新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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Road to Final-2 燃えよ忍術研究部
前編 忍者と天狗とアウトロー


「主殿~!!! 少々お時間頂戴致します!」

 

「拒否権はねぇのか」

 

 

 ある日のシャーレ。

 ここ最近曇り空続きのD.U.地区にしては、珍しく久しぶりの青空の見える日で、俺とアルは二人そろって事務作業を行っていた。

 

 主に風紀委員会と連携した治安維持の仕事ばかりを行っていたが……そろそろ決算を行わねぇと後々面倒ごとになるからな。

 だから、渋々机に向かって電卓片手に仕事をしてたわけだが……。

 

 扉が勢いよく開かれたかと思えば、イズナが俺に駆け寄って来る。

 アルが既に机に突っ伏してるからな、そろそろ休憩を入れようと思っていたが……。

 物によるが、休憩とはならなさそうだ。

 尤も、このつまらない電卓仕事に比べれば何が来たところでマシだが。

 

 

「それでどうした、イズナ」

 

「以前お話したことを覚えていますでしょうか?」

 

「以前……あれか、お前さんと同じ忍者を目指してる奴がいるって話か?」

 

「はい! それで是非会って頂きたいのですが……」

 

 

 何時だったかは忘れちまったが、前にイズナからそんな話を聞いていたのを思い出す。

 俺たちに会うまでは、一人でずっと夢の為に走り続けてきた彼女が同じ道を歩く奴を見つけられたんだ。

 中々そうある幸運でもねぇ。

 俺はイズナにとっての主君だ、それなら俺の懐刀が世話になってる奴と会うのは自然な成り行きだ。

 そう思い、首を縦に振ろうとすると、机に突っ伏していたアルが顔を上げて、こちらに話しかけてくる。

 

 

「あら、先生私それ初耳よ?」

 

「そうだったか? 悪かったな」

 

「全くよ。イズナは我が便利屋68の優秀なビジネスパートナーであり……」

 

「アル殿……」

 

「……大切な友達なんだから、しっかりと挨拶の準備だってしたいじゃない」

 

「アル殿ぉ……!!」

 

 

 アルの言葉に一喜一憂しているイズナの表情が少しうるさいが……。

 イズナと便利屋もそれなりの付き合いだ。

 アルにとっちゃ、もう大切な仲間の一人なんだろうな。

 

 

「会う事は俺も大歓迎だ」

 

「なんと! それはよかったです! それでなのですが……」

 

「ん?」

 

 

 イズナが俺の耳元で囁こうと近づいてくる。

 別にこの部屋には俺とアル以外は居ないんだがな?

 イズナが俺の耳元で囁いた言葉に耳を傾ける。

 

 

「ねぇ、ちょっと何で私も会話に混ぜないのよ」

 

「なるほどな……──「何がなるほどな、よ。無視は酷くないかしら?」よし、それなら俺よりもアルの方が適任だろ」

 

「ちょっとー? 聞こえてるかしらー? ねぇ、先生?イズナ? え?私?」

 

 

 俺とイズナは、何が何だかって様子のアルを見て、ニッコリと笑うのだった。

 

 

 ──────

 

 ────────────

 

 ───────────────────

 

 

「全く急に何なのかしら……先生最近私に対して雑だと思うのだけれど……」

 

 

 急にシャーレの警備を頼むだなんて、先生の依頼なら受ける以外ないのだから全く私も弱いわね……。

 シャーレの警備なんて滅多に行われない。

 そもそも、私達が直にいる場所を襲うだなんて、バカなことを考える子は滅多にいないし……もし仮にそんなことをすれば、どうなるのかなんて火を見るよりも明らかだから。

 

 それはさておいて、わざわざ急に私に頼むってことは……大方、イズナの仲間絡みでしょうね?

 

 シャーレの中は、普段から生活に使っているから私の得物のワインレッド・アドマイアーは使えない……だからもう一つの得物を携えて私は歩く。

 

 

「……喉乾いたわね」

 

 

 喉の渇きを感じ、私は休憩室へと向かう。

 先生が勝手に改造してバーカウンターが出来たこの部屋では、当番に来た生徒や私達が私物を持ち込んだり、お菓子やジュースを飲み食いできるようにしてある。

 

 丁度昨日カヨコが、新しい新作のジュースを買っておいたって言ってたから、それを飲もうと冷蔵庫の扉を開いた時……。

 

 部屋の電気が落ちる。

 

 停電……?

 

 珍しいわね、なんて考えていると部屋の中に私以外の気配を感じる。

 

 

「ふっふっふ! 無事に潜入に成功!」

 

「わぁ……本当に潜入できちゃうなんて……あの、噂のシャーレに……!」

 

「忍者の鉄則その壱!『忍者とはいついかなるじょうきょうでも、躊躇わずに挑戦するもの』! だからね! これで、シャーレを我が手中に……!──「何を話してるのかしら?」」

 

 

 闇の中から声が聞こえる。

 銀色の髪をした小柄な少女と、紫色の髪をした大柄な少女の二人組が天井からほとんど音もなく着地を果たしていた。

 尤も、私にとってはそこは大した問題ではなく、銀色の少女が最後に口にした言葉の方が大問題。

 

 

「うぇ!? み、見えてるの!?」

 

「当たり前よ、アウトローは暗闇の方がよく見えるのよ」

 

 

 まぁ、先生からの受け売りなのだけれどね。

 それよりもさっきの発言は、先生だけじゃない。

 私達に対しての宣戦布告と受け取るべきかしら?

