新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-5 VS便利屋68

「それじゃあ、気を付けてね!」

 

「お仕事、上手くいきますように!」

 

「あははっ! 了解! あなたたちも学校の復興、頑張ってね! 私も応援してるから!」

 

 打ち解けていたセリカ、ノノミとアル。

 それぞれに言葉を交わしている。もう充分に友達と呼んでもなんら問題のないほどの良い関係を築き上げていた。

 

 あのアルという少女は、目指しているものとは真逆の善性と呼べるもので人を惹きつける一種のカリスマを持っている人間のようだ。

 

「じゃあね!」

 

 到底、ハードボイルドなアウトローには似つかわしくない底抜けに明るく、透き通るような透明さの笑顔を向けてきた。

 

 俺の手には一枚の名刺。

『便利屋68 社長 陸八魔アル』と書かれたそれは、俺が昔傭兵をしていたと話した際に、受け取ったものである。

 便利屋68、金さえもらえば何でもする……だったか。

 社長があんな感じでなきゃ、恐ろしいことこの上なかったんだがな。

 

「笑って、どうしたの先生?……ま、いいか。どうするの?あれのターゲット私達だよ?」

 

 どうやら、自然と笑みが零れていたらしい。

 アビドスの面々からいつの間にか抜け出していたホシノが俺の隣でそう話しかける。

 どうやらホシノも、便利屋たちの会話を聞いていたらしい、この後の依頼についての内容をな。

 

「どうするもなにも、迎え撃つだけだろう。」

 

「仲良くなったのに?セリカちゃんとかカンカンになるんじゃない?」

 

「大人の世界ってのはそういうもんさ、公私の区別をつけるいい機会だろう」

 

「うへ~。そういうものなの~?」

 

「それよりも腹の中のモン消化しとけよ」

 

 うへ、と返事代わりにそう声を呟き、帰り道につく。

 襲撃の連続だなこの街は。

 白黒の髪をした少女、カヨコだったか。あいつの発言通りなら、残りのヘルメット団の残党は壊滅したってところか。最初に考えてた3つのパターン。一番マシなパターン2だったのは助かるが。

 人を多く雇ったうえでの襲撃か。

 いつぞやの、ICPOが護送中のルパンを奪い返したあの日よりかは戦力が少なかったら助かるんだがな。

 

「なぁ、先生」

 

「ん?大将どうした」

 

 いつの間にか店から出てきた柴大将が俺に話しかける。

 

「会計、少し多すぎると思うんだが」

 

「釣りはいらねぇって言ったろ?余ったんなら……さっきの四人組がまた来た時に先払いしてたってことにしといてくれ」

 

 言葉数は少なかったが、大将が何を言いたいかはすぐに理解できた。

 さっきの会計の際に俺が少々色を付けて払ったことに関してだろう。

 

 計算はめんどくせぇから釣りは要らないって言ったんだがな。

 

「そうかい……じゃあそういうことにしとくよ、御贔屓にな」

 

 そう話しかけてくる柴大将に振り向かずに手を振って俺もそのまま帰路に就く。

 あぁいう粋な男は、俺は大好きだな。この都市で最初に出会った男がアイツでよかったと思ってる。初めは犬だなんだと思ったけどな。

 

 

 

 

 学校についてからしばらくしたのち、アヤネから通信が入る。

 

『校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!』

 

「見えたぜ」

 

 アビドスについてから、俺はホシノとさっきのアル達が、黒幕が仕掛けてきた次の敵である可能性を伝えて、アヤネに周囲の敵であろう集団の探知をお願いしていた。

 俺は学校の屋上からKar98kを使って、敵を捕捉した。

 シャーレから念のため持ち出したもんだが、使う機会があってよかったとしみじみ思うね。

 アロナには、今アヤネと共にサポートに回ってもらっている。

 だからか、懐もいつもと違って軽い。

 

 便利屋の面々が先導し、その後ろにヘルメット団ではない傭兵であろう人がざっと30名ほど固まって、こちらに向かってくる姿を確認する。

 

「予想通り、ヘルメット団じゃねぇな、傭兵ってやつだろう」

 

「恐らく、日雇いの傭兵かと」

 

「へえー、傭兵かあ。結構高いはずだけど」

 

 ほう、そりゃいいこと聞いたな。リンに頼んで副業でやるか?

