準備が良いと言えば良いのか、それとも不幸中の幸いというやつか。
予めマップを共有していたお陰で、その場の離脱はスムーズに行えた。
気絶させてしまったやつには人相が割れている、仕方ないがこのまま連れていくのが吉だろう。
「そこの角曲がった先の部屋に取り合えず入るぞ!」
客室のある階層まで一気に駆け上がった俺たちは、撒くために複数回左右に曲がり、距離を離して、鍵のかかった客室に入り込む。
鍵に関しては、ルパンほどの速さはねぇが俺にもできるからな。
サッと開けて、中に滑り込んでから鍵を閉める。
「中に客はいないみたいだな」
「荷物もありませんし……一先ずは安全……でしょうか」
「悪ぃ、アタシがドジしちまった」
部屋について早々ネルが俺たちに対して頭を下げる。
あのネルがだ。
思わず俺は笑い出し、ネルの頭を撫で始める。
「なっ!? おい撫でんな! なんだよその顔は!!」
「がっはっはっはっはっ!らしくねぇんだよ、ネル」
「はっ!?あたしだってミスして凹むことくらいあるっての!」
「なら尚のことだろ、テメェの得手不得手ってのはあるだろ。ミスしたことは仕方ねぇさ。こっから挽回するぞ」
しおらしいネルがあんまりにも似合わねぇもんだからつい撫ですぎたが、状況は何も進展しちゃいないってところか。
ミレニアムの財政を食いつぶしてまで何をしてるのかを突き止めなくちゃいけないからな。
「それにしても話は先生から聞いてたけど、本当にバニースーツなんだな」
そう考えていると、カリンが連れてきた警備の生徒の事を見ながらつぶやく。
今時これが制服な奴らも珍しい。
いや……メイド服も大概だが……。
「顔を見られた以上はここで大人しくしててもらうしかないが……問題はバニースーツの調達だな」
「そうですね……一先ずはその子の手足を縛らせてもらって、口も塞いでおきましょうか」
テキパキとアカネが警備の生徒を拘束していく。
随分と手慣れてるように見える、エージェントの仕事なら拘束ぐらいならするもんか。
「先生、どうかされましたか?」
「手際が良いなと思っただけだ」
じろじろ見すぎてたのか、アカネが首を傾げながら俺に聞いてくる。
それに俺が返すと、カリンが不思議そうに話し出す。
「これくらいならいつものことだ。怪我もさせてないし、優しいくらいだな」
「ふふっ、確かにそうですね。先生がいなかったら、リーダーがこの状態で海に投げ捨てたかもしれません」
「るっせぇぞアカネ!」
そこまでしたら流石に殺してるんじゃねぇかと思わなくはないが、この世界の生徒達の頑丈さを考えれば、それくらいじゃ死なねぇかと思う。
拘束した生徒をクローゼットに仕舞いこんでから、部屋を軽く見て回る。
特に目立った私物はない、つまりここを使ってるやつは居ねぇってことだ。
「俺は一般客で通せるが、お前さんらはそうもいかねぇだろ」
「さっきみたいに絡まれたら面倒だしな」
「となると、バニースーツを拝借する必要がありますね」
運よくここで見つけられると思ったがそうもいかないな。
運任せってのはどうにも俺らしくねぇが、盗みに行くしかないな。
「まずは従業員室を見つけねぇとか……そういや、アスナどこに行った?」
状況を整理しながら、ふとC&Cの奴らを見ると一人欠けていることに気が付く。
まさか逃げてる最中にはぐれたのか?
捕まってねぇだろうな?