 

 

「あわ、あわわ慌てないでツクヨ!こういう時こそ思い出すの! 忍者の鉄則!その弐!」

 

「はっ、はい! 『忍者とはどんな窮地でも、決して諦めないもの』……!」

 

「そう! だから、ごめんなさいだけど、二人で同時に忍法『アンブッシュ・術』だよっ!」

 

「え、あの、それはいいんでしょうか?──「大丈夫大丈夫、GOGO!!」」

 

 忍者ってさっきから言ってるってことは、この子達がイズナの仲間かしら?

 挟み打つように、同時に二人が飛びかかってくる。

 

 イズナには申し訳ないけれど、先に手を出したのはそっちなんだし、別に良いわよね?

 

 先生ほどじゃないけれど……。

 

 

「私だって、リボルバー使いなのよ」

 

 

 角度的にきついけれど……ほんの後ろに跳び退きながら、私は懐から銃を取り出し、銀色の少女から銃口を向けて引き金を引いてから、素早く紫色の少女に銃口を向けてハンマーを掌で押し下ろし、弾を打ち出す。

 

 先生みたいに、一息に四つなんて神業は出来ないけれど……二発なら私にだって。

 

 

「アイエー!?」

 

「あぅっ!?」

 

「フッ……さて、どうして上げましょうかね」

 

 

 銃口から立ち上る硝煙を吹き消して、銃を懐に仕舞う。

 そろって額を抑えながら転げ回っている二人の方へ歩み寄ると、部屋の電気が付き、元気な声が聞こえてくる。

 

 

「ア、アル殿!そこまでです~!!」

 

「流石にアル相手は分が悪かったか?」

 

「あら、先生もいたのね……で、この子達は?」

 

 

 飛びついてきたイズナを抱き留めてから、ゆっくりと顔を覗かせてきた先生に私は溜息をつきながら話しかける。

 この子達の相手をしてあげるのが、本当の目的だったってところかしら?

 

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 ────────────   

 

 ──────

 

 

「痛たた……もーっ、イズナ! 話と違うじゃん!」

 

「で、でも……用心棒さんに対して飛びついていったイズナちゃん、凄くかっこよかったと思うよ」

 

「ツクヨ殿……! ありがとうございます! えへへ……!」

 

 

 アルの銃弾を喰らって額を抑えながら、二人はイズナと楽し気に話していた。

 イズナから耳元で囁かれたのは、有名なシャーレの人相手に潜入任務を行いたいとのことだった。

 折角だからな、お宝役は俺、用心棒をアルにして、腕試しをしてみた訳だが……。

 まさか鉢合わせるとはな。

 

 何の説明も無しに用心棒役をやらせたアルに事情を説明して、詫びを入れていると、向こうも話し終わったようで改まって俺とアルの事を見ている。

 

 

「で、お前さんらの名前を聞かせてもらおうか」

 

「そうだね、では改めて……。ドーモ、お初お目にかかります、先生殿、アル殿……小生、ミチルと申す」

 

「初め、まして……! ツクヨと、言います……」

 

 

 合掌を行いながら、お辞儀をしてきた銀色の少女ミチルと、目を逸らしながら振り絞る様に同じように挨拶をしてきた紫色の少女ツクヨ。

 この二人が、イズナの仲間のようだ。

 

 

「俺は次元大介。 イズナの主君ってのとシャーレの先生を今はしている」

 

「さっきはごめんなさい。 私は陸八魔アル、便利屋68の社長よ」

 

「はい!そして、イズナはイズナです!そしてそして……何を隠そう私たちは!」

 

 

 わざわざする必要があるか?と首を傾げちまったが、元気よく挨拶をしたイズナはミチルの後ろに行くと、何やら話始める。

 

 

「いざ、忍者流ハイパー決めポーズだよっ!二人とも!」

 

「はいっ!部長!」

 

「は、はいっ……!」

 

 

 三人は、素早く印を組むと辺りを走り回りながら、何やら口上を言い始める。

 ……アル、流石に目を輝かせるには早いんじゃねぇか?