 冗談はさておき、金欠のあいつらのことからして、恐らくだが、全日は無理だろうな。

 あの人数だし、ということは、この作戦は耐久戦ってわけだ。

 

「お前ら、聞こえてるな?俺が指示したポイントで待ち受けるぞ。」

 

 俺は、アビドスの面々に指示を飛ばし、襲撃ルートを塞ぐように堂々と待ち受けさせるようにした。

 その通りはこの屋上からよく見えるからな。

 

 通信越しに会話が聞こえてくる。

 

『前方に傭兵を率いる集団を確認!』

 

『先生の言う通り、やっぱりラーメン屋で会った人ですね……』

 

『ぐ、ぐぐっ……』

 

 苦虫を嚙み潰したような顔で唸るアルの顔が、スコープ越しによく見える。

 仲良くなった人間に銃をむけるのは、彼女にとってどうやらまだ心苦しいようだ。

 ただ、来たってことは、それも承知の上でということなのだろう。

 善性もさることながら責任感も強いと来たか。

 

『正直嘘だと思いたかったわ……本当にあんたたちだったのね!!

 ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!』

 

 おいおい、やめてやれ、アルの顔がしなしなになってきてるぞ。

 

『あははは、その件はホントありがと。でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ』

 

『残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす』

 

 灰色の髪の少女、ムツキとカヨコが、激昂したセリカの発言にそう返す。

 大したプロ根性だ。

 俺が今まで戦ってきた野郎の中にはそのプロ根性が足りてない玉無し共も少なくはなかったが、この子らは違う。

 学生の仕事なんて言うが、その仕事に確かなプライドを持って、仕事を引き受けているようだった。

 

「なるほどな……あぁ、その通りだな、受けた仕事はきっちりこなさねぇとスマートじゃねぇな」

 

『先生!?なんで乗ってるのさ!』

 

『あれ?その声はおじさんじゃん!声しか聞こえないけどどこにいるの?』

 

 どうやら通話がつながっていたらしい。

 まぁ、仕方ねぇ、このまま繋げっぱなしにしておくか。

 

「俺も、プロフェッショナルなんでな。受けた仕事は最後までやらさせてもらうぜ。お前はどうなんだ?アル」

 

『……もちろん!当たり前よ!私は便利屋68の社長だもの!依頼は絶対に遂行するわ!』

 

 しわしわで思い悩んでいた顔が晴れ、武器を構える。

 そうだな、お前さんはその方がいいだろうさ。

 

『先生!?何、敵に塩を送ってるのさ!!』

 

 セリカに叱られながらも、俺は、銃を構える。

 距離は……5㎞と356m。

 

 風速は……西からの強風、風速は10m/s。

 

 ここだ。

 

 セリカの返事の代わりに、射撃し、アルの後ろにいた傭兵の頭を撃ち抜く。

 のけぞりながら倒れた傭兵は、悶えながら苦しむ。

 

『スナイパー……!社長!』

 

「これが俺からのデートの誘いだ」

 

 シロコが、アサルトライフルを構える。

 

『誰の差し金か、力づくで口割ってもらうから』

 

『いいわ、その喧嘩買ってあげるわ!先生!……総員!攻撃!!』

 

 そういってアルの号令と共に傭兵たちが銃を構え、射撃を始める。

 

 それに合わせて、シロコ達も攻撃を始める。

 

 俺は、隠れたアルを探しながら、確実に一人ずつ傭兵たちの頭を撃ち抜いていく。

 

『じゃーん!花火を始めよっかな?さぁ、いっくよ~!』

 

 そういって、ムツキが巨大なバッグを空中に放り投げた。

 瞬間、大爆発を起こす。

 

『あ~あ、残念……先生早すぎ~!』

 

「綺麗な花火じゃねぇか」

 

 嫌な予感がした俺の銃弾によってそれは、ホシノ達に当たるよりも前に空中で爆破される。

 そして、その爆発の黒煙を突き抜けながら、銃弾が飛んでくる。

 俺の頬をかすめたそれを射撃した人物が誰なのかすぐに分かった。

 住宅の屋根の上でこちらにスコープを向け、ワインレッドのマントをはためかせる少女の姿が見える。

 スコープ越しに視線がぶつかり、弾丸が放たれる。

 銃弾は空中でぶつかり、地面へと落ちる。

 

