あのヴァルキューレでの騒動から丸一日が経過した朝。
俺たちは新聞やニュースを見ながら、朝食を取ることがある。
アル曰く、カッコいいアウトローになるのなら、コーヒーを飲みながら、新聞を開くのは欠かせないと熱心に語っていたのを覚えている。
ブラックを飲めねぇのによく言ったもんだが……情報を欠かさず収集するのは良い事だ。
主に俺が新聞を読んでる間、他の四人がテレビでニュースを流しているのが、俺たちの日常だ。
『今私は、新たな教官を迎え入れたヴァルキューレ警察学校に来ています!』
『先日、ヴァルキューレ警察学校に侵入した謎の集団。彼女或いは彼らによって施設の一部が破壊されたとの情報も入っています。新たに着任したその教官によって治安の向上は見込めるのでしょうか?』
『あぁっと、今カンナ公安局長が出てきました。早速お話を伺ってみましょう!』
結局俺たちは、あの盗み出した違法リベートの証拠品をクロノスに送るようなそんなことはしなかった。
それについては後で話すが……新しい教官か。
どうにも嫌な予感しかしねぇ。
『何だ貴様ら……』
『カンナ公安局長!新たに着任したという教官の件について一言頂けますでしょうか!できればお会いさせていただけませんか!』
『その情報はまだ公表してないはずなんだが……はぁ、まぁいい。もうそろそろ来るはずだ。私はその出迎えに来たのだからな』
熱い珈琲を啜りながら、意識をニュースの方に向けると、つい先日見たばかりの男の姿をカメラが写し、俺は勢いよく珈琲を吹き出す。
「先生!私まだ読んでないのだけれど!!」
アルからの怒声に謝りながら、ニュースの方へ完全に意識を向けた。
『貴方が、今日からヴァルキューレ警察学校に着任した教官でしょうか!ぜひ一言お願い致します!』
『な、なんだぁ!?……あぁ、ゴホン。連邦生徒会との協働のため、本日付でヴァルキューレ警察学校で教官を務めることになった銭形幸一であります』
『おぉ!力強い一言ありがとうございます!では早速ですが──『悪いが、銭形警部はこの後も用事が控えている。インタビューは控えてもらおう』そんなっ!?ですが、我々は決して諦めません!』
しばらくは、銭形の方に報道の目は行くことだろう。
銭形が、ヴァルキューレの教官……つまり先生になるのは想定外だったが……元々あいつにヴァルキューレのごたごたを被せるつもりだったからな。
視線がそっちに行ったのは助かるというのが正直な感想だ。
カンカンになったアルを宥めながら朝食を食い、今日は俺が先にシャーレを出る。
子兎達に結果報告をしなくちゃならない。
アイツらはその盗み出した証拠品の始末をどうするのか俺へと託してきた。
責任を押し付けた……ってよりかは、領分を弁えてるってことなんだろう。
ガキ共の取れる責任はしっかり果たした。
なら俺が上手く扱ってやるのが、あいつらに対して出来る最大の敬意ってもんだ。
子ウサギ公園に着いた俺を、小隊の四人が迎えてくれる。
「先生、クロノススクールが銭形さんのお話をするのは理解できますが、何故ヴァルキューレの件については触れてないのでしょうか」
尤も穏便な顔はしちゃいないが……。
怪訝な顔をしているミヤコに対して俺は、肩をすくめながら話しかける。
「なんだ?再開発は無くなった……いや、一時中止ってことになっただろ」
「だから気にしてるの、あんなにお金をかけてたのに、すっぱり中止とか変じゃんか……それにいくら何でも早すぎる。先生、まさか連邦生徒会に脅迫でもしたの?」
「あぁ……
モエに言った言葉だが、誓って連邦生徒会には喧嘩は売っちゃいない。
リンには何かと世話になってるしな。
ただ、個人となれば……話は別だ。
時間は少し戻り、昨晩の連邦生徒会のとある一室。
「どうぞ、お入りください」
ノックをして入った俺を、桃色の髪をした少女が出迎える。
椅子に座り、両肘を机の上に乗せながら、不敵な笑みを浮かべて……。
「すみません、こんな時間まで待たせてしまって」
「気にするな、多忙なのはお互い様だ」
「いえいえ、先生に比べてしまえば私のする業務は微々たるものですよ」
時刻は夜中の23時、ガキが起きてるにしちゃ随分と遅いが……。
この時間は俺にとっても好都合だ。
「さて、一体何の御用件で?」
「あんたに見せたいものがあってな」
「はて……?」