 

 

「忍者とは何なのか! そして、忍法とは何なのか!」

 

「忍者の、真髄……!」

 

「その本質を研究し、探求し、そして究明する……忍者の魅力を広めるために暗躍する、キュートな忍者三人組!」

 

「なのです!」

 

「泣く子も笑ってほしい! 百鬼夜行連合学院最強の忍者集団!」

 

 

 ツクヨの肩にミチルが乗り、その前でイズナがビシっとポーズをとると、三人そろって声を上げる。

 

 

「「「その名も、『忍術研究部』!」」」

 

「か、かか……カッコいい!!」

 

 

 背景で爆発が起こりそうなその所謂キメポーズに、アルは感涙しながら感極まっている。

 俺はもう慣れたが……まぁ、なんだ。

 イズナが楽しくやってそうで、俺は柄にもなく嬉しく思っている。

 

 

「そして私が、忍術研究部の部長!千鳥ミチル!」

 

「お前さんがボスか。イズナが世話になってる」

 

「ふっふっふっ……こちらこそだよ!」

 

「それで……ただ会いたかったって訳でもねぇだろ」

 

「なんと、先生殿は読心術の使い手……?」

 

「な訳あるか」

 

 

 ツッコミを入れると、ミチルは腕を組んで企むように笑いながら、片目をつむって俺の事を見てくる。

 

 

「ならばお返しに、私も先生殿の考えていることを当てて進ぜよう!」

 

「ほう……」

 

「先生殿は今、こう考えてるでしょ。『なんてカッコよくて可憐な、美少女忍者たちなんだろう!』……と──「いや待て、そうは思って」 そしてこうも思ってる『この子達を応援したい! その成長中の翼を広げ、広い世界へと羽ばたけるように、大人の力で支えてあげたい!』……と」

 

「おい、無視する──「みなまで言わずとも分かるよ! そうなると思って、これを準備しておいたの!」……なんだこれは?」

 

 

 ミチルが俺に差し出してきたのは、一枚の紙だった。

 紙には百鬼夜行連合学院の証明印が押されている。

 問題はその内容だ。

 

 

「『部活の認可に関する推薦状』……ってことは、お前さんら、部活ってよりかはまだ同好会って感じか」

 

「部長、そうだったのですか! イズナ、今初めて知りました!」

 

「私も、てっきり……先生に挨拶するため、なのかな……って」

 

「も、もちろんそれもあるけど……!」

 

 

 何やら、訳アリのようだな。

 イズナを気にかけてるのは、俺だけじゃないからな。

 さっきから、真面目そうな顔で独り言を呟いているアルにも声をかけるか。

 

 

「アル、話聞いてるか?」

 

「……私達も決めポーズの一つや二つあったって……あら、先生どうしたの?」

 

 

 少なくとも俺はその決めポーズとやらはやらないが、それよりもアルに事情を話してから、ミチルたちの方へ話を振る。

 

 

「それで……先生殿の噂は聞いてるよ。 なんでもすんごいパワーがあるんだって! その力があれば、部活の認可も叶えられる……でしょ!? だからお願い!」

 

「断る」

 

「なっ……!?」

 

「えっ……」

 

「主殿……やはり……」

 

「まぁ……そうよね」

 

 

 アルとイズナは、分かっていたような反応をしたが肝心の二人が絶望したような表情を取る。

 俺を何か万能な便利道具だとでも思っていたのか、それとも聖人だと思っていたのか。

 

 

「や、やっぱり……先生殿も……『忍者を研究する部活なんて、そんなよく分からない活動は認められない』ってこと……!?」

 

「な訳あるか」

 

「ならどうして……!?」

 

「場所が大事なら、正しい筋を通せ。 この紙読んだが、他部活からの推薦状なんだろ?」

 

 

 忍者をどうこう言ってしまえば、それは過去の俺の発言に嘘つくことになるからな。

 当然、泥棒だから嘘つくことはあるが……。

 イズナの心を裏切る真似はするつもりなんざ毛頭ない。

 

 

「うぐっ……そ、それはそうだけど……でも……カホはこんな活動、絶対に認めてくれない!そ、その……えっと……そう!承認が下りるまですごく時間かかるし、かなり厳しいし……」

 

「…………」

 

「ふーん……」

 

 

 ミチルのその様子を俺とアルは、見つめている。

 自信のなさか、それともな。

 こいつもイズナみたいに苦労してきたのだろう。

 

 

「カホさんって……そんなに厳しい方でしたっけ……?」

 

「そ、そうじゃない時もあるけどぉ……と、とにかくお願い、先生殿!」

 

「主殿……イズナからもどうか」

 

「つってもなぁ……」

 

 

 イズナからの頼み事とは言え、流石にどうしたものかと思っていると部屋の扉がノックされる。

 基本的にどいつもこいつもノックせずに開けたり、駆けこんできたりするからな。

 ユウカかリオか、それとも初めましての奴か……?

