新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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Vol.EX3 生徒達との軌跡
#EX16 DokiDoki☆ シスターと密会☆


 ある日の昼下がり、俺の携帯に通知が走る。

 そして、その通知の内容を見た俺は急いで返信を返し始める。

 

 主に生徒の奴らとの連絡先を入れてある携帯に通知が来ること自体は、大して問題はねぇ。

 問題は、その内容だ。

 

『ふふ』

 

『うふふ』

 

『先生、この日を待ち望んでいました』

 

 その連絡を入れてきたのは、三大学園最古であるトリニティにおいて、ティーパーティーに並ぶ権力を持った集団『シスターフッド』。

 その長である歌住サクラコからだった。

 

 自分で言うのもなんだが、それなりに濃い人生を歩んできた自覚はある。

 だが……こいつの文面から来る恐怖に似たそれはなんなんだ?

 

『以前、先生とお約束をしたお買い物の用事、まだ覚えていらっしゃるでしょうか?』

 

『あぁ、覚えてるぜ』

 

『それはよかったです、仕事が一段落しましたので、こちらの日程で如何でしょうか』

 

 シスターフッドは、あのアリウスの事件後も精力的に活動を続けているらしく、この仕事ってのもそれに関係のあるものだと思うべきだろうな

 

『その日、空けとく』

 

『ありがとうございます、では、またその時まで』

 

『日々が穏やかでありますよう』

 

 敬虔なシスターのはずなんだが……

 

『ふふ』

 

『うふふ』

 

 その微笑みはなんだ?

 先ず何で態々メールに起こしてくるんだ……?

 何か意図があるものなのか……?

 

 その五文字に込められた思いを考えながら、あっという間にその日は訪れた。

 

 やってきたのは、トリニティ自治区にある巨大なショッピングモール。

 前に一度、ノノミと来たことがあるが、相変わらず広い。

 その建物の中心点にある噴水の近くに、彼女は居た。

 

「先生、こちらです」

 

「先に来てたか。待たせちまって悪いな」

 

「いえいえ、お気になさらないでください。そこまで待ってはいませんので」

 

 そう微笑むサクラコだが……どうにも眼が笑ってないように見えちまう。

 そこまで遅刻をしたつもりはなかったんだがな。

 

「……では、参りましょうか」

 

「おう」

 

 サクラコの後ろを俺は着いていきながら、様々な雑貨屋、土産屋を回り始める。

 流石はお嬢様学校の近くにある商業施設。

 どいつもこいつも、値段がそこらの店よりもワンランク高いものばかり。

 その分品質も、最高級のものばかり。

 

 しかしそれを生まれてきてから当たり前に身近にあったものとして捉えているのか。

 他の客はそれをなんの気兼ねなしに購入していく。

 

 思い返せば、あの補習授業部をやった別館の俺のベッドもかなり質のいいものだった。

 それに対して驚いている様子がない辺り……あのコハルも、ヒフミもお嬢様の仲間だってことを思い出させる。

 

「先生、これとこれは如何でしょうか?」

 

「化粧品か…………その二つ何が違うってんだ?どっちも同じじゃねぇのか」

 

「…………」

 

 サクラコが見せてくれたのは、別々のハンドクリームだ。

 俺にはその違いが大して分からねぇが……サクラコの絶句した顔を見れば、まぁ違いはあるんだろうな?

 

 そうして、結局そのハンドクリームを両方ともシスターフッドで戦闘に参加してくれた奴らの分を買った俺は、帰路に就いていた。

 

「助かったぜ、サクラコ」

 

「ふふ、気にしないで下さい。私も先生のお力になれて嬉しいですから」

 

「…………」

 

 そう笑うサクラコの表情は、この前のメールや今朝の微笑みとは違い、本当に彼女が心から笑っているように俺は見えた。

 

 少し見つめすぎたせいか、サクラコが俺の顔を見て、何を思ったのか悲しそうに俯く。

 

「すまねぇな、不躾だった」

 

「いえ、こういう役柄ですので、勘違いされていることには慣れていますから……」

 

 その言葉を聞いて俺は、再び今朝サクラコの言葉を思い出していた。

 

 ──お気になさらないでください。そこまで待ってはいません

 

 こいつ……もしかして、言葉をかなり真っ直ぐに伝えるタイプか?

