新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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#EX20 ティーパーティーと見る!カリオストロの城 前編

 雲一つない青空の下、陽光の射す朗らかな天候の元。

 

 今日もトリニティのトップであるティーパーティーは、会議を行っていた。

 

「今日もいい天気ですね……」

 

「あぁ、今日みたいな日がずっと続けばよいのだがね」

 

 否、会議はしておらず、茶会の名に相応しい穏やかな一時を過ごしていた。

 ティーカップを上品にソーサーに置き、白い翼を羽ばたかせているのは、トリニティ総合学園の現ホストである桐藤ナギサ。

 

 そして、その左隣に座っている狐耳の少女、元ホストである百合園セイアは、空を見上げながら、ナギサの言葉に返事をする。

 

 本来ならば、ここにもう一人の少女を含めて、トリニティのティーパーティーとして、普段から忙殺の日々を過ごしているのだが。

 

 大がかりな仕事は一段落し、今日は久方振りの休日を満喫していた。

 

 暖かい日差しに当たりながら優雅な一時を過ごしていると、勢いよく二人がいるバルコニーのドアが開かれる。

 

 本来であれば、磔刑ものの作法だが、それを注意するような人はいない。

 何故なら……

 

「ナギちゃん!セイアちゃん!見て見て!!凄いもの見つけちゃった!!」

 

「短かったね」

 

「儚いですね」

 

「何せ、人の夢と書くからね」

 

 飛び込んできた桃色の髪の少女と、彼女が齎したその有り余るほどの元気さが、穏やかな茶会の空気を、消し去る。

 その様子に、セイアはため息をつく。

 

「え?何々?漢字のテストは昨日終わったよ?」

 

「えっと、それでミカさんは何をそんなに急いでらっしゃるんですか?」

 

「あ、そうそう……これ見てこれ!!」

 

 そうして、ミカが二人に見せたのは、DVDの表紙だ。

 そこには、ヤギの覆面を被った謎の男と、包帯をつけた男に抱えられる白い花嫁。

 そしてその下に見覚えのある顔が描かれている。

 

「これは……先生ですか?」

 

「おや、ルパン三世じゃないか」

 

「ルパン三世……タイトルの名前ってこの人なんだ」

 

 表紙の下部にはタイトルが描かれている。

 

『ルパン三世 カリオストロの城』

 

 ミカは、セイアの発言を聞いて、ようやくその人物が誰なのかに気が付く。

 

「ミカさんはどちらでこれを……?」

 

「えっとね。 ここに来る途中に、路地裏で物音がして……気になって見てみたらこれが落ちてて。 そしたら、先生の顔が映っててさ!!」

 

「だとしても、路地に落ちている物を拾ってくるのは、どうかと思うがね?」

 

 ミカが、興奮しながら話すのを、セイアが静かに諭すように話す。

 それに聞く耳を持たないのも、これもまたいつもの日常ではある。

 

「もう、また硬いこと言って~! ちゃんと危険じゃないかどうかは、確かめたって!!」

 

「ふむ、ミカに煤汚れがない辺り、事実だろうね」

 

 セイアはそういうと、ミカの持っているDVDを受け取り、それを茶会のテーブルに乗せる。

 ナギサも話し合いの場に、入れようとしているのだろう。

 

「そう、それでさ!今日二人とも暇でしょ? だからさ、折角だからみんなで見ない?」

 

「先生の過去……ということになるのでしょうか?勝手に見てもいいものなのか、測りかねますね」

 

「ふむ、確かに人の過去を盗み見るのはよくない事かもしれないが……私にそれを責める権利も裁く権利もないね」

 

 事実として、セイアは既に先生の過去を、かつて所持していた神秘によって盗み見ているため、ミカの行動を責めることは出来ない。

 つまり、実質的なストッパーは、ナギサしかいないのだが……

 

「ねぇねぇ……ナギちゃんも気になるでしょ?」

 

「うっ……それは……まぁ……」

 

 そのナギサすら、ミカの圧によって押され気味ではある。

 致し方ない、幼馴染には弱いのも彼女の良いところなのだから。

 

「セイアちゃんも止めないみたいだしさ! ねぇいいでしょ〜!ナギちゃん!」

 

