新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-3 狼蛇相対す

フィアットのエンジンがハイオクを燃やし、車内に排気ガスの臭いが充満していく。

 

助手席に乗ったアルが、窓を開き、その赤い髪を靡かせながら外を向く。

 

車内には何とも言えない微妙な空気が流れる。

ルームミラーを見ると、ムツキがカヨコに小さな声で話しかけているのが見える。

 

 

「……ね、ねぇねぇカヨコちゃん……アルちゃんと先生どうしたの?」

 

「あぁ……それは──「何でもないわよ、ムツキ」だってさ」

 

 

アルのこの態度の原因は、大方俺にある。

 

話は少し前に戻る。

 

 

 

 

「私は貴方の何?」

 

「…………アル、お前は」

 

 

言葉が詰まる。

相棒……と呼ぶには、まだこいつは若い。

俺はパートナーと呼ぶが、あくまでもそれはビジネス上のもの。

俺とこいつらは対等ではあるが、平等ではない。

あくまでも大人と子供だ。

 

 

「お前さんは俺の……──「アルちゃん、先生ただいま! 先生から呼ばれたからソッコー終わらせてきたよ!」」

 

「あ、あのムツキ室長……その何か大事なお話し中だったのでは……」

 

「え、あっ……あ、ごめんなさい。ムツキちゃん邪魔しちゃった?」

 

 

俺が言葉をつまらせて、ようやく話そうとした瞬間、扉が元気よく開かれ、ムツキとハルカが帰ってきた。

 

部屋に流れている空気を察知したハルカが、ムツキに話しかけ、そのままムツキが頭を下げるが……俺としては少し助かった、とそう思ってしまった。

 

 

「いいや、大丈夫だ、ムツキ。 帰ってきて早々で悪いが、二人共ありったけの爆弾持って出かける準備を頼む」

 

「OK! 分かったよ、行こハルカちゃん」

 

「はっ、はい! 失礼しました!」

 

 

俺が指示を出すと二人はそそくさと出ていった。

あの二人には悪い事したな。

 

しかし、まさかこんなに俺が追い詰められるなんてな。

 

 

「…………アル、カヨコ。俺たちも準備しよう」

 

「ちょっと! 先生! 答えを言いなさいよ!!」

 

 

支度をしに行った俺の背中にアルの声が刺さる。

答えをまだ出せない俺が、酷く弱く感じた。

 

これから仕事だというのにな。

 

車に対戦車ライフルやらなんやらを詰め込んで、車に乗り込む。

四人用だからな、ムツキとハルカ、カヨコが小さいとはいえ、後ろに三人は狭そうだ。

 

元々ここで作られたものに加えて俺が色々改造を施したものだ。

爆薬やらなんやらを大量に詰み込んでも余裕で動くほどの馬力がある。

 

話を今に戻そう。

 

アルが今も不機嫌なのは端的に言えば、俺が答えから逃げたからだ。

 

大人と子供なんて、そんな言葉ですませりゃいいのにな。

何故かその言葉を口に出来ない俺がいる。

 

おい、ルパンよ。お前ならこの状況どう言ったよ。

 

 

「見えてきた。今朝来たばかりだからな。俺のタイヤの跡と……熱線の跡が残ってる」

 

「車で避けれるでしょう、先生なら」

 

「あぁ、ミサイルを放ってくるが撃ち落とせるだろ、お前さんなら」

 

「えぇ、さて便利屋68。蛇殺しの任務始めるわよ」

 

 

助手席から声をかけてくるアルと俺の掛け合いをみた後ろの三人は、少し溜息をついてアルの号令に銃を構えることで答える。

PMC理事の目的はアビドス砂漠で本船を探す事だった。

その為に軍隊を用意したんだと思っていたが、それは違った。

 

あれほどの軍勢は全て、ビナーに対して用意したものだった。

突破は容易かったが、風紀委員会に便利屋、対策委員会、そしてティーパーティーの一発がなくちゃ攻略できなかったほどの軍勢だ。

今思えば、余程の数だった。

 

と言っても、今のこいつらと俺ならビナー相手でもどうにかなるだろう。

 

