?」

 

 ヒカルが疲れた顔で言った。

 

『でしょ、じゃないんですよ。なんで皆さんそんなに落ち着いてるんですか?』

 

「慣れです」

 

 遠い目をしたアリシアが即答した。

 

 ヒカルは画面越しにもう一度こめかみを押さえた。そして気持ちを入れ替えた。

 

 

 

 

 

 ともあれ、案出しは始まった。

 

 最初に出たのは、非常に分かりやすい名前だった。

 

「アキラファミリーでいいんじゃないですか?」

 

 誰かが言った。

 

 空気が一瞬止まるが、その沈黙は否定的なものでなく、肯定的な沈黙と納得の間だった。

 

 

「もうそれでよくないですか?解散ですね。お疲れ様です。」

 

「分かりやすいですしね」

 

「外にも通じやすいですね」

 

「名実ともにアキラさんがボスだしな」

 

「やっぱりもうこれでよくない?」

 

 アキラは顔をしかめた。

 

「いや、やめろ。なんか恥ずかしいから却下だ」

 

否定するアキラに代案を求める視線が殺到し、アキラが良案を思いついたかのように案を出す。

 

「じゃあ、シェリルファミリーは?」

 

 アキラが代案を出すと、今度はシェリルが笑顔のまま目を細めた。

 

「アキラ?」

 

「ごめんなさい」

 

 即座にシェリルに撤回された。

 

 

 

 次に出た案は、やや混ざりものだった。

 

「シェルキアはどうですか?」

 

「シェリルとアキラを合わせた感じ?」

 

「ネットで勝手にそう呼ばれてるそうですね」

 

「誰がネットに流してるんだ?」

 

 アキラが真顔で聞くと、数人が目を逸らした。

 

 ヒカルは何も見なかったことにした。

 

「スケット団はどうですか? 何でも助ける感じですし、今までも助っ人的な仕事(雑用)が多かったですし」

 

「俺に双子の弟はいないから却下だ。失語症の友人もいないぞ。」

 

 アキラは即答した。

 

 

『またよくわからない話を……』

 

 ヒカルが呆れた声を出す。

 

 次に、ルシアが少し自信ありげに言った。

 

「アルフォト団とかどうですか? アキラさんの【ア】とシェリルさんの【ル】とテキトーな感じですけど。響きもよさそうでは?」

 

 ヒカルの顔から血の気が引いた。

 

「俺たちは建国主義者じゃないので却下」

 

 アキラが真顔で切り捨てる。

 

「都市と提携してる徒党が建国主義者の名前を掲げるのは、さすがにどうかと思う」

 いつもふざけるアキラが真顔でルシアを諭し、そしてエリオが悪ノリをはじめる。

「流石はルシアだ。伊達にアキラさんを相手にカツアゲして生還してるだけはある」

 

「私はカツアゲなんてしてない!スリよ!てかほんとにやめて!マジで後悔してるんだから」

 ルシアが立ち上がり弁解を始める。もう泣き始めているルシアをナーシャが慰め始めていた。

 

 

『本当にやめてください。書類にアルフォト団(建国主義者の団体)を書いた瞬間、私の胃もキャリアも何もかもが死にます』

 

 ヒカルの声は本気だった。

 その何気ない言葉が、ルシアのトドメたなった。

 

 

 

 

 悪ノリを始めたアキラとエリオによって、そこからの案はどんどん迷走していった。

 

「鉄華団ってのはどうだ?決して散らない鉄の華、消えない命って意味だ!」

 

 アキラは少しだけ考えたが、すぐに首を振った。

 

「悪くはないが、その名前だとW主人公が死にそうだし、徒党のボスの俺とシェリルが死にそう。だから却下。」

 

 

 

 ナーシャが案を出す。

 

「ロケット団ってのはどうですか?」

 

「何をもってロケットなんだ?」

 

「空に飛んだり、飛翔して成長していくって意味でロケット団です」

 

「よくわからないところに不時着して自爆しそう」

 

「既に徒党名が迷子になってるしね」

 

 

 

アリシアが案を出す。

「シェルバニアファミリーってのはどう?」

 

「互換はいいが、違う意味で怖い。人形遊びは流石にこの歳でしたくない」

 

「でもかわいい名前ですよ?」

 

「俺たちの実態と合ってないと思う」

 

「かわいいだけじゃだめですか?」

 

「だめです」

 

 

 

 

 シオリは静かに茶を飲みながら、それらの案を聞いていた。レイナは途中から笑いを堪えるのを諦めていた。

 

「オルフェンズは?」

 

 ふと、アキラが言った。

 

「孤児の集まりだしな」

 

 その言葉に、少しだけ場の空気が変わった。

 

 悪ふざけの流れの中で出た名前ではあったが、意味は合っていた。

 

 この徒党の多くはスラムの孤児だ。親に捨てられた者、親を失った者、親がいても頼れなかった者。何かから零れ落ちた子供たちが、シェリルのもとに集まり、アキラという異物を中心に形を変えた集団。

 

 オルフェンズ。

 

 悪くはなかった。

 

 

 