「まぁ、そうですね……今日は特に予定もないですし……──「じゃあ決定! セイアちゃんも行くよ~!」」

 

 ナギサの背を押して、ミカはセイアに呼びかけながら部屋を出ていく。

 そして、一人取り残されたバルコニーで、ぽつりとセイアが呟く。

 

「やれやれ、ポップコーンの準備をするとして……さて、あの二人は塩とキャラメルどちら派だったかな?」

 

 結局、ナギサはミカに押されて、別室へと移動することになった。

 ティーパーティーとて学生、娯楽に飢えるときもある。

 そのため、ティーパーティーの施設にはホームシアターが設置されている。

 

 見たい映像媒体を持ってくれば、いつでも大画面のスクリーンで見れるというわけだ。

 

「普段から整備してくださっているのに、使わないというのも申し訳ないですしね」

 

「そう考えれば、ミカの提案に感謝しなくてはいけないね?」

 

「二人とも何話してるの~? そろそろ流すよ~!」

 

 三人は隣り合って席に着き、山盛りのポップコーンのバケットを片手に流れ出す映像を注視する。

 

 映像が流れだすと同時に現れるのは、大量の札束の入った袋と共にゆっくりと落下していく満面の笑みの次元先生とルパン三世の姿だ。

 

「……どう見てもお金を引き出しているという様子ではなさそうですね」

 

 そして、カジノとネオンランプで描かれた建物の灯りがつき、それと同時に警報が鳴り響く。

 その建物を背に、大量の札束の入った風呂敷と鞄を持って二人は逃げていく。

 

「悪党だなんて言ってたけど……本当に泥棒だったんだね、先生って」

 

「あぁ……それにしても凄まじい身体能力だ。本当に人間かい?」

 

 ルパンと次元を追っていた警備についていたであろう輩は、車で走り去っていく二人を追いかけるために車に乗り込むが、その全てが、切り裂かれ分解して、破壊されている。

 

「鋼鉄の車を真っ二つに……話に聞くルパンさんと次元先生の仕業には見えませんね……?」

 

「分解されたものは……ごくろーさん、ルパン三世の仕業だろう……となると、もう片方の斬鉄は、まぁ彼だろうね?」

 

「ぶー、セイアちゃんだけ、先生の事詳しいのずるいよ」

 

 ミカが、セイアに対して恨めしい視線を送るがそれを意にも介さず、映像は進んでいく。

 

 車内が札束がびっしり埋め尽くされた車で荒い運転をしながら、二人は大笑いしている。

 今回の仕事も大成功したからだろう。

 

『ナンバー不揃いで50億はあるぞ。札びらのシャワーだ! それ~!』

 

『わぁ~! 熱い熱い熱い! 熱い、もっと埋めてちょうだいよ!』

 

「下世話~……」

 

「天下の大泥棒の二人も、金の魅力には耐えられないということだろうね」

 

「おや……ルパンさんの表情が……」

 

 二人の掛け合いを見たミカがジト目で言葉を零していると、盗み出したお札を見たルパンの表情が変わる。

 まるで、宝石だと思っていたものが、ただのプラスチックの玩具だと分かった時のような。

 そんな夢から覚めるような虚しい表情だ。

 

「え、捨てちゃうの!?……偽札!?」

 

「しかし、先生が言うには、国営のカジノから盗んだものなのですよね?」

 

 その訳を聞いたミカとナギサが、驚愕の声を漏らす。

 

「ゴート札……私達で言うのであれば、トリニティ総合銀行の札に潜り込まれたようなものだろう。余程出来がいいと見るべきか」

 

「ナギちゃん、今度検査する……?」

 

「まさか、あそこのセキュリティは──「国営のカジノだよ?」……念には念を入れましょうか」

 

 次の仕事が決まったと、悪党らしい顔つきを見せるルパンは、車にぎっしりと入った偽札たちを盛大に捨て始める。

 

『前祝いにパァーっとやっか!』

 

「偽札とは言え、気前がいいね!私こう言うの嫌いじゃないかなぁ」

 

「後ろの車たちは驚くだろうね?」

 

「ミカさん、あまり端ない事はしないでくださいね?」

 