 ばれちまったのなら仕方ねぇ。

 

「お前ら、バレた。援護はしばらく無理だ耐えてくれ」

 

 簡潔に連絡を入れて、屋上から飛び降り、移動を開始する。

 

 どうやら、アルも移動しているようで、次の射撃スポットで確認しても居場所が違う。

 けっ、流石……ってところか。

 

 その後も互いに場所を変えては射撃をし、お互いに銃弾が掠り、焼けるような痛みが走る。

 しかし、ホシノ達の方は順調なようで、残りの敵も僅かと言ったところだった。

 

 心のどこかでアルとの逢引を楽しみ始めてきたころ。

 

 学校の方から、正午を示すチャイムが鳴り響いた。

 それとほぼ同時にホシノ達の方で動きがあったようだな。

 

『あ、定時だ。』

 

『今日の日当だとここまでね。あとは自分で頑張って』

 

『いたた、ねぇお昼どうする~』

 

『アタイ、ラーメンの気分』

 

『じゃあ、ここに来るまでに見た柴犬の看板のとこ行く?』

 

『いいね~、そうしよそうしよ』

 

 どうやら、傭兵たちが帰ったようだ。

 現金なやつだと思うが、雇われならそれが普通ってもんか。

 

『こりゃヤバいね。もっと早く決着つくと思ってたんだけど、まさかこの時間まで決着つかないなんて……アルちゃーん!どうするの?逃げる?』

 

『くっ、でも、まだ先生との決着が……』

 

「おい、そこにまだ便利屋は居るか?」

 

『どうしたの~先生?もうなんだか帰りそうだよ?』

 

 このまま返してもいいんだが、このあとも、ヘルメット団のようにしつこく来られても困る。

 だから、ここで確実に建て直しができないようにするべきだ。

 

「アル。そこで待て、話がある、捕まえる気はないから安心しな」

 

『な、なによ……わかったわ』

 

 そのためには、アル、お前が絶対に逃げれない条件を突き付ける必要がある。

 しばらくして、アビドスの面々と便利屋たちが睨み合っている現場につく。

 

「先生、何するつもりなの?」

 

 やはり、ホシノはこういう時鋭いな。

 こいつの観察眼には驚かされっぱなしだ。

 普段の昼行灯の雰囲気の裏で、唐突に薄氷を踏むような鋭さを発揮してくる。

 裏表と聞こえはいいが、完全な二面性。

 この歳のガキが持つには早いと思わせるほどの末恐ろしさだよ。

 

「危険な橋を渡る、すまねぇが黙って信じてくれねぇか?」

 

 振り向かずにホシノ達にそう話しかける。

 何やら話し合ったのちに、ホシノが代表して声をかける。

 

「しょうがないな~。今回だけだよ?」

 

「ありがとな」

 

 そういって、便利屋たちの方へ歩く。

 

「お前さんら、ここで引いてもまた来る。そうだろう?」

 

「あ、当たり前よ!何度も言わせないで頂戴!私たちは便利屋68!受けた依頼は必ず遂行するんだから」

 

「だよな、だから。ここでハッキリと決着をつけよう」

 

 そういって、俺に向かって前に足を踏み出したアルに俺は、懐から拳銃を取り出し、投げ渡す。

 

「わっと、せ、先生これは?」

 

「S&W M60 “Lady Smith”。アル、俺と早撃ちの勝負をしねぇか?」

 

「早撃ち勝負……!」

 

「俺が負ければ、アビドスは引き渡そう。ただし、お前が負ければ、今回の依頼からは完全に引いてもらう」

 

 渡された銃を見つめながら、アルは考え込んでいる。

 

「アルちゃん、どうするの……流石にヤバいと思うんだけど」

 

「社長、何か嫌な予感がする」

 

 左右から、ムツキ、カヨコがアルに話しかけている。

 

「どうする、アル!乗るか、乗らないか!お前がなりたいものは何だ!」

 

 少し話すだけでもお前さんの性格は分かる。

 

 自分の流儀にこだわって、目先の利益を無視する。

 ロマンチスト、そういうタイプだろ?