仮に捕まった場合、冷酷で冷血な算術使いのユウカの胃がもれなく壊れちまうだろうからな……。
そうじゃなきゃいいんだが、と考えていると他のC&Cが察したかのような呆れ顔で視線を逸らす。
「あ~、まぁアスナはそういうやつだからな、初めて会った時もそうだったろ」
「……そういえばほぼ事故みてぇな出会いだったな」
ネルの言う初めて会ったってのは、ミソ作戦でのことだろう。
あの時も俺たちの建てた作戦を超えて、単独行動していたアスナが道を塞いで時間を稼がれちまったからな。
あれが珍しい行動ってことじゃなくいつも通りな訳か。
「アスナの勘と運の良さを考えれば、その方がいいか」
「そういうこと、言ったところで大人しく聞く奴でもねぇしな」
「アイツの手綱を握るのは苦労しそうだ」
ゴールデンレトリバーのような人懐っこさを感じさせられるが……ありゃ獰猛な獣の類だ。
そう言う事なら、アスナがドジして捕まるようなことはしないだろうが……。
アスナは置いておくとして、作戦をどうしたものかと考えていると、部屋がノックされる。
まさかこの部屋に泊まりに来た客か?と警戒が俺たちの間に走る。
扉の鍵は閉めてあるから、軽い時間はかかるはずだ。
だから、壁に駆け寄り、扉が開く瞬間を待つ。
ユウカには悪いが……開いた瞬間に発砲して気絶してもらうしかない。
一発くらいなら大丈夫だろう、念のため.357マグナム弾から威力と音がまだマシな38スペシャル弾に移し替える。
いくらキヴォトスの連中と言えど、顎に当たれば昏倒は免れないだろう。
……弾をこう使うのには慣れねぇな。
鍵を開けるにしては随分と時間が掛かっているが……ガチャリと鍵が開く音が聞こえ、ゆっくり扉が開かれていく。
運がなかったなと呟きながら、通路から飛び出し、照準を素早く扉から出てきた人物に向ける。
完全に完璧な不意打ちをしたはずだった。
しかし、結果的に喰らったのは俺の方だ。
何故って?
「やっぱりここだった!!!」
「いっ!?」
バニー姿のアスナが俺の顏に飛び込んできたからだ。
不意を喰らった俺は、アスナの飛びつきに耐えられず、背中を床に削られながら倒れ込む。
柔らかいタイルカーペットのお陰で背中もスーツも傷一つないが……
「アスナ先輩!?」
「ここにいる気がしたんだよね~! 今日のアスナ、絶好調!」
「あの……アスナ先輩……?」
楽しそうにアスナは話し続けているが、それよりもさっさとテメェの置かれている状況に目を向けてほしい。
真実はテメェの下にあるんだからよ。
「…………」
「あれ?ご主人様どこにいるの?」
「アスナ、お前が潰してんだよ。退いてやれ」
ルパンの野郎なら大喜びするだろうが、俺にそういう趣味はねぇ。
ネルが、アスナの手を引っ張ったようでようやくこいつの下から解放される。
「はぁ……アスナ、何処に行ってたんだ?」
「ごめんなさいご主人様!えっとね、何となく歩いてたら、いっぱいバニースーツが置かれてる部屋に着いてね? 可愛かったから借りてきちゃった! みんなの分も借りてきたんだけど着る?」
服についた埃をはたきながら、アスナに何があったのかを聞いたが、なるほどな。
こういう結果をもたらすなら、確かに自由行動させた方がいい結論に落ち着くな。
俺の視線に気が付いたのか、アスナはくるりと長い髪を傍目かせながらその場で一回転して、俺を見ながら口を開く。
「どうどう? ご主人様! バニーのアスナだよ!」
「あぁ、そうだな」
「むー! 素っ気ないなぁ~、可愛いでしょ?」
俺に何を求めてるんだかな。
その後ろで、アカネがアスナの持ってきたバニースーツをいくつか確認している。
そこにカリンが話しかけに行った、俺は不機嫌そうなアスナに絡まれてるせいで会話を聞くので精一杯だがな。
「ふむ……これとこれ、あとこれですかね」
「アカネ、何をしてるんだ?」
「私達の服を見繕ってるんです……貴方はこれですね、ネル先輩はこちらを。サイズは大丈夫かと思います。いつも見てましたし」
「お、サンキュー!アカネ」
ネルはアカネから渡されたバニースーツを持って、備え付けのバスルームに駆けていった。
その様子を見ながら、カリンが不思議そうに首を傾げる。
「なぁアカネ、『いつも見てました』ってどういう……」
「ふふっ、まぁそこは良いじゃないですか──「アカネ、こいつどう着るんだ!」はいはい、ちょっと待っててくださいね」
「うーん、なぁ、いつも見ているってもしかして──「気にしない。分かりましたね?」わ、分かった」
アカネはカリンに念入りに圧をかけてから、自分の着替えと一緒にバスルームに入っていった。