 ナギサから釘を刺されたミカは、頬を膨らませる。

 空に舞う偽札の雨を背景に、次元とルパンの二人は、とある国へと進む。

 

「この歌……いい曲ですね……」

 

「……『あなたにだけは、分かってほしい』か。ふふっ、とても他人事とは思えないね」

 

「何、二人して私を見て」

 

 微笑ましい目で、ミカを見るナギサとセイアに、ジト目で、ミカは返す。

 

 変装した二人は、検問を通過する。

 どうやら目的の国へと到着したらしい。

 

「二人ともこういう時でも変装しないといけないレベルの犯罪者なんだね」

 

「例えるなら、キヴォトス全土で指名手配されながらも逃げ切れている七囚人と言ったところかな」

 

「つくづく、先生が『先生』で居てくれてよかったと思わされますね……」

 

 着いた国の名は『カリオストロ公国』。

 人口3500人、世界一小さな国連加盟国として有名だが、裏社会では別の名で馳せている。

 

『それがゴート札の震源地というわけだぁ』

 

『その筋じゃ有名な伝説さ、偽札界のブラックホールってな』

 

「手を出せば生きて帰ってはこれないと……」

 

「ひゅぅ……怖いねそれは」

 

「先生ったら……今思うと、先生は仕事以外では陽気な方ですよね?」

 

「もしかしたら、先生の素はそっちよりなのかもしれないね」

 

 そうして、談笑していると、二人が乗っている車のタイヤがパンクし、寝ている次元を起こしたルパンが、じゃんけんを仕掛ける。

 

『なんだこのスペア、丸坊主だよ』

 

 じゃんけんの勝者はルパンであった。

 渋々、次元はタイヤを取り換え始める。

 

「今日みたいな穏やかな天気ですね」

 

「ナギサ、それはあまりに不謹慎じゃないかい?」

 

 セイアがそう話すと、平和な空気を切り裂くように喧ましいエンジン音が鳴り響く。

 ルパンの視線の先から現れるのは、赤い車に乗り込んだ白い花嫁姿の少女と、その後ろを追う見るからに怪しい車に乗り込んだ黒服の男たち。

 

『なんだ?』

 

『乗れ』

 

 急いで乗り込んだルパンが、ロープを引き、スーパーチャージャーを作動させ、アクセルを全開で踏み込む。

 

 爆発的な加速をしたフィアットは、あっという間に先ほどの二両に追いつく。

 

『どっちに付く?』

 

『女ぁ!』

 

『だろうな!』

 

「まさに以心伝心って奴だね」

 

 途中、前方から現れたトラックを神憑った回避をしつつ、次元はサンルーフから身を乗り出して、マグナムを構える。

 素早く動く車と、揺れる車内の中で、次元は狙いを澄ませて引き金を引く。

 

「当てた!え、パンクしないの!?」

 

「先生のマグナムですら弾くタイヤ……どんな性能をしてるんだい?」

 

 放たれた二発の弾丸は確かに命中するが、その全てが弾かれる。

 

 そして前の車から転がり落ちてきた手榴弾が直撃する。

 上がる爆炎の中からひび割れたフロントガラスを割って、二人は口角を上げる。

 

『アチッ! さて、面白くなってきやがった!』

 

『まくるぞ~!』

 

「す、すごい……爆発を喰らって笑っていられるなんて……」

 

「先生ってば、この頃から変わんないんだね。こういうとこ」

 

 その二人の姿に、ナギサは感嘆の声を上げ、ミカはうっとりとした表情をする。

 

 まくるぞの意味の通り、ルパンが操るフィアットは凄まじい加速をしながら、壁を上り、崖上の森の中を走っていく。

 

「ルパン三世……凄まじいドライブテクニックだ……これは一つお手合わせ願いたいものだね」

 

「そういえば、この車先生持ってなかった?」

 

「ほう、それは良いことを聞いたね」

 

 その様子を見ていたセイアが、珍しく好戦的な表情で声を上げ、ミカの一言を聞いた瞬間、その口角が上がる。

 そして、車はあっという間に森を抜けて、先ほどの二両の前方へと躍り出す。

 

