新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-3 ようこそ!柴関ラーメンへ!

 翌日の朝。

 俺は、ホシノが貸し出してくれた一軒家で寝泊りをした。

 アビドス高等学校でもよかったんだが、よく考えりゃ、校内は禁煙。

 ましてや、子供が来るところで喫煙はまずいからな。

 ホシノの配慮は非常に助かった。

 

 気持ちのいい天気だった。朝から煙草を吸いながら、アビドス高等学校へ向かっていると、曲がり角から出てきた人影に気付き、足を止めた。

 

「げっ……」

 

「げっ、とはひでぇじゃねぇか、セリカ。おはようさん」

 

 煙草を携帯灰皿に入れて、露骨に嫌な顔をしているセリカに話しかける。

 予想通りではあるが、やっぱり嫌われているようだ。

 

「朝から煙草吸って、何がおはようよ!馴れ馴れしくしないでくれる?言っとくけど、私まだ先生のこと認めてないし、煙草大っ嫌いだから!!」

 

 そういって眼光をさらに鋭くする。

 気の強い女は嫌いじゃねぇが、ここまで刺々しいのは久しぶりだな。

 

「な、何よ!!ジロジロ見んな!!」

 

「悪ぃ悪ぃ、つい昔のことを思い出しててな。これから学校か?」

 

「別に、私がこれからどうしようと、先生には関係ないでしょ?朝っぱらからこんなところをうろついてたら、ダメな大人の見本みたいに思われるわよ?んん、煙草も吸ってるしダメな大人でしょ!」

 

 ひでぇ言いようだな。

 シャーレ初日のユウカのことを思い出しながら苦笑してると。

 

「仮に学校に行くとしても、あんたと一緒には絶対行かないから。それに悪いけど今日は自由登校日だから、学校に行かなくてもいいんだけど?」

 

「自由登校、そんなものがあるのか……ん?ってことはだ、その口ぶりからして、お前さんこれからどこ行く気だ?」

 

「そんなの教えるわけないでしょ?」

 

 ……クソ生意気だな、とは言えその通りではあるか。

 

「それじゃあね、バイバイ」

 

「道に迷うなよ」

 

 背中を向けて走り去ろうとするセリカに向けてそういうと、勢いよく振り向き、今までで一番鋭い眼光で。

 

「初日のアンタじゃないんだからそんなドジしないわよ!!!!」

 

 そう言ってどこかに行った。

 ちょっと軽口言っただけじゃねぇか。

 

 アビドスについた辺りで、アロナが話しかけてきた。

 

『先生、連邦生徒会から今日付の仕事が来ています、先ほどアビドスに書類を送ったそうです』

 

 朝から憂鬱だな。

 大きなため息をつきながら、学校につくとアヤネが、俺を手招きしていて、ついていくと、そこには教室の天井まで届きそうなほど高い書類の山が鎮座していた。

 

「先生……いつもこれを対処していたの?」

 

 シロコが、驚きながら質問を投げかけてきた。

 

「いつもはもうちょいマシなんだがな、リンの奴め……」

 

 リンに、出張の知らせを入れたせいで、この場所に書類を送ってきたのだろう。

 

「うへへ〜、すごい量だねぇ。おじさんは見るだけで眠くなっちゃうよ〜」

 

「大変そうですね〜。先生、私たちもお手伝いしましょうか?」

 

 計画を練ったりするときや事前の下調べで書類整理をしていたり、キヴォトスに来てからそれなりにアロナの力を借りてやってきたためか、それなりに馴れがある。

 

「いや、これは俺の仕事だからな、気にすんな」

 

「ん。」

 

 シロコがじっと俺に対して訴えかけるような目線を送ってくる。

 

「なんだ。シロコ」

 

「……ん、やっぱり私たちも手伝う」

 

「はい。この量の書類、先生お一人ではいつか倒れてしまいそうですし」

 

「はい!みんなで頑張りましょう☆」

 

「……うへへ、しょうがないなぁ。おじさんも手伝うよ」

 

 そういって書類の山を分割し始めた。

 

「おい、まだ俺はいいだなんていって──「先生は、私たちに手を貸してくれた、だからせめて、少しでも手伝いたい……ダメ?」」

 

 そういわれると、弱いな……

 頭を搔きながら、分かったと言い、全員で書類の対処を行っていくことになった。

 

 

 

 

 仕事開始から数時間後、太陽は頂点に達しそうな頃。

 

「よし、飯時だし、いったん休憩にするか」

 

 手を叩いてそういうと、みんな疲れた様子で椅子にへたり込んだ。

 

「この量を、たった一人で……?」

 

「うへへぇ……おじさんには堪えるよ」

 