かわい子ぶって傾げちゃいるが、俺が机の上を滑らせながら渡した書類を目に通すと、その恵比須顔の眉間に皺が寄った。
「なるほど、ヴァルキューレがそんなことを……これは今すぐ公表──「それには及ばねぇ」……は?」
「いくらのカイザーとはいえ、あんなセキュリティ意識の甘いヴァルキューレと交渉するほどあいつらは馬鹿じゃない。つまり、この事件にはその間を取り持った『誰か』がいる」
「ほう、探偵気取りですか?」
紙に手を置いたまま、彼女は俺の話に耳を傾ける。
いや、傾けざるを得ない。
「今となっちゃ、キヴォトスのあちらこちらにいるカイザーコーポレーションだが。その足掛けにアイツらは連邦生徒会内部に協力者を作った。それがだいたい今から10数年前の話だ」
「しかしそれは、SRTのFOX部隊によって捕らえられた。そうでしょう?」
「あぁ、しかしな、10何年もかけて作ったパイプってのはそう簡単に消えるもんじゃない。 それにそのSRT自体が消えちまった。
いや、
俺がそう言うと、鬼の首を取ったように目の前の少女は声を高らかにして話し出す。
「つまり、SRTの閉校賛成派にカイザーとの裏切り者がいるということですね?
……その案を通した時は多数決でしたので、室長の誰かだと思うのですが……」
そっちに持っていきたいのは分かっていたが……こいつ想像以上に頭がキレるな。
「最終的に決断を下したのはリン行政官です……彼女が何者かに唆されている可能性はあるかと……」
あくまでも養護の立場を貫くわけか……。
が、それはあくまでも俺がこいつしか手がかりがなければの話だった。
「まぁな。ただな……つい先日、俺はどういう訳か。そのFOX小隊の一人と接触してな」
「っ!」
カヤからほんのりと殺気が漏れ出す。
そこまで知られてるのは、想定外だったか?
「今回のヴァルキューレとカイザーの違法リベートを知ったのも、そこがキッカケだった。あのFOX小隊は少なくとも今回の件に関わっている。
俺に協力する気がなかった辺り向こうの先兵になってるのか……それとも別の誰かと手を組んでるのか」
「つまり……賛成派ではなく、反対派にいると?」
「表向きはな。実際はどうだっていいが……その黒幕は、ヴァルキューレ警察学校に口を出すことができ、尚且つSRTの力に目をつけて、彼女たちを手の中に収めたいと思っている人物」
俺は、彼女に近づき、その机に腰掛けながら、言葉を続ける。
「防衛室長、不知火カヤ。お前さんが黒幕か」
「……な、何を……証拠不十分にも程があります」
「そうだな……確かに証拠が足りねぇ。
彼女の顏に見えた一瞬の焦りの表情。
出来る事ならこの場で仕留めるのが、最善だが……。
仮にも相手は連邦生徒会所属。
キヴォトス相手に喧嘩したっていいが……銭形は間違いなく俺を捕まえに来る。
それに比べたら、まだマシだ。
「
「っ……承知しました……」
今はまだこの引き金を弾けないが。
それは決して撃たないって意味じゃない。
尤もとてもガキに向けていい殺気じゃねぇが……。
これで今回は手打ちだ。
「じゃあ、帰るぜ」
「……お気をつけて」
部屋を出ようと、扉のノブに手をかけた瞬間に感じた3つの殺気。
伏兵は居るものだと思っていたが、仕掛ける気はまだないか。
その殺意には悪意がない。
ただ命令されるのを待ってる引き金そのもの。
それが本人の意思なのか、それともカヤがもつ力によるものか。
コイツがカイザーと組んでるのはほぼ確定だが……まだカヤって女が何を企んでいるのか。
そこが不透明だからな……。
そう考えながら、俺はシャーレへと戻った。
そんなことがあったのが、昨日の晩の話だ。
カヤって女個人に脅しはしたが、それ以外には何もしちゃいない。
「そもそもヴァルキューレがやったことは違法に違いないが、それに関しちゃ銭形がしっかり説教しただろ。俺たちはアイツらに痛い目を見させたくてやったのか?」
「……それもそうですね。しかしそこまで、銭形さんを信用してるのですか?」
「今のキヴォトスの中で、俺がここに来る前も含めたって一番警察の汚職を許さない男だろうからな」
にしたって、勝手に来るのはどうかと思うが……。
そう呆れるところはあれど、そこが銭形って男だ。
「ともあれ、再開発が中止になった以上、放浪者の方々を追い出すことも無いでしょうし……」
「私たちもここで抗議を続けられるな!」
こいつらが自分の身を危機に晒してまでも守りたかった正義。