『今度のは、タダの弾じゃねぇぞ』

 

「徹甲弾!?あれって、先生のマグナムに入れられたっけ?」

 

「特殊改造してあると考えるべきだろうね」

 

 銃で撃たれながらも、先生は狙いを澄ませて、車の右前方のタイヤを撃ち抜く。

 先ほどは弾かれたが、今度は確実に貫き、爆発を伴いながら、男たちが乗り込んでいた車は大破する。

 

「ふふっ、先生ったらあんな子供みたいなはしゃぎ方して……」

 

「可愛いところあるよね~」

 

「……おや、彼女……気絶している?」

 

 クラクションを鳴らしてもハンドルに持たれかかったままの少女の様子に気が付いたが、車は走り続け……ガードレールにぶつかり、徐々に大破していく。

 

 フィアットのハンドルを次元に任せたルパンは、少女の乗っている車に乗り込む。

 

 が、一度壊れ始めた車は止まらず……崖の下へと落下する。

 

 ルパンが、咄嗟に振り向きながら投げた簡易鍵縄によって、ルパンと少女は崩壊した車と共に崖下の水面に叩き付けられるという運命を回避する。

 

「流石は天下の大泥棒、判断が早い」

 

「この女の子綺麗だね……それに素敵なティアラ……あ、目覚めた」

 

「目覚めたら知らない殿方に抱かれているのは……まぁ致し方ありませんね」

 

 高所にいる事実に気が付いた少女を優しく抱えながら、ベルトに仕掛けられたカラクリによってゆっくりと降りていく。

 

「あれって手作りなのかな?」

 

「うちでもミレニアムに依頼をすれば似たようなものは作れそうだね」

 

「あ、落ちっ!? ……痛ったそう……」

 

 支えにしていた枯れ木が剥がれ落ち、それなりの高度からルパンは落下する。

 そして、一緒に落下する彼女を受け止めたルパンは、お尻から岩場に着地し、その頭に枯れ木が命中してしまう。

 その様子を見て、痛そう程度で済ませるミカの耐久力の違いに、セイアは冷ややかな目を送る。

 

「常人なら骨折どころでは済まない勢いだったが……ほう」

 

「献身的な少女ですね……純白のグローブを何の躊躇いもなしに」

 

 助けられた少女がルパンに対して行った誠心誠意の行動にセイアとナギサは声を漏らす。

 心優しいその対応を見届けていると、先ほどの男たちとよく似た姿の男たちが船に乗って、少女を追いかけ始める。

 少女は気絶したままのルパンに謝罪を告げて、走り去っていった。

 

『あぁ……俺の花嫁は?』

 

 後から追いかけてきた次元が、起き上がったルパンに対して無言で指を指す。

 先ほどの船が何処かへ飛んでいく様が見える。

 先ほどの少女が捕まったことを理解するのは容易だろう。

 

「あの子……どうして追っかけられてるのかな」

 

「どこかの誰かさんみたく、じゃじゃ馬娘なのかもしれないね?」

 

「セイアちゃん?それ私の目を見ながら言おっか?……あれ?さっきの手袋の中から……指輪?」

 

 ルパンの手の中に転がり落ちたその銀の指輪には、頭はヤギで、下半身は魚……即ち黄道十二星座の一角、山羊座のモチーフである牧神パーンが描かれている。

 その指輪を見たルパンは何かを思い出し、真剣な顔つきへと戻ってしまう。

 

「ほんとどうしちゃったんだろ?」

 

「まるで大切な記憶を取り戻したかのような面持ちでしたね」

 

「……ふむ、どうやら目的地に着いたようだよ」

 

 ルパンと次元が向かった先は、アリウスの大聖堂に負けず劣らずの朽ちた古城だった。

 そこに着いた次元は車の上に昇ると、何かを見つける。

 

「あっ、さっきの羊さんだ」

 

「ここに迷いなく来ていたという事は……どうやら訳アリのようだね」

 

「酷い朽ち具合ですね……こうなる前はかなり立派なお城だったでしょうに……火事ですか……」

 