 

「……分かった、乗るわ」

 

「社長!?」

 

「アルちゃん!?」

 

「弾は入ってるが、銃は確認しなくていいのか?」

 

「大丈夫よ、貴方。そういうことしないでしょう?」

 

 どうやらこっちも少し見透かされてるみたいだな。

 

「合図は……そうだな」

 

 懐からシケモクを取り出し、火をつけて、それを俺たち二人から見やすい位置に置く。

 

「次に、この風が止んだとき。それが射撃のタイミングだ、それでいいか?」

 

「えぇ……いいわよ」

 

 互いに充分に離れ、その瞬間を待つ。

 

 俺がスーツを広げて、腰のベルトにマグナムが刺さっているのをみたアルが真似して、スカートのところにもらった銃を差し込む。

 

 風が吹き、スーツとマントが揺れ、はためく帽子と髪の毛の間から、視線が混じりあう。

 

 永遠とも思えるほど凝縮された時間の中で集中は臨界にまで達する。

 

 しかし、そんな蜜月の時間は一瞬で終わりを迎える。

 

 

 

 風が止む。

 

 そして、太陽が昇りきった晴天に一つの銃声が鳴り響く。

 

「っ……!」

 

 放たれた銃弾は、抜き出したアルの持つ銃に当たり、手から弾き飛ばされて、地面を転がり、その痛みでアルは両膝を地面に着いて、座り込む。

 

「これで決着だな。」

 

 見える位置に置いていたシケモクを取り、咥えながら、アルに歩み寄り、その額に銃を向ける。

 

「……えぇ、私の負けよ」

 

 少し悔しそうにアルは俺を見つめる。

 

「はっ、悔しかったら、せいぜいお前さんもカッコつけるんだな」

 

 そういって、シケモクを踏み潰し、銃を仕舞って、手を差し伸べる。

 

「~~っ!あぁ、もう完敗じゃない、これじゃあ」

 

「あっはっはっは!悪いな、おじさん。早撃ちじゃ負けなしなんでな。」

 

「えっ!ちょっとそんなのずるじゃない!!」

 

「でも、勝負は勝負だろ?約束は守ってもらうぜ」

 

「くっ、それは分かってるわよ!」

 

 手を取ってアルを、立ち上がらせる。

 そのあと、ホシノ達の方へ向かう。

 

「先生、流石におじさんちょっと驚いちゃったかな~?」

 

 ホシノがしっとりとした目線を向けてくる。

 

「悪いな、ただ黙って見守ってくれてありがとうよ」

 

「そりゃね、みんなで相談して、決めたんだもの。あれに口出ししたらおじさんが悪者になっちゃうよ」

 

 口ではそうは言ってるが、それなりに怒っているのが声色から察せられる。

 あとで、しっかりと詫び入れねぇとな。

 

「ん、先生。さっきの早撃ち、あとで見せて」

 

「切り札はそう何度も見せびらかすもんじゃねぇよ」

 

「でも、私も出来るようになりたい」

 

 キラキラした視線でシロコがそう話してくる。

 

「っ……わかった、お前らにも詫びは入れないとだしな」

 

「え?先生~?☆それって何でもしてくれるってことですか?」

 

「何でもは無理だって──「でも、おじさんたちが必死で守ってきた宝物を勝手に賭けに出したもんね~?」……っ」

 

 痛いところをついてきやがる…………

 セリカも何か思うところがあるみたいで、少し睨んできている。

 

「わかった、一人一個ずつな。」

 

「わーい!ありがとうございます~☆」

 

「うへ~。流石パパ太っ腹だねぇ~」

 

「だからパパって呼ぶんじゃねぇ!」

 

 ここぞとばかりにホシノとノノミが弄ってくる。

 

「それでだ、アル。お前の雇い主について、話してもらおうか」

 

「………分かったわ」

 

 そういって、俺たちは新しく増えた四人を引き連れて、校舎内に戻っていく。

 

 ただ、倒すだけが仕事じゃない。

 こいつらにもわかってくれたのならいいんだけどな。

 




一番書きたかったところがかけました……
未熟な文章力で伝わり切れてるか、不安なところではございますが楽しんでもらえたのなら幸いです。
次回 キチ鳥狂信者遭遇。

お気に入り件数がそろそろ1000を超えそうという事実に震えている作者です。
皆さんの声援あってか、ここ三日間ずっと書き続けていられるくらい、創作欲が爆破しております。


最後に、ここすき、評価、感想等々お待ちしております。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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