 

 

「客人が絶えねぇな。どうぞ」

 

「……初めまして、先生。私は陰陽部の副部長、桑上カホと申します。 陰陽部よりシャーレへと依頼したいことがありまして、こちらに参りました」

 

 

 今日は百鬼夜行日和らしい。

 金色の狐耳の少女、さっき名前が出てきたカホってのはこいつのことだろう。

 執務室を空けてたのもあって、わざわざこっちにまで来たらしい。

 なんとも真面目なやつだ。

 

 それにしても、陰陽部か……。

 桜花祭が懐かしいな、あの時は部長が下校していて使い物にならねぇ珍事が起きたが……。

 副部長のこいつも、部長に振り回されてるタイプと見たな。

 

 

「うにゃっ!? は、話をすれば何とやら」

 

「少々お時間を頂ければ……おや?」

 

「こいつは……一波ありそうだな。 カホだったな、話を聞こう」

 

「感謝致します、では……こちらに」

 

 

 そういってカホは俺を手招くと、先程入ってきた扉に札を貼り付け、そして扉を開くと……。

 

 

「どういう仕組みだ?」

 

「なんと!?」

 

 

 その先にあるはずのシャーレの部屋は無く、代わりに厳かな御座乃間が広がっていた。

 こいつの神秘か……?

 

 確かにシャーレから百鬼夜行はそれなりにあるが……。

 

 

「御靴を脱いで頂いて……どうぞおかけになってお待ちください」

 

 

 そういってカホは、その空間に足を踏み入れる。

 松の木が描かれた襖に、部屋の奥には太極図とその下に立派な筆文字で『陰陽部』と書かれている。

 

 空気の匂いも確かにD.U.地区のものではなく、百鬼夜行連合学院のものだ。

 本当にあの距離を繋げちまったのか。

 

 

「落ち着く匂いね……」

 

「あぁ、そうだな」

 

「ゆ、油断しちゃダメだよ先生殿!アル殿!相手はなんたって、あの陰陽部の部長! 実質的に生徒会長みたいなものだし!」

 

「噂で、聞いたことが、あります……陰陽部の部長は、話術だけで魂を抜くことが出来る、と……」

 

 

 部屋に足を踏み入れた俺たちは、その畳の匂いで心を落ち着かせていたが……忍術研究部の二人が俺とアルに忠告を行う。

 確かに、リオといい、ナギサといい、マコトといい……どの学園のトップも一癖二癖ある人間ばかりだ。

 何がどうなって、気を損ねるか分かったものじゃないからな。

 気をつけておくに越したことはないか。

 

 

「ご安心を!主殿とアル殿の安全は、このイズナが死守しますので!」

 

「イズナ? 『このイズナが』じゃなくて、『私達で』でしょう?」

 

「はい! えへへへ……」

 

 

 そもそもお前さんらに守られるほど柔な男じゃないと思ってるんだが……嬉しそうに笑うイズナを見てるとそう言うのも野暮ってもんだと感じさせられる。

 

 

「部長……また何か勘違いされるようなことを……」

 

「あれ……? お客さん……?」

 

「あら、チセちゃん」

 

「……え?」

 

 

 額に手を当てて、やれやれと溜息をついたカホの元に誰かがやって来る。

 水色の髪に、赤い角。

 確か陰陽部の和楽チセだったか。

 以前の桜花祭の時は部長の伝言役だったな。

 

 

「煙霧から 突然出会いて 驚いて ……元気だった?」

 

「久しぶりだな、チセ」

 

「うん、久しぶり~」

 

「ふぉぉ……! ち、チセ様の俳句を生で……!」

 

「うぅ……チセちゃん可愛い……!」

 

 

 アイドルか何なのかは知らねぇが、俺とチセが挨拶を交わしている横で、ミチルとカホがチセに身もだえしている。

 チセ様ってなんだ? こいつのファンクラブでもあるってのか?

 

 

「それで、カホ。そろそろ要件を聞きたいんだが?」

 

「はっ……こほん。失礼いたしました。 二ヤ様、お客様達がお見えになりましたよ」

 

 

 カホが声を掛けると、部屋の奥の襖が開き、そこから片方の角が欠けてはいるが立派な2本の角を生やした黒髪で糸目の少女が入って来る。

 そして、そいつはつかつかと歩きながら、俺の近くまでやって来ると、俺の周りを回りながらジロジロと見てくる。

 

 

「あらあらあら~。 なるほどなるほど……。ふぅん、ほぉ……」

 

「あの、ニヤさんだったかしら? 先生をそんなに見てどうしたのかしら?」

 

「顏はだいぶ好み……むしろストライク。 いやここまでですと、逆にアウト?」

 

「なっ!? 何を言ってるの!?」

 

 

 アルがジロジロ見ているニヤに話しかけると、ポツリと呟いた一言にあからさまに動揺している。

 それにしても開口一番、ハッキリしたが……。

 こいつは苦手なタイプの女だ。

 

 言葉で隠してあるが……俺の事を品定めしているな?