着替えてる間、どうしても暇になるからな。
予め調べておいた内部地図をベッドに腰掛けながら、それを見ていると背中に重い何かがのしかかる。
こういうことをするのは、ここにおいては概ね一人だけだ。
「アスナ、何の用だ」
「んー、ご主人様が何見てるのかなって」
「そうか」
俺の返事に不満なのか、俺の身体を揺さぶって来る。
ただでさえ、距離が近いってのによ……。
初対面での戦闘でも思ったが、苦手なタイプだこいつは。
「なぁ、ホントにこれで動かなくちゃいけねぇのか?」
「任務の為ですから仕方ないですよ」
「そこまで変な恰好かな……?」
アスナに揺らされながらしばらく待っていると他の三人がそれぞれバニースーツに着替えた状態で出てくる。
後ろのアスナもそうだが、似合ってるとは思うが……わざわざ口に出すこともないだろう。
「やっぱり似合ってる~!リーダー可愛い~!ねぇねぇ、スカジャンは脱がないの?」
「あぁ?分かってんだろ、こいつは譲れねぇんだよ……あ、おい耳は触んな!」
「えぇ~、別に減らないからいいじゃん~!」
赤いバニースーツとスカジャンを羽織ったネルに抱き付くアスナを横目に、いつものように茶色のマフラーを纏って、白いバニースーツに着替えたアカネにこの後の動きをどうするか聞くために近寄る。
まぁそれが本音ではあるが、ようやくアスナが離れたからな、しばらくネルに押し付けておきたいのもあった。
「拠点は出来たが、この後はどうする。システムルームの掌握か?」
「そうですね……そのように動くのが良いかと、アスナ先輩はこのまま遊撃隊になってもらうとしましょう」
「掌握か、ハッキング出来る奴がいるのか?」
C&Cのメンバーの中でそういうのに長けてそうなのは、目の前にいるアカネくらいなもんだが……。
俺の言葉を聞いて首を傾げた時点で嫌な予感しかしない。
「……なぁ、いつもどうしてるんだ?」
「そうですね、いつもならC4を使っていますかね」
「……。よし、掌握には俺も行こう。機械相手ならどうにか出来るからな」
俺の言葉を聞いたアカネとカリンが驚いたような意外と言いたげな顔をする。
俺がやるわけではないのは当然だ、アロナ様様だぜ。
しかし予め聞いていてよかった、下手すれば、システムルームを爆破する羽目になるところだったからな。
いや、それはアカネに失礼か。
アイツはユウカの言葉を散々聞いてた側だしな、そんなヘマするはずはないだろう。
本来ならあの捕らえた警備の生徒が白兎のことを知らねぇか聞き出したかったが……それは後に回すとしよう。
「よし、なら任務再開といくか」
「おう、汚名すぐに返上してやるぜ」
やる気満々のネルを先頭に俺たちは、部屋を出てあらかじめ確認しておいたシステムルームへと足早に向かう。
道中は監視カメラを避けつつ、バニースーツを着たC&Cの奴らのお陰で監視カメラのある場所や警備の目も何の問題もなく通過することが出来た。
あくまでも接待されている客を装うために、こいつらと距離感が近くなるのは仕方ないが……。
はぁ、別の意味で疲れるぜ。
システムルームの制圧に関しては、態々語ることはない。
こっちには美甘ネルがいる。
システムルームがそれなりの広さをしてるならともかく、いくらデカいクルーズ船とは言え、船は船だ。
海に浮かべるにはある程度のコンパクトにしなくちゃならねぇからな。
凶悪な笑顔を浮かべたネルが、部屋に忍び込むと数発の打撃音の後、再び扉が開いて、無傷のネルがつまらなそうな顔を出す。
消化不良といった様子だな。
「はぁ……。こういう任務だから仕方ねぇけどよ……。張り合いがなくって逆に疲れちまうぜ」
「その速さがお前さんのウリだろ、助かってるぜ」
「けっ、物は言いようだな」
伸びをしながら、ムスッとした表情のネルを他所に、シッテムの箱とシステムルームの部屋にあるパソコンを繋げる。
「アロナ、頼んだぜ」
『お任せください!アロナちゃんパワー全開です!』
違和感のないループ再生に、俺たちの姿を自動で別の客の姿に変える加工……。
全開とは言ってたが、全力が過ぎるな。
まぁ、念には念を入れとくのが安全に違いはないからな。
「はぁ……くっそあんのチビ兎の奴……アイツのせいでこんな面倒な仕事になってんだからな。捕まえたらボッコボコにして泣かせてやらねぇと気がすまねぇ」
「捕まえる道中でボコボコになるし、帰ればユウカが同じようなことをすると思うぞ?」
アロナがハッキングをしている感、床に胡坐座りしながら愚痴を吐くネルとそれに冷静にツッコミを入れるカリンが目に入る。
随分と距離が近いな?
何度か脱走してるって話だが、その度にC&Cの世話になってるのか?
