新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-2 悪い狼と四匹の兎

「うわ、やっばぁ……ミヤコどうするよ」

 

「その様子からして……RABBIT2がやられましたか」

 

「ほら、これドローンの映像、完っ全にやられてるねぇ」

 

 隣にいる警備をしていたミヤコにスマホを投げ渡す。

 そこには、私が飛ばしてるドローンの映像が映っていて、サキが男に気絶させられて地面でおねんねしてる様子が見えてるはず。

 綺麗にお腹に一発入れられて……痛そうだったなぁ……。

 

「今なら隙だらけだし……全弾火力ぶち込んじゃう?」

 

「っ、キャンプRABBITそれは駄目です。それではRABBIT2が巻き込まれてしまいます」

 

「くひひ、分かってるって」

 

 冗談が通じないミヤコをほっといて、私はドローンを操作し始める。

 本当はヘリを使いたいんだけど……何となぁくあのオッサンなら落としてきそうな気がするから、小回りの利くドローンを使う。

 

「サキの救出の為に私が出ます、モエはその援護をしてください」

 

「何?命令してるつもり?もうそういう柵はないでしょ?」

 

「し、しかし……」

 

 こういう真面目すぎるとこどうなんだと思うんだよね、ホントさ。

 大きく溜息を吐くと、怖がったのかミヤコは一人で向かっていく。

 そうそう、もう小隊も何も関係ないんだし、各々の判断でやればいいじゃんね。

 

 それに命令じゃなくって他にもやり方あるでしょ……まぁいいや。

 私は私の仕事をしよっと。

 

 ドローンは現在四機、それぞれに三連ミサイルポッドを二つ装備してあって、その内の一機は今あのオッサンを監視している。

 ドローンの旋回音はそれなりに大きいけど、この木の葉の多い森林地帯なら、サーマルカメラのある私の方が有利。

 くっきりとオッサンの姿が見える。

 

 サキは、さっきの場所に捨て置かれてる。

 それなりに離れてるし……ここなら巻き込まれないでしょ。

 

 他の三機も集合させて一点に、全火力を……。

 

「くひひ……」

 

 彼を囲む四機のドローンから放たれる総勢24本のミサイル。

 それが全部放たれることを考えるとゾクゾクして笑みが零れる。

 

「……森全焼しちゃうかなぁ……もしそうなったら、くひひ、絶対やばいよねぇ」

 

 ミサイルポッド発射用のスイッチを手に持って照準を定める。

 

 その時違和感を感じる。

 画面のサーマルカメラで映るオッサンが急に立ち止まったからだ。

 

 さっきまで走ってたのに急に?

 まぁ動きが止まる分には当てやすいから助かるけど……。

 

 何かを探してるような……?

 まさかドローン?

 モーター音は確かに聞こえるだろうけど、それなりに距離は離れてるし、四方向から鳴らしてるんだから正確な位置なんて分かるはずがない。

 

「はずない……よね?」

 

 私が見ているサーマルカメラの彼の手に青い何かがあることに気付く。

 しかもそれは確かに私の方を向いていた。

 彼の体温と明らかに違う寒色……まさか銃!?

 

 スイッチを押そうとした瞬間、私の方にまで聞こえた一つの砲声と共に画面が砂嵐に覆われる。

 

「え、は……!?スイッチは……押されてる」

 

 反射でスイッチを押していたことに、気が付いた。

 

 ドローンで運べるものとはいえ、あのミサイルはそれなりの火力があるし、それに6発落とされたところで残りの18発の威力は相当のもののはず……。

 

 なのに、何も聞こえないし何の衝撃もなかった。

 つまりミサイルが発射されていないことになるけど……。

 

「全部撃ち落とした……?しかもミサイルに誘爆させずに……」

 

 あり得ないけど……でもそうとしか思えないこの現実に、私は冷や汗と笑いが出始める。

 

「これ、とんでもない人が来てるんじゃ……」

 

 止まらない笑いと向かってくる破滅に身を焦がしながら、私は彼へ向かっているだろうミヤコの事を思い出す。

 

 いいなぁ、あんな化け物と対面できるなんて。

 

 

 

 ──────

 

 ────────────

 

 ───────────────────

 

 

 

 

「今の銃声……こっちの方から聞こえたような……」

 

 聞こえた銃声を元に、位置を探る。

 出来るだけ音を立てないように……慎重に、それでも駆け足で……!