 あぁ、好意的って意味じゃなく、使えるか使えねぇかって意味でだ。

 

 

「ニヤ様、失礼ですよ」

 

「にゃはは、隣の子があまりに面白いのでついつい」

 

「面白い!? か、揶揄ったのね!?」

 

 カホに窘められながら、ニヤは笑って平謝りし、コホンと一息咳をつくと壇上に上がって、手に持った扇を広げる。

 

 

「私の名前は天地ニヤ、陰陽部の部長をしとる」

 

「次元大介だ、こっちは俺と提携している便利屋68の陸八魔アル」

 

「にゃはは、噂はかねがね耳にタコが出来るほど聞いとりますよ。ずっとお会いしたかったんよ、シャーレの先生に便利屋の社長さんも」

 

「桜花祭の時に会ってくれりゃよかったじゃねぇか、成り行きとは言え……チセに伝言なんざしなくてもよ」

 

「こう見えてかな〜り偉い人なんでね。意外と忙しいんよ」

 

「まぁ、そういうもんだな。悪かった。それで?何か仕事を頼みに来たんだろう?」

 

「いやぁ話が早くて助かりますなぁ。 さて、その為には何処から説明したものか……先生たちは私達『陰陽部』について、どこまでご存知です?」

 

 

 ニヤはそういうと、扇を閉じ、それを自身の顎の下へと持っていきながら俺へ問いかける。

 

 

「そもそも、百鬼夜行連合学院は多数の部活やら委員会が名の通り連合を組んでいる学園。その中で、お前さんら陰陽部は所謂纏め役に近い役割を担っている。

 と言っても、似たような成り立ちのトリニティ総合学園とは違って、統括した正式な委員会ってのを作ってないんだったな? あくまでも一歩引いた……それこそ外向けの顔役ってところか」

 

「う~ん……困りましたね、ほぼ百点です。 一応顔役以外にも、占いの放送とか公演をやったり、アイドルみたいなことはしとるんですよ? にゃはは、そこのチセちゃんとか特に大人気だもんね~?」

 

「ね~? ……そうだっけ?」

 

「ニヤ様、そろそろ本題を……」

 

「もう、カホったらヤキモチ妬いちゃって、お堅いんだから~。 もちろんカホにも、隠れファンはいっぱいいるんよ?」

 

「ニヤ様!」

 

 

 さっきのミチルの反応と言い、チセが実質的なアイドル的立ち位置なのは分かっていたが、実際にそうだったとはな。

 外向きの顔役だが、それはそれとして内部面の実績もしっかりあると暗に伝えたかったのだろう。

 

 

「さて、それで本題なのですが……今から一週間後。 私達『百鬼夜行連合学院』と『ゲヘナ学園』との間で、交流会が予定されてるんです」

 

「ゲヘナ……ってことは、マコトか」

 

「えぇ、ゲヘナ学園のトップ『万魔殿』の皆さんに快諾を貰いまして……ゲヘナの皆さんを、『百鬼夜行渦巻映画村』に招待することになったんです」

 

 

 ゲヘナの生徒はどうにも気性が荒い。

 マコトもそれは充分に承知だろうが……良くもまぁ許諾したもんだ。

 アイツのことだから、何か狙いがあるのか、それともイブキの為か……。

 

 

「さらに今回は特別に……我々陰陽部が誇る公演『和楽姫(わらくひめ)』を行う予定でして」

 

「その和楽姫とやらはどうでもいいが、そいつがどう繋がるんだ?」

 

「え、待って先生殿、もしかして和楽姫を御存知でない!?」

 

「なんだ、大事なイベントだったりするのか?」

 

「そりゃそうだよ先生殿! 何て言ったって和楽姫は渦巻映画村の数あるアトラクションの中でも、トップレベルに人気なんだよ! その人気の秘訣は、主人公を演じるチセ様! あの百鬼夜行最高峰のアイドルであるチセ様の愛らしさがここまでかと言うほど堪能できる素晴らしいアトラクション……!」

 

「あのミチルさん、声のトーンを落としてもらって……」

 

 

 その和楽姫とやらの人気がかなりあるのは分かったが、それがどう俺たちの仕事に繋がるのかが見えないな。

 少なくともミチルが相当お熱なのは理解できたが。

 

 そう思っていると、にこやかな笑顔をしたニヤが、ミチルに近づいて笑いかける。

 

 

「んふふふ、見てくれてたんですねぇ♪ え~っと、確か……ルンルンさんでしたっけ?」

 

「ミチルだよ! 誰がルンルンだよ!……はっ!」

 

 

 ノリツッコミをしたのちに、やらかしたと顔にでかでかと分かりやすく表情に出ているミチルを置いといて、俺は仕事の話に戻す。

 

 

「それで、その和楽姫が大事なイベントだってのは分かったが。依頼の本題はなんだ?」

 

「ふふっ、せっかちさんですね、先生は~。 その和楽姫、今回のは特に気合を入れて準備をしているのですが……ゲヘナの方々は凄く自由奔放でしょう? ですので万が一……いえ、億が一の話ではあるのですが……何か予想外の事態が発生して、公演中に何かが起きてしまったら……」

 

「なるほど、そこのチセが危ないのに加えて、外交問題になるな……特にマコトの事だ、アイツはそういう隙を絶対に見逃さねぇだろうし……」

 

「えぇ、それはそれはとても楽しそう……いえ、困ったことになるので、無事に公演を終えるためにも……シャーレの御力を貸して頂きたいなと、如何でしょう?」

 

 