「……ん……」

 

「シロコちゃんが疲れてますね〜。よっぽど大変だったんでしょうか」

 

 思い思いにくつろいでいるが、様子を見るにタダ働きってのは申し訳ないな。

 

「よし、手伝ってくれた小遣い代わりだ、昼飯は俺が出す」

 

 そういうと、全員目がキラリと光り、俺の方を見る。

 シロコに関してはもはや獣のそれだ、よだれをしまえ。

 

「うへぇ〜。おじさんたち遠慮しないけど平気?」

 

「気にすんな、男に二言はねぇよ」

 

 生きてりゃ、腹も減る、この世の真理ってもんだそれが。

 

「それじゃぁ、行きたい場所があるんだよね~」

 

 そうして連れてこられたのは『柴関ラーメン』というお店だった。

 柴関ラーメンの看板には、『柴関ラーメン』と書かれた文字の隣に、大きな柴犬の絵が。

 

「ここだよ~」

 

「ここのラーメン、美味しいですよ~☆」

 

「ほう、そりゃ期待できる」

 

 そういって店に入るノノミに続いて、入店していく。

 店内を見渡してみると、お昼時なのもあるが、かなり賑わっていた。

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです……って、なんで⁉︎」

 

「五名でお願いします〜☆」

 

 聞き覚えのある声が聞こえ、その方を見ると、そこには店員の制服姿のセリカがいた。

 

「あはは……セリカちゃん、お疲れ様」

 

「お疲れ」

 

「み、みんな……なんでここが……⁉︎」

 

「うへへ〜、やっぱりここだと思ったよ」

 

「ほう、バイトとは殊勝だな」

 

 驚いた様子のセリカと違い、他のメンバーの顔を見ると、どうやらここで働いていることを知っていたようだ。

 俺が声をかけると、目が険しくなり睨まれる。

 

「せ、先生まで……なに、ストーカー⁉︎」

 

「俺にガキのケツを追う趣味はねーよ」

 

「先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえばここだし、お昼ご飯がてら来てみたの」

 

「ホシノ先輩かっ……!」

 

 

 

 悔しそうに天を見上げ呻くセリカ。

 入り口付近でそんな会話をしていた時、奥のカウンターから声が届いた。

 

「アビドスの生徒さんかい?嬉しいのは分かるがセリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして注文頼むな」

 

 随分と爽やかな男性の声が聞こえ、その声の主を見ると、柴犬だった。

 …………俺はもう突っ込まんぞ。

 この世界でようやく見かけた、男性が犬だという事実に目を逸らしていると。

 

「あ、うぅ……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……」

 

 大将ってことは、どうやら店長のようだ。

 注意を受けたセリカは渋々といった様子で、俺たちを席に案内した。

 案内されたのは六人席だ。シロコとホシノが俺から見て右に、アヤネとノノミが俺から見て左に座った。

 今朝、煙草臭いだのなんだの言われたばっかだからな。

 流石に隣に座るのは申し訳ないからな。

 

 そう思って椅子を持ってこようとすると……

 

「はい!先生はこちらへ!私の隣、空いてます☆」

 

「……ん、私の隣も空いてる」

 

 ノノミとシロコが同時にそう言った。

 

「いや、席を取って「ん?」」

 

 シロコから圧を感じ、ノノミも声こそ出さないが視線を向けてくる。

 

「…………やっぱり、席を取ってくる」

 

 そういうと、残念そうに二人がするが、俺の意思の方が強いってことで諦めてもらいたい。

 

「も、もういいでしょ!ご注文は!?」

 

 大将に声をかけて席を取りかえってくると、恥ずかしそうにしながら、注文を受けるための端末を準備していた。

 

「「ご注文はお決まりですか?」でしょー?セリカちゃーん、お客様には笑顔で接客しないとね〜」

 

「あ、うぅ……ご、ご注文はお決まりですか……」

 

 そんなセリカに笑いながら話しかけるホシノ。

 顔を赤く染めたセリカの反応をみんな楽しんでいるようで、そのまま注文をした。

 

「私はねー、炙りチャーシュートッピングの特製味噌ラーメン!」

 

「私はチャーシュー麺をお願いします!」

 

「私は塩」

 

「えっと、私は味噌で……」

 

 次々と注文が決まるなか、俺は悩んでいた。

 やはり、シンプルに王道の醤油もいいが、さっぱりとした塩も悪くない。

 しかし、ただの味噌を食べたうえで『特製』味噌を楽しむのも。

 その逆でもいいな。

 少し悩んだうえで、俺が出した結論は。

 

「よし、俺も炙りチャーシュートッピングの特製味噌で頼む」

 