 

 草むらを掻き分けながら進んでいくと、何か金属が剥がれる音が聞こえる。

 それと同時に、男性の声も……。

 近くの木陰に隠れて、そっと顔を出して覗き込むと、黒い帽子を被った男性が壊れたドローンから何かを丁寧に剥がしている姿が見えた。

 

 あれは……モエのドローン?

 

 剥がし終えたものに目を凝らすと、ミサイルポッドを手に取っていた事が分かる。

 ドローンが破壊されているってことは……モエが失敗したのも自ずと理解ができた。

 

 一度木の裏に隠れて、どうするか頭の中で作戦会議を開こうとした時……。

 

「おい、隠れてるのは分かってるぜ」

 

 男の声が聞こえる。

 まだどうするか決めきれてないのに……まさかバレたのでしょうか……。

 

 そっと息を潜めて、気配を隠すことに神経を使う。

 

 まだ先手を打たれるわけにはいかない……。

 

「はぁ……かくれんぼがお望みって訳か。10秒数える、あまりドンパチやる気はねぇ、降参をオススメするぜ……10!」

 

 そういうと彼は大きな声でカウントダウンを始める。

 残りの戦力は私とミユくらい……。

 降参は絶対にありえないですが……相手は一人、それならここで私がやらないと!

 

 手に持った『RABBIT-31式短機関銃』を強く握りしめて、私は心の中で決めると同時に木陰から飛び出す。

 

「ゼロ、ちっと判断が遅ぇ」

 

 眼前に男の顔が見える。

 認識すると同時に銃口を向けられる。

 

「決意を固めるのは結構だが……気配が駄々漏れだ、お嬢ちゃん」

 

「っ……」

 

 眉間にリボルバーを向けられ、その上、私の短機関銃の上部を手で抑えられて、反撃すら許されない状況に持ってかれてしまう。

 私の判断が遅かったから……。

 

「さてと……これであと一人か、まずはお前さんらの基地に案内してもらおうか゛っ!?」

 

 変な声を出して、目の前の男が倒れていく。

 触れられるのが嫌で、横に跳び退くが、完全に意識を失っているようで彼はそのまま地面へと倒れる。

 ふと、彼が立っていた後ろを見ると、そこには銃を振り下ろした姿のミユが見える。

 

「はぁ……はぁ……ミヤコちゃん、大丈夫……だった?」

 

「ミユ……ありがとうございます……」

 

 ミユが助けてくれなかったら、私たちは今頃……。

 最悪の未来を前に、私の背筋が凍り付く。

 

「ミヤコちゃん……この人どうする……?」

 

「一先ずは銃を徴収してから、縛り上げましょう。私が彼を運ぶので、ミユはサキをお願いします」

 

「う、うん……分かった」

 

 ミユの声で、意識を戻した私は指示を出してから、彼を縛り始める。

 彼も連邦生徒会の人なのでしょうか……。

 それなら人質に出来るかもしれません。

 

 

 ────────────────────   

 

 ────────────   

 

 ──────

 

 

 

「……あっ、ミヤコちゃん、起きたみたいだよ」

 

 意識を取り戻すと、同時に声が聞こえる。

 

 目が見えねぇが、痛みは感じない。

 目隠しをされてるって訳か……。

 失明させられてないのは助かるな。

 

 そう考えていると、頭に鈍い痛みが走る。

 まさか背後を取られて、気絶させられるなんてな。

 カッコつけた手前、恥ずかしいったらありゃしねぇ。

 

 自分の油断に辟易して、ため息をつくと正面から布が擦れて開く音が聞こえる。

 

「ありがとうございます、起きましたか。ここはRABBIT小隊の拠点です。尋問のため拘束させて頂きました」

 

「随分と丁寧なお出迎えだな」

 

「RABBIT2を気絶させ、さらにRABBIT3のドローンを破壊したのですから、それ相応の対応かと」

 

 彼女の言う通り、作戦通り相手の拠点に来ることが出来たらしい。

 体内時計からして森に入ってからちょうど10分か。

 

「貴方には色々聞きたい事があるので、素直に話していただけると助かります」

 

「物によるな」

 

「話していただけない場合は、RABBIT2」

 

「命令するな、オッサンさっきはよくもやってくれたな」

 