 マコトとニヤの二人に貸しを作っておくのは悪くない。

 それにこの仕事をしている以上は、断るわけにもいかねぇだろう。

 

 あと何よりも、会計の仕事から逃げられるしな。

 

 

「分かった、その依頼受けよう……と言っても、規模が規模だ。俺と便利屋だけじゃ、手が回らねぇ……だから、そこの忍術研究部の力を借りたいんだがいいか?」

 

「忍術研究部……はて?そのような部活が……」

 

「あぁ、まだ正式な部活じゃないらしいんだが……そこの依頼結果次第で、シャーレから推薦状を書いてやろうと思ってな。 正式な手続きじゃないがどうだ?」

 

「ふむ……」

 

 

 事実、ここ最近便利屋達は、ひっきりなしに依頼を受けている。

 最近決算の仕事の為にこいつらの仕事を見ていたが、随分右肩上がりな様子だった。

 この調子じゃ、キヴォトス中に名を轟かすのも時間の問題だ。

 アルもそれを喜ばしく思っていたが、同時に四人そろって休む時間が取れず、寂しそうにしていた。

 そんなわけでだ、一週間後の日で空いているのが、俺とアルくらいなもんだった。

 この仕事の大きさを見れば、全員で掛かりたいところなんだが……。

 他の三人もそれぞれの仕事がある。

 

 なら、外部に協力を求めるのは自然の成り行きだ。

 

 ニヤがどうしたものかと悩んでいる様子を見せると、何やら分厚い冊子を持ってきたカホが話始める。

 

 

「現時点で、忍術研究部からの申請書は出されていません。 その申請に必要な書類は、『部としての実績証明書』が1部。そして『活動に関する他部活からの保証書』が3部……。 忍術研究部の皆さんの場合、前者に関しては普段から運営している『少女忍法帖ミチルっち』チャンネルや、先日の『コミセン』で提出されていた忍術の同人誌などで問題ないはずですが……」

 

「なんだ、お前さんら活動はしっかりしてるじゃねぇか」

 

「ど、どうしてカホがそんな事知ってるのさ!?」

 

「これでも副部長なので。話は戻りますが、しかし他の部活からの保証書は一つも提出されていません。 それさえあれば、申請は可能ですが……?」

 

「いや、えっとそれは……──「今回のイベントでこいつらが活躍すれば、忍者って奴の姿も見せれるだろう。代わりとしては充分だと思うが、ニヤどうだ?」」

 

 

 部長であるミチルの性根に関するものは察しつつある。

 どうでもいいと断ち斬ってやってもいいが……こいつはイズナを預かる立場にある。

 だから、嫌でも俺はこいつの背中を押さなくちゃならねぇ。

 それに、そもそもそれを分かった上での俺からの報酬条件だからな。

 ニヤも、ミチルと俺の顔を見てから頷き、口を開く。

 

 

「ふむふむ……なるほど♪ では、その条件呑むとしましょうか」

 

「ニヤ様、またそうやって……!」

 

「えっ、ホントにいいの!」

 

「えぇえぇ、もちろん。公演が無事成功して、交流会が恙なく終わるなら……安い物でしょう?」

 

「交渉成立だな」

 

「にゃははっ、ではシャーレ並びに便利屋、そして忍術研究部の皆さん。今度の公演はよろしくお願いしますね~♪」

 

 

 そうして、俺たちは依頼を受けることになった。

 嬉しそうなイズナとツクヨ、そして深く考え込むミチルの姿がやけに記憶に残った。

 

 それから一週間後。

 ゲヘナと百鬼夜行の交流会当日。

 

 

「意外とあるわよね、シャーレから百鬼夜行って」

 

「結構東の方にあるからな。カホが持っていたあの札幾つか盗んでおくべきだったな」

 

「ふふっ、陰陽部の部室にコッソリ侵入するのもスリルがありそうね」

 

 

 交流会の主な場所となる渦巻映画村へと足を運んでいた俺とアルは、その移動時間の長さで少し疲れながら、下らない会話に花を咲かせていると、遠くの方から声が聞こえてくる。

 

 

「あっ、部長! 主殿とアル殿を発見しました! 主殿ーー!!」

 

 

 だんだん近づいてくるその声を認識すると同時に何かが俺の胸の中に飛び込んでくる。

 それを抱き留めて、飛んできたものを確認すると、イズナが俺に飛びついてきたことをようやく認識する。

 遅れて他の二人も、やって来る。

 相変わらずのスピードだ。

 

 

「先生殿~!アル殿~! こっちこっちー!」

 

「おはよう、ござい、ます……」

 

「元気なようで何よりだわ!」

 

「おう、おはよう。準備は大丈夫だな?」

 

 

 三者三様の笑顔を見せながら、俺の言葉に頷く。

 仕事は基本的に事前準備が欠かせないからな。

 ある程度の調べも済んだ……あとは何事もなく仕事を熟すだけだ。

 

 

「もっちろんだよ!」

 

「イズナも全力で準備しました! 具体的には心の鍛錬のようなものを!」

 