夢を引き合いに出されちまえば、俺も弱い。
場所に囚われてるんじゃない、テメェの心に殉じるのであれば、その背中を押してやるのが『先生』だろう。
この子兎共はまだ甘いとこがあるが……それでも会ったばかりの頃に比べれば、幾分立派な顔つきになったものだ。
意気込んでいる少女たちの元気な声が響く中、俺の背後の草むらから物音が聞こえる。
「誰だ」
「ひっ、あ、銃口なんか向けないでください!」
その音の方へ、俺がマグナム向けると、両手を上げたデカルトがゆっくりと出てくる。
手当が効いたのか、そもそも頑丈なのか。
後遺症らしきものも傷跡らしきものも見当たらない。
「ん?先生どうした……侵入者か、モエ」
「はいはい、手榴弾ね」
デカルトの姿を確認したがいなや、即座にサキとモエが行動に移す。
反射神経の速さは流石の一言だな。
あの時は手当してたが、サキはデカルト達に一度辛酸を舐めさせられているからな。
どうあがいたって、敵対は避けられないらしい。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!襲撃しに来たんじゃない!ただあいさつをしに……」
「『アイサツ』?あぁ、この前映画で見たっけ。『よう!お礼周りに来たぜ、こいつが挨拶代わりだ!』って言って、鉛玉食らわせてるやつ」
「そっちじゃなくて『ドーモ、キヨシタ=サン』ってお辞儀しながらガトリング砲放つ方じゃないのか?」
肝心のデカルトを置いて討論し始めるモエとサキ。
その様子を見て、怒りで震え始めたデカルトは、大声で叫ぶ。
「違う!!!これだから無法者は!!!」
「武器の一つも携帯してない辺り、本当に挨拶……いや、お礼でもしにきたのか?」
デカルトの姿と立ち方を見れば、銃を携帯してないことくらいは分かる。
挨拶だなんて言葉を使ったのは、ひとえにこいつのプライドか。
俺の言葉にも言い返そうとしたのか、何か口でもごもご言ったあと、彼はその頭を下げた。
「……君たちには助けられてしまいました。今朝のニュースで言われていた、ヴァルキューレへと侵入した集団は貴女達のことでしょう。昨日、そして今日もあんなにしつこく動いていたヴァルキューレが動いていない、そしてカイザーの再開発が中止になったことから、私にはわかります」
プライドばかりの頭の悪い奴だと思っていたが……まさか真相に辿り着いているとはな。
そしてそのうえで、彼は集団の長として頭を下げに来た。
こいつもこいつで、一つのリーダーとしての責任を果たしに来たのだろう。
「お陰様で、『所確幸』の仲間も戻ってきています。決して私たちの為ではなかったとしても、その恩を受けて知らぬ存ぜぬは、求道者としては出来ませんので……君たちの為に、私たちの中で
大人として立派なもんだ。
その掲げる思想ばかりは理解できないがな。
それはそれ、これはこれってやつだろう。
彼が言う特別な食べ物、その言葉を聞いたモエの目が輝きだし、口から涎が溢れ出す。
どうにもこうにも、こいつは欲に素直というべきか……テメェに素直なのはいいが、素直すぎる女はどうにも
「特別な食べ物!?何それ!?」
「これでどうする、賞味期限切れのもやし弁当なんて出てきたら……」
「ま、まぁ……普段は半額弁当ばっか買ってるもんね」
「そんなものではありません……これが私たちのスペシャリテ」
そういって彼は、懐から取り出したのは……。
「『鳥の骨を揚げた唐揚げ』です!!」
見るも無残な残飯だった。
いや、残飯ですらないな、食べかけでもない。
「………………」
「………………」
「ふふっ、嬉しすぎて声も出ないですか、普通の唐揚げと違って、骨ですので食べることは出来ませんが、その香りは普通の唐揚げそのもの。匂いを味わうことで、食事の楽しさを思い出しながら、カロリーはゼロ。まさに革命と言っても差し支えないでしょう! ビール3缶、白米、パンだって進む代物ですが……それを全てあなた達に差し上げます。さぁどうぞ、存分に味わってください!」
ミレニアムのコトリ並みの早口で説明されたその残飯の説明を受けながら、四人は唖然としている。
お礼の言葉の時点では立派なもんだったが……まさかゴミを渡されるとはな。
と言っても、正真正銘本人らにとっては御宝なのだろうが…………。
酒を買う金で肉を買った方がいいんじゃねぇか?