 正面から聞こえる声が、別の方向に向かって声を出すと新しく人の気配が増える。

 

 入口の位置はこれで特定できた。

 

「その声は、新米か」

 

「お前っ!」

 

「RABBIT2、挑発に乗らないでください。 彼は人質です」

 

 銃を向けられる気配がする。

 短気すぎるなこいつは。

 さてと、あとは待つだけか。

 

 暫く待っていると、目隠しが外され、帽子やジャケットを脱がされて、縄で椅子に巻き付けられて拘束されている事が、把握できる。

 帽子やらなんやらは、近くの棚の上に置いてある。

 丁寧に畳まれてんのありがたいが……。

 

 部屋の中には、真面目そうな白髪の少女、鉄帽を被った新米、そして黒髪の小さな少女がいる。

 RABBITは四人だから、もう一人は外で見張りでもしてるのか?

 

「貴方には赤十字条約が適用されます」

 

「しっかりしてんな」

 

「悪虐ではなく我々は正義に生きる者ですので」

 

 ミヤコと呼ばれた白い髪の少女が、そう語る。

 ……正義か。

 こいつもそういうタチの人間らしい。

 自分を正義だと思っている奴は大抵ろくでもねぇ奴か、堅物な奴のどちらかだと相場が決まっている。

 ヴァルキューレも……いや、フブキが例外なだけで後は真面目な奴が多いはずだろ。

 

「……ったく、上手く行くといいんだが」

 

「黙れ」

 

「へいへい」

 

 RABBIT2と呼ばれている少女が俺に向かって銃口を突きつける。

 あいつらならすぐに気が付くと思うんだが……。

 最悪脱出するプランもあるにはある。

 

 そう思っていると、外で銃声が聞こえる。

 

「!? 何事ですか!」

 

「まさか敵襲か!?モエ、いやRABBIT3は何やってんだ!」

 

 部屋の中で、彼女たちが騒ぎ始めると、テントの入り口が開き、紫のショットガンを抱えた紫髪の少女がゆっくりと顔を覗かせる。

 

「あ、あの……RABBIT小隊の皆さんですよね?」

 

「え、は、はい……そうですが……」

 

 少女がそう質問をすると、反射的にミヤコがそう答える。

 その答えを聞いた少女は嬉しそうに顔を綻ばせて、スマホを取り出し通話をし始める。

 

「アル様っ!はい!発信機(・・・)の通りでした!……はいっ、では先に」

 

「発信機……?」

 

「すみませんが……皆さん死んでくださいっ」

 

 そういって少女は……ハルカは、ショットガンの引き金を何の躊躇もなく引く。

 

 突然の発砲に意識が間に合わず、ミヤコが吹き飛ばされる。

 さっきの発砲音は、ハルカか。

 通話の内容からして、アルが指示を出したらしい。

 流石アイツだ、

 

「ミヤコちゃんっ!!……RABBIT4、行きまっ、うっ」

 

 ミヤコがやられた事を認識した瞬間、目つきを変えた小さな少女がモシンナガンM39を素早く構えて、その引き金を引こうとする。

 狙撃手のミユってのはこいつか。

 至近距離で、スナイパーライフルを構えるのは随分と変わってるが……恐ろしいほどに速い上に、一切ブレてねぇ。

 惜しいのは……偶々、テントの屋根を突き破って侵入してきた弾丸が、彼女の背中に命中したことだ。

 それがなかったら、ハルカを制圧してたかもしれない。

 

「RABBIT4!……クソっ!!」

 

 鉄帽を被った少女がハルカを跳ねのけて、外へと飛び出していく。

 

 テントの中にも関わらず、ミユを狙撃されて、このままでは自分も狙い撃ちにされると思ったから飛び出したのだろう。

 そうして外に出ていった彼女を見送ると、背後から気配がする。

 

「主殿、助けに参りました」

 

「悪いな、イズナ」

 

 イズナが、手に持った苦無で俺の縄を斬って解く。

 俺は軽く伸びをしてから、帽子とジャケットを着こなして、テントの外に出ると、紫煙を吐き出すリボルバーを握りしめて、倒れたRABBIT2の前に震えながら立つキリノの姿が出向かえる。

 

「……殺したのか?」

 

「殺してません!!本官の射撃が命中したんです!!」

 

「クッソ……なんで逃げた方向が分かったんだ」

 