それよりも気になるのはビナーの動きだ。

態々軍隊を用意するくらいだ、ビナーの動きがある程度予測できなくちゃ無駄足を踏むことになる。

それくらいのコストをかけてもいいかもしれねぇが……あの数の軍隊を維持し続けるコストは計り知れねぇ。

 

あの男がそんな現実的じゃねぇ手段を取ることはねぇだろう。

 

なら、ある程度ビナーの行動に予測がついていたはずだ。

 

例えば、あの本船に近づくと……ビナーが現れるとかな。

 

 

「ロボットは年中無休ってことか?」

 

 

熱線を辿って走り続けると、やがて地響きが鳴り、巨大な蛇の姿が砂を纏いながら浮かび上がる。

既に時刻は夕暮れ、陽が沈んでいくその茜色に砂粒が反射して、煌めく。

随分とロマンチックな光景だが……これから始まるのは派手な戦いだ。

 

 

「振り落とされるなよ、お前ら!」

 

 

エンジンを吹かせて、ハンドルを切り、ビナーの横を通りながら走り出す。

ビナーが俺たちの事を確認した。

車体が揺れるほどの咆哮。

 

爆弾の音で爆音には慣れてるが、それでも体が痺れるほどの音の波。

 

隣にいるアルがサンルーフを開き、体を出して叫ぶ。

 

 

「ムツキ、爆弾!」

 

「はいはーい、じゃんじゃんやっちゃうよ」

 

 

流石幼馴染ってところか、アルの言葉とほぼ同時に窓を開いて、ビナーに向けて手榴弾を投げつける。

 

車の勢いもあるが、ビナーに届くのか?

 

 

「流石ムツキね……良い位置よ!」

 

 

自身のスナイパーライフルを取り出したアルが、手榴弾に向けて狙撃する。

放たれた弾は、手榴弾に当たる直前で爆発し、爆風によって加速した手榴弾が、ビナーに命中する。

 

また狙撃の腕を上げたな。

 

 

「んー……手榴弾じゃ効き目薄そうかも?」

 

「先生、私が運転するから、社長と狙撃して」

 

 

爆煙が晴れた先に見えるのは、ほんの少し煤の付いた白い装甲。

ムツキ特製の手榴弾は戦車程度なら一個で装甲を喰い破って大破出来るほどの火力はある。

 

それがほんの焦げ付く程度とはな、カートゥーンでもやらねぇよ。

 

カヨコが前に乗り出て、俺と運転席を変わり、俺が後ろへ移動すると、すぐにハルカが対物ライフルを渡してくれる。

さっきまでサンルーフから体を乗り出していたアルは、いつの間にか助手席の窓から身体を乗り出して、射撃を行っていた。

 

アルの弾丸も命中はしているが白い装甲上からは、まるで歯が立たねぇ。

 

 

「かったいわねぇ……あれ何製よ」

 

 

アルが愚痴るのも無理はない。

アルの弾丸の威力の高さは、俺も何度も見てきている。

 

アイツのワインレッド・アドマイアーが効かねぇとなると、俺の.586Kaiser弾も効くかどうか不安になってくるぜ。

 

 

サンルーフから上半身を出して、屋根にバイポットを乗せて、銃身を安定させつつ、狙いを定める。

 

狙い目は、アルが当てた箇所だ。

この世に絶対はないからな、どんな物質でも何度も当てりゃ壊れるのが道理ってもんだろ。

 

日が沈み始め、闇夜が包み込んでくる。

それでも、このアビドス砂漠は岩がねぇから運転に支障が出ることはないし、ビナーに関しても、その図体の連結部にあるオレンジ色の発光のお陰で見失うことはない。

 

 

「車揺れるぞ」

 

 

息を止め、狙いを定めて引き金を引く。

凄まじい爆音と衝撃が全身を襲い、その直後まるで苦痛に呻くかのような咆哮がビナーから発せられる。

 

流石に対物ライフルなら、多少は通るか。

 

放たれた.586Kaiser弾は、アルが命中させた装甲に当たり、遠くから見ていても分かるほどにその装甲を歪ませている。

仮にもティーパーティーが保有している豪邸サイズのセーフハウスを、一発で半壊させるほどの威力はあるんだが……それの直撃で、装甲が歪む程度か。

 