「私も、今朝、胃腸薬を、飲んできましたので……」

 

「もーっ、ツクヨったら、そんなに緊張しなくても大丈夫!」

 

「そうよ! 貴女達の活躍にも期待してるけども、私と先生がついてるんだから」

 

 

 ミチルのテンションが若干高いように思えるが……まぁ、仕事次第では部活を正式なものにできるのだから、仕方ないものか。

 俺としては仕事が上手く行けばそれでいい。

 

 

「よぅし!それじゃあ早速現場にレッツゴー! 目指せ、公演の成功!」

 

「「はいっ!」」

 

「公演が終わったら、来れなかった三人にお土産でも買って帰りましょう?」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

 キツネせんべいか、サクラ大福でも買って帰るかと思いながら、俺たちは集合場所であるスタッフルームへと向かった。

 流石三大学園の一つであるゲヘナとの交流なだけあって、朝早い時間ながらもスタッフたちが忙しく働いている。

 

 

「公演スタッフの方々は、こちらにお集まりください!」

 

「あそこか、行くぞ」

 

「いやー、それにしても何させられるんだろうね?」

 

 

 公演スタッフもそれなりにいるようで、紙が回されていく。

 紙にはそれぞれのスタッフの名前と、役割分担された配置場所が書かれている。

 

 

「皆さんそれぞれのスタッフの指示に従って作業をお願いします!」

 

「ありゃ、バラけちゃうみたいだね……まぁ仕方ないか」

 

「ニンニン!皆様、それぞれご武運をお祈りします!」

 

「さて、それじゃあ依頼開始ね!」

 

「うん、頑張り、ます……!」

 

 

 俺は、ステージの設営の仕事を振られ、それぞれが仕事の場所に向かっていった。

 こういう力仕事は久しぶりだが……スタッフの指示も随分と的確なお陰であっという間に終わった。

 大体一時間と少しが経とうとしたところで、作業の終わった奴らが集まり始めた時、何やら外から騒ぎの声が聞こえる。

 

 既にゲヘナの奴らは到着したのか、それともただの喧嘩騒ぎか。

 どちらにせよ……行かねぇとか。

 

 そう思い、喧噪が聞こえる方へと行くと、紫色の少女の周りに何やら人混みが出来ている。

 

 

「あの、どいていただけ、ないでしょうか……」

 

「んー? まぁまぁ、もうちょっとそこにいてよ」

 

「そうだよ、あんたがそこにいてくれないと目印が無いじゃん」

 

「でっかいやつがいるからって伝えて約束してるんだからさ」

 

「私は目印じゃないですよぉ……それ私、公演の準備が……」

 

 

 ツクヨがどうやらガラの悪い生徒に絡まれて、立ち行かなくなっているのが、事の原因らしい。

 確かにツクヨは、キヴォトスの中でも中々デカいからな。

 目立つのは分かるが……助け船を出してやるか。

 

 

「ツクヨ、そろそろ集まってるぞ、何してるんだ?」

 

「あ?んだ、誰だお前?」

 

「何だ、私達の邪魔をする気か?」

 

 

 短気というべきか、標的をツクヨから俺に切り替えたようで、チンピラ共は俺とツクヨの間に立ち塞がるように近づいてくる。

 

 

「おいおい、そう短気になるな? 俺はそこの嬢ちゃんに用が合ってテメェらには何の用もないんだよ」

 

「うるせぇな、こうして楽しく遊べそうな日に、邪魔させられちゃあ困るんだよ!」

 

「そうだそうだ、アイツが居なきゃ、目印が居なくなっちまうじゃねぇかよ。痛い目見ないと分からねぇってのか? じゃぁ行くぞおらぁ!!」

 

 

 どうして、こう喧嘩っ早い奴が多いんだか……。

 こういうのは銃を使うまでもない。

 

 殴り掛かってきたポニーテールのチンピラの腕を掴み、地面へと投げ倒し、俺の背中へと殴り掛かってきたおかっぱのチンピラの腹へ、そのまま後ろ蹴りを浴びせる。

 ほぼ一連の動作だが……蹴られた方は蹲って、肩で息をして必死に酸素を取り込み、投げられた方も地面に打ち付けられたせいで、息が出来ずにうめき声を上げている。

 

 柔道なんざしたことがないが……とっつぁんの技は散々見て来てるからな。

 

 

「くっそ、おっさんなにも……ってよく見たらシャーレの先生じゃねぇか!!」

 

「それってあの、『死にたくないのなら近寄るな』って言われてるあの!?」

 

「おい、俺を人殺しかなんかだと思っちゃいないか?」

 

「やばい、本気で触れちゃいけねぇ奴だ!逃げろ!」

 

 

 何処でそんな噂が立ったのかは知らないが……ともあれ、二人共肩を支え合いながら颯爽と逃げていった。

 一先ずはこれで一件落着か。

 

 

「よし、ツクヨ。さっさと帰──「せ、先生ーー!!!」ぬぐぁっ!?」

 

 