 そういって意識を失う。

 ふと視線を横にやるとミヤコ達の予想通り、撃たれて気絶しているRABBIT3がいる。

 彼女が恐らくモエだろう。

 

「先生見たかしら?」

 

「あの狙撃はお前さんだろ?見えてたのか」

 

「ふふっ……もちろん──「偶然だよ、当たった時に嘘でしょ!?って言ってたもんねっ」ムツキ!!」

 

 そういってアルは茶々を入れたムツキを追いかけていく。

 どうせそうだと思ったぜ。

 

 痴話喧嘩をしている二人を余所に、俺はカンナとカヨコの元に向かう。

 

「そう、貴女も大変だね……あ、先生。それじゃあ、報酬はここにお願い」

 

「はい、カヨコさんもお疲れ様です……お疲れ様でした先生。まさか、この少数で制圧してしまうとは……生徒達の噂は本当だったのですね」

 

「カッコつけた手前、俺は拘束されちまったがな。頑張ったキリノたちとウチの奴らには色付けてくれ」

 

 俺がそう話すと、カンナは少し目を見開いて、迷う素振りを見せたのちに口を開く。

 

「分かりました……私の一任では決めれないですが……今回はヴァルキューレ警察学校を代表してお礼を申し上げます」

 

「サツに頭を下げられるのは気持ちが悪いから止めろ。お互いに仕事をしただけだ」

 

 それよりも俺が気になるのは……あいつらの処遇の方だ。

 

 目を向けた先には気絶した彼女たちが拘束されて、連行しやすいように一か所に集められて、座らされている。

 

 まるで敗戦者の捕虜みたいだな。

 

 そんなことを思いながら、彼女たちに近づくと、全員即座に目を覚ます。

 

 気絶からの復活も随分と速い。

 流石なもんだ。

 気配を感知したのか、気絶しても意識を取り戻すなんてな。

 

「どうして……私たちの場所が……ダミーのテントも用意して、発信機も見当たらなかったのに」

 

「次からは、服だけじゃなくて、相手の隅々まで調べるんだな」

 

 俺は目の前で口を開き、口内に隠してた小型発信機を舌の上に乗せて、それを摘まむ。

 ここに来る前に、アル達に渡したのはこの小型発信機の通信を受け取る受信機だ。

 

 念のための策だったが上手くいったようだ。

 

「そんな手に……」

 

「もう終わりなんだ……SRTもRABBIT小隊も、私も……全部奪われて、寂しく消える運命なんだ……」

 

 ミユはそういうと、大きな涙を零し、啜り泣き始める。

 女の涙ってのは見てられねぇもんだが……。

 

「そういや、自己紹介が出来てなかったな。SRTのお嬢ちゃんたち」

 

「お前の事なんてどうでもいい!!話すことは一つたりともない!!」

 

「何なの、バカにしに来たの?それとも冷やかし?」

 

 立っている俺の事を見上げながら、威嚇するような友好のゆの字すらない顔つきで吠える兎達の中で、リーダーであるミヤコが俺に向かって絶対零度よりも冷たい目つきで質問をしてくる。

 

「あなたが、あの、多くの生徒たちの悩みを解決し、生徒達から信頼されている。 超法規的調査権を持った『シャーレの先生』……貴方が、その『悪党を自称する先生(・・・・・・・・・)』ですね?」

 

「自称じゃねぇよ」

 

「……先生」

 

 強い目つきで、睨みつけて、彼女は……いや、彼女たちは唾棄するような声色で声を上げる。

 

私たちは、貴方のような悪党が一番嫌いです

 

地獄に落ちろ

 

もう二度と会うことはないだろうね

 

 何処までも澄み渡る青い空、お天道様は優しく暖かな陽光を俺らへと降り注ぐ。

 俺は、空を見上げながら、笑いを零す。

 

「クックッ、元気なクソガキだな」

 

 




連行されてく兎たちと共に俺たちはヴァルキューレ警察学校へと到着した。
まさか正面切って警察の居所に侵入することになるなんざな。
そんな俺たちの前に現れるのは一人の少女。

次回 因縁は世界を飛び越える

他人の空似とは思えねぇな……






色々語りたいことがありますが、次回にまとめてお話いたしましょう。
そう、オリチャーが進行します。

では、最後にもしよろしければここすき、感想、評価お待ちしております。
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