これはジリ貧になりそうだと思っていると、その直後、夜にも関わらず、日中かと思うほどの光が俺たちを照らす。

 

頭上を見れば、ビナーがその口に巨大エネルギーを貯め込み始めていた。

 

あの砂漠の砂を溶かし、ガラスに変えてしまうほどの極太熱線だ。

 

 

「あれを喰らったら一発で死ぬぞ、運転は俺がやる!」

 

 

車内に戻ると、カヨコが後ろに移動して、運転席を直ぐに開けてくれていた。

 

ハンドルを切って、大きく曲がりながら蛇行運転を始める。

発射のタイミングが分からない以上はこうやって避けるくらいしか出来ねぇ。

 

にしても……今朝よりもデカくねぇか?

 

 

「まさか、学習して避けれないように……?」

 

「道中見てたけど、あれで砂が溶けたんだよね?」

 

 

カヨコの言葉に俺は頷くことしか出来ねぇ。

車を大きく蛇行させたところで、それはただ狙い目を定めさせないようにしているだけ。

それすら飲み込むレベルの大きさでやられちまったら、元も子もない。

 

どう切り抜けたものか、そう考えを巡らせていると隣から声が聞こえる。

 

 

「ハルカ、行けるかしら」

 

「……っ! はい!アル様の命令なら……死んでも果たします!」

 

「死ぬのは許可しないわよ」

 

「で、では……肉壁ではない方法で……ムツキ室長……バッグお借りしてもよろしいでしょうか……」

 

 

ハルカが、ムツキにいつもの黒いバッグを手に取ると、車の天井に登り、立ち上がる。

五ェ門か? ハルカ、お前さんそこまで身体能力高かったのか。

 

力強い音と共に車体が揺れた。

 

サイドミラーで確認すれば、ハルカが跳び、ビナーの横っ面へと向かっていく姿が見える。

 

 

「アル様の為に……先生の為に……死んでください!!」

 

 

駒のように回転しながら、そのまま跳んでいき、バッグを持った右腕を力強くビナーの顔、右側面に打ち付ける。

 

凄まじい爆発と共に、熱線が空を切り裂き、天高く光の柱が伸びていく。

 

爆弾による衝撃で、溜めていたエネルギーが暴発、その勢いのままずらしたのか!

 

そのまましばらく走ると何かが天井にぶつかる軽い音と共に、再び車が揺れる。

その音に気が付いたカヨコが少し黒焦げになったハルカを車内に引きずり入れた。

 

 

「けほっ、アル様、先生……やりました」

 

「やるじゃねぇか、ハルカ。流石だぜ」

 

「えぇ、流石ね。社長として鼻が高いわ」

 

 

口から少し黒煙を吐いたが、あれほどの大爆発をもろに喰らって五体満足。

ちょっと焦げたくらいで済んでるのは異常も異常だ。

 

ハルカの頑丈さは知ってるつもりだったが……認識を改めねぇとな。

 

あんな大爆発を喰らったビナーは、再び咆哮を放ち、黒煙を晴らす。

その顔の側面には大きなヒビが入っており、同じくらいの爆発があれば砕けそうだ。

 

と言っても、ムツキ謹製の手榴弾が山ほど入ったバッグによる一撃と同等の火力。

そう簡単に用意できるものじゃねぇ。

 

 

「あの……お二人共……そ、その、私なんかが烏滸がましいですが……その」

 

「なんだ、ハルカ。構わねぇよ、言いな」

 

 

 

「で、では……その頑張ったので、どうかお二人共、喧嘩は止めてほしい……です」

 

 

 

前に、ハルカにはもっと我儘になっていいと、俺とアルから伝えたことがある。

それからそれなりに経ったが、あれからハルカが自分から何かお願いをすることはなかったが……まさか二度目のおねだりが、俺とアルが仲直りしてほしいなんて。

 

俺とアルは思わず互いの顔を見つめ合って、そしてアルが笑いだす。

 

 

「あはははっ、ハルカ大丈夫よ。喧嘩はしてないわ」

 

「そ、そうだったのですか? その……ずっと緊迫した空気が流れていたので……」

 