 というかそろそろこの茶番を終わらせたいとその場の全員が思っていた。

 

 

 

 だが、アキラはすぐに首を傾げる。

 

「でも、そのままだとちょっと元ネタ感が強いな」

 

「元ネタ?」

 

「気にするな。俺の頭の中にある旧世界の亡霊だ」

 

『それ、医者に見せた方がいいのでは?腕のいい脳外科医紹介しましょうか?』

 

「どっちかというと精神科では?」

 

 ヒカルが真面目に心配した。

 

 続いて、エリオが紙に妙な記号を書き始めた。

 

「じゃあ、これはどうだ!! XXXxxxラウンズxxxXXX」

 

「却下」

 

 アキラが即答する。

 

「意味や理由をエリオからまだ聞いてないですよ?」

 

「さすがに中二ネームは却下」

 

 

 

 アキラは咳払いした。

 

「ユダとか、イレブンとか……」

 

 そこまで言いかけて、自分で首を振った。

 

「いや、安直すぎるな。却下」

 

『なんか不穏な単語が聞こえましたけど』

 

 ヒカルが半眼で見た。

 

 アキラは聞こえないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 その後もしばらく案は出続けた。だが、しっくりくるものはなかなか出てこなかった。

 

 名前は短すぎても軽い。長すぎると使いにくい。綺麗すぎても似合わない。汚すぎても書類に困る。

 

 アキラは腕を組み、少し考え込んだ。

 

「……オルフランズ」

 

 ぽつりと呟いた。

 

 場が静かになった。

 

 シェリルがその言葉を繰り返す。

 

「オルフランズ?」

 

「オルフェンズを少し崩した。オルフは孤児っぽい響き。ランズは……まあ、集まりとか、群れっぽい感じで」

 

 アキラは指で机を叩きながら続けた。

 

「あと、runも混ぜてる。孤児でも走る。働いて働いて働いて働いて働いてまいるわけじゃねぇけど。走り続ける。もがく。諦めない。止まらない。そんな感じだ。」

 

 

 エリオが口の中でその名を転がす。

 

「オルフランズ……悪くないじゃないか?」

 

 アリシアも頷いた。

 

「少し変わってますけど、覚えやすいです」

 

「孤児の集まりって意味もあるなら、私たちには合ってますね」

 

 ルシアが言う。

 

 ナーシャも小さく頷いた。

 

『よかったです。都市の書類にも書けそうなまともな名前に落ち着いて…』

 

 ヒカルも端末に仮入力しながら確認した。

 

『オルフランズ……発音もしやすいですし、他の徒党名と被りにくい。正式名称としても問題なさそうですね』

 

 シェリルはアキラを見た。

 

「珍しくまともな案ね」

 

「シェリル。褒めるなら最後まで褒めて。そしてもっと褒めて」

 

「アキラにしてはとーーーーっても珍しくまともな案ね。明日は槍でも振るのかしら」

 

「悪化したなー」

 

 それでも、シェリルの表情は悪くなかった。

 

 彼女は少しだけ柔らかく笑って、皆を見回した。

 

「では、正式名称はオルフランズでいいかしら?」

 

 反対意見は出なかった。

 

 むしろ、場には妙な納得感があった。

 

 スラムの孤児たちが、ただ寄せ集められた群れではなく、一つの名を持つ集団になる。

 

 それは形式上の話でしかない。名前が付いたからといって、明日から何かが劇的に変わるわけではない。

 

 だが、それでも名前は必要だった。

 

 都市の書類に記されるために。

 

 外部が認識するために。

 

 そして何より、自分たちが自分たちをそう呼ぶために。

 

 ヒカルは端末に正式名称を入力した。

 

『では、都市側への登録名は、オルフランズで進めます』

 

「ああ。よろしく」

 

 アキラは軽く頷いた。

 

 その時、アキラの頭の中にアルファの声が響いた。

 

『ほかに何か意味はあったりするの?』

 

 アキラは表情を変えなかった。

 

『あるにはあるけど……まあね』

 

 アルファは楽しそうに笑った。

 

『ふうん。秘密?』

 

『秘密というほどでもないさ』

 

 アキラはそう返しながら、内心で別の言葉を思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 ()()()

 

 群れ。集団。走り続ける者たち。

 

 そして、()()()

 

 裏切りの騎士、ランスロット。

 

 そんな意味を込めているなど、口にする気はなかった。

 

 第一、誰が裏切るのかも分からない。

 

 自分なのか。アルファなのか。あるいは、この徒党そのものなのか。

 そもそも何をして裏切りとなるのか、この残酷な世界で裏切らないという誠実さは大切だが。

 愚直な誠実さを、アキラは望んでいなかった。

 

 

 

 考えてみれば、この徒党自体が裏切りの象徴でもある。

 

 アキラを襲撃した徒党のボスとその徒党を、シェリルは見限り裏切って、アキラを頂点に据えたことでこの徒党は生まれた。言い換えれば、裏切りの上に成り立った群れなのだ。

 

 

 

 ならば、その名に少しくらい不穏な意味が混じっていてもいい。

 キレイごとだけじゃこの世界で、このスラムの環境では生き延びれない。

 