なんて思っちまったし、それを口に出すよりも前に、ミユとサキが口を開いた。
「えっと……つまりこれは、唐揚げじゃなくて」
「生ゴミだな?」
「な、生ゴミ!?違いますよ、れっきとした唐揚げです!パーツが違うだけで!」
こいつらが金がなくて、そして興味のない奴らだったらある程度喜んだかも……いや、そこまで理性は捨てないか。
可食部がねぇ。
「まだ充分に楽しめるものを『生ゴミ』呼ばわりとは、失礼千万!」
「確かに『生ゴミ』じゃないね。子ウサギタウンのゴミ出し規定だと、鳥の骨は『燃えるゴミ』に分類されるみたいだし」
「そうか……モエ、焼夷弾。燃やそう」
その言葉を聞いたデカルトの沸点が上がっていく。
まぁ、本人なりの誠意と感謝を込めたものなのだろうが……。
「こんな貴重な食べ物を前に、生ゴミだの、燃えるゴミだの……。
真の敵は、次元大介ではなく貴方たちでしたか!RABBIT小隊!!!
所確幸は貴方たちとは相容れないようですね!!!」
そう啖呵を切ると、待っていたといわんばかりに、モエが焼夷弾ではなく巨大な砲弾を持ってくる。
「モエ──「榴弾でしょ」あぁ、あるだけ持ってこい!」
「よっしゃ、派手に爆発させちゃおう!」
この馬鹿どもは……。
大爆発が起きるさまを見届けながら、俺とミヤコは顔を合わせる。
「呆れたな」
「えぇ……またこうなってしまうみたいです」
「周りに迷惑かけねぇ程度に喧嘩しろよ」
「「「喧嘩じゃない!!!」」」
元気に返事をした三人を見ながら、俺は青空を見上げる。
雨降って地固まるなんて言うが……。
やれやれ……退屈しねぇな、この世界は。
爆風に吹き付けられる中で、俺はそう感じるのだった。
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次元大介が去った直後の連邦生徒会のとある一室。
その一室にいた少女が、力強く机を拳で叩く。
「っ、次元大介……そんな手で来るとは、想定外でした……完全にカイザーとこちら側については気がついているようです。これでは計画も少し練り直さないと……」
彼女の輪郭から毒々しい緑色の神秘が溢れ出し、部屋を満たしていく。
そのことに気がついた彼女は深呼吸を繰り返し、それを収める。
「……そうだね、部屋にいた私達のことも気がついていたみたいだし」
次元大介と接触してしまった桃色の狐の少女、ニコが、物陰から現れる。
「そもそも副小隊長がバラしちゃったのが原因でしょ?」
「あのまま接触続けてたら捕まってたか、もっと情報引き出されちゃいそうだったんだから、仕方ないでしょう?」
また別の物陰からグレージュの狐の少女が現れ、ニコを少し責め始める。
それを窘めるようにまた別の物陰から声が聞こえた。
「オトギ、そんなに責めても過ぎたことでしょ?それよりここからどうするの?ユキノ」
グレージュの少女……オトギを窘めながら現れた薄黄色の狐の少女は、隊長へと呼びかける。
隙間から吹いてきた夜風と共に舞った次元大介から渡された書類。
天井の光によって映し出された影から、声が聴こえた。
「作戦は継続でいいだろう。勝機もある」
「ほう、FOX小隊 隊長。七度ユキノさん。その心は?」
「奴は私に気がついていなかった。万能に見えるが……私のような武器程の洗練さはない」
舞い落ちる紙を掴むように影から黒が伸び、それは手を形成して、人へと姿を変える。
その姿を見て、カヤは薄く目を開き、彼女を見つめる。
「流石ですね。では、カイザーに連絡を一度入れながら……『クーデター』作戦は継続ということで」
「あぁ、そこに気を使ってるくらいなら、仲間を増やす事に時間を使うべきだろう」
「仲間です……か。例えば、あなた達の後輩を引き込むとかですか?」
あざとらしく首を傾げながら、カヤはユキノへと問いかける。