「えぇ、先生が意気地なしなだけで、本当に喧嘩してたり、ましてや嫌いならこうして仕事も受けてないわよ」

 

「おい、誰が意気地なし──「先生に決まってるじゃない、関係を言葉に出来ない癖に」……てめぇ、可愛げがなくなったな」

 

「じゃあ、昼間の答え教えてもらおうかしら」

 

「……もう少し待て、答えは出すから」

 

「2人とも、痴話喧嘩はそれくらいにして、向こうかなり怒ってるみたいだよ」

 

 

カヨコの言葉に冷静になって、サイドミラーを確認すると、ビナーは咆哮しながら、畝りながら地中へ潜って、顔を出してはまた潜り、素早く俺たちの方へ突き進んでくる。

 

 

「機械も怒るんだな? しっかり掴まってろ、飛ばすぜ」

 

 

ロープを引き、スーパーチャージャーを発動させながら、一気に加速していく。

ビナーは口を大きく開けながら、こっちに向かって突進を続けている。

 

今更ながら、車を持ってて良かった。

あれ相手に生身で立ち向かうのは正気じゃねぇ。

 

しかしこのままじゃ、逆転の兆しがねぇな。

燃料は満タンで入れてきたが、いつまでも鬼ごっこは続けられねぇ。

 

こういう時は、カヨコに頼るとするか。

 

 

「カヨコ、策はあるか?」

 

「分かった。 ムツキ、私が指示出すから、地雷を纏めて、窓から投げ捨てて」

 

「そういう事だね、くふふっ、それならとびっきり辛口のをご馳走しないとっ」

 

 

運転しながら、後ろを見るとムツキが無数の地雷をダクトテープで丸めてサッカーボールサイズの球体を作っている。

大型地雷同士の隙間を埋めるように小型爆薬までつけた即興料理ってところか。

 

 

「カヨコちゃん、準備OKっ」

 

「じゃあ、構えて……3、2、今」

 

「ビナーちゃん、召し上がれ〜!♡」

 

 

地雷製のミートボールは、カヨコの指示と同時に窓の外へと投げ出された。

転がり、数秒したのち、地面から飛び出てきたビナーの口の中に丁度入る。

 

カヨコが計っていたのはビナーの潜航と突出のタイミングか。

 

 

「先生、もっと飛ばせる?」

 

「任せろ」

 

 

アクセルを強く踏み込み、さらに車を飛ばしていく。

トルクが悲鳴を上げるが……あまり無理はさせれねぇが……ここが正念場だ。

 

 

「ここまで距離を離せば……来た」

 

 

カヨコの呟きと同時に、ミラーで後ろを確認すると、ビナーが大きく飛び出して上から俺たちを飲み込もうとしてくる。

 

アイツが地中ではなくて完全に外に長く出るタイミングを作りだしたって訳か。

何しろ地中じゃ電波が届かねぇかもしれねぇしな。

 

軽い溜息を吐くと同時に、カヨコがその手に持った地雷のスイッチを押し込む。

瞬間、響く爆発音と揺れ、そして後ろから聞こえる地響き。

 

ターンをして、確認するとビナーが砂の上に倒れている姿が見える。

 

あの硬い装甲の持ち主であるビナーも腹を壊すらしいな。

 

 

「と言っても、あれでくたばるタマじゃねぇだろ、アル構えろ」

 

「追撃……ね。念には念を入れましょうか」

 

 

俺の予想通り、鈍い軋むような金属音を響かせながらビナーが首を擡げ、俺たちの事を見下ろしてくる。

機械の割に、随分と生き物じみた行動だ。

 

まるで知性があるかのような眼差し。

 

 

「決着と行くか」

 

 

ビナーがその大きな咆哮を放つと、体の側面から無数のミサイルを放ち、そしてこちらに突撃してくる。

 

俺はそれを見ながら、シモノフのスコープを覗き込み、銃口をヒビが入ったビナーの顏、右側面に合わせる。

 

真っ直ぐ近づいてくる、そのビナーの面とミサイル。

 

 

「これで終いだ」

 

 