そう考えていると見張りをしていたアカネが話しかけてくる。
「ふふっ、先生。私たちとコユキの距離感が近いのが気になるのですか?」
「あぁ、顏に出てたか? 問題児とは聞いていたし、その様子からして何度かお前さんらと捕物騒ぎになってるのは察せたが……」
「まぁ、そうだな。確かに仲が良いと言ってもいいかもしれないな。問題児だが……悪かどうかというとそうではない」
俺が呟いた疑問にカリンが答え、それに続くように頭を掻きながらネルが喋り始める。
「アイツとはそれなりの顔馴染みだからな」
「ふふっ、確かにいつの間にか『先輩』なんて呼ぶようになりましたもんね」
「あいついちいち、やれ『ネル先輩が追いかけてくるー!?!?』だとか、『うわぁん!!ネル先輩が頭叩いたー!!』とかうるせぇんだよな。嫌なら問題起こしてんじゃねぇよ」
そう吐き捨てるように言うが、どこか世話の焼ける後輩を思うようなそんな優しさの垣間見える表情をしている。
それはそれとして、ネルに追いかけられるのは怖ぇだろうからな。無理もねぇだろ。
「よし、これでいいだろう。コユキの居場所だが、わざわざ、このゴールデンフリース号に潜入したんだ、金を大量消費してることを踏まえてもカジノに潜入してるのは間違いないだろう」
「あんの甘えん坊のチビスケ。ギャンブルを覚えやがったのか?」
「だろうな、とは言えだ。概ねそれが目的って訳でもねぇだろう。逃亡中なのは分かってるはずだからな」
となれば、ここ独自の仕組みがあるはずだ。
機密事項なのか、調べても出てこなかった以上、現地で探りを入れるしかねぇが……。
その点俺たちはツイてる。
何せ、態々調べなくても情報を引き出せそうな奴がいるからな。
俺たちは客室に戻り、クローゼットに閉じ込めていた警備の生徒を椅子に座らせる。
まだぐったり気絶してるようだな。
ネルのあの一撃……いや二撃か、あれを喰らって死んでないのも中々だが……それなりの時間が合ったのにも関わらず気絶させ続けるくらいの一撃を与えてるのも中々だ。
「こいつに聞くってことか。冷水でもぶっかけるか」
「……まぁ、そうだな。一先ず口のテープを取ってやるか」
気絶している彼女をアカネに抑えてもらいながら、テープを剥がす。
産毛やら薄皮が剥がれたのか、口元を赤くしながらその鋭い痛みが気付けになったのか彼女が目を覚ます。
「いッた!?な、なに?何処ここ!?客室か……?」
「おお、完璧に技を決めたつもりだったけどよ。やるじゃねぇか、見た目よりも根性あるな」
「お、お前は……くそ、一体何のつもりだ!」
おおじゃないと思うが、それよりもネルの声を聴いた彼女は自分の置かれた状況に気がついたらしい。
悪い方に勘違いしてそうだが……誤解を解くほどの時間は無いだろう。
優先は、コユキがここに潜り込んで何をしようとしてるかだ。
「悪いな嬢ちゃん、いいニュースと悪いニュースがあるんだが、どっちから聞きたい」
「は?何の……取り敢えずいいニュースから……」
「俺たちの目的は金じゃねぇ、テメェらのため込んでる資金には何の興味もねぇってことだ。 悪いニュースは、今日一日お前さんはここから出られねぇってことだ」
顔も声も知られちまってるからな、悪いとは思ってるが、一日我慢して貰おう。
「なんだ、客か!?ここには何千人って客がいるんだ。分かるわけがないだろう!!」
椅子をがたがた揺らしながら、そう彼女が叫ぶ。
まぁ、当たってるには当たってるが……目的さえ抑えちまえば、先回りも容易だからな。
それとあまり揺らし続けるとネルが怒髪衝天するから抑えめにしてやってほしいもんだ。
「客なのは正解だが、ターゲットの動向は大方予想がついてる」
「ならなんだ?それ以外に──「プレイラウンジ、あそこで何が手に入る。金だけじゃないだろう」…………」
「俺たちが狙ってる客は、とある学園から脱走した奴でな。何を思ったか、金を大量に消費してるらしいが──「あ、もしかして」もしかして?」
彼女がそう呟くと、ニッコリ笑顔になったネルが指の骨を鳴らしながら、彼女に近づく。
穏便に済ませてやってほしいが……その気配を察知した警備の生徒は青ざめた顔で騒ぎ始める。
「や、やめろ!暴力反対!痛いのは好きじゃないんだ!」
「あぁ、一応俺からもな。そいつもただ巻き込まれただけだ」
「おう、分かってるよ──「ほんとか?」そうそう、別にサッサとゲロる必要はねぇぞ。つまんねぇからなぁ」