 セリカが注文を書きながら、質問してきた。

 

 

「そういえば、今日は先生の奢りなんだっけ?」

 

「そうだよ〜。お仕事手伝ったお礼なんだよね」

 

 ホシノとセリカがそんな話をしていると、ノノミが俺に近寄ってきて。

 

「先生、これでこっそり支払ってください」

 

 金色に輝くカードを渡してきた。

 俺はそれを一目みたあと、それを返して、小声で話しかける。

 

「アンタ、そこそこいいところのお嬢様なんだろ?ならこの金は使えねぇよ」

 

「それをどこで……いや、だとしても」

 

「ガキはガキらしく、おっさんに甘えていいんだぜ。それにかっこつかねぇしな」

 

 大人として、子供に金を払わせるなんて真似できっこないからな。

 

 

 ──────

 

 ────────────

 

 ────────────────────

 

 

 

「はぁ、やっと終わった……目まぐるしい一日だった……」

 

 バイトを終えたセリカは、自宅に向かって足を進めていた。

 思い出しているのは、今日の出来事。シロコたちがバイト先に突撃してきたことだ。

 

「みんなで来るなんて……騒がしいったらありゃしないんだから。それにみんな、先生先生って。ホント迷惑、なんなのアレ」

 

 セリカの脳裏には今日のとある一幕が強く焼き付いている。

 それは、少し……いや大分行儀の悪い食べ方をしていた先生だったが、セリカと柴大将に向かって美味かったと笑顔で笑いながら話しかけ、そのまま柴大将と打ち解けていたことだった。それを見たシロコや、ノノミが自慢げにしていたところだ。

 

「ホシノ先輩のことだし、昨日のことがあったから連れてきたに違いないわ!」

 

 思い出せば思い出すほどに腹が立ってくる次元の姿。

 

「……ふざけないで。そう簡単に、認めないんだから」

 

 次元への怒りのせいなのか、自然とその歩みは早くなっていく。

 いきなり突如として現れた大人である次元。

 

「(どうせいつか、ここを見捨てて行くに決まってる。そんなやつ信用したって、無駄なのに。なんでみんな、あの大人を……)」

 

 セリカにとって、大人は自分たちを利用して利益を出そうとしたり、事情を知っていながら無視をする悪人だ。

 次元も今はいい人っぽく振舞っているだけで、どうせいつかは裏切って見捨てるのだとセリカは思っている。

 なのに、それなのに、自分の大事な先輩や友人は、出会って間もない次元を信用している。

 

「ああっ、もう!イライラする!」

 

 それがどうしようもなく、腹が立ってしょうがないセリカは、思わず叫び声を上げた。

 

 だから、気づかなかったのだ。足元に転がる、怪しげな筒に。

 

「……何、これ?」

 

 セリカがそれを見つけた瞬間、筒から煙幕が放出された。

 

 煙幕はすぐさま広がり、セリカから視界を奪う。

 

「舐め、ないで!」

 

 しかし、そう簡単にやられるセリカではない。

 

 持っていた銃を放ち、煙幕を晴らした。

 

 晴れた視界の先には、大勢のヘルメット団が自分を囲っている光景が広がっている。

 

 自分が狙われていたのだと、セリカは気づいた。

 

「こんな大勢で囲んだところで、私が諦めると思ってるの?そんなわけっ……⁉︎」

 

 ヘルメット団を睨みつけながら戦闘を開始しようとした瞬間、手足の力が抜けた。

 

 地面に倒れ込み、口も動かせないことに気がついた。

 

(なんで……力が抜けてっ……!)

 

 地面に倒れ込んだセリカを見下ろすヘルメット団。

 

「漸く効いてきたな、麻酔弾が」

 

「即効性があるやつだったと思うんだけどな……まあ、結果オーライか」

 

「早く運ぼう。誰かに見られると面倒だ」

 

 そんな話を聞いて、煙幕で視界が奪われた中で麻酔弾を撃たれたのだと気がついた。

 

(私をどこかに運ぶつもり……?)

 

 体を担がれて、手足を縛られた。

 意識が朦朧として、思考することや、目を開けていることすら難しくなる。

 

(こんな、あっけな、く……そんなの……嫌……)

 

 何故だか脳裏に浮かんだのはアビドスの皆。

 そして、あの大きな背中だった。

 意識を失いそうになる中、セリカは願った。

 

(誰か……助けて……!)