 

「改善しようとアドバイスを頂いたりはしているのですが……」

 

「お前さんまさかこの前のメールの微笑みって……」

 

「はい、『メッセージの前後に笑いを入れると親しみを感じやすい』と聞いたので……」

 

 俺は思わず額に手を当てる。

 言葉をそのまま素直に受け取るのが正解かと見るべきか。

 だとしても、あの笑みは名演技が過ぎると思うんだがな。

 

「人々の悩みを聞くシスターとして、相手に気を遣わせてしまうのはあまり望ましくありませんので……」

 

「真面目だな、お前さんは……なら、練習相手にはなってやるよ」

 

「っ!?……いいのですか?」

 

 サクラコは、足を止めて俺の事を見つめている。

 そんな驚いた表情をするとはな、こっちが逆に驚いた。

 

 似たようなことは、どっかの手のかかる妹(調月リオ)にやってるからな。

 

「先生の仕事って奴だからな」

 

「……ふふ、ありがとうございます」

 

 そうして立体駐車場に止めてある車に向かって歩いていると、気配を感じる。

 

 いや、気配自体はプレゼントを選んでるときから感じていたが……ここまで付いてきてるってこたぁ、それなりの目的があると見たな。

 

「サクラコ。誰かがつけて来てる、心当たりはあるか?」

 

「い、いえ……」

 

「はぁ……仕方ねぇ、サクラコ。掴まってろ」

 

「え?……あっ、は、はい!」

 

 誰が尾行してるかは分からねぇが、見世物じゃねぇからな。

 

 サクラコに荷物を預けてから、サクラコごと抱きかかえて走り始める。

 後ろで走る足音が聞こえたが、走り始めは俺の方が速いからな。

 悪いが、このまま振り切らせてもらうぜ。

 

 柵を飛び越えて、駐車場に入り、足取り軽く階段を駆け上って車の元へとたどり着く。

 

「とりあえず撒けたか。悪いな抱きかかえてよ」

 

「い、いえ……」

 

 そっと抱き下ろしてから俺たちは乗車し、運転を始める。

 

 全く、シスター様と逃避行なんざごめんだね。

 

 帰りの道中、サクラコはやけに静かだった。

 寝てるわけでも、酔ってるわけでもなさそうだが……

 

 トリニティにつき下ろしたあとも、特に喋るようなこともなくカーテシーをしてそそくさと去って行ってしまった。

 

 気難しい性格って訳には見えなかったが……仕方ねぇか。

 

 そしてその晩、彼女からメールが届いた。

 

『先生、夜分遅くに失礼いたします』

 

『今日は本当にありがとうございました』

 

『気にすんな、俺も楽しかったぜ』

 

 文面をそのまま受け取るってことを意識してやれば、案外良い子だってのは分かる。

 

『その、最後の方は不躾な真似をしてしまい申し訳ございません』

 

『殿方にあぁ言った事をされたことがなく、動揺してしまいました』

 

 あぁ、それでか……如何にも箱入り娘って感じだったからな。

 仕方ねぇもんだろうさ。

 

『その……厚かましいお願いですが……良ければまた、私とお出掛けして頂けませんか?』

 

『仕事が空いてたらな』

 

『ありがとうございます』

 

 あまり接点のない奴だったが、少しは距離を縮められたと思うべきか?

 俺がそう考えていると、さらにメールが届く。

 

『それでは、先生』

 

『どうか明日も、平穏な一日でありますよう』

 

『それでは……わっぴ~!☆』

 

 俺は、そっと携帯を閉じて、仕事に向かうのだった。

 




翌日、トリニティで先生とシスターフッドの長が、密会を行っていたという噂が広がり、シスターフッドの長が先生を手駒にしようとしている話まで膨らむのにはそう時間はかからなかった。



少しリクエストとは変わってしまいましたが、星宮 星雅さんリクエストありがとうございました。


短編集の方のリクエストも現在受け付けております、良かったら書いてくださると嬉しいです!
また、引き続きハヤテちゃんからの部員の皆様へのお願いも受け付けておりますので、良かったら活動報告の方をチェックしてくださると嬉しいです。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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