引き金を引くと同時に、降り掛かってきたミサイルが全て空中で爆発。

放たれた.586Kaiser弾は、ビナーの顔を半壊させ、大きくその体を後ろへと仰け反らせる。

スコープから目を外せば、リボルバーを持ったアルとそれぞれの得物を持った他の三人が窓の外から身を乗り出して、その銃口から硝煙が立ち昇っているのを確認する。

 

言わずとも、ミサイルを全て撃ち落としてくれたらしい。

 

ビナーは、そのまま俺たちに背を向けて、何処かへと消えていく。

死ぬわけにはいかねぇか、それともそこまでして守る義理はねぇのか。

命を優先するのは悪くねぇな。

 

 

「先生……アドリブにしては無茶振りが過ぎるんじゃない?」

 

「出来ると思ってたからな、態々言う必要はあるか?」

 

「あるわよ、言葉にするからこそ意味があるものだってあるでしょう?」

 

 

ビナーの敗走する姿を見ながら、俺たちは会話を続ける。

言葉にするからこそ意味があるもの……か。

 

 

「そういう美学は俺にはねぇな」

 

「むーー……」

 

 

アルがふくれっ面になるが、そういうもんだ。

言わぬが花って言葉もあるからな。

 

ビナーの邪魔が入らなくなった今これでようやく本命である本船探しに移れる。

 

お宝には門番が付き物だが……随分とヘビーな相手だったぜ。

 

 

「それで、このまま探すのかしら?」

 

「あのビナーがどれくらい早く戻って来るか分からねぇからな。 休みたいのならアビドス駅まで送るが……」

 

「もう置いてけぼりは嫌よ、楽しいことも楽しくないことも全部みんなでやる方がいいでしょう」

 

「……そうか」

 

 

あぁ、そうだ。

こいつのこういう仲良しな態度が、どうにも慣れねぇんだ。

 

俺たちは必要な時に必要なだけいるってだけだ。

仕事だから寝食を共にすることがあるだけ、友達って訳でもねぇ。

タダの腐れ縁だ。

 

だから、この陸八魔アルって女が俺の心の間合いに土足で踏み入っている。

この状況がどうにも慣れねぇ、そしてそれを不快に思わない俺にもな。

 

あーぁ、らしくねぇな。

 

 

「次元先生、ここからどう探すの?」

 

「ムツキちゃん、このまま彷徨い続けるのはやだな~」

 

「それなら、心配いらねぇよ。当てはある……ただそれを探す為の道具が……ん?ドローンか?」

 

 

車を止めて、戦闘で火照る体を冷やしていると、ファンが回転する音と共に、ドローンがこちらに向かって飛んできているのを発見する。

砂漠の夜は、空気が澄んでるお陰で、星明りだけで充分見える。

 

この辺りには、野良の機械たちがいるのは知っている、てっきりそれかと思ったが……どうやら、違うようだ。

何故なら、ドローンの側面にミレニアムの校章が記されている。

このタイミングで来たってことは……頼んでいたものが来たらしい。

 

ドローンが、近づいてくるとアームが伸びて背中から何か筒状の物を手渡してくる。

 

そして後ろを向いたかと思えば、ホログラムを投影し始めた。

 

映ったのは、俺の予想通りエンジニア部の部長、白石ウタハだ。

 

 

『やぁ、先生。 待たせてしまったね』

 

「ウタハ、流石の速度だな」

 

『マイスターとして当然さ。早速「簡易式神秘測定くん五号」は受け取ってくれたかい? 使い方は前と変わらず、新機能として追いたい神秘を視界に収めたら筒の側面のボタンを押してくれ。データにあった神秘量にも当然対応済み、視界を塞がれることはもう無いだろう!』

 

「支払いは今度でもいいか? 纏めて色付けてな」

 

『それは少し期待してしまうな。 分かった楽しみにしていよう』

 

「ところで、どうしてここにいるって分かったんだ?」

 

『…………ふふっ、態々言うのは野暮さ』

 

「あ、おい、ちょっと待て!」

 

 

ホログラムを消すと、早々にドローンが飛び去ってしまう。

ウタハの奴、アイツ何処から知ったんだ?

ヒマリか? ミレニアムで言ったのはそいつくらいなもんで、後はシャーレで言ったぐらいだが。

ヒマリか、そんなことをするのは違和感を覚えるが……。

 

盗撮でもされてるのか…………?