 そう話していると場面は、ルパンと気難しそうなお爺さんが会話しているシーンに移る。

 大公殿下の館、即ち国王の居住区だったことを示す。

 その後のお爺さんの話曰く、七年前の大火事で廃墟と化し、大公夫妻がお亡くなりになってからこの有様とのことだった。

 王のいない政治に関しては、摂政が行っているらしい。

 

「何処にいてもこういった政治は、血の臭いがするのですね……」

 

「全くだ。人は過去から学ぶというが、学べない人間の方が遥かに多いというものだ」

 

「ルパンさんさっきからずっと暗い顔をしてるね……?」

 

 神妙な顔のルパンは、一人で何処かで歩き出し、溜池に繋げられた足場を渡って、朽ちた休息所で、足を止める。

 まるで昔を思い出すかのような顔だ。

 

 黄昏ているルパンの背中に、鐘の音が響く。

 

『大きくなりやがって……』

 

「私たちが言えた話じゃないが……まるで抱え込んでいるかのようだね」

 

 一人で指輪を見つめるルパンの元に、次元が不機嫌そうな表情で近づいて来ていた。

 その様子に気が付いたルパンは、そっと手袋と指輪を仕舞い、煙草を咥える。

 その間も次元は一言も話さない。

 

 まるで、先ほどのルパンのように。

 

 黙りこくった次元は、ルパンの隣へと無理やり座る。

 

 気まずさに耐えきれなくなったルパンが、口を開く。

 

『どったの?』

 

『とぼけるんじゃないの』

 

 そういった次元はルパンの体に絡みつき、関節技を素早く二回極める。

 

『一人でカッコつけて、悩むんじゃねぇ!ほら、言え!』

 

「ふふっ、私たちもあんな風に出来たらよかったのかな……なんて」

 

「君からの関節技は命がいくつあっても足りないが……あの夜も、私たちの大事な一ページだと思っているよ」

 

「私もセイアさんと同意見です」

 

「二人とも……ありがとね」

 

 次元の言葉に、ミカの口から思わず零れた後悔の声を、両隣に座る二人がそっとミカの事を撫でながら、慰めていた。

 彼女たちも、凸凹で曲がりくねった歩みだったとしても、ゴールへと進んでいるのだ。

 

 画面は、ついにギブアップしたルパンが次元を連れて、城壁へと向かっている様子を映している。

 

 城壁に備え付けられている時計塔の向こうに見えるのは、広がる湖と、その先に見える巨大で立派な城だった。

 

『摂政カリオストロ伯爵の城だ……ほら見ろよ』

 

「ん?水道橋の向こう……あ、さっきの船、ってことは、あの女の子を追いかけてたのって」

 

「カリオストロ伯爵の指示だと見るのが自然だろうね」

 

 その船を見つけたルパンは、カリオストロ城の水門について言及した。

 そして、さらに付け足した昔のまんまというセリフで、一同の視線がルパンに集まる。

 

「なるほど、訳アリとはそういうことだったんだね」

 

「十年も前に……いくら若かったとは言え、ルパン三世さんがコテンパンにされるなんて……」

 

「それもだが、生きて帰ってこれないと称された偽札界のブラックホールから、生き延びているのも驚くべきことでは?」

 

 話していると、二人の頭上を赤いオートジャイロが風切り音を掻き鳴らしながら、通過していく。

 

「オートジャイロ……古代の遺物じゃないか。先生の時代でも古風と呼ばれるものなのか」

 

「セイアちゃん乗ってみたいの?」

 

「そうだね……今なら昔見たく色々運転してみたいと思うかな」

 

 己にとっては、ただただ忌まわしかった夢渡りから解放されたセイアも、また過去の活発だった少女の時代を楽しむほどの精神的余裕を有し始めているのだろう。

 

 画面は、そのままオートジャイロに乗る伯爵の様子を映し始める。

 

「あれがカリオストロ伯爵……」

 

「私この人嫌いかな」

 

「立ち振る舞いの優雅さは、流石と言わざるを得ないがね」

 

 執事のジョドーに『花嫁を助けた二人の外国人』の始末を任せたカリオストロは、そのまま薬で眠らされている少女の元へと向かう。

 

「金の指輪……あの少女が持っていたものと対になる品か」

 

「あの様子を見るに、少女よりも指輪の方が大事っぽいね」

 