 紫色の衝突を喰らい、俺はのけぞりかけたが……何とか踏みとどまる。

 ツクヨが俺に対して抱き付いてきたのに気が付いたが……正直それどころじゃねぇ……。

 今朝のイズナの衝突といい……腰に来るものがある。

 主に痛みの方だが。

 

 

「おい、ツクヨ……離れろ」

 

「あ……あわわわ、すみません……あ、あとありがとうございます……」

 

「気にするな、これも仕事だ」

 

 

 俺から離れたツクヨは申し訳なさそうな顔で、項垂れている。

 随分と体はデケェが、その心臓はノミのサイズらしいな。

 

 帰りながら、ツクヨが、大きく溜息をつくと口を開く。

 

「私、こうして身体ばっかり大きいせいで……よく、目を付けられる、と言いますか……」

 

「ガキがしっかり成長してるのは良い事だ。その体に見合った心を身に着けるのは……お前さんら忍者らしく言うな今後の修行次第だな」

 

「はい……!」

 

 

 しばらくそうして話していると、ツクヨが時折前に出たと思えば、俺の顔を見つめて、また隣を歩いて……世話しねぇ奴だと思う反面、そこまで何度もやられちまうと気になってしまうのがサガだ。

 

 

「おい、あんま顔をジロジロと見るな……慣れねぇんだよ、そういうの」

 

「ご、ごめんなさい……!」

 

「それで、何かついてたか?」

 

「い、いえ……その……何と言いますか……イズナちゃんの『主殿』がどんな方なのか、ずっと気になってて……」

 

 

 なるほどな……どうやらアイツ、部活内でも俺たちの事を話していたらしい。

 アイツの忠誠心ってのは相当だからな。

 

 俺は無言を返事として返すと、ツクヨはそのまま語り始める。

 

 

「イズナちゃん、忍術研究部に入って以来、ずっと事あるごとに言ってるんです。 『主殿の為に、キヴォトス一の忍者になります!』って。 あ、その度に部長が、『一応聞くけど、変な人に騙されてたりしてない?』とも……そういってもイズナちゃんは『主殿はそんなことしません! 確かに悪い人ですけど……イズナにとっては大事で大切な恩人なんです!』って」

 

「……むず痒いな」

 

 

 悪い人って分かっているのは、良かったが……。それはそれとして、他人からの評価をこうして聞くのはどうにもむず痒さを感じる。

 俺はどう思われてようと構わねぇが……それでもこうして嬉しさを感じてしまうのは、先生って仕事をしてるせいなのかもしれねぇな。

 

 

「それで……その……イズナちゃんがそれをいう時、いつも笑顔で……。だから、私も会ってみたいなって、思って、たので……」

 

「実際に会ってみてどうだ?」

 

「アルさんも……イズナちゃんが言うほど悪い人じゃなかったですし……。確かに銃を向けられたときは怖かったですが……でも、誰よりも先生の事を考えているのが伝わってきましたし……。 先生も、私たちの事を笑わないでくれたので……陰陽部の所に行った時も、私たちの為に、交渉してくれて……。 びっくりしました……こういう人もいるんだな、って」

 

「陰陽部のそれは、ただの事の成り行きだ。気にするなよ」

 

 目を合わせちゃくれねぇが、それでも嬉しそうな顔でツクヨは俺に笑顔を向けてくれた。

 ただの事の成り行きで、こう喜ばれちゃ世話ねぇが……。

 それでも、こいつが純粋に他の二人の事を思っているのは伝わった。

 そうじゃなくあ、イズナの発言に対して心配なんざしねぇしな。

 

 

「イズナにお前さんみたいな友達が出来て良かったよ」

 

「は、はいっ……そのイズナちゃんを見ると、私もここに居ていいのかなって、凄く、心配でしたが……。 イズナちゃんのことも、好きですし、部長も、尊敬してます。

 先生は、部長の事をまだよく思ってないかもしれませんが……。 こんな図体だけの私に、居場所をくれた人なんです……。だ、だから、その、とにかく、頑張りたいんです!」

 

「…………お前さんなら上手くいくさ」

 

「ホント……ですか、ね?」

 

 

 確かに俺はまだミチルのことを認めちゃいねぇ。

 それでも、確かにアイツは目の前の少女を救ったんだ。

 それは褒められることだし……こいつが他の二人の為に頑張りたいという気持ちは確かに本物だろう。

 

 それに、こうやって小心ながら、尊敬する誰かの為に頑張ろうとするその姿……。

 うちにも一人いるからな。

 

 そろそろスタッフルームが見えてきた。

 

 

「まだまだ、始まったばかりだ。気抜くなよ」

 

「はい……!」

 

 




忍者たちを携えて
いよいよ幕が上がる姫物語
いざいざ御覧じろ

次回 忍者鉄則其ノ三!




ここだけのお話、あのお札はカホの方ではなくニヤの神秘が込められたものです。
一周年、また何かやりたいものですが……はてさてどうしたものか……
色々考えつつありますな!

評価、ここすき、感想お待ちしております!
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