新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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#EX17 華麗に笑う貴方と踊るカプレチオ

 伊草ハルカ。

 

 休学中だが、ゲヘナ学園の1年生。

 根っからのネガティブ思考と、自分のことを下げすぎるきらいがあるが、仲間を侮辱されたり、それに値する行動をした際には、誰よりも前に出て即座に敵を殲滅する。

 コワーイ女だ。

 

 まぁ、とは言え、懐かれると子犬のような忠犬のような……あぁ、そうだ。末っ子を相手取ってる感覚に陥る。

 

 うちにも似たような侍がいるせいだな。

 まぁ本人が聞いたらぶった斬ってきそうだが。

 

 話は戻るが、そんな彼女は、幼い頃から虐められていた。

 あの自罰的で自虐的な思考はそこで形成されたものなのか。

 アルとの出会いのおかげで、マシになっているらしいが、それでも彼女の心に負った傷は広く深い。

 

 どこに行っても、みみっちい事をする野郎は消えねぇもんだと呆れたが……最近は、学園を離れて便利屋に所属しているおかげで、その被害もないらしい。

 

 それが、彼女の過去を調べて纏めた俺から見たハルカって女の姿だ。

 

 なんでわざわざ、こんなことを思い返したかと言うとだ。

 

 目の前で、うちの仲間に手を出そうとしてる不届き者がいるからだ。

 

 俺は気配を消しながら歩き出す。

 

 ──────

 

 ────────────

 

 ────────────────────

 

 今日は、先生とアル様から頼まれた依頼をしてきました。

 

 ゲヘナ学園の自治区にある廃墟を、不法占拠している不良を片付けるという依頼でした。

 

 いつもよりもちょっとだけ大変でしたけど、怪我することもなく無事に終えて、早く帰れると心を弾ませながら帰宅しているところでした。

 

 なのに……なんでよりによって……

 

 私の目の前には、銃を肩に担いで、ニヤニヤと笑っているゲヘナの生徒が2人。

 

 見覚えのある顔……私がまだ、アル様に出会う前に私のことを虐めていた2人だ。

 

「あれ?何処の生ゴミかと思えばハルカじゃん!久しぶり〜」

 

「最近見かけなかったからさ〜、ほんとマジ心配してたし」

 

 怖い。

 

 体が竦む。

 

 彼女たちに刻まれた行為の数々を思い出して、縮こまる。

 

 後ろに後退りすると同時に、彼女たちが1歩前に踏み出す。

 そうやって壁に追い込まれていく様子は、ハイエナが獲物を追い詰めていく様に似ている。

 

「連絡くらいしろよ〜、なぁ?」

 

「ほんとほんと、私たち毎日『遊んでた』仲じゃんね?」

 

 嘘だ。

 

 当時の私は、知らなかったけど、今の私なら分かっている。

 アル様にカヨコ課長、ムツキ室長、それに先生と接してきたから、理解している。

 

 本当に人と仲良くしたい人たちの目と声を。

 

 私は知っている。

 

 この人達の目に浮かぶのは、ただの悪意だということも。

 

「あ、あの……私、急がな──「あ?なんか言ったか?」……ひっ」

 

「そーだそーだ、久しぶりに遊ぼうぜ」

 

「いいねいいね〜! また可愛がってあげる」

 

 私が話そうとすると、壁ドンをするように私の頭の横に蹴りを入れて、その大きな音と睨みで黙らせてくる。

 

 体が完全に動かない。

 

 私の怯えた姿に満足したのか、彼女たちは楽しそうに話し合っている。

 

「久しぶりにゴミ掃除(・・・・)やらせねぇか?」

 

「いいじゃん、ハルカちゃんの口に合うもの(・・・・・・)あるかなぁ?」

 

「あっ……はっ……はっ……」

 

 呼吸が定まらない。

 目の焦点が揺らいでいく。

 

 怖い、やだ。

 

「ねぇ?さっきからさ、何怯えてんの?声ウザイんだけど」

 

「そうそう、こんなのただの遊びじゃんか。辞めてよね、私たちが悪者みたいじゃん」

 

 ……誰か、助けて。

 

 私が、そう祈った時、彼女達の肩を大きな手が掴む。

 

 その手は、硬いタコと小さな傷跡がついていて、その持ち主の経歴を雄弁に語っている。

 

「何をしてやがる」

 

 短く発せられた言葉は、普段聞く私ですら、竦み上がる程の怒気と殺意が籠っている。

 