 怒り心頭のカリオストロ伯爵を背に、場面は切り替わり、城下町……その一角に構えてある宿屋の大賑わいの食堂が映し出されていた。

 

「凄い盛況ですね……普段からこうなのでしょうか?」

 

「いや、あの賑わい方は、明らかに何か催し物があると踏むべきだろう」

 

 その食堂で、ルパンと次元は、狭いテーブルで銀の指輪を観察している。

 

『この文字は死滅したゴート文字だ』

 

『”光と影 再び1つとなりて蘇らん 1517年”』

 

『年号はローマ数字だ』

 

 ルパン三世は、サラリとその文字を読み解く。

 

「ルパン三世さんは、博識なんですね……死滅したという文字すら読み解くなんて」

 

「泥棒稼業にも学は必要ということなのだろうね」

 

「ねぇ、なんで私を見るのさ。別に頭悪くないよ?」

 

 ルパンの博識ぶりに舌を巻いていると、二人の間に山盛りのミートボールスパゲッティの大皿が置かれる。

 

「美味しそー……コース料理も好きだけど、あぁ言うのもいいよねぇ」

 

「前に先生の元に行ったときに似たものを食べたが……──「「セイアちゃん(さん)?」」あれは、この料理の再現だったか」

 

「コホン……それは後で詳しく聞くとして、先ほどから見てるあの男性は。明らかに敵でしょうか」

 

 爆弾発言を落としたセイアを横目に、料理を運んできた給仕の女の子に指輪を見せると、その紋章が『クラリス様』の物だということを話す。

 女の子が指さす先に立てかけられてある写真には、今朝助けた少女と酷似した幼い子供が写っている。

 

「クラリス様と伯爵様の結婚式……か。この大賑わいは、それで……」

 

「うへぇ……あれで女たらしなんだ、サイテー」

 

「ルパン三世さん、今のはあの伯爵の手先をわざと逃がすために?」

 

 指輪を見て目の色を変えた伯爵の手先をわざと逃がしたルパン達は、山盛りのスパゲッティを奪い合いながら話を続ける。

 

「て、テーブルマナーが酷いですね……」

 

「まぁまぁ、ナギちゃんあぁいう店だったら、そーいうのは野暮ってもんじゃない?」

 

「それは……そうですね……──「そもそもナギちゃんだって、昔はそうだったじゃんね?」ミカさんっ」

 

 先ほどまでの盛況が嘘かのように静まり返った真夜中で、闇に潜む何者かが、眠りについた街を駆ける。

 

 自身の元に忍び寄る死の気配に気が付いた次元とルパンは、そっと作業をやめて、迎え撃つ準備をする。

 扉の鍵が開いた瞬間、天井に取り付けられた窓が割られ、暗殺者がルパンの前に着地する。

 

「凄い、いくら得物が違うとはいえ……あの二人の攻撃を完全にいなしてる」

 

「たった二人に、ここまでの戦力を用いるとは……何が何でも殺して奪うということだね」

 

「あっ、先生のマグナムが……当たったのに効いてない!?あれ、すっごい痛いのに」

 

 マグナムすら微動だにせずに受けきる暗殺部隊を目の前にして、絶体絶命まで追い込まれる二人だったが、ルパンが咄嗟に取り出した閃光手榴弾を使い、二人は窓の外……。

 屋根伝いに駆け出し、止めていた車へと乗り込む。

 

「先生ったら、殺されかけたのに面白くなってきたって……」

 

「ふふっ、それがあの二人……先生風に言うなら、男って生き物なのだろうね」

 

「先生なら確かにそう仰りそうですね……しかし、あの指輪、余程重要なものなのでしょうか……? まさか本当に宝物に繋がるもの……?」

 

 真夜中のカリオストロ城。

 人目を縫って、侍女の一人が、隠し通路をいくつも使い、何処かを盗み見し始める。

 

 その先に居るのは、偽札を見るカリオストロ伯爵と、その部下だった。

 

「この侍女さん……どこかで見たことがあるような……? 何でだろ、凄く見覚えがあるのに……」

 

「ふむ、やはり偽札も技術の発展によって、偽造が難しくなっているのか……」

 