分かってねぇだろうと言いたくなるような形相で、彼女に近づいていくネルとアカネを少し制止しつつ、どう話をつけたものかと悩んでいると、俺の服が引っ張られる感覚がする。
引っ張られる方向を見れば、カリンが俺に対して何か案があるようなそんな顔つきをしている。
「カリン、お前さんが尋問するのか?」
「あぁ、痛くない方法を思いついた。笑顔で解決できる」
「カリン、お前がやるだなんて珍しいな。ま、いいぜ譲ってやるよ」
後輩の珍しい発言故か、やる気満々だったネルはその場を譲り、俺たちは何処か自信満々なカリンを見守ることに徹することにした。
言葉こそ少なかったが、彼女の目には随分自信が宿っている。
カリンも、プロ集団の一人だからな……さてと、お手並み拝見とするか。
「な、何だ!何をする気だ!?乗客以外には言えないんだ、外に洩れたなんて笑えない!!だから何をしたって無駄だからな!」
「…………ふっ」
「待て何だその笑みは、止めろ、わかった話──むぐっ!?んひっ!っっっ!!!」
カリンは、椅子に座った彼女の膝の上に座り込んだかと思えばその脇をくすぐり始めた。
溢れ出る笑い声は全てカリンの胸部で塞き止められ、暴れようにも彼女が膝の上に乗っているせいで逃がせる場所が無くなる。
つまり一言で言えば…………。
「えげつねぇ…………」
「なるほど……確かに笑顔で解決できそうですが……」
「何してんだ。ってか、口塞いだらダメだろ……」
それを見ている俺たちは目の前で起きてる拷問を眺めながら、呟く。
時折体を跳ねさせる生徒の反応を見るたびに楽しそうにカリンは、くすぐる手を早める。
尋問ってのを知らねぇのか……?
「んんんんっ!!ぷはっ、あひゃひゃひゃっ、もう!もうやめっ!──「うるさいぞ」んむっ!むーー!!んんんっ!!!」
息継ぎの為に上に向いて呼吸をしようとした彼女の頭を掴み、再度胸の中に収めて再びくすぐり始める。
この調子じゃ失神する可能性が出てきたな、そうなれば拷問……いや、尋問の意味が無くなっちまう。
カリンの様子がおかしいことに気が付いたネルと俺がカリンの肩を掴む。
「おい、カリン止まれ。お前何で尋問なのに口塞いでんだ」
「悪くない手だけどな、目的変わってるだろ。ここまで来ちまうとよ」
「はっ……ごめんなさい、ネル先輩、先生」
カリンをそのまま椅子から話すと、肩で息をするほど死に体な警備の生徒が大きく息を吸い込み始める。
「ここからは俺がやろう」
「そうか、よしカリンこっちに来い」
「うっ……わかった」
俺が変わるという言葉を聞いたネルは、そのままカリンに別室に来るように言い渡す。
目的を忘れちまった後輩に対しての指導ってとこか。
全員のいる場所で叱らない辺り、ネルもちゃんとしたリーダーらしいところがあるって訳だ。
アイツのこういう戦力としての側面以外を見れるのは嬉しい話だ。
「さて、話してくれるな?」
「ひーっ!ひーっ!はぁ、はぁ……た、助かった、ありがとう、ありがとうございます……話す話させてください」
相当堪えたらしい。
それもそうか、息も視界も塞がれて、くすぐられ続けたからな。
「その客が狙ってるのは、ここのSランクだと思う……」
「Sランク?」
「ここの全てのサービスは、プレイラウンジにあるカジノで手に入る引換券で決まるんだ……ランクはD~A、そしてその上にSがある」
彼女が言うには、基本的にはAでどのサービスも最上級のものを選べるそうで、例えばボディーガードを雇ったり、口にするもの全てを高級食材のみにすることだって出来るのだとか。
そういう高級志向はどうだっていいが……。
問題はそこじゃない。
「じゃあ、そのSランクってのはなんだ?」
「……この船における超特権階級。超法規的な措置も可能にする。そんな代物だ……。
つまり、その客が狙っているのがSランクだとするなら……。
つまりはVIPを手にして、自分の学籍を変更すること……じゃないか?」
グレーな場所だとは思っていたが……
やれやれとんでもねぇものを狙ってやがるな
ただ、これで奴の狙いは分かった。あとはその首根っこを捕まえてやるだけさ
次回 白兎返却大作戦!!
デカグラマトン編読み終わりましたが……いやぁ書きたいものが増えますな。
あと、モモイのあのシーン、もうね、解釈一致なんです。
鍵と王女とガンマンと2-4の解釈が合ってて嬉しいんですねホント……
ここすき、感想、評価、励みになりますのでよろしくお願いします!
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持