 

 

 銃声が暗い空に響いた。

 

 

 ドサリと担いでいたヘルメット団が倒れ、地面に触れる前にその体は、大きな腕の中に抱き留められた。

 

「どうした、寝るのは家についてからだろう?」

 

「せ、先生……?」

 

 どうして、なんで。聞きたいことが浮かんでも口は動かず、先生は、道の端に、私を優しく下した。

 

「お前は……あの時の……!!」

 

「悪いが、こいつは俺の生徒でな。子供の喧嘩にしてはやりすぎたな、お前ら」

 

 先生の腕がブレて見えて、次の瞬間には、先頭に立っていたヘルメット団が後ろに吹き飛び、先生の手には、黒いリボルバーが収まっている。

 

「先生!わたし、も……」

 

「怪我してんだろ、すぐに片付ける」

 

「でも……!」

 

「なんだ?朝と同じく反論する元気があんなら、帰りな」

 

 射撃とリロードを繰り返しながらも、私に対して軽口を叩く先生に、徐々に舌に力が戻ってくる。

 

「何よ……どうして私を助けるのよ……昨日も、昼間も、あんなこと言った先なのに」

 

「お前が子供で、俺が大人だからだ」

 

「そんな……そんなこと信じられっ──「信じなくてもいい」、はぁ!?」

 

「お前は何のためにこんな時間まで仕事をしている」

 

 何のため?

 

 アルバイトをするのは、お金を稼ぐため。

 

 お金を稼ぐのは借金を返すためで、借金を返すのは……

 

『セリカちゃん!』

 

 

 そうだ。単純なことだ。

 

 みんなと一緒に笑いたい、一緒に青春を過ごしたい。そのための場所を守りたい。

 

 厳しいと思ったのは一度や二度じゃない。こんな学校なんてって思ったのも数えきれないくらい。

 

 それでも、

 

「クソ、たった一人だぞ!数で押せばいける!突撃!!」

 

 みんなと一緒に青春したいから!

 

「かかってこい、三下」

 

 まぁ、そこにこの先生がいても、信じてもいいのかななんて。

 

 

 自分でも不思議に思うくらい足が動く。手も動く。頭もスッキリしたし、胸の奥のわだかまりも消えた気がする。

 

 

 複数の銃声が聞こえる。

 

「うへへ~、先生の言ってた通りだったね」

 

「そうですね〜☆来た人数も間違っていないですし!」

 

「ん、でも先生少しやりすぎ、私たちの分は?」

 

「え、先輩たち?」

 

 四つの銃声が、ヘルメット団を襲い、突撃の勢いが止まる。

 

「先生が、今夜セリカちゃんが狙われるって、ラーメン食べた後の帰り道で言っててねぇ~」

 

「こういう時は浮いた駒から、狙ってくるからな。護衛していてよかった」

 

「ん、でもそのあとあの書類全部押し付けたの許してない」

 

「え、ってことは」

 

「そうですよ~☆先生ったら心配でそのあと護衛してたんですから」

 

 やっぱりストーカーじゃんと先生に言おうと思って、先生の方を見たら恥ずかしそうに頬を指で掻いていて、なぜか許せてしまった。

 

「まぁまぁ、でも、残しておいてくれてよかったよ」

 

 ホシノ先輩がいつもの緩い口調で話し始めた。

 

「おかげで、後輩がお世話になったお礼ができるからね」

 

 その時のホシノ先輩はいつもとは別人なくらいの威圧感だった。

 でも、不思議と怖くない。

 

「くっ……それでもたったの5人だけだ!突撃しろ!!!」

 

 再度、リーダー格の団員が銃を構え、突撃してくる。

 

 たった五人だけ。その通りだと思う。でも今は不思議と、誰にも負ける気がしなかった。

 

 ────────────────────

 

 ────────────

 

 ──────

 

 

 逃げていくヘルメット団を見ながら、俺はマグナムを仕舞い、セリカの方を振り向く。

 

「悪かったなセリカ」

 

「え、なんで、先生が謝るのさ」

 

「お前が襲われた時、目的を把握するために泳がせた。そのせいでお前さんには怖い思いをさせてしまった。だからすまなかった」

 

「………確かに怖かったけども、先生が助けてくれたから大丈夫だよ」

 

「そうか、なら、よかった」

 

「だからその……ありがとう……」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「っ~~~!助けてくれてありがとう!先生!!」

 

 俺の目を見ながら大きな声で話す。

 

「おう、これも仕事だからな」

 

 そういって、俺はセリカの頭を撫でた。

 





いかがでしたかね?セリカのパートは、セリカとセリナを何度も打ち間違えそうになったことか……

毎度毎度のことながらお気に入り件数がもう少しで500に届きそうなところでございます。
皆様の温かい感想とここすきのおかげで、今も頑張れています。
あと、UAが1万の大台を突破しました。本当に本当にありがとうございます。


ここすき、感想、評価等々お待ちしております。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

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