「私たちの使っているクレジットは、そのようなことが起こらないように対策が施されているはずですしね……」

 

 技術的に難しい偽札の制作をやり直させる上に、納期の遅れすら許さないと、命令するカリオストロの元に、暗殺者と同じ服装をした執事のジョドーが現れる。

 そして、その背中には……一枚の予告状が。

 

『”色と欲の伯爵殿 花嫁はいただきます 近日参上 ルパン三世”』

 

「こういう皮肉、先生とかも時々言うけど、もしかしてルパンさんの影響だったりして?」

 

「ただの似た者同士かもしれませんよ?」

 

 ミカとナギサが、ルパン三世からの予告状について話していると、カリオストロ伯爵は、その内容を聞き、不敵に微笑む。

 自分たちが探すまでもなく、迎え撃って殺せばよいと、そう考えているのだろう。

 カリオストロ伯爵の絶大な自信が、その声から滲み出ている。

 

 場面は、変わり雨に打たれながら、和装の男がルパン達のいる屋敷跡に現れる。

 

「十三代目石川五ェ門。先生曰く怒らせたら一番危険な男だとか」

 

「へぇ……凄く礼儀正しそうに見えるのに……案外そういう人が怒った時が一番怖いってもんだよねぇ」

 

「おや……あれは?ヴァルキューレのパトカーと酷似してますね?」

 

 カリオストロ城に入っていく日本のパトカーを見た次元が声を荒げる。

 そのパトカーから下りてくるのは、茶色いトレンチコートで身を包んだ一目見てただものではないと伝わる男、彼がルパンの言ったゼニガタだとすぐに彼女たちは気付く。

 

「国際警察……いんたーぽーる?」

 

「ICPOの銭形警部。

 ミカにも分かりやすく言えば……SRT特殊学園に近しい存在とでも言おうか。

 その組織に属する中間管理職さんだよ……まぁ、尤もルパンを狙ってなければ、もっと上にでも行けただろうがね」

 

「ふーん…… 確かヴァルキューレにみんな編入されてなかったっけ?ヴァルキューレ達に比べれば、良い人に見えるけどね」

 

 カリオストロ伯爵に接する銭形の姿を見たミカはそう呟く。

 グスタフと呼ばれた衛士に連れられて、銭形は城壁内の庭を案内される。

 古城を見つけた銭形が城壁に向かおうとすると、グスタフに止められてしまう。

 

「わ、一瞬で煙草が消えちゃった」

 

「それにしても……銭形さん、先生たちが潜む古城を怪しむ勘の鋭さ。偶々にしては恐ろしい方ですね」

 

 場面は移り、ルパン一味は城への侵入経路と銭形を呼んだ理由、それらについて話し合いを行っていた。

 毒を以て毒を制す。

 天敵をわざと呼び出すことで、混乱させようという腹積もりだろう。

 

 そして、時間は進み、空に月が昇る。

 彼らは作戦を決行する。

 

「先生ったら……帽子は絶対に脱がないんだ」

 

「昼寝をなさるときも被ったままだと聞きますよ?」

 

「正に一心同体という奴だね……ふふっ、おっちょこちょいなのは変わらずか」

 

 ルパンと次元の二人は、水道の中を進んでいく。

 

「わ、水路の中に滝!?……ってすっごい泳いでる、ふふっ、ちょっと面白い」

 

「……まさか、あれが正解のルートなのですか!? 対物ライフルを持った先生には無理ですね……」

 

「その上、レーザー付き、カリオストロ伯爵はここからの侵入も予期していたと思うべきだろう」

 

 次元がルパンの心配をする中、場面は変わり、カリオストロ城内で開かれる優雅な晩餐会と。

 そして……その外でカップラーメンを貪る警官たちが映し出される。

 

「寒いだろうに、城内に入らずに外で見張りだなんて仕事熱心だね、銭形さん」

 

「おや、風車の動きが鈍く……ルパン三世の影響か。嘘だろう!?それで勘づくのかい?」

 

「ヴァルキューレの方もこれくらいの洞察力があると助かるのですが……──「ナギちゃんってたまに凄いこと言うよね……」」

 