 2人は、蛇に睨まれた蛙のように動かなくなり、後ろを振り向けず、ただ目を泳がせている。

 

 振り向けば殺されるという圧が、二人を金縛る。

 

「俺の仲間に何か用か」

 

「い、いえ……」

 

「な、なんでも……」

 

 さっきまで私に強く当たっていたのが嘘のように、彼女達の声は小さくたどたどしく答える。

 

「そいつがシャーレの一員だって、分かってやってんだよな?」

 

「シャーレ……?」

 

「ま、まさか、先生?」

 

 シャーレの名前を聞いた2人が振り返ると、そこに立っていたのは、深く中折れ帽を被り、黒いスーツを身にまとった私達の先生だった。

 

「なんで、アンタがこんなゴミを……ひっ」

 

「俺のパートナーをゴミ呼ばわりとは、随分偉いじゃねぇか」

 

 見えないほどの速度でマグナムを抜いた先生は、口を開いた片方の眉間にその銃口を向ける。

 

「……よ、よりによって先生が、こんなゴミの何処がいいってんだ!」

 

 向けられてない片方が、その状況に怒り、先生へ銃を向ける。

 

 その瞬間、私の中で何かがプツリと切れる。

 

「せっ、先生に、銃を向けるな!!!」

 

 気がついた時には、私は手に持ったショットガンの銃底で彼女の後頭部を殴り、怯んだ隙に、その背中に散弾を放つ。

 

「はーっ、はーっ……先生!殺しますか!?」

 

 倒れて気絶した片方を仰向けに転がして、口に銃口を捩じ込んでから、私は先生の方を向く。

 

 そして気付いた。

 先生が、笑っていることに。

 

「いや、もう充分だ。おい、お前さんこいつを連れて、さっさと失せな」

 

「はっ、はひ……!」

 

 まだ意識がある方に、先生はそう声をかけて、背中を押すと、金縛りが解けたかのようにいそいそと、倒れている方を起こして、逃げていく。

 

「二度とハルカに近寄んじゃねぇぞ」

 

「わ、分かりました!!」

 

 その背中に、先生は声をかけてから、私の方を向く。

 

 な、なにかしてしまったのかもしれない。

 

 怒られると思った私は、深々と頭を下げていた。

 

「ご、ごめんな──「よくやった、かっこいいぜ、ハルカ」……え?」

 

 私の頭を優しく先生が撫でる。

 

「ぶっ放すんなら、最初っからやれば良かったじゃねぇか、どうしてしなかった?」

 

 私は俯いたまま、先生の声を聞く。

 

 どうして、最初から実力行使に出なかったのか……

 

「そ、その……別に先生に危害を与えようとしていた訳では無いので……そ、それに私もシャーレの一員なので……私なんかのせいで、シャーレの名前が傷ついたらと思うと……」

 

 先生の撫でる手が止まる。

 また何か悪い事を言ってしまったのかと怯えていると、先生が大きな声で笑い始める。

 

「えっ……えっ……?」

 

「くっ、あっはっはっはっは!! ハルカ、お前さんは優しいやつだな。ただ気にすんじゃねぇ。

 仲間の為に撃って、傷付く名前なんざ最初っから要らねぇよ」

 

 先生は優しく私の頭を撫でてから、歩き始める。

 私もその後に着いていく。

 

 先生は変わらず優しい。

 あんなに傷だらけで、血の香りを匂わせる人なのに。

 硝煙と煙草の匂いを漂わせているのに。

 

 なんでこんなに落ち着くのでしょうか。

 

「ハルカ、今度からはテメェのためにぶっ放してやれ」

 

「……はい!」

 

 それは先生だからなのかもしれない。

 

 先生、先生……

 まだまだ至らないグズで無能な私ですが、それでも先生の為なら私は何処までもやれます。

 

 先生、私なんかのために怒ってくれてありがとうございます。

 

 だから、この命尽き果てるまで、私は……皆さんの為に、先生の為に尽くし続けます。

 

 先生、どうか、私を傍に置いてください。

 

 笑いながら歩く先生の背中を見ながら、私は静かに祈った。

 






n番煎じのこのシチュ、無限に味がするから好きなんですよね

ハルカは、子犬みたいな可愛さもありつつ、いざとなった時の狂犬具合も最高に可愛いと思うんですよね
便利屋68業務日誌の最新話とか最高でしたし、あの目はなんなんだ??

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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