「破れても小袖と言うべきですかね。熟練度はまだまだですが、SRTに入れただけはあります」
「あの程度、まだSRTを名乗るには未熟だがな」
「ユキノちゃんったら厳しいねぇ」
ニコがそう穏やかな声で話すが、ユキノは鼻を鳴らしてそれを一蹴し、言葉を続ける。
「あの程度の警備なら、神秘を使わずとも私だけでも一分以内に任務をこなせた。ニコが甘いだけだ」
「まぁまぁ、まだ1年生じゃないですか。皆さんのようなベテランに比べるのは酷なものですよ」
「……それもそうか。彼女たちを私達の計画に参加させること自体は賛成だ」
その返事を聞いたカヤが、口を開こうとした時、部屋にノックの音が響く。
それを察知したFOX小隊たちは、物陰へと隠れ、気配を消す。
「……どうぞ」
「失礼」
そう言って入ってきたのは、ベージュのトレンチコートを着た大男だった。
彼はドアを開け、部屋の中に入ると綺麗な敬礼をしながら口を開く。
「深夜にも関わらず、面会の許可を頂きありがとうございます。私、ICPOの銭形と申します」
「報告は昼間受けてましたが、立て込んでいまして。この時間になってしまい申し訳ないですね」
「いえ、ところでどなたかと話されていたようでしたが……?」
銭形が辺りを見回しながら、そう話す。
完全に気配を消したはず、それにも関わらず、FOX小隊の気配を僅かに感じとったのか。
首を傾げた彼へとカヤは言葉を続ける。
「気のせいではないでしょうか……? ところでどのようなご要件で?」
「失礼しました。訳あって、しばらくこの街で滞在を許していただきたいのですが、その中で……ヴァルキューレ警察学校との連携を取りたく、カンナ公安局長によれば、貴女に話を通すのが1番だと言われ、参った所存であります」
カンナからの報告を思い返す。
次元大介とは顔見知りかつ、相当な熱血漢。
強さ自体も申し分ない、下手すれば先生以上の傑物。
後の作戦のことを考えれば、ここは恩を売った方が得に働くだろうとカヤは考え、その口を開く。
「では、ヴァルキューレ警察学校の教官という立ち位置で如何でしょうか。 何分勝手の利かない子達ですので、是非教育していただきたいのですが」
「…………私で宜しければ──「ところで」」
「貴方は一体何の用で、ここに滞在を? 一応私も行政委員会の1人ですし、滞在書類を作る上で聞いときたいのですが」
万が一敵にでもなれば厄介だ。
カンナの事は大して信頼してないが、報告が本物であれば、次元大介よりも厄介になる。
であれば、その目的をさっさと果たして貰うか、それの邪魔をしないように動かないといけない。
カヤの言葉を聞いた銭形は、真剣な顔つきでこう言葉を放った。
「『ルパン現れるところに銭形あり』。
そして『銭形現れるところにルパンあり』。
長年の勘が私にこう囁くのです。
この街にアイツが……
奇跡を追う物語は幕を閉じた
ここから先に広がるのは、血と涙と、そして絶望の物語
圧倒的にして理想的にして完全完璧な『死』を前にどう足掻く『主人公』よ
次章 Vol.Finalー1 愛しの世界の記憶
これにて、兎と悪党終了でございます
今回は兎メインで行きたかったので狐たちに関しては……また次の章をお待ちいただければ……。
思っていたよりも皆さん銭形の登場で驚いていただいたようで、仕込んでいた自分としては嬉しい限りですなぁ、恐らく私の知る限りでは唯一の大人のカードによる召喚だと思うので
さて、いよいよVol.Finalです。
まさか、一年でここまでたどり着くことになるとは思わなかったですし、ここまで書き続けれるとは思わなかったのですな
これも普段から皆様のご声援あってのこと、どうぞ最後までこの物語を共に見届けれればと思います。
では、最後に、評価・感想・ここすきお待ちしております
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持