 悪事も汚れ事も、必要なのだ。 

 

 

 

 

 

こうして、スラムの一角で生まれ、成り上がり、都市に認識され、いつか裏切りも裏切られることもあり得る徒党に、正式な名が付いた。

 

 オルフランズ

 

 孤児たちの群れ。

 

 走り続ける者たち。

 

 そして、裏切りを内包する寄せ集めたち。

 

 様々な意味を持った徒党が、ついに本当の意味で動き出した。

 

 

 

 

 

 アキラはそんなことを考えながら、目の前の騒がしい面々を見た。

 

 

 エリオたちは新しい徒党名を口にして感触を確かめている。

 ルシアとナーシャは看板を作るならどうするかで盛り上がっている。

 レイナは「意外とまともね」と笑い、シオリは「意外と、という部分は強調しない方がよろしいかと」と静かに追撃していた。

 

 ヒカルは疲れた顔をしながらも、ようやく書類の空欄が埋まったことに安堵している。

 

 シェリルはそんな光景を見つめ、少しだけ満足げに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 アキラは感慨と共に、考えに浸る。

 

 

 前世の自分の行いと生き様が嫌いだった。

常に誰かに奉仕する自分が、何も楽しくない人生や仕事。ただ死んでいないだけの社畜であり、社会の歯車であった。

 

 そんな自分と人生に嫌気がさしていた。

 

 

 だからこの世界では好きに生きようとした。

 

 

 

 そうして好き勝手に動いた結果が、今の目の前に広がる笑顔に繋がっているのなら。

 少なくとも、今世の行いは間違ってはいないだろう。

 前世の俺自身に、誇れる自分に成れているのではないかと、アキラは納得していた。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 名前を付けてしまうと、愛着が湧いてしまうのではないかとアキラは考えていたからだ。

 

  どうせ切り捨てる。どうせ売却する。どうせ自分の利になりはしないーーーそう思い、アキラは一線を引いていた。

 

 今度の人生は、自分のために生きよう。

 そう思っていたから、他者のために生きることをしたくなかったのだ。

 

 

 そんな自身が結局、だれかのために、目の前の大事な人たちの笑顔のために生きているなんて、転生直後のアキラは思いもしなかっただろう。

 

 そんな自身を今は、まぁいいんじゃないかと、アキラは思っている。

 

 

 

 

 

 

「まあでも、悪くないな」

 

「ええ」

 

 

 シェリルが頷く。

 アキラの今考えていることをシェリルが完全に理解できているわけではない。

 

 

 だが、シェリルは賢い女性だった。

 シェリルはいつだってアキラの隣に立つ(生き延びる)ために行動していた。

 

 アキラを理解し、共感し、篭絡し、生き延びようと今も続けている。

 アキラと出会って、徒党を任せて、アキラがよくわからないもの(アルファ)を拾ってきた時も、シェリルは自身の頭を使い計算し、行動していた。

 

 

 その最中で、まさか自身が篭絡しようとした対象に、執着し愛を抱いたこと。

 人生を共に歩んで生きたいと、心の底から思うようになったこと。

 

 獲物(アキラ)に篭絡されるなんて、幼い時のシェリルは思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

そんな自身を今は、まぁいいかしらと、シェリルは思っている。

 

 

 

 

 

 

失うばかりの日々にどんな意味があるのだろうか。

そもそも人生の意味なんて終わってからじゃないとわからない。

 

 

 

 

 

 

 

歪な関係から始まった二人の物語。

 

裏切りから始まった関係だとしても、そこから生まれたこの関係が、心地いいもので、幸せと思える尊いものだというのなら。

 

その裏切りには意義も意味もあったのだろう。

 

 

なら、裏切りに意味があるならば、アキラの人生最大最難関の裏切りにも。意義や意味があるはずだ。

アキラの掲げる目的に、それに立ちはだかる障害にに立ち向かえる自信はあまりない。

 

 

その不安を抱え、隣に座るシェリルの手を強く握る。

守るべき、目的を、見失わないため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
カツヤを振って、別のハンターに現を抜かしていると思われていたりする

*2
シェリルを除く

*3
イロイロな

*4
なお、恋愛感情がないとは言ってない




徒党の名前を決めるシーン自体は、次のツバキハラ探索前に入れる文字稼ぎのために1000文字程度に済ませる予定でした

ただその下書きの時点で2000字近くあり、下書きに肉付けしてたら4000字を超えててました。
そして「そういや最近各キャラの心情とか描写してないな」と思い。
本来命名会議に参加予定のなかったレイナを登場させ、レイナの心情描写を書いてる途中で「レイナばっかり書いてもアレだから、シェリルの描写も入れるかー。てかアキラの描写も入れないとな。せっかくだしシオリの描写もしてみるかーー」

と筆が乗った結果、当初1000文字で済ませるシーンが7000字近くなりました。

こんだけ書いてますけど、話は進展してないという・・・

まぁええか!!久しぶりに書いてて楽しかったです。なお、ツバキハラから書きたい文章や内容が多いので、またカメ更新になります。
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