 上の砲台に繋がるライオンの噴水からルパンが出ようとすると、そこに銭形が駆けつけてくる。

 そして、ライオンの口の中を覗きこむが……その前に、銭形を呼びに来た部下の存在によって何とか危機を乗り越えることに成功した。

 銭形たちが出ていった事を見計らって、ルパンは城内に潜入することに成功する。

 

「どこに行っても、上司の命令は絶対というものなのだね」

 

「まぁ、それでもあの様子では止まることはないでしょうね」

 

 伯爵の元へと直談判をしに向かった銭形の後ろを、変装したルパンがこっそりとついて歩く。

 伯爵のいる間まで来た銭形を衛士たちが止める。

 

「今のトウヨウジンって?」

 

「百鬼夜行の学生という言い方をもっと差別的に言ったものだろうか。どちらにせよ良い対応ではないことは間違いない」

 

 苦虫を嚙み潰したような顔をしたセイアを余所目に、画面は立ち去った銭形を映す。

 階段を下りたと思えば、その直後に勢いよくゼニガタが駆け上がって来る。

 

『今ここに俺が来なかった!?』

 

『なんだと──『バカヤロウ!そいつがルパンだ!』』

 

『俺に化けて潜り込んだんだ! でっかい図体して変装も見破れんのか! ゴクツブシ!!』

 

 後から来た銭形の煽りに怒り心頭となった衛士たちは、急いで降りて行った銭形を追いかけ始める。

 

「あれ声が……?」

 

「巻き込まれてしまったね」

 

「あ、銭形さん……他の警官の皆様まで……」

 

 盛大に階段で戦い始める衛士隊と警官隊を押しのけて、ルパンとその後を追う銭形。

 辿り着いた回廊には、白い石像が置かれている。

 

「おや、ルパン三世は何か気が付いたみたいだね」

 

「あら、銭形さんが……あら、落ちてしまいましたね」

 

「あそこまで跳躍したの?予備動作無しで……?」

 

 銭形が落ちるところを写真に現像したジョドーは持ち場を離れたグスタフを呼びに、石像の首を横に向けた後、立ち去る。

 ルパンは、彼らが去った後、音もなく着地し、石像に近寄る。

 そして、首の向きを元に戻し、その頭に帽子を被せて城の中に忍び込む。

 

 当然後を追いかけてきたジョドーとグスタフは、見事に落とし穴に引っ掛かってしまう。

 

「あ、あのさ……二人とも?」

 

「どうしましたか?ミカさん」

 

 そこまで行ったとき、ミカが声を上げる。

 ミカはそっと映像を止める。

 

「あの……喉かわいちゃって……」

 

「全く……もう少しで半分ですし、一区切りつきましたので……──「紅茶は無しだよ、ナギちゃん。ミネ団長に怒られるよ」…………」

 

「こういう時は、コーラと相場が決まっているだろう──「さすがセイアちゃん!分かってる~!」」

 

 そういうと、セイアは部屋の外に控えていた見張りの部下に頼んで持ってきてもらう。

 その間、三人は少し映画について語り始める。

 

「どうなんだろうね、あのカリオストロ伯爵。結構厄介そうだったよね」

 

「あの城の仕掛けはまだまだあるだろう。それにあの地下牢……ルパン三世がそこに入るようなミスはしないだろうが……」

 

「クラリスさんのことも心配ですね……まだ無事の様でしたが……」

 

 不安な様子で、この先を待ち遠しくしていると、先ほどの部下がコーラとグラスを三つ持って部屋の中に入って来る。

 

 それを受け取ったセイアは、机に置いて、三つのグラスにコーラを注ぎ、二人に渡す。

 

「さて、御供も来たことだ、続きを見るとしよう」

 

「えぇ、では……流し始めますね」

 

 

 





ここで一旦区切って、続きはまた後日とさせて頂きます……
文字数がこのままだと三万文字に行きそうでしたので……


さて、実はコラボ回をプロローグと、Vol.1の間に移しております。
今後、コラボ回を投稿させていただく際にはそちらに現れますので、もし若い数字が出てきた際は、コラボをしたんだと思っていただければ幸いですな

では、CMに入ってもチャンネルはこのまま!

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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