いやいや、アロナがいるのにそんなこと出来る奴はいねぇだろ。

 

イズナみたいな隠密で直接撮った訳でもあるまい。

 

まぁ、一先ずはこれで向かう準備は出来た。

 

 

「はぁ……兎も角これで道案内は出来る。お前らは寝てていいから、体力を回復しておけ」

 

「先生は?」

 

「普段寝だめてるからな、これくらいならどうってことない」

 

 

装置を起動すると、今朝見たばかりの真っ黒な光景が見える。

そして側面のボタンを押すと、その黒い煌めきが収束して一本の線へと変わる。

 

これを辿って行けばいいわけだ。

 

ギアを中速へと変えながら、便利屋達が寝やすいようにゆっくりと進んでいく。

ビナーとの戦闘は、決して長くはなかったが、判断を間違えれば死に直結するものばかりだ。

あれがデカグラマトンの一体、他にもいる事を考えると……面倒だが、放っておくわけにもいかないだろう。

 

月に照らされながら、砂漠を進んでいく。

 

四人もすっかり疲れたのか、あっという間に眠りにつき、そのまま朝まで起きることはなかった。

 

それにしても、俺にとっての陸八魔アルは何なのか……か。

答えると言ってしまったからには、答えを用意しなくちゃならねぇ。

 

そのことを考え続けて、気付けば太陽が空に登り、いつの間にか朝を迎えていた。

そして、ようやくゴールへと辿り着いた。

 

機械越しに見えていた線が、地中を指していたのだ。

 

 

「お前ら起きろ」

 

「んぅ……ふぁぁ……先生おはよう……ついたの?」

 

「あぁ、ここだ」

 

「……何処にも何もないじゃない」

 

「まさか……地下?」

 

 

カヨコの引いた声に俺は頷く。

ここを掘るしかねぇわけだ。

 

カイザーよりも先に見つけれたのは僥倖だが……。

 

 

「手作業で掘る……のはちょっと無謀じゃない?」

 

「ここに来て泥仕事……ね」

 

「楽しくねぇことも全員でなんだろ? 手を動かすしかねぇだろ」

 

 

ムツキとアルが嫌そうな顔をするが、つるはしとスコップを用意して掘るしかねぇ。

 

せっせと掘るのも仕事だ。

 

車に備え付けてあるスコップを取り出そうと車を降りたタイミングで、複数のエンジン音が遠くから聞こえてくる。

まるでこのタイミングを狙ったかのような動きだ。

 

音は四方から聞こえる。

 

 

「囲まれたか、お前ら構えろ」

 

 

連戦はきついが、玩具はまだまだあるからな。

 

遠くからやってきたのは……蛸をモチーフにした紋章が描かれた車両たち。

あの紋章は……カイザーコーポレーション?

 

 

「カイザーの野郎、つけてやがったな」

 

「とりあえず爆発いっとく?」

 

「あぁ派手に──「抵抗を止めて観念しろ!」……は?」

 

 

カイザーの車から聞こえてきたその怒声に、思わず俺は動きを止める。

何でお前がそっちについてやがる。

 

あっという間に囲まれた俺たちの元に、二人の男が車から降りて近づいてくる。

片方は、俺の知らねぇアンドロイドの男。

そして、もう片方は良く見慣れたベージュのトレンチコートに身を包んだ男……。

 

 

「とっつあん……一体何の用で」

 

「次元大介、貴様を殺人及び死体損壊の罪で逮捕する」

 

 




よりによって、なんで銭形がそっちに回ってやがる
それに、見ないうちに随分とこっちに慣れたような様子だが
一体何があったんだ?

次回 ヴァルキューレ特別講師『銭形幸一』

主人公を譲った覚えはねぇぞ





ウタハちゃんが何故先生がアビドスにいると分かったのか……。
そういえば彼女は、セミナーの依頼を受けて色々してましたね?
謎の答えは「新任教師『次元大介』短編集 計算通り」を参照していただければ

最終章なのでね、全て込々で物語を書いていきますのでね

最後に、評価・感想・ここすきお待ちしております

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